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8章

227話 埋まる外堀

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 あれから2日ほど、配信しては倒してを繰り返して、ポンコツピンクのチャンネルを大炎上させてやった。
 とは言え、大体が序盤で出し切ったので途中からは「はいはい、いつものいつもの」くらいで片付いて行ったのだが。
 まあ、あいつのチャンネルとは言え、殆どが私のガンナーとしての宣伝として使いこんだだけなのだが。さらに言えば私のおかげで登録者数も増えたとか。
 
 ちなみにボス戦のドロップ品は、私には不要な物だったので全部クランショップに流した。
 中には結構な良い品や、ものすごいレアリティの高い装備が出たらしい。そういえば前にサハギンのボスから手に入れた槍があったが、髭親父の奴にくれてやろうと思って忘れてたわ。

「流石にポンコツピンクとは言え、最初のインパクトが大きくて良い感じに宣伝になってんのよね」

 クランショップに人が入ってくるのをいつもの服装で眺めながら一息を付ける。
 中々良い宣伝と言うのもあったのだが、一番大きく効果があったのは、配信でドロップ品を報告したうえで、マップのクランハウスと名前を毎回毎回言って置いた事だろうな。

「すいません、ドラゴン系のドロップ品を探してて」
「はい、在庫は此方になります」

 うちの秘書は有能だな。ベースはNPCだから言い淀みもなけりゃ、無い物は無いと言い切るし、あったとして、人間相手じゃないので価格を下げたりすることも無い。
 ただ私がやってたら価格を下げる代わりに結構な無理難題を吹っ掛けてやるから、きっとその商品は売れてないだろうな。

 とりあえず私の思惑通りに事が進んでいる。
 例のガンナーギルドの情報は当たり前だが転売されていたが、特に問題はなし。情報クランに売った段階で広ませる気だったし、何だったらどこから仕入れたんだ?って話になって向こうのクランが若干険悪になっている。
 ついでに言えばうちで購入したアタッチメント類、情報を向こうが転売してはいるのだが、前者は買占めをしたところで、自前で量産できる体制が整っているうちのクランに勝てる訳がない。
 後者に関しては真偽性がふわふわしてるのが引っかかっていると、報告書には書いてある。

 潜り込ませたうちの産業スパイはいい仕事をしてくれるから内情筒抜けで非常にやりやすい。人数が多いと言うことはこういう事が起きるって分かってなかったんだろう。

 で、内情の方に関してだが、やはりガンナーギルドの話がどうも怪しいと揉めている……と言うか、揉めさせた。
 怪しいと言うのは単純に、偽物側が売っている物を買ってきたのをばら撒いているんじゃ?向こうで売り始めた時と同じタイミングで売り始めたから転職したのでは?等々……と、スパイを使って情報操作含めて内部からクランマスターに対して疑いの目を向けさせている。
 このまま突き続けていれば内部崩壊はしないとはいえ、あまり結束は出来なくなるだろうな。つまるところ、さっさとこっちに頭を下げて取り繕わないと、うちのスパイが良い感じに内部から何度もボディブローを食らわせている状態だな。

「早めに頭下げりゃ許してやったんだけどなあ」

 折角集めたガンナー達の信用も無くなるし、ガンナーギルドの情報は抜けてるから、脱退した奴は脱退したので、あそこのマスターは……なんて話にもなる。
 
 そして珍しいガンナー配信者のポンコツピンクによって、私は本物よりも先に二次職になっていた上に、がんがんボスを倒せる頭のおかしいビルドをしているガンナーって事になる。
 黒いスーツに年季が入ったように見えるコート、どでかい砲身でボスを一撃で倒すときには葉巻を咥えたままギザ歯を見せて笑いながら敵を貫きまくる。
 自分でも思えばこんなにワンパンしてる奴が目立たない方がおかしいな。本当はぎりぎりまで削ってる、本当は倒してないなんて色々と言われているのもあったが、クランショップにドロップ品はあるわ、なんだったらスモークを作って視界を防いだ状態から撃ち抜いたりしたので、そういうコメントは少なくなっていったな。
 
「後は色々見てきた限りで、一直線に二次まで行った奴は選択幅が狭いからちょーっと弱いのよね」

 情報を売ってから向こうも二次職にはなっているが、トカゲのようなガンスミスになる奴はほぼ0、ポンコツピンクのように銃格闘をひたすら使ってるのもおらずガンフーもいない。ついでに言えばケルベロスもいない。って言う、ないない尽くしだったりする。

「それにしてもいい仕事してくれてるわ、あそこは」

 産業スパイの報告書を確認し終わってから一通り自分店の中を眺め、転移して自分の家に。


 
「悪党がやってきたな」
「みかじめ料を取られるぞぉー」
「……こき使われるー」
「引っぱたくぞお前ら」

 トカゲにジャンキーに犬耳と、また異色の組み合わせだな。
 最近連れまわしているせいで、殆どうちのクラン員と変わらずに私の自宅をたまり場にしている。

「マガジンの売れ行きがえぐいから材料取りに行こうって話でな」
「バイパーちゃん、ソロじゃきついって言うからねぇ」
「……うちの兄の方がまだ優しいって思うとは……」

 うんうん、仲良くしているのは良い事だな。

「まあ、仲良くやりなさい、私は私でどういう算段で追い詰めるか考えなきゃならないから」

 向こうで給仕の様な事をしているシオンを手招きして雑務の補助をしてもらう。
 とは言え、基本的には幾ら稼いだか、向こうの現状はどうなっているのか、スパイに送る次の指令を纏める位なので特に難しい事はなかったりする。

「此処2日で300万くらいか……ドロップ品の売上が高いってのは多少不本意ではあるけど、向こうとの差別化はいいか。マガジンも日30本で毎回全滅だから、悪くない売上」

 ドロップ品がまあ高い。ボスばっかりやってると言うのもあるのだが、装備品って大事なんだな。幾ら製造武具だとしてもレアドロップ品、ボスドロップ品の特殊能力付きには少し弱い。勿論見た目もあるので好みもあるだろうし、人によっては装備品をとにかく揃えるってのもいる。
 インベントリに制限がないってのと、マイハウスがあれば部屋いっぱいに武器を飾れるのもあるので、納得ではある。素材類に関してはどちらかと言うと製造系の奴が取り来ているのも確認済み。特にゴリマッチョ、あいつが色々買い込んで実用性のある防具を前線組に流してさらに良い素材を貰っての繰り返しで一儲けしている。
 そうだな、偽物に裁縫クランのトップと、前線組の犬野郎が出入りしているって噂を流すだけでも効果的かもしれない。

「そういえば例の偽物クランの相手どうしたんだ?」
「今外堀を埋めてるとこ」
「僕もちょっと調べてみましたけど……元々は模範クランだったようですね……それが尾びれやら尻尾やら色々ついてこんな状態に……らしいです」

 そう聞くと結局は多分クラン員の暴走だろうな。だんだんと制御をし切れなくなり、今に至る……と言う事なのだろうけど、まあ正面切って喧嘩売った時点でアウトだよアウト。

「まー、だからって許す気ねーけど」
「アカメちゃん、ひどーい」
「私の平和なゲームプレイの為に殺すだけよ」

 葉巻を咥え、火を付けられてからぷかぁっと紫煙を吐き出す。
 そろそろ本丸、二の丸あたりに攻めていくか。
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