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3章

94話 自己評価より他人評価

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 確かに考えてみれば金属カップと言う存在は大事だわ。
 とりあえず持っていた鉄鉱石とくず鉄を全部鉄延べ棒へと製錬して鍛冶メニューを開く前に辺りを警戒。

「せっかくテンション上げて細工しようかなーって思ったのになあ……先にさっさと銃弾作ってから考えるのもありっちゃありか」

 それにしてもどこでも扉のように場所選ばないで生産できるってなかなかシュールな絵面だけど、考えてみればこれくらい他のコンシューマーでも同じような物か、時間止まってアイテムとかスキルとか装備を一瞬で覚えたり変えたりってのもあるんだし。

「に、しても金属カップってどう成形すればいい具合になるんだ…?」

 カップ状なのでさらに小さく鉄パイプのストローを作って、輪切りにして底を塞ぐ?っていうかこれこそ彫金とか使うんじゃないのかね。工業製品に近いからこの辺は大量生産できる施設とかいずれ作りたい。いいや、とりあえずカップ状にすりゃいいんだろ、だったらこの間の鉄ストローで作ればいけるだろ。
 
「音だしちゃいけねえって言ってんのにがんがん製鉄して、形成してるってバカなんじゃないかな、私」

 まあよくよく考えたらっていうか、普通に雷管で調べたらカップ作ってそれに詰めてから、さらに薬莢に押し込むって普通に書いてあるんだな、これが。つまり完全に私の準備不足って言うか、ただのど忘れだな。詰めが甘いなあ、私も。

「とりあえず鉄パイプをさらに細くしてみるか……」

 山の中で小型の炉を展開して鍛冶ハンマー振るって現地生産しつつ潜伏し続けてトラッカーを使って周囲警戒をする。まあ、これくらいのマルチタスクならまだいけるな。映画みながらゲームして、チャットしながら携帯見るとかやってたし。
 でも問題はそこじゃなくて極細の鉄パイプを作れるかどうかって所なんだけどさ。……いや、言うても鍛冶レベル7よ、おもいっきり延べ棒ブーストだけどレベルが上がれば作れる物も増えるし、こういうのくらい出来る技量はあるだろう。
 がんがんといつもの様に鉄パイプを作成、この間作った細く短い奴よりもさらに処理として短く細いようにしていく。

名称:鉄パイプ(極細 極短)×10
詳細:通常の物よりもさらに細く短くなった鉄パイプ

 出来るんだな、これが。何て言ったって天才だから私。たまにどわすれしちゃうけどご愛敬だよね。ほら完璧イケメンの美人がちょっと抜けてる時ってギャップとかで可愛いとか言われるじゃない?
 完成品をじっくり確かめたいところだが、音に引っかかってきたオークがまた近づいてきたので場所を移動する。


 もう6合目の終わりの辺りまで押し込まれているというか追い込まれている。まあどうせ死に戻りすりゃいいや、なんなら最奥まで行ってボスまで殴って帰ってくればいいや。

「よし、とりあえずできる……あとはこれを……」

 一息ついてから60発分のカップを作り、合わせて錬金で手持ちのアルコールを全部雷酸水銀に変換。これで正真正銘今度こそ銃弾の材料が揃ったのでついに作成するわけだが

「作る前に念の為ガンスミスのSLvをあげて、と」


スキル名:ガンスミス レベル:5(MAX)
詳細:【特殊生産スキル】【パッシブ】
  1:カテゴリー「銃」及び銃弾の製造の際に一定の品質補正が掛かる
  2:銃破損から銃故障へと置き換わる
  :【アクティブ】
  :カテゴリー「銃」の修理が可能になる 修理時の成功率上昇
  :修理の際には一定の材料が必要 修理時の使用材料の減少


