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7章

201話 初参戦

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「うーん、追いつけないなぁ……」

 地雷の時は爆風ブーストや他のプレイヤーを警戒しながら走っていたけど、加減速や、カーブのきつさ、高低差、色々考えて進まなきゃいけないってのはなかなか大変じゃない?
 
「むー、これってソロだときついなあ……どっかで速い奴と組んで一緒に前出るかなぁ」

 大体他のプレイヤーが慣れ始めたってのもあるので、暗黙の了解の様に協力姿勢が出来ている。これを狙って組むのはいいとして、あまり多方向に喧嘩を売ったら売ったで大変だよね。
 結局のところどうするかって話なんだよなあ、こんな事なら、ももちゃんとさっさと合流して相互加速で先に行きたかったけど、うーぬ。

「そうなると、こういうので……!」

 最高速度の違いで徐々に離されてる所、横ですり抜けていってる車の後部パンパーに手を引っ掛けてしゃがみ込む。
 おー、いいね、こりゃ楽よ。ただ、これって捕まっている相手の速度に依存するから、次々他のプレイヤーにくっついていって前に行くってのが良いかな。
 こっそりしゃがんで後ろに付いて行くコバンザメ戦法がなかなかいい感じにはまってるけど、近くに他のプレイヤーがいない時と、離れた時の一時的な速度アップくらいしか使えないのがネック。別の問題としてくっついているのがばれるとかなり本気で攻撃してくるって所があるかな?

「もー、そんなに目くじら立てなくてもいいじゃんー?」
「人のケツにくっついておいて何いってんだ!」

 半分こっちを見ながら銃を取り出して撃ってくる。
 お、初めてうちのクラン以外のガンナーを見た、本当に実在しているとは……いや、まあ、いるってのは聞いていたけど、こんな所にもいるとは?
 バンバンと撃ってくるので、ぱっと手を離し、ジクザグ走行での回避行動をしながら別のプレイヤーに便乗、すると共に流れ弾があたったせいで小競り合いが始まる。
 無益な争いを生んでしまった、なむなむ……。

「やっぱ前に出るのが厳しすぎるなあ、この辺は協調して前狙うってのが良いんだろうけど、ぬう……」

 こういう時に限ってあたしって厳しいのよねぇ、奥手と言うか受け身が多いから、誘われないとパーティー組んだりできないし、結構なんでも一人で立ち回れるってのもあるからなんだけどさあ。

「おう、そこの、私に付いてこないか?」

 コバンザメしているあたしの所に声を掛けてくるのが1人。
 ハーレータイプのバイクだけど、滅茶苦茶ごついし、ホイールから火吹いてるし……どこぞの幽霊乗りみたいなバイクだなぁ。
 とりあえず声を掛けられたので相手の横にスケボーを付けつつコースを走りながら会話する。

「もう少し前に行きたいんだけど、どうもこういうテクニカルなコースだと相性が悪くてねえ」
「あたしもあたしでぇ、あんましだけどぉ?」
「カーブの時に補助してくれれば、他の時に加速できるから」

 このまま誰とも組まずにコバンザメしててもしょうがないし、此処は素直に協調して出るのが良いか。それにしても黒のライダースーツにえらいガタイの良い体、様になりすぎている気がするんだけど、どっかで見た事あるんだよねぇ。

「それじゃ、よろしく、マイカちゃん」
「うん?なんでぇ、あたしの名前しってるのぉ」
「それは有名だからよ、前回のイベントの時もかなり暴れまわっていただろう」
「なるほどぉ?じゃあ、ハンドリング担当して、そっちが加速でいいのぉ?」
「こっちは能力と特殊で最高速度と加速がん上げしてるんだけど、代わりにハンドリングが死にまくってるから、頼むよ」

 やっぱりこのゲーム、メリットとデメリットがしっかり区別ついてるよね、一方的にメリットばっかりってのも悪くはないんだけど、浪漫だったりバランスを考えるとやっぱり妥当かなぁ……あたしも蹴り技ばっかりのおかげで、徒手ダメージがそこら辺の魔法職のパンチよりも弱いし?

