上 下
85 / 622
3章

80話 寄り道からさらに寄り道

しおりを挟む
 よくよく考えたら、第二の街に来るのが最低限の目標だったんで、此処からどうしようかと言う話になる。
 まあレベリングを進めながら、銃弾の材料を確保していくのが課題か。久々に無計画でゲームやっている気がする。

「さーて、どうしようかなあ……いい加減に金属薬莢に手出して銃弾まで作ってみる?」

 銃弾の構成はざっくりと弾、火薬、薬莢、雷管だが、前者2個に関しては既に作る事が出来るっていうか、もう出来てる。はっきり言えば今持っているパイプライフルを小型化して、他の銃で使う様にするわけだ。
 つまり、パイプ部分を小さくしていく、刻印部分を雷管にして非魔法化。
 何でもかんでもと言うかリアルな技術開発って小型化の歴史だし、それと一緒じゃない?
 
 普段使われているスマホだって元々はくっそでかい電話からだし、PHSとか今の子知らないだろ。果てはポケベルとか、車のバッテリーみたいな物をぶら下げた携帯ってのもあったわけだし。

「あれ、もう結構余裕じゃね?」

 いや、まあ……技術的に大変なのは確かだけどさ、おもっくそ工業製品でこの異世界ベースの世界で作れるのかって所になるわけだけど……それでもゲーム処理は結構あるから意外といけるんじゃないか?とは思っている。

「そうだよね、細長い鉄筒作って輪切りにしていってケツに雷管押し込める穴つくりゃいいわけだし?」

 色々と怒られそうな感じではあるが、死ぬほど簡単な解釈をすればそうなる。
 まあ難しい難易度の物を作るのは確かだけど、これくらい楽観的に構えておいたほうがやれるだろうしな。
 
 まー、やっぱりこの辺は鍛冶だけじゃ駄目そうだから、細工とか彫金とかの複合作業でレシピ開発さえできれば後は自動製作でさくさくよ。自力工場生産みたいなものになるさ。

「硫酸が出来れば化学的に色々出来る事が増えるからそれを狙うのもありかなあ……」

 って、思ったんだけど、あれ……硫酸作れる材料は持ってるな。確か硫黄と硝石だったかな、あれを混ぜ燃やして冷やすんだったか。化学式はどうだったかな……何か合わせたらいい感じになってた覚えがあるんだけど。

「って言うか硫黄と硝石の需要高すぎじゃね……硝石の情報一つでやっぱ一財産築けるじゃん」

 情報ギルドに条件付きで渡したとはいえ、どれくらいで売って稼いでるのか聞くの忘れてたわ、どんだけあれで潤ってるのか知らないけど今度もう一度問いただしてやらないと。

 と、少し話しがそれたが、硫酸も作れるとなると、やっぱり硫黄と硝石を火薬だけに全部つぎ込むってのは今後控えた方がよさそうだ。硫酸硝酸は科学の基本だったの忘れてたよ。

「何よ、まだやる事いっぱいあるじゃないの」

 こりゃー大変だなーと、呑気に言いながら露店巡りを開始する。



 ゼイテはエルスタンに比べて露店の規模は小さいが、採れるものが変わってくると品揃えも変わってくる。
 どちらかというとエルスタンは総合デパート感がかなり強かった。もう下から上までなんでもあります、みたいな感じで。
 ゼイテに入るとちょっと高級志向感が強まる。さすがに周辺マップで採れるものがメインになるし、エリア切り替えもちょっとの手間だけど結構めんどくさいしな。
 
 で、並んでいるものは周辺採取とモンスター素材ばかりが多い、錬金素材って興味ない人とか関係ない人にとっちゃ使い道もわからない上に取る必要がないから基本無視されがち。
 鍛冶やらないのに、採掘しても売るしかない上に安いってならやらんよね。

 専門でやってる人物に売るって言うてもあるけどそれはそれで揉めたりするからなあ…今の相場がーとか他のMMOでよく聞いたわ。ドロップ率が低いからとか需要があるからとかで、初心者とか入門者が必須なのに高額すぎて手を出せない、かと言って狩りに行ったら上級者が乱獲してるからそもそも狩れないとか。

