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8章

234話 紫色

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 とりあえず何着か金髪エルフが作ってくれたわけだけど。

「本当にこれで良いん?」
「……いや、作り直しますから!」

 私に渡した服をひったくってまた作業場に籠ってすぐさま「だかだか」とミシンの音をさせる。
 初めに施設を設置した後は自分で投資してグレードアップしていいよ、と言ったら有り金かなり突っ込んで一気に施設強化してるし、ガチ勢こえーわ。
 クランハウスの権利の1つとして、施設の強化は全員が出来るようにしている。新設したり撤去したりは私だけの権利だ。なので勝手に自分で資金投入した所で私としては何ら問題ないし、好きにしろと言うだけ。
 ああ、そうそう、早速うちのクランショップで作った服や軽装備の防具を売り出しているのだが、まあまあ捌けている。
 ……うちって元々ガンナークランだったんだけどなぁ……いつのころからって言うか最初からか、雑貨屋みたいに色々と雑多に物を突っ込んでいるって。

『今日は狩りに出るから、何か用事ある奴は先に言って』
『儂は特にないな』
『作った家具どーすりゃいいんだよ、配置していいのか』
『ボスの家配信していいー?』
『家具は配置して良いわ、変なのはダメだけど。私の家の配信はいいけど、硝石丘は映すんじゃないわよ。映したら分かってるわね』
『わ、わかってるよ!』

 他のメンツはログインしているけど、何か別の事をしているみたいなのでスルー。まあ、うちのクランだけがゲームの全てでもないし、私に用事ってそんなに大きい事も無いが、一応聞いておくのが礼儀ってもんよ。

 

 で、とりあえずのアイテム補充や銃弾を作って、北エリア2-3に返り咲き。
 基本的に動き方は前にやられた時と変わらないので、やっぱりギデオンアーマーをどう倒すかってのが問題になる。
 前回やられた時は逃げている最中のラリアットからの追撃なのでギデオンアーマーから直接攻撃を貰ってやられた訳じゃない、これは重要。
 そして私のそこまで高くないAgi値でも逃げられるので防御力が高い、所謂V型系の敵になる。なんとなーくだが、ちんちくりんと犬野郎の顔がちらつく。

「足の速さはないんだけど、振りの速さは結構あるんだよなぁ……」

 ってのを考えるとV-S型って所か。
 双眼鏡を使って相手のアクティブ探知外からじっくりとギデオンアーマーを木の上から観察し続ける。
 お、丁度他のプレイヤーが戦い始めたから観察するか。

 まあ、当たり前だけど、後発組でもレベリングの速い奴はいるし、パーティーを組んでいたら結構適正レベル以上の相手もどうにかなるのがこのゲームだ。
 丁度戦い始めているのは3人パーティーの戦士1魔法2のバランスの良い編成をしている。
 やっぱいいなあ、ヒーラーと魔法職。

 で、戦い方と言うか、立ち回り方を見ればやはり魔法に弱いと言うのが判明する。
 使っていたのは風って言う場合によっては中途半端扱いされがちなやつだったが、あんまりこのゲームで弱い魔法って聞かないな。見た目以上にしっかりとダメージを稼いでいる。

「ふむ、前衛はタンクよりの攻撃型か、抑えて隙を見て魔法を当てる、オーソドックスかつ王道の立ち回りだなあ……うーん、やっぱり魔法の方がダメージが入るみたいだし、属性弾はやっぱ課題か」

 ガンガン殴っているのはダメージが薄く、魔法攻撃の時には長めにヒットストップがかかる。
 ただそれでも倒しきれていないので単純に耐久が高いのだろうか?
 
 それにしてもこんな風に誰かが戦っているのを観察するなんて久々だな。
 バトロワ系のゲームじゃ結構観察したうえで漁夫のタイミングを狙ったりするけど、それとはまた違う。
 で、観察して分かった事をいつもの様にメモ帳で纏めていく。
 基本的に魔法、物理に対して強く、一定のダメージ量を与えると鎧が割れて直接ダメージが入るようになる。で、その割れるまでのダメージ量が物理か魔法で大分変わってくる。
 
 んー、ボスより中々難しい気がする。
 力押しで突っ込んでくる奴に対しては強いんだけど、ちょーっと特殊能力があると厳しいわ。

「まあ、私としてはしっかり倒せる相手は全部倒しておきたいのよね」

 観察していたプレイヤーがいなくなり、周辺にもいないのを確認してから他のギデオンアーマーを探す。
 他のプレイヤーもちらほらいるなか、やっと次のギデオンアーマーを見つけたので早速退治……するタイミングだった。


「で、話したわけ?」
「あ、はい、みんなと話して、ちゃんと理解してもらいました」

 水色髪青目、私と同じような名前のアオメと一緒になってギデオンアーマーの少し手前くらいで話をしつつ、銃の用意をし始める。
 近接戦闘になった時にはウサ銃が手放せないのも今後の改善点だよなぁ、銃捌きと早撃ちのおかげですぐに切り替えられるし取り出せるってメリットはあるけど、それでも限界はある。
 ……いや、その前にどうしてこうなったかって話だな。

