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5章

151話 メインタンク2号

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『そっちはどうよ』
『今の所よゆー、ただMPポーションがないねぇ』
『マイカも儂もアイテムは一杯だな、各ポーションは2、3スタックずつくらいは余裕があるな』
『ってかガンナーやばくねぇー?固定ダメージちょー痛いんだけどぉー』
『私よりやばい銃持ってる奴はいないから大丈夫でしょ』
『一発で30近くダメージ貰ったが、固定ダメと通常ダメの加算か、あれは』
『多分リボルバーかオートマチックね、ライフルとショットガンならもっとダメージはきついし』
『きついってどれくらいなのよー、ポーション結構使う羽目になったしぃ』
『直撃したら即死って位には強いわよ』

 実証として実験台になったおしゃべり忍者、お前の犠牲は忘れないぞ……まあこのイベント中の間だけな。それも実際は面白いくらいに不意打ちが決まって確殺しただけなんだけどな。

『ガンナー人口が増えてるからちょびちょびそういう相手が出るはずよ』
『一発貰うだけで25ポ使うのやだなぁ』
『撃った瞬間を見極めて避けるとか、銃口の先に注意して射線ずらすのを意識するとか……まー、無理よね、射線切るって障害物あるのが基本だし』
『FPS、TPSの基本か』
『矢ならまだ弾くスキルみたいな、指で挟んで返すような技はありそうだけど』

 一子相伝の暗殺拳でも覚えてないと返すことは出来ないと思うが、銃よりは弾速遅いし、対応はしやすいってのは事実だと思うが。

『拳銃持ちでも6~13発くらいは撃てるから、必死に避けてリロードなりしてる間に攻撃かな……めんどそうなら火炎瓶投げてとりあえずダメージ与えて離脱してもいいわよ』
『13発避けるのきつくない?』
『リロード系のスキルを振っているだろうから、最大25発は覚悟しないと駄目かしらねぇ……やっぱり現代兵器って強くて偉大だわ』
『ところでさっきから攻撃音が響くんだが』

 ああ、それは、私が走っている後ろに、別のクランが追撃してきてるからだな。
 さっきの爆発騒ぎから少しした後に、爆発音を調べに来た小隊の一つに見つかって必死こいて逃げ始めている。

 走りながらちらりと後ろを見て人数を確認、ざっと6人くらいか。
 前に走りながら後ろに撃ちつつ逃げるのもありだが、この場合倒したとしても追撃してくる可能性もあるし、なんなら結構飛び道具かましてきてるから、そんな余裕があんまりない。

『今どの辺にいるのよ』
『マップ見れるか?』
『いや、無理だな』

 流石にマップ出しながら確認しつつ走って避けては厳しい。
 しょうがないから自前でどうにかするしかないな。

「全く、血の気の多い奴らだよ」

 インベントリから葉巻を一本取り出して生活火魔法ですぐに火を付けて口に咥えたままに。
 別に煙草咥えながら走った所で息切れしたりすることはないので、実害は特に無し。こういう時のゲーム処理って本当に助かるわ。

 後ろの方では追えとか倒せとか、とにかく私の事を倒す気満々な声が聞こえる。
 まったく一人に対して流石に敵意剥き出しすぎだろ、しょうがないなあ。

 せっかく持ってきた油と針金を使ってトラップ組んだり、あれやこれやしようと思ってたのにそんな事は全然ないね。結局手持ちのアイテムと今までの経験でどうこうやってるのは相変わらずか。

 AGIもあまり差が無いので大きく距離を離したり詰めたり出来ない、とにかく一度相手の足を止めさせると言うのが重要になる訳よ。
 で、インベントリからいつものように火炎瓶を取り出し、この間と同じように葉巻で火を付ける。
 そこから火を付けた物を自分の真後ろに叩きつける様にし、すぐに辺りを発火させる。
 
「やべ、火付いた!」

 走りつつもじわじわと自分にもダメージ入っているので、完全に近すぎた所で炸裂させたわ。って言うか毎秒ダメージが6ってえげつないって言うか、一回火が付いたら確定で30ダメ入るんだけど。
 この炎上、6ダメージ5秒継続で合計30ダメだけど、軽減する手立てないのかね。
 
「とりあえず撒いたっぽいけど、ダメージ回復させんと」

 基本的に常にHPは最大にしておきたいので、HP25ポーションを飲み干し、走りつつ回復して追っ手を撒いていく。
 初見でこの火炎瓶の炎上のダメージってかなり慌てる要素だけど、分かってると警戒されるのが問題だな……焼夷手榴弾みたいなものもそのうち作れるのかね、構造があまり調べても出てこないから難しいとは思うけど。

「ふーい……これはきっついわ……」

 しばらく走ってトラッカーを使ったうえで周囲を見て、敵影がいないのを確認してから立ち止まり一息。
 こういう単独行動しているときついのが自前でどうにかしなきゃいけないって所だな。
 バックトラックみたいな追跡を外すような小技をやってみたくあったが、個人戦向きだわ、ああいうの。
 とりあえず葉巻で一服したうえでまた連絡を入れる。現状分散しているので情報は密にしたうえで、状況を確認を進めるか。

