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8章

224話 殴り方の方向性

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 あっという間に、ロングマガジンは完成。私とトカゲのオートマチック用のマガジンを1つずつ作成し二人でじろじろと見つめて出来を確認。
 

名称:ロングマガジン 対応:未設定
効果:基本装弾数に+5 DEX-1 必要ステータスSTR+1
詳細:マガジン式の銃器にのみ使用可能、大型化する程に取り回しに難が生じる、鉄製


「ふーむ……大型化で取り回しとステータスに下方修正、ついでに要求ステ上がるのか」
「下手するとこれって装備出来なくなるパターンもあるな」
「ライトマガジンなんて、軽い素材で作ったらステの上限減ったりしてね」
「軽い素材か……思いつく所では三種くらいあるが、それが存在しているかどうかがポイントだな」

 そうなると新しい金属を探しに第三の街辺りまで侵攻しなきゃならんって事か。
 ただ、その需要ってのもステータスの変化にさえ目を瞑れば、今の鉄ベースで問題ないと言えば問題ない。

「合金作るなら手伝うよ?」
「何か久々に見たわね、ガサツエルフ」
「デザインセンスと変な物を作るって悪癖以外は優秀だぞ」

 あの辺は悪癖なのか……酷いセンスだとずっと思っていたのだが、ちょっと意識したら直りそうなものだな。呪われた武具を作りたいってどんだけ精神病んでるんだってちょっと思う所はあるが。
 とは言え、あそこまでセンスの悪い物を作ってくるのを考えたら、それはそれで才能かもしれないな。

「そんな事言ったら作ってやんないもん……」

 すぐ拗ねてぐずるな、こいつは。そう言う所が多分愛されてるんだろうけど、そこそこめんどくさいってのは事実だな。とりあえずトカゲの奴に顔で「どうにかしろ」と目線を送ってやると、フォローが入る。
 
「そもそも合金ってどう作るん?調べればすぐ出てくるけど、混ぜ合わせて強くするって事になるのか」
「ぐす……そうだよ、混ぜる鉱石を炉に入れてかき混ぜるだけ」
「ゲーム処理って本当に楽だ」

 炉で混ぜるだけで出来上がるって凄いな。

「で、何を混ぜるの?別に鉱石同士じゃなくても出来るよ」
「ちょっと待て、其れって有りなのか?」
「何個か成功したから、ありじゃない?魔法系の物質と混ぜ合わせるのとか錬金でもやってるし」

 そう言われれば納得するな。発想自体は色々と自由にできるし、銃弾を作る時も殆どが「こういう形」と、ざっくりしたイメージだけで作れたのだから、軽い物と金属を混ぜたら軽くなるんじゃね?って発想で合金が作れると言う事か。
 
 それなりに長くこのゲームをやってきて、ある程度理解してきたことだが、とにかくこのゲームの製造は「イメージ」さえできればOKっていうざっくりとしたものと「ちゃんと理屈が通っているもの」の二つがある。
 銃器は勿論だが、武器、防具、アクセ類は前者で、錬金や科学的な処理をするものは後者だろうな。

「何て言うか……雑な部分とそうじゃない部分のふり幅がかなりでかい気がする」
「これくらいの方が面白いだろ、リアルじゃめんどくさい事もゲームじゃ出来るってのがゲームだろ」
「ねー、結局合金作んの?」
「そのうちな」

 何でぇ!と言いながらハラスメントブロック越しに揺さぶろうとしてくる。すぐに使う訳じゃないしあったらいいなって話よ。
 マガジン作る時に人手が足りないから少しだけ別の奴に手伝ってもらったってのはあったが、今すぐに合金が必要ってわけではない。
 今後の事よ、今後の。

「何だかんだで鍛冶クランの人員って一芸持ってるの多いわね」
「特殊スキル持ちが多いのは確かだな、俺が所属してた時に知ってる所で刻印、合金、魔法彫刻あたりだけだったが」
「今はもうちょいいるよ、もう関係者じゃないから秘密だけど」