「文面的にはレベル上昇云々の表記がオミットされた感じか……数値の明記が無いから具体的なところはわからんけど」

 準備は整ったし、後は作っていくだけだ。ちなみに手作業でこういう作業をするのはハンドロードって言うらしい。
 
 まずは空薬莢の底に雷管を詰めていく。本来であれば機械とかで圧を掛けていく訳だが、そういうのは無いし、ゲーム処理でさくっと完了。
 その次に黒色火薬を入れていくのだが、本当はこの火薬もしっかり決まっているらしい。単位は「gr(グレイン)」で1gr=0.06479891gとかいうフィートとかマイルとかあっちの超絶めんどくさい計算式らしいが、その辺までは流石にこのゲームでも設定していないし、紙薬莢の5g弾を使った時には着弾が速かった覚えがあるのでT2Wでは初速だけ変わってくるんだろう。ぶっちゃけ現実的に言えば3g分の火薬は多すぎる。
 とにかく薬莢内に黒色火薬3g、鉛玉を入れてから先を絞ると言うか漏れない様に処理して完了。
 実験段階では発射と言うか雷酸水銀と黒色火薬の親和性は大丈夫そうなので後はもう試し打ちするしかない。
 この作業をあと49回、作った雷酸水銀と言うか雷管の分を作る。


名称:銃弾(質3)×49
詳細:「銃」に使う専用弾 売買不可
特性:鉛球弾、黒色火薬3g


「出来たわ……すげえあっさり出来て拍子抜けと言うか感動が薄い」

 感極まってガッツポーズと咆哮でも上げて感動する……よりもじんわりと達成感がにじみ出てくる。いや、こういう物だよ、目標として完成すると思っていたわけで、それが本当に思い通りに作れたというだけでそこまで感動しない。

「とりあえず試し撃ちはするとして、鳳仙花を使うか……こっちの拳銃もまだリロードかちゃかちゃ弄ってるだけだからもう一度確認しないといけないとして」

 そういって確認をしているとピコンとアナウンス音が聞こえる。あくまでも個人宛のメッセージのようなのでログを見る。

『銃弾の作成により、銃弾取引、銃関係材料の割引がアンロックがされました』
『また上記の要素に関しては個人単位でのアンロック要素になります』

 つまり金さえあれば材料は全て集められると言う事ね。それでも結局材料自体は自前で用意すると思うが、楽になったと言う事は変わりない。って言うかだ、私の自作銃弾が成功したというのが運営からのアンロックログで確定したわけだよ。

「ふふ、そうか、私の銃弾作成は成功したというのが運営公認と言う事になるわけだな」

 こういうのってやっぱり誰かに認められると一気に実感が湧いてくる、ログを見て出来た銃弾をもう一度見つめて、にぃっと笑う。

「それじゃあ本格的に試し撃ちしてみないとな」

 インベントリを開き、鳳仙花に切り替えるわけだが銃剣を上げ渋ってた理由は此処にある。ものによっては銃剣を使えないものがあるので完全にスキルが腐ってしまう。長物を2本持ち替えるってかなりめんどくさいと言うか取り回しが悪い。かと言っても拳銃系の小さいのだと銃剣のメリットが薄い。
 廃れたり流行らないってそれなりな理由があるわけよ。

「やっぱり細工もこなしておかないとちょーっと取り回しが悪いわね」

 鳳仙花を装備しなおし「ガチャン」と中心を折ってから銃弾2発を装填する。
 とりあえずベルトに付けてあるポーチに銃弾をまとめて入れているわけだが、ゲームとして多少もたついたリロードと言う感じは否めない。向きが一方的に揃っているわけでもないのも原因だろうけど。

 とは言え完成した銃弾が悪いわけはない、中折れ式を元に戻して構えて降ろす。
 いいんじゃない?実射は初めてだから手頃な相手を見つけて撃ちたい所だけど、馬とか熊は流石にレベルが高いし、オークと土竜を見つけて撃てればいいか。

「まあ、固定ダメージのごり押しが出来るだろうからうまくはまればいいか」

 鳳仙花を構え肩で支えつつ煙草を一本咥えて一吹かし。せっかくここまで来たんだし頂上まで行ってから死に戻るのも悪くないな。
 
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