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4章

112話 忍べない

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 もうロックラック相手には苦戦する要素が無い。
 って言うか何だったら片手間に殴って蹴って、斬りつけて相手する位にはなっている。地味に銃剣のSLvを最大にしてる恩恵もあるだろう、火力も上がってるし、私自身のステータスも上がってるから、流石に格下相手に苦戦する要素はもうなくなっている。まあ、運は相変わらず悪いので大体5匹に1個くらいの割合で硝石が出てくる。

「こういう以前苦戦していた相手に対して楽に立ち回れるてのはやっぱりRPGの醍醐味ではあるけど、ドロップ品がそれだけだとレベルも上がらないし、品も手に入らないから虚無感半端ねえんだけど」

 今回の目標は土なのでロックラックに関してはまあ簡単に相手してさっさと奥に進んで行く。幾ら簡単に倒せるとは言え、ひたすら倒すのも大変だから、適当に。
 で、いつも通りのバットの群生地に辿り着いてからやる事は地面の土を回収するのだが、よくよく考えてみたら採取ポイントも無いし、アイテムとしてちゃんと保持できるのかが問題だよな。それでも水とか手に入れる事も出来るから大丈夫だろう、多分。
 
 で、さっき作った剣先スコップで群生地の地面を掘り返し、バケツに入れる。アイテムとしては土扱いで、バケツに入れる事でアイテム化するんだろう。

 それにしてもずっと泥臭い事ばっかりやってるけど、他のプレイヤーってこんな事してんのかしらね。まだゲーム開始して間もないから、あっちゃこっちゃ行きつつレベリングしつつ、なんたらかんたらしながらやってるとは思うけど。

「流石にこの辺の相手にはもう負けないわね……」

 何となく寂しい気もする。コボルトが普通に斬りかかってくるのに合わせてパイプライフルの銃剣で受けてから斬り返し、銃格闘での殴打追撃。よろけたのを見て、一度パイプライフルを真っすぐに構えて突く。
 この流れもいつも通りというか、手慣れたもので、格下相手はこの立ち回りで問題なくいける。

「格上になったらアクティブに攻撃貰わないとかそういうのもあると思ったけど、ないわね……何かしら条件があるのか、それとも私の見た目なのか」

 格上だからアクティブ系モンスターに殴られなくなるってシステムがある事はあるが、基本的には見つけたら問答無用に殴りかかってくるからしょうがない。母2のエンカウントしたら格下相手なら一瞬で経験と金が手に入るあのシステムが恋しい。

「とりあえずバケツ3杯分手に入れたからいいかな」

 うーん、今の所これが正しいのかどうか分からない。とりあえずダメだったらダメでまた考えるだけだし、やれる事はまだまだいっぱいある。だめだったら単純に此処にいるロックラックをしばき回るだけだしな。

「樽問題もさっさと解決しないと行けないし、なんかいつも通りだな」

 インベントリに仕舞った土を確認し、そのまま暗闇洞窟から出てゼイテの方へと歩き出す。
 北エリア1-3もあまり苦戦することはないあたり、成長しているな。ただ、あのドラゴン詐欺のトカゲに関してはそこそこ苦戦するが、それでも負ける事はない。
 そもそも高レベルモンスターなのでそこまで大量にいるわけでもない、2回程度遭遇したくらいであっさりとゼイテに来れる。まあ金あるんだから戻って転移しろよって話にもなるわけだが。

「さってと……ポーション関係買ってから山行って水銀か、流石に道中の相手には鳳仙花とDボアで対処するとして、あと必要な物はないかな」

 代り映えのしない日常だが、その前にやる事が一つだけあるのを忘れていたよ。
 ゼイテでの転移地点から自宅に帰れるかどうかって所だ。
 
 結論から言えば出来た。
 ただゼイテ→自宅→エルスタンに飛ぶには転移代2,000Zが掛かるので、別に飛べるからっていうメリットはあんまりない。
 ジャガイモに関してはもうちょっとしたら収穫だろうから、とりあえずジャガイモ50個分の苗に水を撒いておく。
 ついでに硝石丘の予定地でもあるL畑側の方へと行って回収してきた土3㎏を撒いて、盛り土しておく。これで後必要な物は石灰屑とサクって言われる草だが、そこまであるんかね。シシウドだったかな、確かこの草って。

