上 下
213 / 622
7章

198話 敵としてみたとき

しおりを挟む
「うっわ、何だよ、あいつ……」

 フルフェイス被ったキャットスーツの1輪バイクが地雷原を突っ切っていってるのだが、あいつアカメの奴じゃねえか?
 ここ2、3日はあいつの事見てないし、何を仕込んでるのかわかんねえけど、今のうちに仕留めておくか?
 この辺りでちょっかい掛けて、一発叩きのめしておいたら後々有利になるわけだし、此処で手を出すか。
 そもそもこの地雷原で手を出すのは結構難しい気もするんだが、それは向こうも一緒だな。むしろこういった「攻撃をしにくい難しい所」で敢えて攻撃しに行くと言うのが勝ちに繋がる。
 
 俺様の機体もバイクではあるが、前2輪後1輪のトライクで自動操縦付きの特殊能力は手放し運転用。どうしても獲物がでかいから、手放し出来るようになるのは非常に大きい。
 そういう訳で背中にマウントしておいた鉄塊って名前の大剣を引き抜いて、地面に擦らせながら一気に横から接近。その接近した勢いで機体をぶつけると共に自動運転をオンにし、一気に大剣を振り抜いて正面から思いっきりぶち当てる。

「ぅおらぁ!」

 全年齢のゲームだからひしゃげたり血が出たりするわけではないが、そのままプレイヤーだけが後ろに吹っ飛んでバイクだけが自走する。
 落下して暫くはダウン判定にならないのだが、機体とプレイヤーが一定距離離れると強制的にダウン、プレイヤー側の方に機体が転送されるってシステムっぽいな。
 今一緒に走ってた、バイクがモンスター倒したときと同じように粒子状になって消えていったからな。

「ちげえな、あいつじゃねえわ、あんな雑魚がアカメの野郎のわけじゃねえ」

 振り抜いた大剣の切っ先をちりちりと地面に擦らせながら後方で転がっていったプレイヤーを見ながら自動操縦を切ってすぐに地雷を避ける。理不尽に密集している訳でもないし、避けるのは余裕なんだけどな。


「つーか、ライダースーツ多すぎんだろ!」

 パッと見てもそういう衣装と言うか防具を付けているのが多い。
 レース系イベントだし、アカメの奴が着てたのを知ってたのか、それとも裁縫ギルドのオカマが売ったのかはしらねえけど、とにかく多い。
 やっぱり浪漫兼用で性能もあるから着てるのが多いのか?アカメの奴が妙に気に入ってたってのと、あれで街中歩いてたって言うんだからイベントと噛み合ったって所だろ。

「猿真似プレイヤー共がよぉ!」

 何かそれはそれでイラっとした。
 イライラするので直ぐに見つけた相手の所に機体をぶつけ、その接近した際の加速をかけ合わせて攻撃。こういうのは「大きさ×質量×スピード=破壊力」って図式が成り立つな。本当はステゴロだけどよ。

 「ゴン」と大きめの音をさせてまた1人吹っ飛ばす、このイベントの肝はここだ、相手を確実に仕留めなくても良いから、落下させてダウン、遅延させてしまえばしばらく動けない上に、機体が戻ってくるまでの間、通常のダウンよりも長く足止めさせられる。
 問題としては、狙っている相手じゃないと言うのが大きいのだが、マジであいつどこに行った?

