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7章

197話 勝ち筋

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「あたしとしてはぁ、全然良いんだけどねぇ」

 そんなに色んな所に行ったわけじゃないんだけど、やっぱり戦闘が多くなる。そんなに戦いたいなら闘技場やればよかったのにね。
 そういえばバイパーちゃんが闘技場のランク1位って見たけど、勝敗含めて考えたら結構簡単な指標だよ。
 飛ぶ斬撃や、魔法、純粋な遠距離攻撃、一周回って投石なんてものも繰り出してこっちに攻撃してくるわけだけど、流石にそんなのは軽くいなさないと笑われちゃうわ。

「ちょいちょいちょいっとぉ♪」

 飛んできた攻撃に合わせて蹴りを繰り出して相殺。当てられれば相手の攻撃を無効化できるってパッシブスキルなわけだけど、これ結構難易度高いスキルだと思うわ。
 所謂パリィになるんだろうけど、自分で出した蹴りを相手の攻撃に合わせるってのが難しい所。本来のパリィであったら盾で受けて反撃すると言うだけで成功らしいね。

「どっちかって言うとあっちは防御、こっちは攻撃で反射ってとこねぇ」

 また更に飛んできた魔法でもある火の弾を蹴り返しつつ、するすると先に進んで行く。
 流石に足を使えない乗り物って弱点丸出しって言うか何にも出来ないから選んだのはスケートボードなんだけど、案外良いんじゃない、これ。流石にレベルが高いってのもあるから弄れるところは少なかったけど、片足立ちできるうえに、自分で加速付けなくていいのも良いポイント。
 作品が進むごとに小学生じゃないだろって言われる漫画の主人公が使ってる奴みたい。

「うーん、手も使えるようにした方が今後いいかもしれないなぁ」

 前方からわざわざ減速してすれ違いに合わせて振ってくる大剣の攻撃を後方宙返りで避けて、そのままスケートボードに逆立ちで着地。

「お、これいいんじゃない?」

 足がフリーになるって時点で大分攻撃が楽。逆立ちのままで足をぱたぱた揺らして具合を確かめていると煽りと見られたのか、攻撃がさらに熾烈に。
 煽り耐性の低い相手は大変だよねぇ。

「よっ、ほっ、っとぉ……」

 足場の小さい所だけど、隣にまで来て攻撃をぶんぶんと振ってくる事は無いので攻撃を一旦受けて跳ねのけてから体勢を立て直し、一瞬飛び上がったりして回避していくのは案外ありだった。
 それでも流石に飛び上がって着地するとバランスが結構崩れてもたつくときがある。そこを狙ってくるのもいるので、これ結構難しくない?
 うーん、攻撃が足技だからフリーにしやすいスケボーにしたけど、特殊能力マシマシの方が良かったかなぁ、加速初期値のハンドリング最高値で能力何も付けなかったし。

「貰ったぁ!」
「おわっ!」

 ぶんっと振ってくる攻撃に合わせていつものくせで攻撃相手に合わせて後ろに跳躍し、隣で走っていた車のボンネットに着地。
 あれ、落下したらダウン扱いって聞いたんだけど、他のプレイヤーの奴に乗るのは良いんだ?

「ちょっと、人の車から降りな!」
「あー、ごめんごめん」

 そのまましゃがみ込んで自分のスケボーを探し回るのだが……お、あったあった、大分先の所に自走してるわ。それにしても自走するスケボーってなんだかシュール。
 
「お邪魔しましたぁー」

 乗っていた車のボンネットから「ボゴン」と凹ませるような音をさせてから一気に飛び上がり、前方のゴーレムに乗りつける。
 勿論だけど、何やってくれてんだよ、と攻撃を貰うので軽くいなしてからさらに飛び乗り続ける。
 足技ばっかりの恩恵で、跳躍力が地味に上がるスキルがあったりするのだが此処で発揮されるとは思わなかったなあ。
 ぴょんぴょん跳ねて、自分のスケボーまで飛び移り続けてやっとこさ戻ってこれる。しばらくストレートコースで良かった。

