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5章

142話 銃使いWithPK

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『To The World Roadへようこそ』



 毎回毎回聞いてるログインのシステム音声をよそに、自宅へログインするときの光の輪を出しながら戻ってくる。
 庭に不格好なテーブルと椅子が出来上がっているという点以外は特に変わった様子はない。
 ……鍛冶場と木工場の隣に置いてある訳だが、どっちにしろ不釣り合い過ぎじゃねえかな。こんな所でお茶なり酒なり飲むのは単純に暑苦しいし、木屑とか飛びそうで落ち着いてゆっくりできなさそうだ。

「まあ、作って設置するって気概は良い物よ」

 早速その不格好な椅子に座ってメニューを開き、ログインする前に色々と調べて突っ込んで置いたデータを確認していく。
 対人イベント開始前に確実に作っておきたいのがサプレッサーだな、本格的なアタッチメント製作は今回からなので、参考画像や内部構造の仕組み等をメモ帳に雑にコピペして貼り付けた物を読み込ませておいただけではある。
 とりあえずサプレッサーだが、構造的に筒の中に凸型のバッフルと呼ばれるものを並べ、発砲時の音と言うかガス圧をそのバッフルで減らしていって音を減らす……ものらしい。
 らしいってのは単純に調べて分かったからであって、いくらFPSなりTPSなり色々なゲームをやっていたとしても内部構造までは知らないし、知っているのはよっぽどガンマニアとかじゃなきゃわからんわ。
 問題としては構造をしってるからって想像通りに作れるのかって所だな。
 
「こればっかりはいつものトライアンドエラーでやるとして……やっぱり細かい作業が出来るような細工系も上げておいたほうがいいっぽいしなあ……これ以上銃器系のスキルは上げられないし」

 ぶつぶつと言いながら自分のスキルを確認する。上げるとしたらカスタマイズを伸ばすくらいしかないんだが、最近あんまし使ってやれてないな。
 
「どーしようかなー」

 ぎしぎしと音を立てさせながら椅子にもたれてあーだこーだ考える。どうせ対人の時は対人の時で振り直しするって仕様だし、カスタマイズを上げきって少しでもアイテムと装備の充実化するのがベターか。
 そんな事でメニュー開いてぶつくさと言いつつ煮え切らない感じで椅子を揺らし続ける。この椅子、まだまだ作りが甘いのか、所々が痛い。具体的にはHP1分のダメージ。なんだよ、角でもあたってんのかこれ。

「ま、考えててもしゃーないし、上げちまうか」

 ぽちぽちっとカスタマイズのレベルを最大の5まで上げる。スキルレベルが最大5ばっかりだが、何か理由があるんかな……いや、1Lvで3SPしか貰えないし、ちょうどいい所か。


スキル名:カスタマイズ レベル:5(MAX)
詳細:【パッシブ】
  :銃器のカスタマイズが可能かどうか判別
  :カスタマイズによるアタッチメント拡張が可能
  :アタッチメント製作時に+補正
  :【アクティブ】
  :銃器のカスタマイズ、分解が可能(一部使用アイテムは消失(一定確率で無効))


 新しく沸いたのはアタッチメント周りだな。これで銃口だったり、他の部位を弄繰り回して各種アタッチメントの装着が出来るようになるって事よ。地味に製作できるって事が確定だしさ。

 やっぱり新しいスキルとか使いそうなスキルは一気に最大レベルにしてもいいかもしれない。ただ最大にした時に+α効果があるのが基本ってのを考えると、二度撃ちはあのまま上げたら三度撃ちとか発射数が増えていくと使い勝手が非常に悪くなる。
 戦闘系のスキルはちょっと変わると一気に産廃化するから、産廃化しない一歩手前まで上げて使うとか、使い勝手が変わる場合もあるし……やっぱり一つずつじっくり上げていくのがいいかも。
 って言うかβ時代とスキル内容の食い違いがあったり、追加があったりであんまり役に立っていないのも拍車を掛けてる気がするわ。

