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6章

184話 このゲームは優しさ多め

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『To The World Roadへようこそ』


 今日もって言うか、色々済ませてから再ログイン。
 ゲーム内の自宅でログアウトして、リアルの自宅済ませて、ゲーム内の自宅に戻ってくるって言う。どんだけ家が好きなんだよ、私は。
 例の生意気木工職人の連絡待ちってのはあるな、銃弾余裕があればトカゲのレベリング手伝いって方法もあるけど、今は自分の分で精一杯だからパスだな。
 貯金崩せば百数発はすぐに稼げるけど、あと半分でクランハウスが買えるし、ここは我慢所。結局使って達成できないってのは悪手だし、しっかり目標は達成する。

「ジャガイモもまだ取れないし、暫くは待ちかあ……とりあえずガンナーギルドのレベル上げるってのも有りだな」

 勿論いつもの様にやる事リストだったりメモ帳は読み込ませ済みなのでそれを見つつ、自宅からエルスタンに戻り、そのままの流れでガンナーギルドに。


 毎回毎回、鉄扉で確認されて、通されるのって煩わしいけど、必要な事なんだろうな。あとちょっと試してみたんだが、銃弾取引権じゃなくても通された。持ってる銃ちらつかせても入れたので、多分ガンナーであることってのが条件かもしれん。じゃあ二次職でガンナー選ぶって時はどうするんだろうな。
 まあ、その辺のは私が気にするところじゃないし、私以外のどっかの誰かが苦労してようが知ったこっちゃねえって話よ。もしもしっかり教えるって話になったら身内だけって条件がつくわ。

「さーて、何のクエスト受けるかな」

 受付横にあるクエストボードを見るわけだが、基本討伐ばっかり。
 戦闘職で採取したり、納品ってのはそんなにないし、あってもクエスト専用アイテムを持ってこいってくらいだな。
 とりあえず上から下まで受けられる物は全部受けておく、その中でちょっと特殊な物が何個か、例えば特定モンスターを何分間追跡しろ、頭を撃ち抜いて討伐しろ、接近戦で銃を使って倒せ……。

「ああ、なるほど……ガンナースキルを覚えるためのクエストって事か……案外親切設計になってるんだろうけど、これ完全にガンナーをこれから覚えていきますって人向けだ」

 やっぱり二次職向けとして実装されているのがベースになっているのが原因なんだろうけど、やっぱり最初から選べるのって例の銃好きスタッフがねじ込んだってのが良く分かる。そのおかげで今こんな状況になっている訳だけど。

「まー、この辺は覚えているし、さくっと倒すだけだな」

 とりあえず言われた通りに並んでいるギルドクエストを片付けていく。



「基本スキルだろうけど余裕で覚えてるし、条件の相手が弱いから速攻で片付くわな」

 移動時間の方が掛かってたくらいには余裕だった。私これでもガンナー歴10日の30Lvだから。
 あー、でもヘッドショット狙いの奴は結構難しいと思う。自分で構えて撃つわけだが目標だった相手が犬だったので頭を振るわ、低身長のせいで狙いが付けにくいわで散々だった。
 胴体に撃ち込んでも一発で倒せるから別の奴を見つけて、頭を振らないタイミングで撃ち抜くって言う事でどうにかクリア。
 銃格闘やトラッカーの奴はそこまで難易度も高くないのでさくさくっと。

「お疲れ、ギルドレベルが上がったわよ」
「ま、この辺は軽く突破しないとなぁ」

 今までそんなに気にしていなかったけど、戦闘系のギルドだとクエストである程度のスキル取得を促してくれるってのもあるんだろう。流石に何から何までノーヒント手探りでやってくださいって丸投げにも程があるし、最低限この辺は覚えないと駄目ですよーって指標にもなるから、良いって事か。
 
「で、ギルドレベルが上がった特典ってのは無いの?」
「……ショップのラインナップ更新、クエスト増加、施設の使用許可」
「施設って?」
「射撃場」

 素っ気なく指をさす方向には扉が一つ。
 そのままその扉を抜け、先に行くと奥行きが結構長い射撃場に辿り着く。

「……って言うかこんなのあった所でどうしたらいいんだ」
「武器の試射用だよ、いきなりクソ銃買うのは嫌だろ」
「ま、それは納得なんだけど、弾は?」
「無制限、持ち出し不可」