『25ポ1つと1ℓ瓶使って追っ手を撒いたけど、炎上ダメージって確認した?』
『5秒継続で4ダメージだな、そのまま炎上している所にいたら、5秒継続がもう一度、といった感じだが』
『あー、ボマー効果か……結構重要って言うか、凶悪なスキルなんじゃないか』
『アカメちゃん、ちょーっと面白い相手いるんだけど、こっちこない?』
『今どの辺なのよ』
『そこからそのまま北上してくれ、追手がいる方向なら無理して来なくてもいいぞ』
『馬鹿ねぇ、面白い事に首突っ込まない道理はないでしょ』

 残った葉巻を吸い切って紫煙を吐き出してからぷっと吐き捨てて、言われたマップの地点に潜伏しながら北上していく。





 ……暫く連絡を取り合いながら、暫くぶりに合流。結構戦闘してたのか服装や装備が汚れている。
 多分これも運営的な部分で、汚れの度合いによって撃破数がぱっと分かるようにしたのかね。私はどっちかって言うと炎上したせいで煤汚れが出来ているが。

「ういー、面白いのって?」
「ほら、あれあれ」

 茂みに隠れながら指をさされた方向をちらりと見ると、見知った顔のチンチクリンが一人いる。勿論周りには他のクラン員がいるし、警戒と言うか、見張りをしつつ大移動と言った感じか。
 大体人数としては50人弱って所だな、あいつの所って70~100人くらい入るって聞いたけど、撃破されたのか、それとも不参加なのかは分からないが。

「うちのメインタンク2号じゃない」
「チェルの奴か……流石に儂とマイカじゃあいつの装甲は抜けんぞ」
「魔法攻撃ないからねぇ、VR型にしてたら結構やばいかなぁ」
「あいつの所って結構でかい所だから、もう一つ大きい所にぶつけて削り合いしてほしいんだけどな……犬野郎の所が一番強敵だから、早めに見つけてマークしながら誘導とか考えてたのに」

 大手の所を見つけて、ぶつけ合うという私のプランがこういう事なんだけどな。このままチンチクリンのクランにちょっかい掛けたり、マークして他の大手を誘導してぶつける方がいいかね。
 どっちにしろ正面からかち合ったら勝ち目はない……訳でもないんだな、これが。
 多分6割くらいで勝てる。

「火炎瓶何本残ってる?」
「儂が残り6本、マイカの奴はフルで残ってるはずだな。あとポーションの在庫が25が20、100が7、30が11だな」
「あたしはアイテム消費はないかなぁ、結構倒して回収したから、トントン位」
「もうちょっと使っても悪くないわね……んー……とりあえず私が回収した分を渡すわ」

 端数分のHP25ポーションとMP30ポーションを渡し、一旦のアイテム整理。

「今の所距離もあるし、周辺に敵もいないから逃げる事は可能だけど、アイテムフル活用で6割くらいで勝てると思うのよね」
「どういう考えなんだ」
「ボマーのダメージ加算が1.5倍だからパイプと火炎瓶で炎上と爆破ダメージで消耗させて、マイカが切りこんで、すぐに引いて追いかけた来たところでもう一発爆破と炎上でダメージ追撃かしらね」
「深追い禁止ってことぉ?」
「あいつの采配が分からないから何ともだけど、多分私とマイカの顔を見たら『今ここで潰しておかないとヤバい』って思ってるはずなのよ」

 おしゃべり忍者で立証済みだからな。汚い忍者には不意打ちでご退場してもらったわけだが。
 とにかく私とマイカの顔が割れているという部分がかなりキーにもなっていると言う事だ。

「多分だけど、無傷なのを差し向けてくるはずだから、少し引き離したところでさらに火炎瓶とパイプ爆弾使って十兵衛が手負いの奴らに止めを刺す……と、うまい事行ったらいい感じね」
「机上の空論ではないだろうな」
「やっぱり私とマイカの戦闘力を知っているのがポイントね……ただ、此処でつぶすには惜しい人数だけど」

 多少削っておいて放置させるって言うのも手だけど、此処で大きめに削って行くと言うのも有りなんだよな。
 この戦闘で戦い方が確立できるのであれば、犬野郎のクランにも通用する戦法になりうる。
 ここである程度、動けるような戦法が出来ていれば対複数クランのゲリラ戦術も出来るから、良いと思うんだが、しくじるとなあ……。

「……やっぱやめる?」
「残念だが、手遅れじゃ」
「は?」

 十兵衛の奴が指さした先にはマイカが生き生きとしながら火炎瓶を蹴りこんで、辺りを炎上させている。あー、もったいない。もうちょっと広範囲に当たるようにしてくれないともったいないってのに。

「後は流れで!」

 急いでパイプ爆弾2本を渡してから、マイカが投げ込んでいる所に並んで、素早く生活火魔法でパイプ爆弾2本分に火を付け投げる。

 これだからバトルジャンキーは!
 
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