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3章

89話 Victory Loves Preparation

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 何でもかんでも作れる上に自由度が高いってのは逆を言えば丸投げともいう。
 
 この手のゲームが苦手っていう人は大体が自分で目標を立てられないからとか、やる事が多すぎて逆に分からないとかそういう理由でとっつかない。逆に私としてはあまりにも一本道であると楽しくない。介護されてるかよって感じになる。

 正直T2Wに関しちゃはっきり言って丸投げ中の丸投げだ。個人的に色々やってこのゲームの特性と言うか、具合が分かってきた。所謂サンドボックス系のゲームをひっくるめて煮詰めてるんだろう。
 そのうえでアイテムやスキル2枠の自由度はかなり高く設定してあるんだろうな。

「そうじゃなきゃこんな風に色々作ったり素材が置いてある訳ないわ」

 アイテムメニューを開いたのを見つつ「ふーむ」と唸る。
 そういえば金属薬莢作ったのにテンション上がりまくってガラス容器ほったらかしにしたけど、硫酸はまだすぐ入用じゃないし、銃弾出来たらゆっくり考えるか。
 黒色火薬のパイプ爆弾じゃなくて、TNTのガチダイナマイトとか鉱床に使ったら滅茶苦茶採取できそうだし、夢が広がるよね。

「さて、ダンジョンアタック自体はもうちょい後でやるとして、まずは弾よね」

 いつも通り鍛冶ギルドの定位置。生産施設の入って4番目の所に炉の前に行ってアイテムメニューとリストとメモ帳を開く。
 ここに来る前に一応ガサツエルフとトカゲコンビの所を訪ねたが不在、ゴリマッチョはゴリマッチョで忙しいから後でって思い切り言われた。

「装備の新調しなかったから結構時間食ったし、ダンジョンアタックする際にはちゃんと新調しないと」

 とりあえず鉛延べ棒を取り出して鍛冶メニューを開いて玉状にしていく。本来であれば円錐台の形にしたり、ミニエー弾とか作ってみたいが、こういうのは追々だな。

「型とかも作ってみるかなあ……」

 球状にする分には特に道具も使わず、ころころと作成が進んで行く。くず鉄玉を作る時もこんな感じだったなそういえば……でも型を作るってなると手順が増えるな。そもそもその型の模型を作って試作してみたいな事にもなるわけだし、今は考えるのをやめよう。
 

名称:鉛弾×60
詳細:球状になった鉛 ビー玉程度のサイズ


 鉛延べ棒を3本投入。1本20発か、ちょっとサイズも大きいし、こんなものか?もっと小さい物にすれば拳銃とか長銃でも散弾銃みたいな事もできるのかな。やっぱりこの辺も研究するしかないけど。
 薬莢も数揃えなきゃいけないから、そっちも量産するとして、大量に溜まっているくず鉄延べ棒を鉄に変換、そこから鉄板6枚、鉄パイプ6本、鉄延べ棒12本を消費して金属薬莢を作成。ついでに接続部分に使う針金も合わせて作っておく。

「うーん……材料が地味にきつい……」

 鉄延べ棒1本で鉄鉱石5個、そのうち一山当てたりなんだりして全部金で解決したい。もしくはもっと簡単に鉄鉱石を量産できるような環境が欲しい。やっぱりTNTの開発は急務だな。

「TNTとかダイナマイトとかニトロとかって言われると私的には緑色の跳ねる箱なのよねぇ」

 まあそれは良いとして、弾と薬莢と火薬の準備は整った。
 勿論だが、薬莢底の中心に雷管用の穴はあけてある。これでとりあえずの銃弾としての準備はいいだろう。

「鍛冶はこんな所かな、錬金で硝酸を作らなきゃいけないけど……錬金で精製したら容器も一緒になるのか……?いや、ポーション作ったら容器が出来るから大丈夫か」

 鍛冶ギルドにいながら錬金窯で硝石を溶解していく、どこまでリアル志向なのか分からんけど、結構雑にやっても成功するし、何より直感的な処理をされるから大丈夫だろう。
 さっきから大丈夫とか何回言うんだよ私は。


 そういう訳で錬金窯で硝石を処理していく訳だが、本来ならアンモニアから白金触媒を使って加熱させて窒素を取り出し、反応させてとか色々手順を踏むわけだが……ゲームだからそんなことは気にしなくてもいいっぽい。これが異世界転移とかしてたらチートとか謎技術でぽこぽこ作れるんだろうな。
 
