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4章

120話 もう変身を残してない

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 で、肝心のキングサハギンなのだが、まあ見て分かる通りにズタボロにされている。
 あそこまでやってまだ倒れないってのは何かしらのギミックでもあるんじゃないかって疑うくらいにはぼろぼろ。此処で余計な事して妨げになるのは悪いしな。新しく沸いて出てきた銛サハギンを相手するよ、私は。

「私はよっぽど表には出ない方が良いと言う事なんだろう」

 減っていたHPとMPを回復するためにそれぞれの下級ポーションを飲み捨て、辺りの様子を確認していると、サハギンの奴がまた2体……ではなく、追加で1体出てきたので、すぐにインベントリからガンベルト分の銃弾、Dボアの銃弾を詰め直す。何だかんだで今までため込んでいた銃弾もあっという間に消費するとは。やっぱりさっさとガンナーギルド探して銃弾を買えるようにならないとダメだな。

「これがああいうボス相手だったら格好も付いてたんだろうけどな」

 さっきと同じように戦う訳だが、タイマンじゃ立ち回りも変わってくる。一体だけなら、なんのその、複数で戦うよりも断然楽だ。そりゃ複数のメリットでもある連携をして攻撃してきたわけでもないし、さっきの複数戦闘は正直な所ぬるいと言えばぬるい複数戦闘になる。勿論だが、だからと言って楽な戦闘だったと言う訳ではない。たまたまそういう相手で10の難易度が7くらいになったって感じだ。

「攻撃パターンも分かってる、大体のHPも把握した、何よりタイマンじゃ、負けるはずがないね」

 これもさきほどと同じように沸いた出てきサハギンに向けて不意打ち気味のDボアで1発かましてこちらにヘイトを向けさせてから二度目の戦闘開始。不意打ちの1発はほぼ確実に当てられるってだけでかなりのアドンバンテージじゃない?引き金絞れば発射される弾だし、それを避けられるのはまだまだいないわけだしさ。
 そのうち銃弾を掴むとか、超能力的な物で防いでくるのとか、単純に硬くて通じないとか、固定ダメージ無効とかそういうのも出てくるんだろう。それまでの間は技術発展していない、中世ファンタジーの世界で現代兵器を使って堪能しないとね。

「そういう訳だから、さくっと倒れてくれや」

 それでも2、3回攻撃を貰ったからHPは半分くらい減ってるわけだけどな!
 使った銃弾も鳳仙花2発と不意打ちも入れた数でDボアが3発。内1発は避けきれない、受けきれない攻撃だったので咄嗟に撃ち込んだ奴になる。
 まあ、何はともあれ、銃弾5発とHPポーションまた1個で相手し切れたのはいいんじゃないかな?

『あんまし長期戦になると私が赤字になんだけど、そっちは?』
『今吹っ飛ばされたとこっすね、やばいっす』

 そういわれたのでやり合っていた所の方へと視線を向けると、確かに宙を飛んでいる忍者がいる。いや、飛んでいるって言うか飛ばされているっていうか。

『受け止めないわよ』
『ちょ、ちょっと、助けて、ください……!』

 そして次はメカクレの奴が助けてコール、何か急に不安定になってない?

『さっきまで押せ押せだったじゃん、何があった訳?』

 落ち着いて状況を聞きながら装備と言うか装弾数を確認、うん、全部入れてあるから大丈夫だ。流石に機動力の落ちる2丁はやめて鳳仙花だけ手に持ち、今のうちに煙草を咥えて火を付ける。全滅危機があるって言うのに何煙草吸ってんだお前って言われそうだな。いやいや、こういう時にこそ慌てずに落ち着いて物事を1つずつ片付けるべきなんだよ。どうせ死んだ所で経験1割と数万程度の金が吹っ飛ぶだけだしな。

