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4章

128話 秒で消えた

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 急に湧いてきた50万をどう使おうかな。
 酒造用途以外に使える地下室は確実に一つ増やしておきたいし、ゴリマッチョのクランハウスの融資もしておくのも悪くない。それにしてもあるもの全部使おうと思うのは悪い癖だが、ゲーム資金は使ってなんぼだが、ある分全部つぎ込む可能性が高い。
 ショップついでに冒険者ギルドに寄って少しだけ銀行システム使って所持金の保管しておこうかな。散々こんなの使わねえよとか言ってたのに結局使う事になる……いや、ならない?
 
 とりあえず買う予定だったジャガイモと煙草は先に購入しよう。内訳は煙草28本とジャガイモ苗100個……いや、もっと購入しておくか。いいや、あるだけ突っ込んでやろう、何せ私は大農場主だぜ?
 そういうことだからジャガイモ苗を追加でさらに300個購入。
 
 購入しすぎなような気もしたが、まあどうせ大量に作るんだ。
 それにジャガイモ原料でアクアビット、焼酎、ジン、スピリタス、ソジュ……結構色んな酒作るのにつかわれているんだよな。
 ジャガイモだけで畑圧迫するってのもおかしい話だが……いや、もうめんどくせえな、全部L畑にするか。そうしたら、少しはジャガイモ400個分の苗が私の畑を圧迫しないだろう。
 そういう訳なので農業ギルドに寄ってL畑15面×10,000Zを購入、全部で150,000Z也。
 
 合わせて酒造用として1フロア潰れてしまった地下室の拡張を行う。農業ギルドからさっさと移動して冒険者ギルドで地下室を拡張、その費用でさらに150,000Z也、残金200,000Z。

 それにしても貰って数十分で30万Zも消費するとは。
 後、金を渡して私のメリットが大きい所を判断して。

『いる?』
『はーい、なにかしらぁー』

 久々にゴリマッチョにコールを入れる。
 鍛冶とか情報とかの連中よりもこいつと話しているのがかなり多い気がしてきた。

『クランハウス買えた?』
『んー、まだねぇ……』
『融資してくださいアカメ様って3回言ったら5万は渡せるわね』
『融資してくださいアカメ様、融資してくださいアカメ様、融資してくださいアカメ様』
『プライドないんかい』
『やーねぇ、あたしらの付き合いじゃないのぉ』
『ま、いいわ、5万送っとくから』

 さくっとプレイヤーメールでゴリマッチョの奴に5万Zを送り付ける。
 これで渡した総額が13万。私へのメリットが好待遇って所しかないわけだが、装備の代金が少しでも安くなるのであればメリットとしてはかなり大きい。

『羽振り良すぎじゃないかしらぁ?』
『VIP待遇にしてくれるわよね』
『もちろんよぉ、そろそろ装備の新調もしたいでしょぉ』
『まーな、今のキャットスーツだとダメージが抑えられなくなってきたし』
『これで開店資金も溜まったしぃ、一等地に一番大きいお店が建てられるわぁ』
『それはそれで楽しみにしてるわ』

 コールを切って一息。フレンドってなかなかいいわね。
 流石に一人で防具も作って、武器も作って、アイテム作って……を繰り返してきたけど、やっぱ楽出来る事があれば楽をするべきだな。

「これであらかた必要な物は揃ったか、とりあえずジャガイモは後で植えるとして、残金で露店で木材と鉄延べ棒購入して、樽の量産ってとこか……失敗したな、酒場のマスターにどれくらいの材料で1樽分になるのか聞けばよかった」

 そんな事を考えつつ露店街へ。
 この間の投げ売り露店があればいいんだが、ああいう固定で何かを売っている訳ではなく、雑多に突っ込んでいる系の露店は当たり外れが多すぎる。
 あまり私が露店街を利用していないという点もあるので、探せばそういう専門に置いてある露店もあるのだろう。