 やっぱりいい所で手抜きしてくれるからゲームって素敵。


名称:硝酸
詳細:化学式HNO3 硫酸硝酸は化学の基本


 ざっくり完成、硝石10個分で硝酸が10個。小瓶と言うか自動生成されたガラス容器に入っているのが10個と言う感じだ。ポーションと同じだな。

「よし、でーきた……これで大半は完了かな」

 出来上がった硝酸を手に持ち、これも光に当ててじっくりと観察。
 リアルじゃないので遮光瓶ではなく透明な瓶に入っている。うーん、こんなもんでいいのかな。

「計画の終わった部分を消してと……やっぱり銃弾周りは現地調達した段階で作るか。と、なるとやる事は」

 メモ帳とやる事リストを更新して、終わった部分は全部消したうえでもう一度確認する。
 そういえば銀製品も少なからず街で手に入るので、溶かして銀の抽出も考えたのだが、銀製品って基本的に高い上に数を揃えるのに結構な金額だったので断念。

 とにかくやる事としては後はこれだけ。


1.装備新調
ゴリマッチョに体防具以外の装備を確認
→狙い所は足と腕の軽いもの(片手用シールドも視野)
ナイフに代わる銃剣部分
→鍛冶クランで聞いてみる(合わせてパイプの刻印依頼)

2.雷管の開発調合
→水銀取得→現地調合で雷酸水銀生成
(銃身劣化、不具合を確認するためにパイプ銃をもう一つ作成したうえで試し撃ち)

3.銃弾作成
→現地作成でそのまま実地試験


 硫黄と硝石周りを片付けたので狙いの水銀さえ手に入れれば2と3は完了する。
 武器周りに関しては鍛冶連中がいないので若干の後回しはある、あとゴリマッチョの連絡も無いし、先にダンジョンアタックに必要な雑品を購入しておく。
 HP下級ポーション10個、MP下級ポーション5個、松明5本を追加購入したうえで端数として残っていた鉱石を売却。余ったZ(ゼニー)で煙草の追加購入。別にリアルじゃ煙草吸えないってのにね。お酒は飲むけど。
 
「後は装備か……なかったらなかったで銃撃でごり押しするか」

 いくら先込めでも火力自体は高い。どちらかと言うと音の方の問題を気にしている。やっぱり発砲音でアクティブ系の敵が釣れるってのがネックになる。コボルト戦士の時に散々痛い目を見たので銃剣ベースの戦い方を改めて確立させておかないとな。

『いる?』
『あらぁ、アカメちゃん、装備の相談?』
『忙しいの終わったのか』
『そうよぉ、前線組のドラゴニアンがすぐ作れっていうんだからぁ』
『腕と足で使える防具ない?』
『いけずぅ、ブーツとグローブならすぐ用意できるわよぉ』
『幾ら?』
『いいのよぉ、おかげでクランハウスも購入できそうだしねぇ』
『今取りに行くわ』
『はぁーい』

 さくっと裁縫ギルドに向かい、ゴリマッチョから黒いブーツとグローブを受け取る。こいつ、このスーツに合わせて作っておいたな?


名称:コンバットブーツ 防具種:靴
必要ステータス:AGI5
防御力:+5
効果:悪路に強い
詳細:靴底がしっかりと地面を捉える様に工夫された軍靴
製作者:薫

名称:グローブ 防具種:手袋
必要ステータス:無し
防御力:+3
効果:滑り止め
詳細:皮で作られたグリップの効いた手袋
製作者:薫


「やっぱ良い物作るわ、あんた」
「ま、元々上げようと思ったものだしねぇ」
「盾はあんたの管轄外だっけか」
「そっちは無理ねぇ」
「いや、いいよ、助かった」

 ぐぱぐぱと手を開いて閉じて感触を確かめ、パイプライフルをもって構えて何度か素振りをしてみる。しっかり握れている感じはある、まああまり難易度の高い物でもないし、高い効果と言う訳ではないんだろう。

「アカメちゃん、素直になったわねぇ」
「うっさいわよ、ゴリマッチョ」
「はいはい♪」



 そのまま手を振って別れ、すぐに鍛冶クラン『ヘパイストス』に。
 要件としてはガサツエルフとトカゲだが、やっぱり今日はもういないみたいだ。
 
「やっぱ自作か……ゴミで火力上げてナイフの鋳造した良品くらいは作れるだろう」

 近いのでさっさと鍛冶ギルドに戻って定位置に付いてからゴミの大量投入での火力上昇をしたうえで良品ナイフを3本作る。やっぱり自前で何でもできるって最強だよね。
 で、そのうち1本をすぐにカスタムでパイプライフルに装着。前まで縄だったが今回からは針金で強度アップ……してくれるといいかな?

「さて、と……あとは雷管だけか」

 アイテムを確認し、必要な物は準備できたし、後は水銀を手に入れて雷酸水銀を作れば完成だ。
 これでダメだったらSPぶっこんで銃剣と銃格闘上げるしかない。ぎりぎりまではSPは使いたくないと言うのに。

「とりあえずゼイテに行く……前に腹ごしらえしなきゃダメか」

 気が付いたら空腹状態でHPがじわじわ減ってる。
 肉と塩集めておいて良かったよ本当に。
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