最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
上 下
85 / 623
3章

80話 寄り道からさらに寄り道

しおりを挟む
 よくよく考えたら、第二の街に来るのが最低限の目標だったんで、此処からどうしようかと言う話になる。
 まあレベリングを進めながら、銃弾の材料を確保していくのが課題か。久々に無計画でゲームやっている気がする。

「さーて、どうしようかなあ……いい加減に金属薬莢に手出して銃弾まで作ってみる?」

 銃弾の構成はざっくりと弾、火薬、薬莢、雷管だが、前者2個に関しては既に作る事が出来るっていうか、もう出来てる。はっきり言えば今持っているパイプライフルを小型化して、他の銃で使う様にするわけだ。
 つまり、パイプ部分を小さくしていく、刻印部分を雷管にして非魔法化。
 何でもかんでもと言うかリアルな技術開発って小型化の歴史だし、それと一緒じゃない?
 
 普段使われているスマホだって元々はくっそでかい電話からだし、PHSとか今の子知らないだろ。果てはポケベルとか、車のバッテリーみたいな物をぶら下げた携帯ってのもあったわけだし。

「あれ、もう結構余裕じゃね?」

 いや、まあ……技術的に大変なのは確かだけどさ、おもっくそ工業製品でこの異世界ベースの世界で作れるのかって所になるわけだけど……それでもゲーム処理は結構あるから意外といけるんじゃないか?とは思っている。

「そうだよね、細長い鉄筒作って輪切りにしていってケツに雷管押し込める穴つくりゃいいわけだし?」

 色々と怒られそうな感じではあるが、死ぬほど簡単な解釈をすればそうなる。
 まあ難しい難易度の物を作るのは確かだけど、これくらい楽観的に構えておいたほうがやれるだろうしな。
 
 まー、やっぱりこの辺は鍛冶だけじゃ駄目そうだから、細工とか彫金とかの複合作業でレシピ開発さえできれば後は自動製作でさくさくよ。自力工場生産みたいなものになるさ。

「硫酸が出来れば化学的に色々出来る事が増えるからそれを狙うのもありかなあ……」

 って、思ったんだけど、あれ……硫酸作れる材料は持ってるな。確か硫黄と硝石だったかな、あれを混ぜ燃やして冷やすんだったか。化学式はどうだったかな……何か合わせたらいい感じになってた覚えがあるんだけど。

「って言うか硫黄と硝石の需要高すぎじゃね……硝石の情報一つでやっぱ一財産築けるじゃん」

 情報ギルドに条件付きで渡したとはいえ、どれくらいで売って稼いでるのか聞くの忘れてたわ、どんだけあれで潤ってるのか知らないけど今度もう一度問いただしてやらないと。

 と、少し話しがそれたが、硫酸も作れるとなると、やっぱり硫黄と硝石を火薬だけに全部つぎ込むってのは今後控えた方がよさそうだ。硫酸硝酸は科学の基本だったの忘れてたよ。

「何よ、まだやる事いっぱいあるじゃないの」

 こりゃー大変だなーと、呑気に言いながら露店巡りを開始する。



 ゼイテはエルスタンに比べて露店の規模は小さいが、採れるものが変わってくると品揃えも変わってくる。
 どちらかというとエルスタンは総合デパート感がかなり強かった。もう下から上までなんでもあります、みたいな感じで。
 ゼイテに入るとちょっと高級志向感が強まる。さすがに周辺マップで採れるものがメインになるし、エリア切り替えもちょっとの手間だけど結構めんどくさいしな。
 
 で、並んでいるものは周辺採取とモンスター素材ばかりが多い、錬金素材って興味ない人とか関係ない人にとっちゃ使い道もわからない上に取る必要がないから基本無視されがち。
 鍛冶やらないのに、採掘しても売るしかない上に安いってならやらんよね。

 専門でやってる人物に売るって言うてもあるけどそれはそれで揉めたりするからなあ…今の相場がーとか他のMMOでよく聞いたわ。ドロップ率が低いからとか需要があるからとかで、初心者とか入門者が必須なのに高額すぎて手を出せない、かと言って狩りに行ったら上級者が乱獲してるからそもそも狩れないとか。

「まだそう言うのになってないだけマシねぇ、100万規模とかじゃないし、そもそもの人口少ないから悪い噂ってすぐ広まるし」

 近くにあった露店の動物肉を串焼きにしたものを頬張りつつウィンドウショッピング。さっきも言った通り、素材やら周辺採取ばかりで大したものが少ない。ついでに言えば無人販売が大半で、更新されてないものもちらほらと見受けられる。

「イベントあったりしたし、消耗したのを回収したりなんだりかしらねぇ…張り付いて露店見る必要ってあんまりないか」

 古めのMMOでもあったが露店を開いている最中でもログアウトできないからログインしっぱなしにしておかないといけないって言うのがあったな。
 サーバーの負荷とか知ったこっちゃねえと大量のBOTで埋められるとか、どこでもモンスターを出せるアイテムでその露店街を全滅させるテロとかあったなあ。

「料理系プレイヤーだけはちらほらいるみたいだけど」

 肉の串焼きを食べながら次の露店を覗きながらふーむと唸る。
 今目の前にあるパンと肉のサンドイッチを見つめながら食べるかどうかが今の問題だからだ。
 うまいのは確かなんだろうけどなあ。料理って消費期限とかないんだっけかな。インベントリに仕舞っておけば何一つ問題なく保存できるし。
 
「大量買いしておくかなー……でも味の追求だから回復量がMREより低いってのがなあ……」

 美味い物は食べたい、しかし効率が悪いとなると同じものを大量に食べなきゃいけない。幾ら美味い物でも何個も食うのはなあ……MREはまずいのさえ我慢できれば回復量20%だから悪くはないんだよ。
 流石レーションだって思える効果と量なんだよなあ……って事はつまり美味しいMREさえできれば完璧じゃね?

「で、あんた……買うの?買わないの?って言うか食べるの?食べないの?」
「味は見ておこう」

 ちゃりっと300Z(ゼニー)の支払いをして受け取るサンドイッチ……これイッチなのかウィッチなのか統一してほしいわ、ほんと。んで、さっそくそれに齧りつく。
 もうがっつり肉っていう味とパンの甘さが口の中を伝わってくる。フルダイブゲームってすげえわ、味覚再現とか。流石に現実の方じゃ腹減るし、衰弱するんだけど、ゲーム内での満足感って大事。
 でも何て言うんかな、塩っけがほしいし、胡椒とかぴりっと味を締める物とかないんかな。

「不味くはないんだけど、一味物足りないわねぇ」
「調味料がなあ……手に入りにくいんだ」
「ふーん……また一財産築けそうな感じはあるわねぇ」

 肉挟みパンをむしゃつきながら、店主と話し込む。まあプレイヤーなんだけどね。うまからずまずからず、微妙な顔をしているのを向こうも察している。

「MREよりはマシだけどこのままじゃ美味しくないから売れないなあ」
「はっきり言うなよ、パンだって作るの大変だってのに!」
「まずいもんはまずいのよ」

 しっかり全部食べ切ってから「ごちそうさん」と一言、うーん、まずい、もう一個!とは言えない、微妙な味ってすごいな。適度に微妙な味、やっぱり調味料って大事だわ。とりあえず塩探してみるか。美味しい物食べたいし、岩塩とかそういうの見つけたらゲーム内の食生活も充実するんかね。

「あれ、何やろうと思ってたんだっけか」

 あまり美味しくないサンドイッチを頬張りながら思い出す。まあ、生き急いでもしょうがないって言ったのは昨日の話だし、周辺探索するのもいいか。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

処理中です...