「今度課金してうさみみにでもキャラ変えちゃおっかな」

 んふーっと笑いながら攻撃を掻い潜り、スケボー特有の機動力+ハンドリング性能も上げまくりなので結構無茶な動きも出来るのが良い所よね。
 そういえばアカメちゃんってどういう構成するんだろう、パンツスーツやキャットスーツ着てるから、ロードレースバイクだったり葉巻咥えながらオープンカー辺りは様になってるけど……勝負事にはガチだからビジュアル重視じゃないかな。

 そんな事を考えていると少し隣のプレイヤーがいきなり爆発して吹っ飛ぶ。
 爆風と熱風が一緒になって向かってくるのに咽ながら目を凝らして何があったかを確認。まさかとは思うけど、アカメちゃんが「うるせえ」とか言いながら後ろに爆弾でも投げたんだろうか?って思ったんだけど、そもそも設置されてる地雷っぽい。
 アクションレースゲームでは結構定番の地雷原が結構な序盤で投入してくるとは思わなかったけど。

 そしてかなりの勢いでぼんぼんと辺り一面で爆発が起こり始める。
 って言うか、結構な勢いがあるからスケボーのバランスが崩れるし、なんだったら地面がぼっこぼこになるから走りにくくもなるしで大変なんだけど!

「ひぃー!」

 目の前に走ってるのが地雷を踏んだらそのまま後ろに爆風が流れてくるので、一応防御姿勢でその中を突っ込んで目を細めながら突破、視界が開けると地雷踏んでダウンした機体が眼前に。

「うっわっ!」

 スケボーを横に向けブレーキして、他プレイヤーの機体とスケボーを足で抑え込んで止まる。やられた奴も当たり判定あるって事は、これから進行ルートもしっかり確認しないと巻き添えで吹っ飛ぶとかあり得るのかな。

「ブレーキは横向きね……よーしよし、ちょっと理解してきた」

 ブレーキで使った機体の横をするっと抜けてからまたゴールの方に向けて走り始める。
 うーん、この地雷原かなり曲者だ、爆弾は色々見てたと言うか、アカメちゃんが使ってたのを見てたけどそれの比較にならないレベルの威力だし、どこにあるか分からないってでかいなあ……。

「こういう時は魔法持ちが強いなあ……うーぬ、テクニックで避けるの厳しいんじゃ」

 向こうにいるゴーレムはぼんぼん爆発してるけど殆どダメージを受けてないっぽいのは、多分デフォ能力かな?代わりに爆発受けるたびに減速するみたいだからどんどん後ろに下がっていってる。
 また違う方を見れば、魔法や遠距離攻撃で進行ルートのクリアリングをしながら進んでいる。色々考えてやってるなあ……。

「ぬー、難しくない?」

 目を凝らして姿勢を低くした状態で走行しつつ進行方向を見つめると、地雷の埋まっているあろう部分が少し盛り上がっているのでそれを避けてから、地面に落ちていた石を拾ってすぱっと投げる。うーん、反応しないあたり、違ったかな?
 なんて思っていたらそこを通ったプレイヤーが吹っ飛んでいく。
 うー、重さかプレイヤーが近寄ると爆発するタイプ?どっちにしろ注意して進むしかないかなあ。

「んー……こういう時にアカメちゃんなら面白い事するんだろうけど、あたしの頭じゃむつかしいなぁ」

 怪しく盛り上がっている所を避けて蛇行しながら進んで行く。
 あー、今すぐ遠距離攻撃が欲しい。

「これ避けるだけで大変なんだけどぉ!」

 そもそもスケボーって乗った事無いのにこんなにぐいんぐいん動けるってだけでも立派だと思うんだけどなあ。でもよくよく考えたらこの辺はゲーム補正だよね。
 って言うかハンドリング性能上げておいて良かった、他のプレイヤーからの余波は避けられているけど、じりじりHPは減っている。しかも結構勢いがあるからバランス崩しやすいしで大変すぎるんだけど……お?減速、爆風……なるほど、なるほど。

「つまり、こういう事かぁ」

 一度地雷の埋まっているような所を避けて、スケボーのぎりぎり後ろの所に地雷を引っ掛ける。
 甲高い音と共に、一気に爆発、背中とスケボーの下部から思いっきり爆風を貰う。

「こういう事ねえ!」

 前方斜め上の方に大きく加速して、飛び上がる。
 最高速度は一定だけど、やっぱり何かがあれば一時的にその最高速度を超えられるわけね。
 良く出来てるレースゲームじゃない。
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