「まだそう言うのになってないだけマシねぇ、100万規模とかじゃないし、そもそもの人口少ないから悪い噂ってすぐ広まるし」

 近くにあった露店の動物肉を串焼きにしたものを頬張りつつウィンドウショッピング。さっきも言った通り、素材やら周辺採取ばかりで大したものが少ない。ついでに言えば無人販売が大半で、更新されてないものもちらほらと見受けられる。

「イベントあったりしたし、消耗したのを回収したりなんだりかしらねぇ…張り付いて露店見る必要ってあんまりないか」

 古めのMMOでもあったが露店を開いている最中でもログアウトできないからログインしっぱなしにしておかないといけないって言うのがあったな。
 サーバーの負荷とか知ったこっちゃねえと大量のBOTで埋められるとか、どこでもモンスターを出せるアイテムでその露店街を全滅させるテロとかあったなあ。

「料理系プレイヤーだけはちらほらいるみたいだけど」

 肉の串焼きを食べながら次の露店を覗きながらふーむと唸る。
 今目の前にあるパンと肉のサンドイッチを見つめながら食べるかどうかが今の問題だからだ。
 うまいのは確かなんだろうけどなあ。料理って消費期限とかないんだっけかな。インベントリに仕舞っておけば何一つ問題なく保存できるし。
 
「大量買いしておくかなー……でも味の追求だから回復量がMREより低いってのがなあ……」

 美味い物は食べたい、しかし効率が悪いとなると同じものを大量に食べなきゃいけない。幾ら美味い物でも何個も食うのはなあ……MREはまずいのさえ我慢できれば回復量20%だから悪くはないんだよ。
 流石レーションだって思える効果と量なんだよなあ……って事はつまり美味しいMREさえできれば完璧じゃね?

「で、あんた……買うの?買わないの?って言うか食べるの?食べないの?」
「味は見ておこう」

 ちゃりっと300Z(ゼニー)の支払いをして受け取るサンドイッチ……これイッチなのかウィッチなのか統一してほしいわ、ほんと。んで、さっそくそれに齧りつく。
 もうがっつり肉っていう味とパンの甘さが口の中を伝わってくる。フルダイブゲームってすげえわ、味覚再現とか。流石に現実の方じゃ腹減るし、衰弱するんだけど、ゲーム内での満足感って大事。
 でも何て言うんかな、塩っけがほしいし、胡椒とかぴりっと味を締める物とかないんかな。

「不味くはないんだけど、一味物足りないわねぇ」
「調味料がなあ……手に入りにくいんだ」
「ふーん……また一財産築けそうな感じはあるわねぇ」

 肉挟みパンをむしゃつきながら、店主と話し込む。まあプレイヤーなんだけどね。うまからずまずからず、微妙な顔をしているのを向こうも察している。

「MREよりはマシだけどこのままじゃ美味しくないから売れないなあ」
「はっきり言うなよ、パンだって作るの大変だってのに!」
「まずいもんはまずいのよ」

 しっかり全部食べ切ってから「ごちそうさん」と一言、うーん、まずい、もう一個!とは言えない、微妙な味ってすごいな。適度に微妙な味、やっぱり調味料って大事だわ。とりあえず塩探してみるか。美味しい物食べたいし、岩塩とかそういうの見つけたらゲーム内の食生活も充実するんかね。

「あれ、何やろうと思ってたんだっけか」

 あまり美味しくないサンドイッチを頬張りながら思い出す。まあ、生き急いでもしょうがないって言ったのは昨日の話だし、周辺探索するのもいいか。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空
SF
社畜?社会人4年目に突入する紗蘭は、合計10連勤達成中のある日、VRMMOの世界にダイブする。 ゲームの世界でくらいは、ほのぼのライフをエンジョイしたいと願った彼女。 女神様の前でステータス決定している最中に 「言霊の力が活かせるジョブがいい」 とお願いした。すると彼女には「言霊エンチャンター」という謎のジョブが!? 彼女の行く末は、夢見たほのぼのライフか、それとも……。 これは、現代とVRMMOの世界を行き来するとある社畜?の物語。 (当分、毎日21時10分更新予定。基本ほのぼの日常しかありません。ダラダラ日常が過ぎていく、そんな感じの小説がお好きな方にぜひ。戦闘その他血沸き肉躍るファンタジーお求めの方にはおそらく合わないかも)

処理中です...