「クソ、みつからねえな……先行ったか?」

 しばらく近くにいる奴をとにかく落下させつつ周りをぎろぎろと睨みつけるが、俺様の攻撃方法を知ってか、此方側に向かってくる奴はあまりいない。クソビビり共が、生意気に立ち回りやがって。

「他のクランの奴らも見ないし、先に行ったか、そうそうに狙われて沈んだか……」

 って思ったが、あのクラン連中って戦闘力はずば抜けて高かったはずだ。あの髭親父だってイベントの時の立ち回りをみれば明らかに強い、立ち回りがやけに堂に入ってる。その割に酒作ったり野菜作ったりしてるのはよくわからねえが。
 バトルジャンキーとトカゲ野郎は場慣れしてんな、ゲームってのを理解して立ち回るから厄介な奴、戦闘勘が強すぎんだよ。
 ポンコツピンクはよくわかんね、イベントでは見てないし、一緒になって戦ったわけでもないから何とも言えねえが、あの様子みたらそこまで強くはないだろ。

 そして何よりアカメよ、あいつが一番よくわかんねえ。
 色んなゲームしているのは分かってるし、考え方がゲーマーってのはよーく、理解しているのだが、やる事成す事に突拍子が無い。
 この地雷原だって、加速装置くらいの感じで突破してる可能性の方が高いか?映画や漫画も好きみたいだからその知識を使っているのも分かるんだが、だとしてもよ。
 
 あー、もううだうだ考えてもしょうがねえ、アカメの奴っぽいの見つけたらとにかく手当たり次第にぶん殴ってやる!

「てめえだろぉ!」

 また接近してプレイヤーへのダイレクトアタックで叩き落とす。黒髪、ドラゴニアン、スーツってのどれか要素が入ってたらすぐに殴りかかる。
 キャラ作り直しのアイテムを課金して手に入れたって言っていたからもしかしたら容姿を変えてる可能性だって高い。あいつのことだから目立った分をカバーするために一時的に変えるってのもあり得る話だろ?

「に、しても外ればっかじゃねえかよ……」
「何が外れだって?」

 その声は聞き覚えがある。俺様の神経を逆撫でってわけじゃねえけど、飄々としていつも軽くあしらいやがる奴の声だ。

「てめえの事を探してたんだよぉ!」

 すぐさま鉄塊を構えて声の方向に向き直り、さっきと同じ戦法で機体をぶつけてそのままの勢いで殴る……のだが。

「これから一気に前に行くから、遊ぶのは今度な」

 それを聞いてハッとしつつ、すぐさま機体の制御をして接近しようとする前に一つ爆発。クソ、前にいた奴が地雷を踏んだか?
 手でその爆風を咄嗟に防いでいる間に、もう一度隣で爆発が起きる。
 次はアカメの奴が爆発したのかと思い目を凝らしながらそっちに視線を向ければ、急加速して先に進んでいる……野郎、お得意の爆弾を使って疑似ブーストみてえなことしたのか、機体二つ分くらい前に出てやがる。
 こっちはまだ最高速度にはなってないので追いつけるっちゃ追いつける速度を保っているわけだが。

「てめ、何個爆弾もってきたんだ!」
「そりゃあ、沢山だろ?」

 2発目のパイプ爆弾を後ろに、しかも地雷の所で爆発させてまた急加速……あいつ耐爆でも特殊能力に付けたのか?いや、そんな事は良い、このままじゃただ単に加速し続けるから突き放されるだけだ。

「小賢しい事を……!」

 ボンボン爆発させて前にぐんぐんと出ていくアカメの野郎を見つつ、適当にバイクに乗っていた奴を叩き落とす。
 あいつが誘爆させるってならこっちはこっちで他プレイヤーの機体を地雷に突っ込ませてそれを利用して……ってそんなにうまく行かないか?

「ええい、こちとら全財産が掛かってる大勝負なんだよ!」

 勝ちに行くってのはこういう事だろ、なりふり構わず、不正じゃなきゃセーフってよ。 
 操縦者のいないふらふらする機体がダメって事なら、こうして……!

「んんおぉ!」

 鉄塊を機体の引っかかりそうなところに突き刺し、そのまま持ちあげて地雷に投げ入れる。STR強のステータスにした恩恵がこんな所で出てくるとは思わなかったが……とにかく、自機体の後ろで爆発が起きるので爆風で加速。
 そこまで距離を離されない様に、あのにやけ顔の野郎を見失う事が無いように追走していく。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

処理中です...