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4章

103話 どん詰まり

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 硝石丘を作るのって難易度的にはかなり低い、問題は時間って所なんだけど。
 まあ問題としては家畜の糞尿をどうやって手に入れるのかって話になるわけだが、基本的な素材としては窒素を含んだ木の葉や石灰石・糞尿・塵芥を積み上げたものに定期的に糞尿を掛けていくのを数年やり続ける。
 流石にゲーム処理でさくさく出来るからゲーム内時間で数日置いておけば作ってくれそうだ。

「この辺がリアルじゃないとか、工程が違うとかぐちぐち言うユーザーが増えて、運営が切れるとかよくあるのよねえ」

 ゲームとリアルの区別のついてない、いい大人が言ってるのを見て真顔になるとか結構遭遇した事もある。だったらリアルで厳密なゲームをやりゃいいだろって言われてもああいう連中はそういう正論をぶつけるとすぐにそれは違うだのなんだのって騒ぎ立てるから、またさらにたちが悪い。

「プレイヤーのいざこざとか見ることないってだけでソロは気楽だわ」

 これは、じゃあソロゲーやってろって言われてもしょうがないのは確実だな。とは言えこれに代わるゲームがないからやるっていうのが結局の話にもなるんだけど。

 そんな事を思いながら硝石丘の準備を殆ど済ませる。しばらく調べた材料を集めてL畑1個分を離れた位置に置きなおして準備を進めていた。後は糞尿さえ手に入れれば仕込みは完了するのでそれをどうするか、が問題になる。
 一番確実性が高いのは暗闇洞窟でバット群生地の地面を掘り返して持ってくるってのが正解くさいが、だったらついでにロックラック倒してくるって話にもなる。
 って言うか畑があるから出来るだろうってだけの見切り発車なわけだが。


 って言うか私、MMOやってる意味あるんだろうかって位に他人とも交流してないな。

「出会ったのって、犬野郎と犬耳ショタ、ガサツエルフにトカゲ、チェルとマイカ、ゴリマッチョに砂丘と舎弟って所かバーテンダーと情報クランのマスターは仕事上の付き合いだからNPCと同等みたいなもんだし、他に会話するのもギルドのNPCだけだな……もうちょっと人付き合いとか考えた方がいいのか?」

 とは言え一緒に何かする必要ってのもあまりない。何かの目的のために一時的に協力とかレベリングするってのは臨時PTだし、そこから先にフレンド組んで固定PTとか、ないな。
 手の内晒すって程じゃないし、ガンナーだから撃てるってのは大前提だし、一度犬耳ショタのPTを蹴ったのは銃剣しか使えなかっただけで、今ならまあちょっとは考えてやってもいい。

「って言うかPTを組んだ所で何を目的にするのかって話にもなるのよね、別にレベリングに関しては一人でやるし、PT組んでまで取りに行くものってのも、ないし」

 正直な所、戦闘をするよりも戦闘するまでの準備をしている方が楽しい。戦うだけってのはどうしても飽きが早いからいいんだが、よく犬野郎とかは飽きもせずに前線にいられるよな。逆に生産してるのだけってどうやってモチベーションを保っているんだろうか、そこも気になるな。

「ファーマーやってるプレイヤーとか……私のフレンドリストじゃ知ってる奴はいないだろうなあ」

 そもそも犬野郎とゴリマッチョしかいないのに見るだけ無駄なフレンドリスト。大体こういうシステムの大半、腐らせてる気がする。MMOでシステム全部完璧に使いこなしてる奴とか見てみたいものだけど。

「こういう時に交友が広いとフレンドのフレンドとか引っかかるんだろうけど……一番有望そうなのはゴリマッチョか。犬野郎に関しちゃ戦闘力に関係する交友の方が多そうだし」

 いや、ちょっと待て、ファーマーのプレイヤーと繋がるとしても理由がないな。教えてくださいって言っても、何を教わるんだ?ぶっちゃけ作物類に関しては耕して植えて、肥料と水で育成を待つだけなんだから言うほど聞くことはないな。
 硝石丘に関しては、ファーマーじゃ専門外だから聞くだけ無駄だろうと思う。そもそもいちいちこんな事して硝石を取ろうと思うのが私くらいしかいないだろう。
 ちょっとだけ増えているガンナーもどのくらいの時期から増えたか知らないが、1日やれば大体が心折れてキャラ作り直しするんだろうし、情報に乏しいのは変わらないか。

