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5章

157話 ステージ2

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 擦り付けってテクニックを思い出して良かったわ。
 咄嗟の判断で銃声を使って、他のプレイヤーをこっちに向かわせ、足止めさせてダメージを与えていたであろうと勘違いさせ、漁夫をさせただけなんだが。
 対多数の戦い方ももうちょっと考えないと駄目だな、市街地ならやりようはまだあるはずだし、今後定期的に対人するならちゃんと戦い方を決めてしっかり動けるようにしないと。

 で、追いかけてきたのを押し付けてまた廃墟の中に転がり込んだ上で、入口から見えない位置に陣取り、角待ち。

『そっちはどう?』
『倒しきれんかった、削りはしたが』
『こっちもだめだねぇ、これ以上追撃したら負けるわぁ』
『一旦合流するにも場所が悪いか』

 マップを開きつつ、ちらちらと入口を確認しながらそれぞれの位置も見ておく。
 いい感じに、と言う訳ではないがばらけ方が悪く、私の位置から北にマイカ、西に十兵衛がいる。
 マイカの方は、最初から北にいたのでそのまま取り残され、十兵衛の奴は私のカバーに入る為に西にきたが、私が南に回って東に流れたせいで入れ違いになったか。

『潜伏して散開するか……剣士系に飛ぶ斬撃なんてスキルあったのか』
『あー、確かにあったな……儂は槍系に進んでるから覚えてないが』
『緑色の服着てる勇者がHP最大の時に飛ばせるしょぼいのじゃなくて、建物抉るくらいの威力だったんだけど?』
『気弾みたいなのは出せるけど、威力高すぎるきがするなぁ』
『勇者繋がりでストラッシュ的な奴じゃないだろうね』

 範囲と威力がLv30にしては強すぎる気がするんだが、特化型か。いるんだよなあ、特化や極型が好きな奴。一時的にスキルとステータスを弄れるからこそできる芸当だが、一発決めたら修正出来ない現状では無理だな。
 別に特化は悪い事じゃないけど、要求ステータスがあるからあんまりなんだよなあ……ぎりぎりまで削ってステータス振るって方法が特化になるか。
 
『自分以外のスキルまで網羅すべきなんだろうけど……まー、流石に数が多すぎるわ。対人メインのコンテンツじゃないなら必要最低限の所しか覚えたくないし』

 スキルのクールタイムから、キャラ特性から、攻撃方法から何から覚えてやるのは対人系のだけでいい、個人的にいちいちコンボとか覚えるのもめんどくさい。

『それでもまあ、削れたのは削れたから、あの犬野郎の戦力に任せるしかないな』
『そんなに強いのぉ?』
『私の知ってる限りでは、魔法矢連射とパーフェクトタンクねぇ……前線組が組んでるってのを考えればスキルとかステータスも最適化してるから、下手にやられはしないと思うんだけど』

 とか言っていたら足音が聞こえるのでもう一つ奥に進んで壁を背にしたままちらちらと足音の方向を確認しつつ、鳳仙花を構える。
 不意打ち2射直撃で確実に倒せるので、3人以上来なければまだ勝ち目はある。
 やばそうなのは倒した奴を盾にしてそのまま距離を詰められるってのが一番面倒なパターンか。

 本当だったら打って出るのもいいんだろうけど、どのゲームでも対多数ってボコられるしかないからしょうがないよな。
 ……ボコられない奴もあるって?それは疑似タイマンやカウンターだったりガードなりで対策されてるんだよ。

 息を潜めて待つっていつもしてるのに、緊張感凄まじいな。
 足音が近くまで来たのでさらに小さく息を潜めて小さく深く息をしながら足音の指向を気にしながら引き金に指を掛けておく。
 
「こい、こい、こい……」

 角待ちショットガンって言う、伝統的な戦い方。
 そういえば久々にこれやるな……ずるいとか腕前が上がらないからやめた方がいいとかなんか色んなサイトで言われてるけど、結局負ける奴が一番悪いんだよな、あれ。

 そういう訳で入り込んできた奴に不意打ちで鳳仙花を2射。いつもの二重銃声を響かせると共にキル……ではなく。

「……ちゃんと相手は見た方がいいぞ」
「何でいんのよ」
「折角助けに来たと言うのにその言い方はなかろう」

 HP100ポーションを飲みつつ一息ついてるのを見ながら撃った分を普通に装填する。これ今気が付いたけどFFはないんだな、良い事知ったわ。

「周りに相手いなかったわけ?」
「いや、いたけど倒したぞ」
「消耗してたのかポーション尽きてたのか……まー、どっちにしろ助かったしFFないって事が分かっただけいいわ……さっさと移動しよう」
「ちょっかい掛けた所が騒いでるからな、マイカの奴はあのまま西側に行って、かち合う所を縦断すると言ってたぞ」

 戦場の中を縦断って中々クレイジー……でもないか、乱戦だったら抜けるだけだし、案外大丈夫だろうよ。

「やっぱり中央で、全員で乱戦に持ち込んで漁夫狙うか」

 廃墟から外を見て、後ろに控えている十兵衛に指示を出して次のポジションを指定し、走ってもらう。
 次のポジションに付いたら周辺のクリアリングを頼んで、次に私がそっちに走り付け、西にジクザグ走行の様に近づく。

