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3章

83話 海は広いが飽きる

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 コボルト戦士は強敵だった。

 戦っては逃げて戦って逃げてを繰り返して多数戦闘も形にはなり始めたし、意外と捌けるようになってきた。
 まあそれでも大変なのは変わりないし、そこそこのアイテムを消費してるわけだけど。

「そういえば予備ナイフ買ってくるの忘れてたな」

 南エリア2-2の手前までやってきてコボルト戦士をまた一匹片付けて一息。
 ついでに言えばレベルも上がった。



名前:アカメ 種族:ドラゴニアン

職業:ガンナー
基本Lv:15 職業Lv:15
HP:30/36(1UP) MP:8/16 
STR:8(1UP) AGI:15 VIT:2 
DEX:15 INT:2  RES:2
SP:残14



 とりあえずSTRを1上げておく、とりあえず10まではあげてDEXとAGI伸ばしたいし、銃の必要条件としてDEXを上げるのポイントっぽいのも分かったからD>A>S型になるだろう。
 それにしてもレベル上がるの遅いな。まあ本格的な狩りのレベリングってそこまでやってないし、こんなものなのはどこも一緒か。
 そういえばチェルの野郎が24とか言ってたな、友達付き合いで狩りしてたか?
 
 

 まあ、何にせよ南エリア2-1を突破し、2-2へと到達する。
 で、まあ案外と言うか結構な広さのマップを走って移動してきたかいもあったのか、目の前に広がる水平線がちらちらと見える。つか南エリアの海到達早くねえか。

「まあ、知ったこっちゃねえけどー!」

 平原から砂地になり、砂浜、そして目の前に広がる海。
 ああ、こういうのテンション上がるわ。泳がなくても近くに来るだけでかなりテンションあがるわ、しかも良い事にノンアクティブ系も多いみたいだし、素敵じゃね?

「えーっと、南エリア2-2の分布はっと」

 メニューを開いてモンスター情報の確認。レア敵とかボスじゃなきゃレベルとモンスター名の情報見れるってかなり楽だわ。


南エリア2-2
LV17 飛び猫
LV19 シーゲル
LV22 スライム
Lv24 コボルト(海)
Lv25 デビルクラブ


 何て言うか海鮮が揃ってる。
 まあ、私としては海鮮嫌いなので一切食えるわけがないのだが、Lv19のシーゲル、Lv25のデビルクラブを狙っているプレイヤーがちらほらと居る。
 そりゃウニとカニを幾ら食ってもタダなうえに美味いし、痛風だったり病気にもならずに堪能できるって話になったら乱獲されるよね。
 ちなみに飛び猫って言ってるが、文字通りにちかいウミネコ、頭上旋回して、プレイヤーが弱らせたウニとかカニをかっさらっている。
 やけにここのプレイヤーのヘイトが飛び猫に対して異様に高いのはこれか。
 
「気を付けていればモンスターに引っかからないし、結構海堪能できるんじゃない?」

 波打ち際までやってきてぱしゃぱしゃと歩いてみる。
 波が引くときに感じる砂の流れとかも感覚的に分かるって凄いな、フルダイブ万歳。

「それにしても他のエリアに比べてプレイヤーが多い」

 勿論海鮮好きがいるからそれの乱獲をしているのがちらほらと、後は単純に海を楽しんでいるのがそこそこ、まあ、やっぱり海っていいよね。私だってテンションを上げざるを得ない。

「まあ、目的としては海水なんだけどさ、ちょっと遊んでもいいよね」

 装備を外して、デフォの布の服とサンダル状態に一応なっておく。重量系の金属防具じゃないから気を付けなくても大丈夫そうだが、こういうのは雰囲気が大事。
 この状態で攻撃されたら多分一発で死ぬけど、コボルト位しかアクティブはいないので気を付けていれば大丈夫だろう。
 
 で、そのままの姿で海に行ってぱしゃぱしゃ波打ち際できゃっきゃうふふ。
 砂浜で超絶クオリティの砂の城とか作ってみたり、考えれる事をやりまくる。
 ああ楽しい。リアルじゃ寒いけど。

 砂とか波の感じ、海特有の風とかも感じられるのはかなり凄いな、こういう細かい所を拘っているゲームは良いゲーム、後はトイレとか。

「流石に気温までは感じられないなあ……そりゃそうか、低体温とか高体温になって体壊したら訴訟問題だし」

 変なところで裏事情を考えてしまうのは悪い癖だな。
 ぐっちょりと濡れた布の服を脱ぐって事は出来ないし、しばらくしたら乾燥するみたいだけど、べとべと感とかは特に感じない、なんとなーく感触が悪いようには感じるが。


