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4章

131話 撃って良いのは撃たれる覚悟のある奴

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 数時間ぶりにログアウト。
 何だかんだでもう3時よ、そりゃ疲れるわけだし、7時間ぶっ続けでやっていたとは
 廃人にも程があるが、何はともあれ今真っ先にやる事は。

 『私を敵に回した事を死ぬほど後悔させてやる』

 の、一点張りになる。

 
 他のFPSとか対戦系のゲームで所謂「ファンメール」を貰った所で負け犬の遠吠えなので、ああいうのはいくらでも楽しく見ていられる。なんなら送り付けてきた奴に無駄話とかして責め立てて困惑させて遊ぶくらいまではする。
 ただそれは実力ありきで、純粋に此方が上というのがあるからで、今回のパターンはまた違う。

 そう、私の妨害とコールでの暴言を吐いた奴、文句はまあ見逃してやるか、見せしめとしてどうなったか知っている奴がいると言うのはかなり有効打になりうる。
 あることない事を報告して……と、言うのはフェアではないな。虚偽報告と言うのはこっちが逆に垢BANなり停止措置を食らう可能性があるの其れは無しだ。

 とにかくどうやって私を敵に回した奴に制裁を加えるか、だが。
 一番シンプルなのはログを確認して貰ったうえで、運営に対処してもらうのが一つ。シンプルな妨害と言うか、迷惑行為だから故意であることを確認されればすぐだろう。
 しかし、それはそれで面白くはない。

 私に一切の不利益が掛からず、あいつらに一方的に被害を加え、かつ垢BANまでもっていくのが理想的だな。
 喧嘩売らなきゃ平和にゲームしてやれたと言うのに。

 とりあえずあの硝石交換のビジネスを成功させよう。あれだけで黒色火薬の現状価格を破壊できる。硝石に関してもそうだな、交換できるって事実さえ広まれば、買うよりも一発狙ってロックラック狩りの方に集中されるかもしれん。
 ロックラック大量狩りをして硝石を持ってきてくれるのであれば、いくら10g交換したところで20gの上りが出るのは、もう算数の問題だな。
 
 犯罪計画と言う訳ではないが、私を敵に回したプレイヤーを地獄の底に叩き落とすためには綿密に計画を立て、確実に仕留めないとな。
 ベッドに置いてあるHMDを手に取り、USBを刺しこんでデータを抜き出し、ずらりと並んだSS(スクリーンショット)をタブレットに入れていく。
 此処の運営は結構報告から行動するまでに時間を空けずにやってくる。
 例の錬金ギルド爆破事件の時に感じた通りだが、事件があってからすぐに動き出す、だからこそさっと補填が入ったうえに、火薬関係のダメージが町中で起きなくなったわけだ。

 タブレットをこつこつと叩きながら、T2Wの公式ページに飛び、問い合わせのページに今回の顛末を記載し、さらに暴言を吐いた連中のログSS、私の露店を封鎖していた状況のSSを添付。
 全て書き切ったうえで問い合わせのページのタブをそのまま保存して完了。
 止めの一撃と言うのは最後に繰り出すものだからな。

 打ち込みも終わり一息、時間を見ればもう4時に近い。
 さっさと風呂を済ませて今日は寝よう、明日になれば酒も完成するだろうし、そろそろ仕込んでおいた硝石丘の成果も確認できるだろうからな。
 とにかく動くのは明日……って言うか今日で、起きた後なわけだが。それにしても久々に切れちまったよ、全部済ませて寝酒でしっかり休もう。

 
 起きて落ち着いたらすでに11時、あれから7時間程度睡眠を取ってから朝飯といつもの家事仕事、洗濯とゴミ投げを済ませ、あっという間に13時。
 ゲームをする為に鍛冶じゃなくて家事の腕前が上がってくるとは、仕事してる時よりも効率的に動いている気がする。
 タブレットに入れておいたUSBはまたHMDの方へと差し直し、SSをすぐに移せるようにしておいた上でログインをし直す。



『To The World Roadへようこそ』


 いつものように白い光の輪を出しながら自宅に戻って、蹴りまくった樽を見つめてため息一つ。
 それにしてもこんな風に八つ当たりする程、私はイラついていたんだろうな。こんなに感情的になってゲームをすると言うのも久々ではあったが、此処までなるか。

 いや、まあそれくらいのめり込んでいたと言うのもあるし、他プレイヤーに直接妨害されるのって久々だったからか。
 結局のところ、実害があるか、ないかって違いでしかないんだろうけど、それでもだ。

 ふいーっと大きくため息を吐き出して、改めてどうするかを考える。
 
 一番効果的で相手が「やらかした」と思わせるにはどうするかだが。
 私が正当な理由でしっかりと有名になると言う事が良いだろう。
 殆どのプレイヤーが知っている、有名プレイヤーが正当な取引をしているのに、それを妨害した有象無象の連中、しかも悪質な、という形でな。何なら不当に値段を釣り上げて、利益を貪っていたと言うのもオプションで付けておいてやろう。

 通報して止めを刺すときまでは矢を受けるのは仕方がない。
 向こうから先に宣戦布告してきた訳だし、一度殴られてから殴り返しているんだから、正当防衛も成り立つ。これだから想像力の欠如している馬鹿を相手にするのはイライラする。余計な危機を感じて勝手に慌てて他人に迷惑をかけるんだからな。
  
 とりあえず私の手持ちのカードはかなり多い上に強い。
 撒き餌と証拠を増やす為と、見られるためにも、まずは露店を開きなおしたうえで詰めていこう。



 自宅のエリアからエルスタンに戻り、この間と同じように露店を開設したうえで。
『硝石1個で黒色火薬10gを交換 要連絡』
 と、露店メッセージに記入しておき、その場を後にする。
 このまま張り込んで封鎖を掛けている所を見るのもいいが、あいにく私は忙しいからしょうがない。この間使った銃弾の数を元に戻す為にも水銀やら硫黄を回収しなきゃならないからな。

 ついでにごった返している暗闇洞窟ってのも見ておきたい。

「……ふいー……目立たず、悠々自適に過ごしたかったわけだけど、そうならないって事かしらね」

 露店街を後に……する前に投げ売りされているMREを40個ほど購入しておく、何だかんだで塩焼肉も数が少なくなったし、料理でもあげようとか言ってたのが懐かしい。
 MREの補充が完了すれば、露店街を後にし、いつものゲーム内ショップで入用の物を購入したうえで、使わない物を売却。
 大量に作った雑木製の角材、板材、丸材を売却。減っていたHPポーション20本とMPポーションを10本を購入。
 
「ちょっとだけ私のテンションも戻ってきたわ」

 ついでにフレーバーアイテムでも購入しようかと思ったら、煙管と葉巻があった。
 やっぱこういう無駄アイテムって大事だよな、葉巻10本計10,000Zなり。

「とりあえず平日昼間には殆ど知り合いはログインしていないな」

 メニューを開き確認している間にも、プレイヤーメールで交換関係の苦情と言うか、質問が来たりもする。まあちゃんと交換したいって思っている奴にはまあまあ丁寧なメールを返しておくが、私の機嫌を悪くする奴に関してはSS取って地獄行き。

「うんうん、いいよ、沢山送ってくるがいい、地獄を見るのは貴様らだ」

 いつものように楽しそうにしつつのにぃーっとした笑い、ではなく。
 完全に悪事を働くキャラの様に、冷めた目で口角を上げる。
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