『あいつ脱皮したっす!形態変化持ちっすよ!』
『まあ、そんな事だろうと思ってたわよ、腐ってもLv35以上なんでしょ』
『です、ね……!』

 メカクレも走って逃げている。水上歩行も見たし、足回り系のスキルも取っているみたいだな。忍者の方は着地に失敗……したわけじゃなさそうなのだが、ごろごろと転がって衝撃を逃がしている。あんなテクニックもあるんだな。

『しょうがないわね……目くらまし使うから、その間にもう一度体勢を立て直すわよ、雑魚もこれ以上沸いてこないみたいだし』

 流石に強化ボスになってからも雑魚が沸いてくるほどの鬼畜難易度ではないようだ。変なところに甘いが、ボス自体が形態変化で全快みたいなことしてるんだろうな。
 とにかく、走って逃げているメカクレとそれを追いかけているキングサハギンを眺めながら、インベントリから取り出すのは火薬50g入りのポーチだ。

「やれやれ……世話が焼ける」

 生活火魔法でポーチ自体に火を付け。

『足止めさせるからちょっと走り回ってなさい』
『そ、そんな……!』
『何やるんすか?』
『贅沢な事』

 ポーチ全体に火が回った所で走っているメカクレの前に投げて、さらにコールで指示を続け。

『今投げた奴を跨いで、うまい事サハギンの近くで爆発するのを祈りな』
『ここに来て運っすか』
『しょうがないでしょ、即席なんだし』

 その会話をしている間に、メカクレがポーチを跨ぎ、サハギンがそれを追っていく所で「ボン」っと大きな音を立てて炸裂すると共に土煙と白煙を辺りに撒き散らし、メカクレが爆風を貰ってずしゃーっと前のめりに滑り込んでくるわ、サハギンは爆発に巻き込まれて悲鳴を上げながら暴れ始め、一時的なパニックの様な状態になっている。そういえば爆発音と共にアナウンスSEが流れた気がする。

『ほら、足止めしたわよ、さっさと回復なりして体勢整えましょ』
『うへぇ、容赦ねえっす』
『こわっ……こわぁ……!』

 さっさと倒さないからメカクレもおびえてるじゃない、まったく。

『とにかく、時間は稼いだんだから、さっさと戻って来なさい、雑魚潰しも無いし、これからが本番なんだから』
『ガチ勢は恐ろしいっす。こっちは回復できたっすよ』
『わ、私は、ま、まだ……!』
『んじゃ、おしゃべり忍者、前衛ね』

 ぷっと煙草を吐き捨て、暴れまわっているキングサハギンの前へとおしゃべり忍者と一緒に出向いていく。改めて近くでみたが、最初に見つけたときよりも二回りほどさらに大きくなっているな。

『で、脱皮してから変わったことは』
『防御力が下がったみたいっすけど、代わりに攻撃と素早さが上がった感じすね、HPは見た通り全快っす』
『典型的な形態変化ね、全開出し過ぎて息切れしたタイミングで脱皮って感じ?』
『言葉もねえっす』
『なーに、最後に勝てりゃ経過何て関係ないわよ、でしょ?』

 メカクレの回復が完了するまで、ああやってキングサハギンの奴が狼狽えてくれればいいのだが、そこは実際に待ってみないと何とも言えない、今のところ、その余裕はありそうだが。

『とにかく、気張っていくわよ、体はほぐれてんでしょ』
『お、お待たせ、しました……!』
『それじゃあ、前、行くっすよ』
『私は中衛、メタリカは後衛で、後は適宜状況に応じて、いいわね』

 二人が了解と返事をしてくるのでそれに合わせて鳳仙花からウサ銃に切り替えておく。ショットガン使う距離でどうこうするわけじゃないし、これがいいだろう、近づかれたら腰の2丁を抜いて対応すればいいか。

『まったく、世話の焼ける2次職共ね』
『さっきよりもきついっすから、崩壊しても恨みっこ無しっすよ!』
『が、頑張る……!』
『なーに、死んだ所で金と経験が吹っ飛ぶだけよ』

 落ち着いたのか、体勢を整え直したキングサハギンが此方を向いて大きく咆哮する。
 第二ラウンド開始と行こうじゃない?
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