「って言うか、やたらと賑わってるけどなんかあるのかね」

 露店街と勝手に言っているが、そもそもここは賑わいが元々あるわけだからあまり変わらない気がする。としても、この間来た時よりも賑わっている。
 多分だが、さっき言っていた硝石発見の話で賑わっているんだろうけど、それにしてもちょっと騒ぎすぎじゃないか。
 いくら硝石が見つかって火薬が出来るようになったとしても、錬金が必要になってくるだろうし、難易度は高いと思うんだが。
 そういえば、火薬作るのってガンナーの特権だったりしないか?
 普通に作ったらそこまで量が出来ないとかそういうメリットがあってもいい気がしたけど……あの髭親父に錬金掴ませてつくらせてみるか。

 それよりもまずはこの騒ぎが何かを、ある程度予想は出来ているが確認しよう。

「……ねえ、そこのあんた」
「え、何ですか?」

 露店を見て回っているプレイヤーの一人に声を掛け、騒ぎの原因を聞き出す。まあ、十中八九硝石と火薬関係ではあるんだろうけどさ。

「この騒ぎって何なの?」
「知らないんですか、硝石が発見されて火薬が出来るようになったんですよ」
「へぇー……材料って硫黄と木炭と硝石でしょ?どれくらいで作れるの?」
「聞いた話ですけど、硝石2硫黄2木炭3ですね」

 思っていた以上に材料使うんだな、それは予想外だった。
 それはそれで良いとして、問題はどれくらいの量が作れるのかと言う所だ。

「その材料でどれくらいの量の火薬が出来るとか、は……分からないか」
「掲示板のゲロった話だと10gらしいですよ、自分もまだ手に入れてないし、作った事も無いので分からないですけど」
「で、一部の作った奴が露店で販売している、という感じか」
「そうですよ、作ってとか、硝石自体を売って儲けてるみたいで……爆弾作れるようになったわけらしいですし」
「なるほどねぇ……いい話聞けたわ」

 メニューを開いて硬貨データに2万程入れて手渡す。
 渡されたプレイヤーは狼狽えながら、その場を後にする私にでかい声でお礼を言ってくる。
 なーにそれくらいはした金よ、情報に見合った対価という物だ。
 
 さて、貰った情報を整理しよう。

 私は「1:1:1」で黒色火薬を作成できるが、私以外……ガンナー以外と言った方が正しいだろう。
 さっきのプレイヤーが言っていた通り「2:2:3」での割合で10gの生産が出来るという点が大事になる。
 ガンナー以外で火薬が欲しい場合は硝石2個で10g、今の需要とあの暗闇洞窟がごった煮状態なのを考えるとそれだけでもかなり難易度が高い。

 と、なるとだ。

 「1:1:1」で30g作れる私が、硝石を1個貰う代わりに10gの黒色火薬と交換すると、触れ回れば大分楽が出来るじゃないか。
 硝石2個で10g生成なのであれば、1個で10gと交換した方が向こうとしてはメリットしかない。
 逆に私はその貰った硝石1個で30g作れるわけだから20g分の増産になる。

 あー、こういうのって何て言ったかな。マッチポンプ?市場操作?
 とにかく、今のこの「産業革命」に乗り遅れるのはもったいない。

「伝言板代わりの露店出しておくか、あまり目についても仕方ないし、ちょっと外れた所に」

 わいわいといつも以上の賑わいの露店街から少しだけ外れた所に自分の露店を開設。
 いや、ほんとこれ便利だわ、買ってよかった露店許可証。
 そういう訳でさくっと露店を開設したうえでショップのメニューに注釈と言うか、文言を入れる
『硝石1個で黒色火薬10g分と交換可、要連絡』
 と、書いたうえで露店に50g分の黒色火薬を並べて、1g100万くらいに設定しておく。別に吹っ掛けると言う訳ではなく、現物があってなおかつ交換しますって言う所謂ショーウィンドウ代わりだ。
 露店自体にプレイヤー名は入っているし、これで見つからなくても、話が広まれば良し。私にデメリットが一切ないという点も素晴らしい。
 せっかく作った硝石丘が腐る可能性があるが、何よりも完成したか、採れるかまだ分からないというのだから仕方ない。鉄は熱いうちに打てとも言うし、特需で稼いでおかないとな。

 それにしても難易度高いとか不遇とか言ってるわりに結構ガンナーに対して緩いじゃねえか、安定してきたからそんな感じはしていたが。
 

 露店開設も済み、残った残金で杉材、鉄延べ棒を追加購入。これでしばらくは問題ないし、樽の量産は出来るな。
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