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8章

223話 銃器開発……の前に

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 情報が上がってくるまでこっちから余計な手出しをしない。
 しっかりと真綿で首を絞めるようにじりじりと追い詰めて追い詰めて追い詰めて追い詰めて……。


「ボスよぉ……やばい顔してんぞ」
「え、ああ、何?」
「アタッチメント開発するんだろうに……人手が足りないから鍛冶クランの方に来たんだぞ」


 おっと、どう相手をするか考えていたらそんなにやばい顔をしていたか。


「あとさ、その宇宙猫Tシャツ気に入ってんのか……?」
「あ?」
「いや、なんでもない……」


 さっと顔を背けたトカゲと一緒になって鍛冶クラン『ヘパイストス』に、そのまま作業場の方へと言ってからメニューからメモ帳を開きつつ、一息。そういえばこいつの作業場ってまだ残ってるんだな。


「人数多い割に専用の部屋があるって凄いな」
「刻印持ちは少ないからな、ガンナーになったけど取り直したくらいだし、結構需要あんだよ」
「何て言うか、私の知らない所でみんな色々やってんだな……」
「そうだぞ?十兵衛の爺さんも酒造スキルを手に入れて愛好家と一緒に作ってるし、ニーナは木工以外も手を出してるからそっちで成果を上げてるぞ」


 そんな事やってんのか、うちの生産連中は……いや、髭親父の方は別に生産職じゃないから違うけど、酒造仲間なんて初めて聞いたぞ?情報クランのバーテンダーはプレイヤーだったから、あいつも一枚噛んでたりするんだろうか。
 猫耳の方に関しては木工特化だと思っていたが、そういう訳でもないみたいだ。まあ、全部が全部を把握していると言う訳ではないので、当たり前と言えば当たり前か。


「まあ、私が何やってるかも分からないって場合多いし、どっこいどっこいって所かしら」
「そう言う事よ……で、アタッチメント作るにしてもどういうのを作るんだ?」


 とりあえず今やる事はこっちなので作業台に持っている銃器を並べていく。
 ああー、こういうのいいよね、ずらっと左右対称で銃器が並べられて、ちょっと俯瞰になっているあれ。色々揃えていけるならそういうSSを取って流してみるかな。それもそれで面白そうだし。

 ずらっと並んだ銃器だが、私が出したのがM2ラビット、Dボア、G4、鳳仙花、センターヘッド、ランペイジMK2、FWS用砲身。
 トカゲの奴が出したのが、基本的に名前が分からないので割愛だが手回しガトリング、リボルバーとオートマチックが1丁ずつ。


「やっぱり本数が多いな、ボスは」
「まあ使いこなせるのは同時に3本くらいが限界かな、用途に応じてある程度は使い分けていくけど」
「レースイベントの時はほぼ全部だったけど、使いにくいのは?」
「オートのG4とランペ2ねー、これはアタッチメントと言うかマガジンの仕様だからそこがね」


 マガジンが無限に出てくるゲームではなく、持っているマガジンに弾を詰めるタイプで、互換性が殆ど利かないって言う不便仕様。
 銃弾は完全互換性、マガジンは互換性無しの専用。何でこんな所は別にしたのか分からんが……銃弾さえあればマガジン不要でポイ捨てしながらリロードできるって中々シュールっちゃシュール。とは言え、こんな事を言ったら色んなFPSやTPS、シューティングゲームに対してのツッコミになるんだが。


「変な所でリアルになるわよね、このゲーム」
「でもまあ、なんだかんだでマガジンがちゃがちゃ入れる動作って自分でやるの楽しいんだけどな」


 まーねーと言いつつ、作るものリストにマガジンを書いていくのだが……あの手回しガトリングって確か、ボックスマガジンだったよな。


「そのボックスマガジンはオリジナルだよね」
「作りはな、パイプ関係の銃器を作ってた時にも分かったけど、かなり簡略化はされているんだよ」
「まー、確かに……銃身、銃床、接続パーツさえあれば組み立てられるからな」
「ある程度のルールを一回纏めてみるわ」


 メモ帳を開きつつ、銃器開発している時を思い出す。それにしてもパイプ銃を作ってた初期の頃が懐かしいな。
 まず基本的に銃器開発に関しては全体的に構造が簡略化されている。で、ある程度理屈と言うか、構造と材料構成が正しければ形になる。だからこそ『コ』の字型の木枠に鉄筒乗せただけでパイプ銃になるんだろう。
 拡張性に関してはその銃器ごとになるので、ルールがまた違ってくる。

 なのでこの基本ルールを踏まえていくと、マガジンやアタッチメントも同じように構造が正しければ完成するって事だろう。
 現に、手回しガトリングやボックスマガジンが出来ているのでこのルールは適用されるはず。


「と、まあ、こんなとこか……軽い銃器シミュレーターって感じはあるけど、物作り好きな人にとっちゃ良いのかしら」
「生産系はだいぶ簡略化されているぞ、鍛冶だって色々行程があるけど、火に突っ込んで叩いたら完成するからな」
「とりあえずマガジンの種類を何個か増やしてみない?ロングにボックス、ドラムに円盤……需要があるのはロングってとこだけど」


 G4の元になっているであろう銃器は、シリーズがかなりあるのだが、そのシリーズでマガジンに互換性があったり、ロングマガジンを入れるとグリップ下部がえらく長くなるが装弾数を上げられる。
 少々不格好であっても、リロード頻度が下がると言うだけでかなり有用だし、1マガジンで倒せるって中々に重要なポイントなんだよな。


「マガジンのレシピはあんのけ」
「ガンナーギルドのLv3で手に入ったが……買ってないのか?」
「あー、見るの忘れてたなあ……なまじ金があるから気にしてなかった」


 札束で思いっきりショップの商品をビンタするってのがゲームの醍醐味だからしょうがない。
 それにしてもレシピだったりこう言った製造品の開発なんてしばらくやっていなかったせいもあって、大分忘れているな。
 何だろう、この昔って程昔じゃないけど、初心を思い出すのって大事って事か。


「マガジンの長さを変えればいいだけだから結構すぐに出来るとは思うが……」
「ちなみに素材含めてどうやって作るの?」
「簡単に言えば鉄の箱を作って下から上に押し上げるような構造として組み立てるんだが、レシピがあれば材料さえあればいつものゲーム処理ですぐ完成よ」
「改造や特性を変える時は?」
「レシピベースなら投入素材を変えたり形の指定だが……やってなかったか?」
「しばらく生産やってなかったから忘れてるのよねぇ、がっつりやってたのは銃弾の試作してた時くらいだし」


 細い鉄パイプを作って、薬莢を作り、さらに細かいカップを作り、鉛玉を増やして……ひたすら大変な苦労をしていたのに、何が偽物だよ、ふざけんな、絶対ぶっ潰してやるぞ、あのクソ共が。


「……とりあえず何個か作ってみるから、そこから手を付けようぜ?」
「ん、ああ、そうね、共有ボックスから材料引っ張ってきたんでしょ」


 勿論と言いながらインベントリから素材を取りだしてるのを眺める。
 それにしても、楽になったなあ、私一人の時は素材を集めて、あれこれ試してダメだったらまた素材を取りに行って……って繰り返してたのに。


「ボスが黙ってると何かこえーぞ」
「んー、あんたのおかげで効率的にゲーム出来るなーって」
「人使いの荒いこって……」
「あんたトカゲでしょ」


 違いねえ、と笑いながらマガジンの作成を始めていく。
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