「……まあ試してみればいいだけだし大量に余ってるヨモギとかもぶち込んでみるか」

 どうせ失敗したところでまた取りに行くだけだし、使い道のないヨモギも処理できるし、何からなにまで問題なし。

「後は石灰、か……そういえば海見に行った時に調べてくればよかったけど、貝殻探しにいくか」

 オーソドックスな石灰の作り方だな、貝殻を焼いて作る奴。アイドルが島でよく作ってるのも見た事あるし、色んな創作物でもかなり使われている方法だ。
 最初は骨を考えたわけだが、このゲームで骨って見た事ないんだよね。モンスターに関しては倒した段階でポリゴン状になって消滅していくし、骨自体のドロップするのもいるかもしれないが、探したというか見つけたためしはない。
 一応イベントの時にスケルトンもいたから骨系モンスターは存在しているのはあるが、問題としてはどこに出てきて、骨をドロップするのかどうかって所だ。

「水銀取りに行く前に石灰集めて硝石丘に仕込んでからいくかなあ……そういや爆破採掘とか出来るかも試したいしなあ……鉄パイプの先を尖らせて岩に刺しこめる感じにして内部から爆破、みたいな事が出来ればいけるか」

 また爆発物作る羽目になるけど、そもそも考えていた事をする為にも必要な物が足りないな。何だかんだで色々作っていたら鉄延べ棒もかなり消費した、こんな事なら鍛冶ギルドで鉄鉱石の値段見ておけばよかった。
 
「やりたい事を安定させるための道のりが遠すぎるわ、そもそもこんなに早く設備投資含めてやるのは運営の想定内なのかね」

 南エリア手前でエリアの切り替え申請を済ませる。
 そういえば海だけ見に行きたいとだけ言って南に進んだが、ゴリマッチョに水着頼んでたの忘れてたわ。あの話どうなってるんだろうな。
 
「まー、とりあえず貝殻見つけにいくか、こんだけ素材が細かく設定されてるんだし、貝殻の一つや二つは転がってるだろ」

 相変わらずの楽観思考で南に進む。何だかんだで今までもこうやってきたんだから問題なく進めれるだろうし、手に入るだろうね。

「さーて、行こうかね」

 ぐいーっと伸びをして、さっそく南エリアに、と言う所で。

「あの、すいません、リーダーすか?」
「ああ?」

 声の方に向き直ると、忍者衣装のヒューマンが此方を向いている。どっかでこいつを見た事あるんだが、どこであったのかが思い出せない。そもそも私の知り合いに忍者がいない。

「人違いでしょ、そもそも忍者の知り合いはいないわ」
「ええー……だって自分が居なかったらゾンビ倒せなかったじゃないっすか」
「いや?私が倒したのは変わりない」
「ひでえっす!自分が投げたってのに!」
「冗談よ、打剣持ってた盗賊でしょ」

 覚えててくれた的な顔してこっちを見てるが、何だろう、情報クランにいた舎弟を思い出す。パターンとしゃべり方は似てるけど、しっかり違う奴だ。

「あれから大変だったんすよ、自分が爆弾持ちだーって」
「有名人になったからいいじゃない、やる事あるから行くわよ?」
「あ、え、南なら途中までいかないっすか?」
「私は海、あんたは」
「南エリアにあるダンジョンっすね、あまり手が入ってないみたいなんでいく予定っすよ」
「しょーがないわぇ……素材拾ったら帰るからね」

 それでもいいっす、と返事をしながら南エリアの方へ進む。別にPTを組んでどうこうというよりも道中気楽に一緒に行きましょうって奴なのでいちいち申請とかする必要もないだろう。
 問題はこいつが忍者ってわりにおしゃべり野郎って所だが。
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