 獲物を探して歩き回っていた時に、私の事を探しにやってきたので、そのまま戦力扱いとしてパーティーに誘って此処にやってきた形になる。
 色々話するならパーティーの方がいいし、なんだったらどれくらいの腕前があるのかを見極めるってのも良いって事よ。

「それで、どうなったわけ?」
「悪評を広めていた事実確認をしてそれをやめさせる、また余計なトラブルが起きないよう、言われていた事は全部話してどういう状況かをしっかり話し合いました」
「まあ筋は通ったわね……得物は」
「え、ああ、僕はショットガンです。それで、後は何をやれば」
「じゃ、あんた前ね……別にもう言う事はないわよ、しっかり話して、どういう状況だったか説明しきってるんだし」

 CHの中折れを一度折り、装填済みなのを確認してからがしゃっと戻して目標の近くまでさらに接近。

「正直解散しろって言うんだったら解散する予定です」
「勝手に本家だーとか言ってたから怒っただけよ、憧れて作りましたって事で怒るわけないでしょ」

 陣形と言うか、アオメの方を前にして戦闘開始。
 使ってるショットガン、鳳仙花は水平2連だったが、持ち出してるのはオーソドックスなポンプショットガンか。威力は少し抑えられているが、連射出来るのは強みだな。

「憧れて真似するのはいいのよ、パクリじゃなくてリスペクトをしろってだけで、ほら前」

 振りかぶってくるハルバードを銃身で受け、押し返してのカウンター射撃。
 ああ、私もがっつりやっていた戦い方か、もうちょっと切り返しが早ければ使い所が広がるのに、銃格闘辺りしっかり上げておきなさいよ、まったく。

「銃格闘上げて捌きやすさ上げなさいよ……トータルダメージだと思ったけど、ヒット数で鎧割れるのかしらねぇ」

 ショットガンの反撃を貰ってぐらついた所、CHで1発撃ち込んで攻撃の手を休ませると共に、またショットガンで追撃。いいなあ、ポンプ式。やっぱり連射できるショットガンってだけでかなりの強みだし、ガンナーギルドで見繕ってみるか。
 そんな事を思いながらCHをくるりと回して次弾の装填。

「……いつもこんな事を?」
「そりゃそうよ、ガンナーだからごり押ししかしないアホな連中と一緒にしてもらいたくないし」

 何発かショットガンとCHを当てると鎧にひびが入り、攻撃が通るようになる。
 こうなったらもう後は攻撃に注意して反撃するだけで片付く。

「ヒット数だけでいうならウサ銃剣で行けるな、そのショットガン、子弾10発前後の5発装填ってとこでしょ?」
「よく、わかりますね」
「ま、ポンプ式は大体は5発だし、水平2連で子弾20発なの考えりゃ良い所だから」

 葉巻を取り出し火を付けて紫煙を楽しみながら手頃な石に座って一息つける。

「で、どうする、クランの名前変えて続ける?それともリスペクトって事で名前はそのままで対等……とはいかない関係だけど、まあ本家分家くらいの関係にはなれるわよ」

 淡々と言いつつ、上がったレベルのステータスを割り振る。装備重量で落ち込んでるAgiを最低でも20キープしたいのでAgiに1振って終わり。
 SPに関してはまだ割り振らなくてもいいかな。イベントポイントの交換もしてないしそっちも考えておくかな。

「僕としては……憧れで付けたので」
「じゃあ、そのままでいいわ。これで公認で模倣しましたって言って良いわ」
「……本当に良いんですか?」
「その代わり人数がいるんだからしっかり管理しなさい、で、私に誇れるくらいのガンナークランにするといいわ」

 葉巻を楽しみ、紫煙を辺りに燻らせながらふふっと笑う。
 私は人数抱えた所の制御までは出来ないから、どこまで出来るかちょっと見ものだな。

「じゃ、この件は終わりな」

 すっと立ち上がり伸びをしながら使った銃弾をガンベルトに入れていく。数発で済んだからがっちり準備する必要がなかったが、ヒット数で相手の状態に変化が起きるならやっぱりショットガンは持っておいたほうがいいな。

「えっと土下座や謝罪は……」
「本当に迷惑掛けてるって思って動いてる奴をBAN報告させようとは思わないわよ……私が楽しんでいる所を邪魔しなきゃな」

 じろっとアオメを見ると、向こうは固唾をのみ込むようにしながらゆっくりと頷く。

「じゃ、これで終わり、あんたの所に対して対抗してた商品は取り下げておくわ」
「ありがとうございます」
「そうだな、アタッチメントくらいは融通してやるよ」

 葉巻を咥えたまま、いつものギザ歯を見せながらにぃっと笑う。
 
 今日はいつよりうまい酒が飲めそうだ。
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