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6章

170話 こじれてる性格

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『銃工房が欲しい』
『作れるかどうかわからんものを……いや、まあ予定には入れとくけど』
『あと鍛冶クランのマスターが庭でくつろいでるんだけど、いいかな』
『それも別に良いけど、居座るようだったら追い出しなさい』

 って言うか自宅持ってる奴って少ないのか?
 結構簡単に手に入るレベルの金額だとは思ったのだが、そうではないって事か……そもそも考えてみたら金銭感覚ずれ始めてるわ。
 まず200万用意します、これで問題なし。って完全に頭おかしいわ。
 何だったら銃工房の要望が来たけど、私も欲しい施設だったわ、出来るかどうかはまた別の話にはなるのだが、さらに金が必要になるわけで、トータル250万くらい?
 ってか農地数も増加させたいから、L畑分の金もかかるわけじゃん。

「頭痛が痛いレベルで目標金額が増えてきてるわ」

 クランハウスの購入をやめれば、まだ余裕があると思うのだが、それはそれで違うんだよな。
 やっぱり表通りのでかでかと目立つ一等地の大きい建物に、少人数のクランでしか使用しないっていう贅沢の限りを尽くすって醍醐味がいいからなあ。
 「どこのクランかは知らないけど、人の出入りが少ないのに良い所を占有している」って噂になったら、それはそれで面白そうだし。
 結局のところ「面白い」か「面白くない」かと言う点が大きい所になるんだよな。
 
「ジャガイモ金策で10万ずつ増やしても、あと28回は流石に時間効率が悪すぎるし、とにかく農業ギルドで耕作面積を増やして、一度の栽培量を増やすのがいいか……それとももうちょっと効率のいいものを作る、って所か」
 
 とにかく色々走り書きだったりなんだりで滅茶苦茶見にくくなっているメモ帳を開いて今後の予定を考える。
 最終的な目標としてはやっぱり200万以上を稼ぐことなのは変わりないので、どう稼ぐかって話がメインか。
 
 あー、大変だわ、ファーマーの知り合いをあの髭親父から紹介してもらうってのもありと言えばありだが……問題はこの間の対人イベントの時に思いっきり爆破してフルボッコにしたって所だな。
 イベントはイベントって事で割り切ってくれるのならいいんだけど、人によっちゃ結構恨みが積もるって人もいるから怖いんだよなあ。

 私の場合、よっぽどセオリーの分かってない奴や、そのレートにいるのにどうしようも無いくらいに弱い味方の方にぶち切れるタイプだから、やられたからって恨むタイプじゃない。だからやられた側の気持ちってのがよく分からないんだよなあ。
 それにそもそものゲームに悪態を付く方が多いから、プレイヤーに対してってそんなにか。

「文句ばっかり言うのはイキってるからとか良く言われたなあ」

 そんな事を思い出しつつ農業ギルドにやってくる。
 
 チュートリアルは終わらせているから特に無し、ギルドクエストを適当に見繕う形になる。
 問題はどこまで稼いだら農地が広げられる許可が下りるのかがポイント。あの髭親父の奴は農業ギルドのレベルが関係してるって言っていたが、本当なのかどうかは試してみれば分かるか。

 とりあえず片っ端から農業ギルドのクエストを受けまくる。
 作物を納品しろ、作物を育てて持ってこい、品質の高い作物を作って来い……などなど。
 鍛冶と木工ギルドのレベルを上げた時とあまり変わらない、って言うかこれ以外に特殊なクエストって何があるんだって話になるな。

「ギルドショップの中身はジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ……カレーでも作れって言うのか、これ」

 もうちょっと季節感出してくるかなと思ったけど、そんな事は無かった。クエストに関して、今の所指定した物を持ってくると言うのは無かったので、ひたすら作って納品するだけだな。

 とりあえずざっくりと100個ずつ購入。またあっという間に貧乏よ。
 
「まー、必要経費が掛かるってのはしょうがないか」

 効率よく金を稼ぐための先行投資で金を投入するって事。MMOに限らずだけど、ゲームの資金って基本的に余裕ができたり、何かしら購入するために貯める時以外常に0に近い……近いか?
 とにかく一回戻ってジャガイモ収穫……よくよく考えりゃジャガイモ買う必要なかった。


 余計な寄り道はする必要も無いのでとにかく金をためる事に注視して進めないとね。
 
「結局すぐ戻ってるじゃないか」
「酒造以外のやる事ないんかい、お前は」

 畑の様子を見るが、ちょっと前に植えたばっかりだから大した生育状態じゃないな。

「そういえば品質上げるのって肥料なりあげればいいんだっけ」
「手頃なのはカルシウム撒いたりだな」
「もうちょっと手頃な位置に貝殻入手出来る所があればいいんだけど、南2-2辺りまで行かないと手に入らないのがなあ……」
「もっと大量に持ってきて作るか、その場で大量生産したらどうだ」
「石灰って結構使い所限られるのよねえ」 

 硝石丘に使ったくらいで他の部分で使用することはないし、需要もあんまり高くない。
 ファーマー連中は大量に作って肥料として使っていそうだけど。

「あんたファーマーに知り合いいるんだったら紹介してくんない?」
「いる事はいるが、暫くは無理だな。この間の対人イベントで爆破した事を軽く根に持ってる」
「わからん殺しされて逆切れするタイプかよ……くあー、めんどくせー!」

 やっぱり根に持つタイプだったか、一部だけだと思うけど、クランマスター、サブマス辺りだと全体の方針としてしばらく接触禁止って言われるのもでかい。
 
「ってかそんなに恨まれるってどんな事したんだよ」

 自宅の2Fからトカゲ頭がひょこっと出てきて声を掛けてくる。何か面白いぞその構図。

「お前も引きこもり体質かい……でも言うほど恨まれる事無いと思うんだよなあ、向こうから仕掛けてきたから爆殺しようとしただけだし」

 不意打ちしてきたことに対して確かに過剰攻撃の部分はあるけど、それでも対人だから恨みっこ無しだと思うんだよなあ。1試合中に粘着して叩くって事はするけど、終わったらどんな奴と相手してたかも殆ど忘れるし。

「つーか2Fは私の私室なんだから、あんましはいるんじゃーないわよ!」
「いーじゃんいーじゃん、見るのはただじゃん!」

 トカゲの横からもう1人、ヘパイストスのマスターが顔を出してくる。お前らいい加減にしろよ。

「クランハウス作るまで余計な事するんじゃー無いわよ、あんた達」
「施設諸々揃ってるのに部屋が殺風景すぎるのは儂も思ってた」
「お前も部屋みてんのかい」
「此処に来た奴全員、あの殺風景な部屋見て笑ってるぞ」

 含み笑いをしながら地下室に降りていく髭親父を眺めながらため息一つ。
 
「金策と同時に部屋の中を人並以上にしてやるからな」

 血涙でも出せるんじゃないかって位に私の対抗心に火を燃やしてくるってなんだよ。
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