『ゴリマッチョ、いる?』
『あらぁ、なにぃ』
『水着とか作れる?』
『水着ぃ?T2Wって海あったのね』

 携帯のように後ろの声が聞こえるとかそういうのはないので何を話しているのかは分からないが、会話がちょいちょいと途切れるので多分後ろとかにいる相手に返事をしているんだろう。水着作るぞーとか、そういう会話か。
 てか、本当に冒険という事をしないで好きな服を作っているプレイなのか、聞いた事が無いのか海の存在を始めて知った反応するとは。

『急用じゃないからいいんだけど』
『モデル料でタダにしたげるわよぉ』
『あんたのそう言う所嫌いじゃないわ』

 きゃっきゃと騒ぎ始めたのでさっさとフレンドコールを切って通常営業。
 
 とりあえずやろうと思っていた塩の生成でもしてみるか。
 容器とかないのが引っかかるのでさっさと鍛冶でバケツを作成。
 砂浜で鍛冶してバケツ作ってるとかすげえ不審者だな。


名称:バケツ
詳細:水を汲んだり何かを入れたり マグマは入らない


 そんなわけで鉄延べ棒一本でさくっと作成。
 さっそく波打ち際に行って海水を汲むのも問題なし、こうやって素材さえあればどこでもすぐに必要アイテムが作れるってのが戦闘生産できるハイブリット型のメリットだな。

 で、汲み終わった海水を置いたまま、錬金のメニューを開いて窯に海水を入れて沸騰させる。まあゲームと言うかサバイバル的な部分で言えばオーソドックスな塩の取得よね。
 金敷引いて鍛冶してたと思ったら錬金窯取り出して煮出してるプレイヤーってどうなのかしら。まあ万能プレイヤーみたいな風に見られているとは思うけど。

「でも塩って結構大事なのよねぇ、食べ物以外でも」

 錬金っていうか化学的にも塩って結構大切だし、多めに手に入れておきたいところだけど、作ったバケツが大体10ℓくらいの容量だから……えーっと、海水100gに対して大体3.5gの塩だっけか?で、単純計算したら350g分の塩が採れるわけ?
 
「いいや、とにかく水分飛ばせば塩取れるだろ」

 錬金窯でぐつぐつと海水を煮るだけの作業と言うか時間を待ち続ける。
 ああ、これが多分めんどくせえんだな……あとバケツとか容器も準備しなきゃいけないって事かね。
 ゲーム処理とは言え、ちょっと時間掛かるな……量が多い?

「あと作業中は動けないってのが問題ねえ」

 もう少しだけ掛かる作業時間を横目にぱしゃぱしゃと泳いでいるコボルトを眺める。色んなバリエーションあるな、あいつら……水陸両用って事なのかね。
 まあここの連中はむやみやたらに接近しなけりゃアクティブ化しないし大丈夫だとは思う。勿論こっちが止まっているのに相手がやってきたら戦闘状態になるけど。

「ポリ塩化ビニルとか合成樹脂系にもルート行けたらいいんだけどなあ」

 しばらく待っているといつもの完成SEが鳴って窯の中に白い塊が出来ている。

「おー、塩完成だけど……すくなくね……?」

 
名称:塩30g
詳細:料理の基本 塩が足らんのです……とはならない


「採れたのは30gか……あー、塩分濃度を高めてやるのがいいんだっけか」

 出来上がった塩をまじまじと見つめながら考える。もしかしてT2Wにおける調合とか何かしらの物って30gで固定されてるんかね、黒色火薬も30g生成で質が上がるとかだったし?
 何にせよこれで塩が手に入った訳だから、錬金的な部分でも幅が広がったな。

「これで対スライム出来るなら硫酸的なの取れるかなあ……骨の髄まで溶かすんであれば可能性は高いけど」

 何て言ったって無煙火薬として火薬的な部分でのパワーアップとか金属薬莢式の銃弾を作るにしてもかなり有益だもんな。

「街戻ってガラス系のもの手に入るか確認してこないと」

 バケツにまた海水を汲み、そのままインベントリに突っ込む。
 おお、仕舞えたよ。取り出すときにひっくり返して全部だめにしそうな気もする。

「さーて、もうちょっと量産してから戻るかな」

 目的の海も、ちょっと遊んでみたら満足しちゃったし、塩作ってスライムにぶっかけて様子見て、次の事考えなきゃなあ……硫酸取りに火山側に行くのもありだな。
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