「どっちにしろジャガイモもまだ栽培開始したばっかりだし、そっちの成果が出ないと分からん、なんだったら今一番欲しいのは木工の家具職人ってところか」

 畑から戻り、自分の家の中を見てからため息一つ。こういう寄り道をやる事がオープンワールド系の醍醐味だとは思うんだけど、それにしても寄り道が過ぎる気がする。まあ、いつも通り安定した銃弾の供給のためには必要な事だから、戦闘関係に直結している寄り道ではあるのだが。

「犬野郎に頼めばPTの付き合いとか前線組の力を使っての人海戦術とか出来そうだけど……やっぱ交友狭いって問題だけど、問題ではないってのがネックだわ」

 どっちにしろ今ここでうだうだ言ってもしょうがないので転移してエルスタンに戻る。
 

「でも勝手に農作業とかお手伝いしてくれるって言うのがいるのならファーマーに話を聞くってのはやっぱりありなのか」

 さっきからころころ自分の意見を変えすぎだろ私。しょうがないね、こういうのは後から気が付いたりするし、その場での考えだけで凝り固まってしまうし?
どうするかをもう一度考える。このまま暫くベンチに座って連絡待ちって言うのもありだし、自分で木工家具を作るってのも一興かもしれない。
 ……いや、その前に減った銃弾分を作る為にアルコール買いに行くのもありだな。情報クランに結構いい額で売れそうな情報って言うか銃弾関係の話もあるし、家で使った分の資金を回収するって言うのも手よね。

「さーて、それじゃあいつも通りあの酒場に行ってアルコール買いつけるか、ついでにどうやって醸造してるかも聞いておきたいし?」

 アルコール発酵とか醸造用の地下部屋とか施設も欲しいからそっちの資金も稼ぎたいし、それくらいは貰ってもいいわよね。何て言ったって銃弾を作る事で取引の権利と素材アイテムの割引よ?錬金齧ってるならこの権利を手に入れるだけでかなり有利だと思う。ただ、ガンナーの特権ぽいから他の職でやった所であの取引と割引の権利はもらえないだろうけど。

 あと、一つ勘違いされてるみたいだけど、私自身はガンナーが増えていくのは別に嫌ではない。なんならもうちょっと人口が増えて私の苦労が少しでも減るならそれはそれでいい。他のガンナーの余剰分の素材とかを金の力で集めて左団扇みたいな事もしてみたい。

「さーて、金の力で素材集めて銃弾作るとしようかねぇ」

 煙草に火を付け情報クランの酒場へと歩みを進める。
 
 
 いつも以下略……。
 
「アルコール二瓶、それと情報売り」
「……どういった情報で」

 相変わらず不愛想なバーテンダーと会話を進めるわけだが、地味にこのバーテンダー、人が変わってるのよね。多分持ち回りでここの事を任せているんだろう。違いはじっくり見ないと分からないが、視線を合わせず、淡々と取引するってのが粋ってもんよ。

「そうねぇ、銃弾関係って言ったらどう?」
「……そう、ですね、物によりますが」
「多分だけど、T2Wにおける最初の銃弾作成者だと思うのよね、私」

 腰に入れておいた銃弾を一発だけ抜いて、カウンターの上に立て置く。ガンナーをやってないものとしては弓職の矢と同じような物だが。

「自作銃弾のメリット、でかいのよねぇ」
「……アルコール代は結構です……あとは中身次第ですね」

 やりぃ、情報代でそのままアルコールタダでもらえたわ。
 さて、ここからが問題なわけだが、一気に全部言ったらそれはそれで楽だが、ぎりぎりまでは情報を出し渋って絞り上げれるだけ絞り上げたい。って、思うんだけど、結局めんどくさいから殆ど言っちゃうんだろうけどね、てへっ。

「ああ、あとどうやって酒作ってるかも知りたいわね……随分硝石で稼いでるみたいだし、タダがいいわねぇ」
「今日はずいぶんと注文が多い事で」
「いいじゃない?私が売れば潤うんだし」

 差し出された灰皿に煙草の灰を落としつつにぃーっと笑う。
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