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7章

206話 紅い目

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「ぼんぼんと爆発が起きてるが、うちのクランっぽいな」

 槍で相手の攻撃を受け、反撃しつつ状況を冷静に考える。
 結局ガウェインと児雷也とは付かず離れずと言うか、アイテムエリアを抜けたらまた協調をする事になった。
 まあ、そりゃそうだろうって感じだが、たまにアイテムパネルが出てくるときは取り合いの仲間割れ状態にはなるのだが、それでも大分紳士的なルールでやっている。
 
「大分能力も強化できたし、そろそろ狙っていくかな」
「アカメさんに、ですか」
「その悪魔はどのあたりにいるんだ?」

 そうだな、と思った所で、ちらりと見える黒髪のドラゴニアン。多分あいつだろうとは思うのだが、接近しないと分からんが……。

 いや、あいつだ。

 今抜いたやたらとでかい拳銃がその証拠だし、倒した相手を一瞥もくれずに撥ね飛ばして先に進んでいる。
 それにしても前のイベントの時よりも銃捌きが良くなったか?と言うか、あんな銃何時手に入れたんだ、相当な威力な奴だが。

「どうやら此処までだな」
「おや、そうですか……では、ご健闘を」
「悪魔退治に参加は出来ぬが、此処で知った仲だ、何かあれば協力しよう」

 うむ、何度かやりあったが、こうも気持ちのいい連中と言うは中々いないな。
 ぴっと指を向けたり、サムズアップして激励をしてくる。

 そこそこ長い事このイベントをやってきたがようやく本番まで来た気がする。









「結構遅かったな?」

 相変わらずのギザ歯を見せながらちらりとこっちを見てくる我らがボス、アカメ。
 残り1エリアまで来て、ようやく再開となった訳だが、何故此処まで余裕な顔をしているのかが全くもって分からん。

「やはり決着には大舞台が必要だろう」
「ふーむ……そっちの二人は見学って所?」

 ちらりと指を刺された方向を見やれば、ガウェインと児雷也がこっちを見ている。なるほど、手は出さないが、面白そうだから見に来たと言った感じか。

「何だったら全員相手にしてやろーか?」

 再開し、追いついたアカメの機体を見たわけだが、6脚の蜘蛛のような形状をした車だな。どちらかと言うとサイバー犯罪を相手にしてる特殊課に配備されてるあれな感じだが。
 ただ、そこそこの付き合いをしているわけだが、虚勢やハッタリでああいう事を言うやつではない、あらゆる手段とリソースを使いこみ、どういう状況であっても自分の勝ちしか考えていない奴だ。全員相手するって言うのも、ハッタリじゃない。

「おー、あったりぃー!
「当たり引いたみたいねぇ」

 そんな事を思っていたらマイカともう1人、バイカー野郎がこっちに向かってくる。どうやら向こうはあのタッグでこっちに来たらしいな。

「バトルジャンキーとゴリマッチョも来ちゃったじゃないの」
「あたしは見学組よぉ?スーツの性能見たいから、いっぱい殴られて頂戴?」
「あたしの方は、完全に狙いに来たけどねぇ」

 マイカの奴がするっとこっちのほうに来て横に付くと、もう一人の方はそのままガウェインと児雷也の方に向かっていって合流する。
 なんだ、そいつとも知り合いだったのか。

「で、他の3人は?」
「さあなあ、何度かでかい爆発はあったが」
「ま、大体私の予想通りだったからあまり驚きはないけど……で、やる?」
「おーし、やってやらぁー」

 マイカがスケボーでするっと滑りながら接近していく。それにしてもマイカらしい乗り物だ、アカメもぐるっと反転してバック走行の状態で正面からそれを受け止め……るまえに何か投げたな。

「でもまあ……正々堂々戦うと言う訳じゃないのは分かってるだろう」

 ふむ、接近される前に投げたのは油か。レースゲームの定番と言えば定番の攻撃だが、どこからあんな油を……と、思ったがあいつは店売り品で何でもやれる奴だったな。
 勿論加速しながら接近しているから滑ってバランスを崩しているマイカだが、何かアイテムを取り出して使用しているな。

