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7章

211話 5人揃って

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「4人で囲んでるってのに、全然余裕な顔してるな」
「リロードしまーす!」
「回復で下がるぞ!」
「んぇー、アカメちゃん固定ダメージ強すぎなんですけどぉ」

 そうなんだ、ちょっと真面目に攻撃をし始めると、銃の威力もそうだが、とにかく固定ダメージが痛すぎる。
 物理火力と突破力だけで言えばうちのクランはかなり強いのは確かなんだが、魔法職、特に回復役がいないのと盾役の前衛が足りていないと言うのが此処に来て響いてくるとは思わなかったな。
 儂とマイカは純粋な戦闘職ではあるがどちらかと言えば回復される、使いながら前に出て攻撃を当てる戦闘職なので結構撃たれ脆い。
 武器の大きさで受けが出来ているニーナに関しては武器性能とステータスのおかげではあるな。一応の戦闘スキルはあるのだが、元を言えば木工職人。アカメにダメージを負わせてはいるが武器とステータスでのごり押しだ。
 ももえに関しては、うーん……バイパーとアカメの二大ガンナーのインパクトが強すぎて、見劣りしてしまうな。別に悪くない速度で装填も射撃もしているのだが、いまいちパッとしない。ぎゃーぎゃー騒いでいるのを見る限りでは、配信でそのことでも突っ込まれたんだろう。

「やっぱりうちのクランってこういう団体戦の時に、タンクと魔法系が欲しくなるわね」

 一度軽く下がって出直しをしている所を、アカメが毎度お馴染み、と言う様に銃をくるくると回してからホルスターに仕舞い込み、葉巻の煙を一気に吐き出している。
 まだあいつがどういう特殊能力を持ってこのイベントに参加しているかと言うのも散々殴り合いをしたのに分からない。例の接触していたらと言うのも結局外れたわけだしな。

「チェルとか犬野郎の奴がいればもーちょっと前は楽だけど、あいつらはあいつらで抱えてるクランがあるし……中々難しいのよね」

 さっきまで温厚と言うか油断してくれていたアカメが今後の事を言いながらバンバンと発砲してくる。
そう、さっきと大きく違う所の1つが、平気で向こうから攻撃して、決して4体1にならない状況を作り出していると言うのがでかい。
 撃ってきた攻撃は槍では防げないので黒雲の頭を下げさせ、体を反らしてなるべく銃撃を避け、避けきれない分に関しては無理せずなるべく装甲の厚い部分で受けるしかない。
 うぬ、やはりでかいな、ダメージが。今の所は拳銃しか使って来ないのでまだいいが、ショットガン何て出された時には目も当てられん。
 それにしても、味方の時はあれほど頼もしいと思っていたが、敵になると此処まで厄介な奴になるとは……って前にも言った気がするな、これ。

「ぬぅ、そろそろ回復終わっただろう!?」
「いいよー、十兵衛ちゃん下がってぇ」
「って言うか俺様を盾にするんじゃねえよ!」

 いや、現状じゃそのどでかい大剣が唯一の遮蔽物になるんだから最適解だ。

「ニーナ、防御専念しろ!あいつは落ちないし、削り切れないならカバーだ!」
「てめえ、誰に……ああ、もう、分かったよ!」

 接近する前に何度も銃弾食らってりゃ、否が応でも分かるって話か。

「じゃー、猫耳にはこんな事してやろう」

 儂の反対側ではなく、マイカを後ろにくっつけて爆走し、接近している所に火炎瓶1つ。やっぱり持っていたか、あの凶悪武器を。
 そしてすぐさま、ニーナの前方を炎上……そうか、止まれないと言うのが此処まで強烈に刺さる武器と言うのもそうそうないな。

「やっぱえぐいよなぁ、これぇ」
「あつつ……!」

 2人が炎の壁を突破して、体に付いた火を払っている所でさらにアカメの追撃……と言うよりも油だな。
 よくもまあ、こんなに色んな手を思いつくもんだ。
 案の定、タイヤが滑って減速せざるを得ないのでまた攻撃のタイミングを狂わせられる。

「本当になんでもかんでもやるんだな」
「いいでしょー」

 黒雲を加速させ、アカメの横に付ければ先程と同じように槍攻撃で牽制しつつ、HPを削りにかかる。が、これもあまり有効的とは言えん。本体だけのHPで言えば数発スキル乗せた攻撃を食らわせれば沈むのは分かっているのだが、やはりひとしきり攻撃を済ませても削り切れないと言うのがでかい。
 結局は時間稼ぎでしかないわけだが、人数がいる方が有利だから、これで持ち直して貰えればそれでいい。

 それにしてたって対応が良すぎる気がする、前に聞いた時はどんどんゲームの腕前は下がっていると言っていたが、それに反比例するように状況の把握やその時の対応が上手くなっている、と言う事か?
 何度目めかの槍攻撃をしている時にも感じたが、引くほど強いって訳ではない。裏打ちされた経験と対応力で捌いているだけ……のはずだ。

「考え事してると被弾するぞ」

 その声にはっとし、槍を引き戻して受け防御……誘われた。攻撃の手が緩んだ所で軽く距離を取られ、あの凶悪な武器が顔を出す。前回のイベントで不意撃ちでどれだけの連中を沈めたのかを知っている、あれだ。

「ちぃ……!」

 あの武器の強烈な所は、盾が無いともろにダメージを食らうって所だ。装甲の厚い部分と言っても点ではなく面で攻撃してくると言うのも大きい。
 それにしてももう少しだと言うのにこんな所で脱落なのは申し訳ない。

「先にやってるのずるいだろうがー!」

 そんな声が後ろから響くと共に、バリバリと連続した発砲音が響き、アカメと儂の間辺りに銃弾掠めていく訳だが、こっち当たったらどうするとか考えてないのかあいつは。

「あー、きちゃったか……まあ、来るとは思ってたんだけど」

 ガンシールドと機体制御で被弾を抑え、固定ダメージをなるべく受けないようにしている。やはりこのゲームの肝か。それにしても……ゲームバランス大丈夫なのか、固定ダメージって。

「悪い、めっちゃ時間食ったわ」
「これで勢揃いだねぇ」
「俺様が結局前出るのはかわんねーんかよ!」
「えーっと5人揃って……」

 やらないぞ、と全員が言ってしょぼくれるももえを見つつ、相変わらず余裕たっぷりに葉巻を咥えてリロードしているアカメの方を見やる。

「なんだ、来ないなら先に手出すぞ」

 6脚のうち前2脚を自分の手元に寄せインベントリから出した銃を引っ掛けている。盾を手で装備する必要あります?ってコンセプトがあったロボットみたいだな。
 いや、ちょっと待て、何丁銃を出すんだ、手元にあるので拳銃3丁、引っ掛けているのだけで4丁あるんだが?そのうち2つがこれまで見た事ないあたり、どこかで仕入れてきた奴か。

「2度目の相談タイム」
「認める」

 えげつない用意をしているがやっぱり優しいな、うちのボスは。
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