 何それ最高なんだけど、ガンガン撃てるわけじゃん。試射だけでも十分楽しめるってのに無制限でぶっ放せるって。

「1回5,000Z」
「……なんて?」
「1回5,000Zで使いたい銃を選んで」

 リアルで撃った事あるけど、そういう感じなんだろう。残念ながらハワイで親父にではなくグアムでインストラクターに、だが。

「ラインナップは?」
「今ショップにある奴」

 不愛想に接客してくれる軍人NPCの説明を聞きながら、さくっと5,000Zを払って銃を選んでいく。
 上から下まで現状のラインナップはざっくりと言えば今持っている銃とあまり変わらないのだが、一つだけ目に留まったのが、フルオートのマシンガン。

「じゃ、これで」
「毎度あり」

 支払いを済ませると同時に射撃場の1レーンが光が出て強調表示される。ここで撃てって事か。
 いいなあ、ここでずっと時間潰せるくらいには行けるわ。


名称:ランペイジMk2 武器種:短機関銃
必要ステータス:STR5 DEX15
攻撃力:+15 命中:-25 命中時固定ダメ:20
効果:フルオート 装弾数25発 金属薬莢 マガジン 自動式
付属品:無し
詳細:装弾数、発射レートの高い短機関銃、反動が強い


 さて、今回紹介するのはこのランペイジMk2。マガジンを横から刺し撃つたびに反対側に出ていくタイプの短機関銃。要求ステータスと武器性能から言えば、結構暴れやすいSMGって所だな。
 アタッチメントも付けられるから拡張性も高いと思う、問題は命中の部分とDEXの要求ステータスが引っかかる。

「ふーん、結構しっかりした銃じゃん、時代的には第一次大戦頃って感じ」

 まじまじと確認して、照準を覗いてから戻し、また構えて照準を合わせてを繰り返してからマガジンを指し込み、普通の立ちの状態で奥にある的に向かってフルオート射撃。
 「ガガガ」っと重機を動かしているような音をさせながらマガジン一杯に入っている25発分の銃弾をサクッと消費したうえで、刺し込んだマガジンが反対側から飛び出る。
 うっわ、これめんどくせえ……多分専用マガジンみたいな感じになるんだろうけど、結構装填の手間が掛かると思う。試射している間はフル装填されたマガジンが延々と出てくるので気にしなくていいのだが、実践だとマガジン用意して何本か腰に差してないと駄目だな。
 これが上部か下部にマガジンを刺せるタイプなので有ればドラムやロングの大容量マガジンを使えるんだが、横ってのがなあ……ちょっと工夫したらボックスマガジンとか使えるかもしれん。
 あと何が問題ってこの銃、確かに連射力と爽快感は今までの銃の比ではないのだが、滅茶苦茶命中精度が悪い。たった2~30m程の距離の所にある的に25発も撃ってまともに命中したのが10発ちょい。
 荒廃したロシアの地下鉄で製造されていた銃じゃないんだから、もうちょっとマシな命中が欲しかった。

「んー……アタッチメント使って反動を抑えられるってなら良い銃かもしれんなあ……フルオートは欲しい」

 トカゲにはこれ内緒にしてやろう。あいつ、手回しガトリングなんて作ってるんだから。

『いいっすか?』
『あー、何?』
『何かすげえ銃声聞こえるんすけど、いいんすか』
『いいから、用件は』

 撃ち切ったマガジンを抜いてもう一度刺し込んで連射を続ける。こういう時の会話は気にならないのになあ。

『木工の人と連絡が繋がったっすよ、待ち合わせ場所はどうするっすか?』
『10分後にエルスタンの転移地点』
『言っておくっす』

 会話が切れると共に辺りに散らばりまくった薬莢を眺めつつ一息入れる。

「この銃駄目だわ」
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