「やっぱそういうのしてくるの分かってますぅー!」

 どうやらホバー化するアイテムらしい。車で過去に戻ってなんやかんやあるあの映画みたいだ。きっと水の上には弱いんだろう。

「攻撃しに行かないので?」
「ん、ああ、あのバトルジャンキーは1人でやらせる方が強いんだ」

 気が付いたら横にいたガウェインに解説をしながら2人の状況を見つつ、数日でどれくらい強く鳴っていたかをしっかりと確認しておく。
 油1つで相手にアイテムを使わせるのは大きいだろう。多分特殊能力付与のパネルを拾っていたんだろうが、もうちょっと別の事で使いたかった所か。

「簡単な妨害くらいじゃへこたれないし、何だったらそこから戦法をぐるっと変えられるのはあいつだけだ」

 指さした方にいるマイカが、ホバーボードを駆使しするすると蛇行運手しながら接近、相手の機体に飛び乗れる位置まで追いつくと、これからどうするかを考えているみたいだ。
 さて、アカメはどうやって対応するのかな。

「流石に単純な妨害じゃ突っ込んでくるわな」
「悪いけど勝たせてもらうよぉ?」

 どうやら接近戦する気だな。ホバー化したのも会って速度が多少上がったかもしれんが案外あっさりと追いついたが、どうやって戦う気なのやら……と、思ったが、普通にでかい機体なのもあって、アカメの機体に乗り立ったまま対峙し、すぐに戦闘が始まる。
 足場の狭さと、接近戦というのもあるのでムエタイのような構えで蹴り技を繰り出し、それに合わせてガンシールドで受け、足を引き戻すのに合わせて、お馴染みのリボルバーを反撃撃ち。
 当たると威力のでかい銃器あるので、だいぶ慎重に戦っているというのはわかるが、それにしてもマイカの攻撃を耐えられるほどになっているのは驚きだった。
 
「む、ちょっと防御力あがったぁ?」
「そりゃそうでしょ、女子三日会わざれば刮目して見よって言われるじゃない」

 そこは男子だぞ。やってる事は男らしい事ばっかりなのは認めるが。
 それにしてもそんなに耐えられるようになったと言うのは前回のイベントからまた強くなったんだろうけど、それでも大分強い気がするな。
 
「やっぱり良い装備作ったわぁ、でもぼろぼろになるのは残念」
「遠距離職がガチ近距離とやり合うのは理解ができぬな」

 各々実況と言うか、状況を見ながらティータイム。
 勝つ為にやっていたと言うのに、知らない間に観戦モードになっているな。見ごたえは確かにあるわけだが。

「でも、マイカ、まだまだこのイベントの勝ち筋を分かってないわねー?」
「どゆこと?」

 お、動いたか、蹴り技をガンシールドで防いだ後に腰に提げていた大型銃を引き抜くと共に、自分の機体の足に当てたが、どういう意味……。

「マイカ!戻れ!」
「んぇ、なんでぇ?」

 咄嗟に叫んだのに反応して少し下がるが、そうじゃない。本体を狙う訳じゃないんだ、そもそも狙いが違う。銃声と金属が跳ねる音をすると共にホバーボードが弾き飛ばされる。

 確かにこのイベントは本体がいくら強くても、乗っている機体がやられれば駄目になる。下手に近距離のマイカを狙うよりも難しくても一発逆転できるボードの方を狙うべきと言う事か。

 数発撃った銃撃でボードを弾き飛ばすのをマイカが見て、慌ててそっちに飛び下がる。
 
「で、まあ、そこは無防備よね」

 飛び移っている所にずるっと引き抜いた大型銃を構えて狙っていくのでそれをカットイン。
 手元にあった簡易的な投げ槍を放ち、それをそのまま大型銃で撃ち落とされる。

「ぶえー、あぶねぇ……アカメちゃんガチすぎじゃんかぁ!」
「あと3人来るまで2人でこいつを捌かないと行けないのは中々骨が折れるぞ」

 くるくると手の中で銃を回しながら装填をしている。本当に少し見ない間に色んな事が出来るようになっているな。
 腰にリボルバーとオートマチック、脇の下にあの大型銃って所か……単発銃だから一気に攻め立てればそこまで警戒しなくてもいいとは思うが、今の様に持ち替えての攻撃が危ないか。

「ほーら、かかってこないとさっさと行っちゃうぞ」

 にぃっといつもの笑みを浮かべながら楽しそうに此方を見ている。
 こっちはこっちで色々準備してきているんだ、一方的にやられるほど儂らは弱くないぞ。
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