「手間のかかる移動方法を」
「しょうがないでしょ、ポーションと銃弾も減ってきたんだから」

 後ろに付いて周辺の確認をしつつ、残ってる0.5ℓ火炎瓶を渡しておく。

「西にいる時に状況を見たが、あの犬紳士とやらの所と東でちょっかい掛けた所がぶつかり始めていたな」

 私の飛ばした指示をちらりと見てからまた次の場所に走り、クリアリングをしてからこっちに来いと言われるのでそちらに向かいを繰り返していく。

「あとポーションどれくらいある?」
「25が10本、100が3本、MPが5本、火炎瓶は貰ったのであと7本だ」
「こっちは4、2、2ね、瓶は1ℓ6にパイプ5ねえ……マイカの奴はどうなってるか聞いた?」
「大体お前さんと同じ本数じゃな、まあ、放っておいてもどうにかなるじゃろ」
「何だかんだでその部分に関しては信用してるからなあ」

 手綱は引けないが立ち回りと戦闘力に関しては信頼しかない、バトルジャンキーってのは伊達じゃないわ。

『生きてる?』
『だいじょーぶ、ただ乱戦になってるから、そっちにいくのはきついかなぁー』
『市街地中央近くで最終決戦かもしらんから、南側の建物1つ制圧しておいてって言ったらやってくれる?』
『んー、ちょっと難しいかなぁ……もう大きい小さいって関係無しにやり合い始めてるし』
『ポーションの数は?』
『全部1スタックずつかなぁ、何だかんだで倒したのからちまちま回収出来てるから、だいじょーぶ』
『とりあえず南の方に乱戦突破して向かっておいて』
『うい、りょうかー……』
「伏せろ!」

 会話を遮られ、頭がっちり押さえつけられると共に伏せさせられると後方にあった廃墟の壁が吹っ飛ぶ。

「敵は?数は?」
「分からん、土魔法の攻撃ってのは分かったが、北から攻撃を貰った」

 残っている壁や瓦礫を盾にしたまま、言われた北側をトラッカーを使ったうえで索敵する。
 確かに敵も見えないし、数も分からんな。

「土魔法ってどういうものがあるか分かる?」
「色々だな、岩、土、石……とにかくそういったものを操作するのが基本だが」

 ちらちらと周辺を確認しては隠れてを繰り返しながら、ゆっくりと合流地点の方へ移動する。

「って言うか、何で攻撃飛んでくるか分かったんだ」
「土塊が北の方から飛んできたからな、会話に集中し過ぎだぞ」
「へいへい、悪うござんした……さっきの飛ぶ斬撃ってのも風魔法の応用だったりするんかな」

 土魔法の応用で遮蔽物作ったりとかも出来たりして。

「……土壌開発とかで使ったとかないよね」
「あるぞ、盛り土したりもな」
「相性クッソ悪い相手じゃんか」

 葉巻を咥えて火を付け、これもいつものようにパイプ爆弾の方を取り出して火を付ける。
 で、対面の怪しい遮蔽物の所に投げ入れてしばらく待ち、爆破。

「やっぱいた!」
「あいつらファーマークランの連中だな」

 土の雨の中から出てくる顔を見てそんな事を言っている。
 そうか、あのでかいクランってファーマークランだったわけか……いや、規模でかすぎじゃねえか?

「ファーマークランってあんな人数いるわけ?」
「いや、もっと少人数だ」

 兎に角爆破したことによって出てきた数は5人、土魔法を使って自分たちの事を隠しながら進行してきたって事か。
 ……生産職が戦闘に特化しただけでこんなに強いってバランスおかしいわやっぱり、便利すぎるだろあの土魔法。

「とにかく、ダメージ与えたから突っ込んで殲滅させるぞ」
「了解」

 また土煙の起こっている最中で十兵衛を前に後ろに付いて突っ込む。
 もうちょっとこんな風になるってなら2スタック分のパイプ爆弾を持ってきた方が良かった気がする。

 で、狼狽えている所、土煙の中から「ビュ」っと風を斬る音と共に、十兵衛の槍攻撃で1人落ちる。
 土煙でもトラッカーを使っていたら普通に強調表示されるのはありがたい、なんだったらスモーク戦法とかそのうち出来るかもしれんなあ。
 勿論今の攻撃で落としたってのも理解できるのはトラッカーのおかげ。攻撃した本人はある程度予想撃ちしたんだろうけど、私としてはそら当たるよねって状態。

 爆破ダメージからの鳳仙花1射ずつで2人、土魔法で作った障害物がそのままこっちの有利になるとは。
 まあそもそも爆破物なんて持ってきてる方がおかしいんだけどな。

「そこから左にもう1人、右のは私がこのままやるわ」
「分かった」

 槍を振り払い、自分の射程内にいないのを確認してから指示した方向に進み、私は私でトラッカーで把握している奴を追撃する。
 ある程度ダメージを与えているだろうし、ここはDボアで。それにしても逃げてる奴の背中撃って倒すのすげえ快感。
 そんな事を思いつつ2、3発撃ちこむが外れてさっさと逃げられる。
 
「悪い、逃した」
「こっちも駄目だな」

 ため息交じりに言いながら合流、土煙が晴れると共にさっさとデスボックスを漁って銃弾とポーションを回収しておく。
 銃弾数発とMPポーションメインに回収できたので、まあトラッカー分にはなったな。 

「とりあえず西に移動しよう、しばらく手出してこないだろうし」
「流石に生産メインで戦闘力は低いな」
「此処まで残ってるだけあって、結構戦略的に動いてたのかしらね」
「まあ、移動しよう、留まっていてもしょうがない」

 いきなり攻勢に出てきたパターンを引いてなかったんだろう、不意打ち土魔法で接近しながら不意打ち噛ましてたって戦法だったんだろう。
 そして何よりも私にパイプ爆弾1つ使わせたほどの強敵ではあったな。
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