「まー、結局レシピはないからなあ……製作が出来るって事は自作出来るって事だから、どっちかって言うとガンナーギルド本気で探した方が良いかもしれんのか」

 ぎしぎしと椅子をきしませ続けながら無駄にゆったりとした時間を過ごす。硝石も生成中だし、畑は収穫し終わったから後で捌くとして、イベントのちゃんとした日程が出るまでは微妙に動きにくい。
 硝石交換の話も停滞中、あのロックラックのギミックはしばらく解明されないだろうから、競争率は高いままだろう。
 
「とりあえず地下室の酒汲んでアルコール作っておくか」

 ガタンと音を鳴らして椅子から降りて、その足で自室の地下に行き、酒造樽を確認する。相変わらずなみなみと微妙な芋焼酎が入っている。
 味に関してはまだ追求しているわけではないので殆どが私のアルコール用みたいなもので手つかずだ。
 前に飲んで凄い微妙だった樽からガラス瓶で掬う事45回、1樽全て空になる。
 標準の樽と言う訳ではないが、普通に作った奴が25ℓ分になるみたいだ。どっちかって言うと50回汲んだって行為のほうで空になった感じもあるが、要検証。
 
 で、このまま錬金を使ってアルコールを生成。5個で1個のレートなので45個使ってアルコール9ℓ分の生成が完了。この辺は酒って括りさえあればいけるから簡単だな。
 此処まで来るとやっと軌道に乗ってきたと言うのが実感できるってのも大きい。

「後は銃弾を量産して、余ったのでアルコール量の多い火炎瓶も数本作ってと」

 またぶつくさ言いながら地下から上がり、不格好な椅子に座り直してから鼻歌交じりに作業を続け、さくさくと銃弾40発を作り机の上に並べていく。この行為の意味はないけど、目に見えると悦れるってだけ。

「くあー、火薬足りんなあ……硝石の消費量がやっぱえげつねえ」

 それでもさくっと150g分は作れたりする。他のプレイヤーは必死こいて硝石集めてるってのになあ。
 そういえば硫黄の在庫もそろそろないので回収しておかないとまずい。あと作って忘れるとまずいので銃弾50発分の雷酸水銀も生成。
 なんか黙々と歴史シミュレーションで内政ばっかりやってる感じが強いな。

「後は火炎瓶っと」

 そういえば、まだ火炎瓶の試し撃ちもしてないな。森とか草原で使ったら辺り一面燃えて山火事とか火の海になるとかそういうのは……無いといいな。
 そんなわけで0.5ℓ火炎瓶4本と試しに作った1.0ℓ火炎瓶を2個作成。

 
名称:火炎瓶(1.0ℓ)
詳細:周囲数mを炎上させる 量の分範囲拡大 モロトフカクテルとも言う


 説明文は特に変化はないが、量で範囲拡大ってのはどんなものなのかね。前にも強装弾とかg別の紙薬莢弾を作った時のように実験用の物だから比較してどっちを量産するのかって決めないとな。量でカバーするのか、一発の質でカバーするのか。

「さーてと……ちょっと火炎瓶売り込んでみるか、後は」

 ついでに髭親父の奴にプレイヤーメールで1樽使った事を連絡しておく。こういうのは信頼が大事……の前にどれくらい使ったかをちゃんと報告しておくって混乱しないための処置。
 特に返信する必要も無いし、文面も『1樽全部アルコールにした』ってだけですげえざっくりとしたもので報告というのもおこがましいレベルだけど。

「それにしたってアイテム色々作って何だかんだで結構時間掛かってるんだよなぁ……あと、とにかく硝石が足りん」

 そういえば素材購入出来るんだからどっかに硝石売ってるって可能性もあるんじゃ?あったらあったで今の露店相場吹き飛ばせれるな。木炭は安くなったの見たし。
 そう考えていけばまだまだやれる事は多いわ。

「とりあえず北エリア燃やしてこよう」

 コートをめくるとずらっと火炎瓶が仕込まれているわけだが、こういうコートを翻して中に銃とか手榴弾とかそういうのを展開してから攻撃するって浪漫よね。

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