 そういえばガンナーでの複合系スキルや特殊スキルってまだ見つけてないな。なるべくこういうのは早めに取れるようになっている方が、スキル選択の幅が広がるから、見つけておきたいが……まあ、そんなにぽんぽん取れるわけないか。
 生産系の方がこういう複合スキル、特殊スキルが多いってことかもしれんし、やっぱり要検証の事項だな。
 取るスキルがそこまで多くないってのと、戦闘系と違って生産スキル1つあればSPが腐りやすいってのも拍車を掛けているのかもしれん。

 と、いろいろ考えていると、うちのスパイが向こうの商売状況を確認したメールが届く。
 うちの企業スパイはしっかり仕事ができるんだな、情報クランにもうちょっと色つけて金でも渡しておくか。

「さっきのロングマガジン、1本幾らで作れる?」
「材料は鉄だけだから安い上がりだけど、加工技術が鍛冶と細工必須だから加工難度の方が高いから……手間代含めて3,000Zちょいは硬いな」

 それを聞きつつメールの内容を把握していく。
 予め聞いておいたガンナーギルドの所在は今のところ不明で、目下捜索中。ついでにメインで売っているのはガンナー向けのカスタムパイプ銃が多く、カスタマイズがメイン。ガンナーじゃない人向けには安めに火薬をご提供を開始。
 だいたい全員が木工と鍛冶を持っていて、自分である程度いじったりすることもできると。
 なんか量産型の自分を見ているような気がしてきた。

「とりあえずマガジン30本作ってうちのクランショップに並べてみようか、向こうで売っていないもので勝負しよう」
「あー、例の偽クランか。銃弾1発3,000Zだろ?」
「いや、1,500まで下げたって。料金と強さが見合ってないからだって……今のトレンドは前装式のパイプ系で装填済みのを本数用意して使う方っぽい」

 海賊映画で見かける、樽に大量に突っ込んでおいた銃をバンバン撃ち捨てて代わる代わる使っていくパターンだな。まだまだ改良の余地がある気がするけど、刻印持ちのやつでもいるのか、それともしっかり火縄かフリントロック式のものを作れたか、そこも気になるところ。

「あとガンナーギルドの場所もうちで扱うから、そっちは5,000Zくらいとってやるかな。情報の売買ってのもサイオンに設定できるみたいだし」
「全員が全員、クランハウスにいるわけじゃないからな……とりあえずマガジンはロングと通常ので15本ずつ作っとく」

 これでだいたいうちのクランで売って勝負していくものは決まったな。
 情報とアタッチメント……と言うか、拡張性のあるオプションか。必須ではないけどあると便利なもので本数が欲しくなるものなら尚更だろう。マガジン2つ余分にあるだけで詰め直しする頻度も下がるし、戦闘中に銃格闘や銃剣で泥仕合をしなくて済む。

「売れ行き次第でガサツエルフの引き抜きしようか」
「合金持ってるだけでか?」
「好きに装備作らせてくれるなら別にいいけど、サブマスだからね」

 あー、そうだった、このガサツエルフの武器って結構コアなファンが多いんだよな。呪われた武具シリーズや丸太シリーズ……鍛冶クランとしてサブマスだし、そうそう引き抜きはさせてくれないか。

「でもまあマスターはボスの家で鍛冶施設酷使してっけど」
「……初耳なんだけど、それ」
「最近マスターが言ってた『気に入った場所』?」

 そうそう、と頷いているトカゲを見つつ、軽く頭を抱える。
 そういえばトカゲと一緒に私の家で満喫してたのを何回か見た事あったけど、そんなにいいのかうちの家は。

「はぁー……荒らしてないなら別にいいけどさ……とりあえずトカゲ、あんたはマガジン作ってクランショップに並べて、共有の素材は好きにしていいから。ガンナーの人口がそこまでだから、ちまちま作って並べておいて」
「了解、ボス」

 トカゲ顔で親指を立てて返事をしてくる。そのうち溶鉱炉に沈みそうだ。

「バイパーのとこって大変ね……?」
「俺よりボスの方が大変だよ、ああ見えて腸煮え繰り返ってるだろうし、どういう復讐の仕方をするか、わからん……」

 なんかぼそぼそ喋ってるけど何を言ってるのやら。

「ところでアカメのあのTシャツ、ださくない……?」
「やめとけ……本人は気に入ってるんだ……」
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