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4章

130話 先駆者はすべての矢を受ける

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 さっきからやけに私への暴言と言うか、文句のコールが結構来る。
 それにしたって件数が多い、そもそも硝石1個と黒色火薬10gの交換レートは別に問題ないはずだ。
 これの問題があるとしたら、錬金術伸ばしてる奴が私と同じ分量で作れて、30g以上生成できているというパターン。
 錬金なり、ステータスを上げたり機材を良くしたら質が上がるんだろうか、って言うか化学品の質ってそれはもう純度の良さになるんかね。

「で、まあ露店に来たら来たでどういう状況なんだよ」

 自分の露店を封鎖するような露店配置がされている。こういった露店封じみたいな事も出来たか……そういえばゲームごとに露店関係のローカルルールみたいな事もあったけど、まさかこんな事をしてくるとは。

 とりあえず自分の露店の所へ行って露店を確認する、まあ特に何もない、火薬が売れていると言う訳もない。こうなってくると他のプレイヤーが何でコールしてきたのか、って話になるな。
 うんまあ、多分と言うか確実にだけど、この封鎖掛けたプレイヤーだな。

 市場的にも現状じゃ硝石で沸いて稼ぎ時の時に、急に交換しますってプレイヤーが出てきたら、どうするのかって話よ。そりゃ儲けてる連中は面白くないな。
 さくっと露店を仕舞いこんでどうするかを考える。
 って言うか今の市場価格とか含めて硝石……って言うか黒色火薬についての情報を揃えた方が良い気がしてきた。

 とりあえず私の周りの露店を開いて確認するわけだが、特にめぼしい物は無し。
 文面と言うかメッセージの入れれるところも特に何か記載しているわけではない。本当に封鎖していただけっぽいな。
 こういうのってGMに連絡入れたら一発アウトで垢BANなり停止って……ならないだろうな。
 実害が無いし、周りに露店を併設していたというだけだし、他プレイヤーのせいで売れなかった!と言って恨むのはまた違う所だろう。
 

 で、やってきた露店の賑わっているであろう所で中心部。例の硝石がやり取りされているであろう所だ。辺りを一度ぐるりと見渡してから煙草を咥えて火を付け一息ついてから一つずつ確認していく。

 そうしてこの露店を見回り、確認できた事項が二つ。
 一つ目は硝石と黒色火薬の二つがそれなりな数出回り始めているという点。
 二つ目はどちらとも量がそこまで多くないという点。
 やはり製法的に「2:2:3」の割合でしか作れない上に、1回の生産量も10g程度であるというのも嘘ではないらしい。そういえばあの髭親父に錬金掴ませて火薬を作らせるのを忘れていた。

 とにかく材料比率と個数は分かったわけだが、もう一つ気になるのが高レベル錬金での生成は10g以上なのかどうかだ。
 ガンナーの特性として火薬を生成するにあたって材料が劇的に減り、火薬の生成量が多くなると言うのがあったし、ボマーって言う特殊スキルもある。
 銃弾の販売を無くしたから火薬の材料を追加で入れて、なおかつガンナーが使用する量として十分な所、と考えれば納得は出来る。
 ガンナー以外の相手からしたら苦労して手に入れた硝石は2個使うわ、g数は少ししかないわで散々だな。

 そして硝石と黒色火薬は末端価格5万以上であった。
 今の所、暗闇洞窟のロックラックが主だったドロップだし、他の製法が知れ渡ればまだ値段は下がるか……と、思ったのだが、その他の取得方法ってハーバーボッシュ法とか駆使しないと無理だったかな。
 そんな事より今は、この硝石絡みの問題をどうするかだ。

 煙草を思い切り吸い、紫煙を吐き出してさらに露店の状況を確認する。
 こういう情報ってのは情報クランというよりも足で稼いで、トータルどれくらいかというのを平均的に見て、自分で判断するしかない。
 安いと思って買ったら別の店でさらに安く売られていたとか言うパターンもあるし、一番安いと思った店をとりあえず覚えておいてさらに回って安い店を探して、結局なくて戻ってきたら売り切れるとかも以前に経験している。
 
