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6章

191話 貧乏クラン

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「我がクランは貧乏である」

 相変わらず、私の家でたむろしているクラン員に大きく宣言する。
 
 そう、とにかく私達のクランは貧乏である。
 何て言ったって共有財産はボックスに突っ込んである素材アイテムばっかりで金になるものが無い。
 金になるような物の1つ、酒に関してはうちの酒造担当が「納得していない」と何度も作り直しや熟成を続けているために殆どがアルコールになるしかないのだが、うちのクランはそこの需要もあるので火炎瓶転用が出来なくなっている問題が発生。
 トカゲはトカゲで、趣味で作った様々な銃器類はある事はあるのだが、無駄に職人気質のせいで出来が悪いとすぐに溶かして新しい銃にしてしまう。
 で、バトルジャンキーはバトルジャンキーであっちこっち飛び回っているのだが、戦えれば良いと言うジャンキーっぷりなので金に繋がる事は無し。なんだったらもっときつい所に連れていけと言ってくる始末よ。
 猫耳に関しては個人依頼は勿論の事だが、クランで材料だけ渡して何か作れと言っているのでこれ以上負荷を掛けるわけにはいかない。頼んでも良いのと言えば良いのだが、好きにさせるという約束もあるのであまりそこを裏切るような事は好きではない。
 新規加入のピンクは宣伝要員だが、宣伝出来るものが現状ない上に、まず私とトカゲレベルまでガンナーとして使える所まで引き上げなきゃならん。この辺はバトルジャンキーの奴に付いて行かせるってのもありだな。

 つまり、金になる物がない。

「そういう訳で金になるものかアイディアをだしたまへ」
「急にどうしたんだ」
「金の力で銃弾を作ってレベリングをしたい、後はクランハウスを本格稼働させるための初期投資」
「家具と看板はもうちょいだって言ってんだろ」
「レア品はあげちゃうか安く投げるのやめるぅ?」
「私は配信しかできないから!」
「銃工房はマイハウス、クランハウスの両方欲しいな」
 
 大体そうだろうなって思ったけど、これほど金策に対して使えない連中が揃っているとは……思ってたわ。まだ数日の仲ではあるけど、連絡がしやすいっていうだけでクランを組んでいるような連中で揃えていた。

「とりあえずだ……全員が使えるショップ兼無料の転移地点としてクランハウスを活用する方針ってのは理解しれ」
「それはいいが、取り分はどうするんだ、その辺が問題なんだぞ」
「うちの最年長は良いとこを突いてくる、それも考えたからまあ聞きなさい」

 葉巻を咥えて、火を……つけてくれるサイオンは自宅までは来ないので自分でいつもの様に火を付けてから何度か吹かして、紫煙を吐き出す。

「取り分は9.5:0.5、せっかく作ったのに稼働率が低いショップってのはちょっとな。少しずつ拡充していけば、良い施設に変えたり出来るんだから、いいだろう」
「と、言ってもボスの自宅が一番施設充実してるんだからしょうがないよな」
「クランハウス経由でマイハウスに来なさいよ、10万も払って作った転移装置のおかげでクランハウス経由なら転移代も掛かんないんだから」
「他にメリットはねえのかよ、タダってのは良いけどな」
「雇ったNPCに頼んでおけば個人依頼の受付だったりショップ……まあ、露店ね、預けたアイテムを勝手に陳列してくれたりするみたいよ」
「あー、それ楽ぅ、あたしはアイテム勝手に処理してほしいタイプだしぃ」
「私は何もやる事ない気がする」
「クランハウスの1Fまでなら配信してもいいわよ、何だったら大きく宣伝しろ」

 まあ、やっぱりなんだかんだでアイディアややれる事を出してくれるのは良い奴らだよ。むしろそれくらいしてないと、私が自らスカウトしに行った甲斐が無い。
 
「ふむ……まあ、アカメが言っているんだ、協力はしようじゃないか」

 相変わらずの髭を撫でながら納得したように立ち上がり、そのまま地下室に。しばらくしてから上に戻ってくると酒瓶1つを机に置いて「注目しろ」と言う様に顔を向ける。

「本当はもうちょっと後にしようと思ってたんだがな、出してもいいクオリティになったからこれを売ろうと思う」

 透明な瓶に琥珀色の液体が波打っているのを見て全員が感嘆の声を漏らす。どうやら納得した一品が出来たんだろう、いつもよりも得意げな顔をしているのは見逃さなかったぞ。

「ウィスキー?」
「一応な、焼酎も作ったぞ」
「と、なってくるとやっぱり猫耳、あんたの作業次第で、稼働の良しあしが変わってくるわ」
「しょーがねえなぁ……先にカウンターと陳列棚つくりゃ良いんだろ?」

 相変わらずぶっきらぼうに言うと、共有ボックスから大量に木材をインベントリに放りこむと、木工作業場で作業を始める、何だかんだで言う事聞いてくれるのな。

「私は変わらず金策するとして、マイカとももは二人でレベリングしてきな」
「北東のエリア制圧でいいかなぁ」
「そうね、ももが30になるまで帰ってこなくていいわ、配信も構わない」
「……え、あ、7レベルくらい先なんだけど」
「じゃあ余裕ね」

 私だってそれくらいであそこに1人で行ってたんだし、バトルジャンキーを付けてるんだから問題はないだろう。30にして二次進ませれば私の選択肢が増えるから、良い事尽くめ。

「んじゃ、俺は銃弾の量産でもするか、折角手に入れたツールを使わないのも勿体ないし」

 これで全員の行動方針は大体決まったな。
 自分の中である程度納得した所で手をぱんぱんと叩いて場を締める。

「あくまでうちのクランの方針だから、やりたい事があるならそっち優先していいわ、纏めておいたものは後でうちのサイオンに渡しておくからそっちでも確認でいい?」

 三者三様に返事をしてからそれぞれ動き始める。
 一番可哀そうなのはピンク髪だな、ずるずる引っ張られながら連行されている。
 まあどこかにはぐれても私もクランの連中も連絡できるようにしてるし、フレンドも組んでいるから大丈夫だろう。きつかったら直接言ってくるだろうしな。

「私は私でまた金策だな……農業ギルドとガンナーギルドを反復横跳びするとしよう」

 正直な所、あれだけ大見得切って貧乏だ、金がねえと言い、ついでに言えばクランハウスの拡充をしたいとも言ったが、ガンナーギルドに並んでいる銃を2個ずつ購入したいって思ってるのは秘密だったりする。
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