「じゃあ、頼むぞ」
「ういー」
 
 そのままバイクの後ろに付くと、一気にアクセルを回したのか「ぐん」と加速するのでしっかりと掴まって後を付いて行く。
 これちょっと思ったんだけど、スケボーだから別に自分で持って二人乗りしたらいいんじゃないかなぁ。そもそも持てるかどうかわからんのがあるけど、トリックは決められるから行けると思う。足にべったりくっついているわけでもないし、その辺は大丈夫そう。
 でもこの状態でやるほど馬鹿ではないので、余裕が……ある事あるのかな?

「まず右カーブ」
「りょー」

 バイクって傾けると曲がるわけだから、進行方向に向けて傾けつつ、2人で姿勢を維持して立て直す。って事でいいかな?一応そういう動きが出来るのはゲーム補正で問題ないわけだけど、この人がそれを期待しているかどうかって所もあるけど、とにかくやってみよう。

 言われた通り右カーブに差し掛かると、車体を右に傾けるのだが、確かにあまり大きく曲がる訳でもないので、後ろでさらに右に傾けさせてやるとぐいっと曲がっていく。
 って言うか、バイクって中々重たくない?しかも大型だからなおさら重たく感じる。

「おもたぁ!」
「ほーら、頑張れ頑張れ」

 ざりざりと地面に足を当てて一応補助もしてくれてるみたいね。傾け、元に戻し、軽いストレートになると共に一気に加速、カーブの手前になれば合図を出してくれるので、それに合わせてギリギリまで減速して傾け戻す。

「あたしの労力多くないー?」
「こっちはこっちで結構大変なんだから」

 S字カーブの時とか凄い大変、ぐわんぐわん左右に振って戻す反復運動するのが厳しいよ。それに他のプレイヤーもいるわけで、攻撃をしてくるのがさらにだよ。
 流石に細かい攻撃貰ったり、カーブ中にちょっかい出されてバランスを崩すと横に滑るせいで踏ん張りの効きにくいスケボーじゃカバーしきれず、一気に減速が掛かってしまう。
 
「もうちょっとバランス考えてカスタムすべきだったんじゃないのぉ?」
「そうだなぁ、もう少し考えておけばよかったのは確か」

 減速しきり、のろのろカーブを出ると共に前輪上がるほどに加速してちょっかい掛けてきた奴に反撃開始。
 相手がオープンカーなので後ろからおもいっきりカマを掘ってから、ヤレって顔してこっち見てくるんだもん。
 まあ、やるんだけどさ?

「っとぉ……」

 がしゃっと音を立てて自身のスケボーと一緒に飛び上がると共にバイクの後部座席に置き、協調していたプレイヤーの肩を足場にしてからカマを掘った相手へと飛び蹴り。
 とは言え、しっかりシールドで防がれるのでそのまま相手の車体のうえで攻防を開始。咄嗟に盾を出してくるあたり自動操縦付きだな。
 ま、座って防御だけしている相手に負けるわけも無いから、そのままがんがんと蹴り続けて封じ込み。あたしに喧嘩売る割には手ごたえがないなあ。
 
 しばらくがしがし蹴りまくっている間に、カーブに差し掛かるのでそのタイミングで後ろに飛び離れてバイクへと着地、すぐに後ろにスケボーを乗った状態になってからカーブ方向にバイクを傾けさせて転落を防いでから復帰。
 攻撃していた相手はそのまま曲がり切れずに落ちていくが、映画の様に爆発するわけじゃないのでどこぞの髭親父のレースゲームの様に戻ってくるらしい。

「ふーい……そーいや、名前はぁ?」
「そうだった、私は薫よ」

 イベント関係無しの裁縫クランのトップだったんなら、そりゃあ、あたしの事はアカメちゃんから聞いてるにきまってんじゃん。
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