 閑話休題。


 露店を2周、とにかく虱潰しに硝石を掴んでいる露店、総数、値段を調べに調べつくしてからまた煙草を咥え、火も付けずに吸い口を噛む。
 結局私の所を封鎖していたのは、私の事をねたんでいるか、儲けをかすめ取られると思った連中の仕業だろう。
 黒色火薬もg/5万なわけで、硝石2個10万の物が50万に跳ね上がる。貴重な資源を使った貴重な攻撃手段と言っても流石に高騰しすぎじゃないか?
 貴重度にかこつけてg/3万で売っていたのは私だが、それにしても上がりすぎじゃないか?
 吸い口の部分が潰れる程、がじがじと何度も噛みながら露店を後にして自宅に戻る。

 酒も出来ない、硝石もまだ、硝石交換の話は他のプレイヤーのやっかみでまともな運用は出来ない。
 銃弾作成も現状じゃ手づまりと言う訳ではないのだが、硝石は落ち着くまで入手できない。
 どこの誰だか知らんが余計な事を口走ってくれたよ。

 普通にゲームをやっていてバレると言うのなら別にいい、いつまでも秘密にすることは出来ないだろうし、これからもっと人口が増えたりガンナーが増えて、ロックラックがマストになると言うのは構わない。
 が、こうやってどっかの馬鹿が口走って手に入れる所を有象無象の連中が見ているような所でぽろっと零して一気に需要が高まって、ただでさえ他の入手法が確立していないって時に。

「何だ、戻ってきたのか、ジャガイモの仕込みは終わったぞ」
「ああ、そう」
「?……煙草に火付けんのか」
「分かってるわよ」

 吸い口がボロボロになったのをぷっと吐き捨てて、新しい煙草を取り出して火を付けてから深く吸い、一気に紫煙を吐き出す。

「酒造まであとどれくらいかかる?」
「諸々の工程を飛ばせているからな、リアルで明日の朝には何もしなくても完成する」
「悪いんだけど、それまで此処来ないでくれる?」
「それは構わんが」
「悪いわね」

 自宅外の転移地点から先に髭親父が出ていく。
 それを見て、誰も無いのを確認する。


 ふーっと紫煙と息を思い切り吐き出してから庭先に進み、穴だらけになっていた実験用洋樽を思い切り蹴り上げる。
 ガンガンと何度も蹴り上げ、洋樽の周りに足跡や蹴り跡がひとしきりついた後で煙草を吐き捨て。

「クソがぁ!」

 溜まっていたイライラをその樽に対してぶつけながら悪態を付きまくる。
 別に最初に発見したのを勝手にばらされたというのは構わない。
 値段を高く付けようが、それはそのプレイヤーの裁量だし、高額で売ろうが安く売ろうが構わない。
 ドロップ狙いで狩場が込むのもまあ、まだ許せる。
 
 何よりも許せないのは雑魚共が妬みと嫉みで人の足を引っ張ると言う事だ。
 硝石持っていない奴がてめえの店で購入してから交換しに行くとか考えないとかアホか。先見性のない馬鹿が。

 思いっきり洋樽を蹴り、蹴り倒してから、煙草を取り出して火を付けなおす。
 荒い息を整えながらゆっくりといい香りのする煙草の味を噛みしめ、息を整える。
 こういうのは一気に吐き出して切り替えるのが良い。
 
 冷静じゃない私なんて私じゃないだろうに、まったく。
 自宅の壁にもたれて煙草を深く吸い、紫煙を吐き出してを繰り返して冷静を取り戻す。

「今日はログアウトしよう、ちょっと頭に血が上りすぎた」

 すぐにログアウト処理を進め、今日のログインを終える。
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