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3章

77話 再出発

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 ダンジョンの最奥、オーソドックスなゴーレムを相手しながら、えっちらおっちらと走り相手のパターンを見る事、数分。
 ここ最近、相手にしてるのがデカブツの耐久が多い奴ばっかりじゃない?いや、まあ別に良いんだけど、こういう魔法生物と戦う縁があるのかね。基本的にガンナーのメリットはやっぱり固定ダメージによるごり押しと連射力による制圧射撃なので相性としては悪くないけどさ。
 それにゴーレム自体の動きはかなり緩慢ではあるのだが、攻撃動作からのはかなりの速度と言うか、振り下ろし系の攻撃はかなり早い上に、地面が陥没したり、揺れるほうが結構厄介だ。
 そんな事をしている間に地面はひび割れが起き、常に攻撃による地震、足元が不安定になるわ近づくのは危険だしで面倒な訳だが、だったら影響が大きくなる接近戦じゃなく、遠距離戦をメインにして距離を取って射撃すればいいだけだ。

「でもまあ、試し打ちにはいい相手だよな」

 そんな事を言いながら大きくため息を吐き出して、回転式拳銃を右腰から抜くと同時に腰構えのまま2射するクイックドロウ。怯んだ所にさらに残った4発分を叩き込んで追撃。
 片手で空になった回転式拳銃をインベントリに放り込みながら、左腰に入れておいた自動式拳銃を抜いてコンパクトに構え直して連続射撃。
 空薬莢が落ちる音をさせつつ一定距離を保ったまま弾倉内が空になるまで撃ち尽くし、撃鉄が空を切る音を2度程聞いてからまたインベントリに仕舞い、代わりに鳳仙花をずるりと抜き出す。
 ストックに頬を付け、しっかりと狙いを付けた上で、連続2射。「ババン」とぶれるような音をさせながら計40発の子弾が発射され全部命中しなくても細かく固定ダメージを刻んでいく。
 水平2連式の弱点でもある、2発撃ったら弾切れと言うのも装填スキルを使って即リロード。きゅぽんと排莢音をさせて後ろに飛んでいく薬莢を横目に見つつ、タイムロス無しに指に挟んだ銃弾を一発ずつ入れ直し、すぐに元に戻す。装填スキル最大のごり押しプレイとも言うが。
 発砲音をさせ、2発撃っては薬莢を飛ばし、入れ直しを繰り返して一定距離を保ちつつ特に慌てる事なく撃ち続ける。……発砲、装填、発砲、間にMPポーションを挟んで容赦なく撃ち続ける。

 ここまで撃ち込んだらぼろ雑巾になる相手を見つめながらも淡々と引き金を絞り続ける。以前にも軽くあったが、ガンナーのメリットとして手数が多いので相手のヒットストップを狙えるのも大きい。勿論どの相手でも起きるので、ボスだとしても攻撃タイミングを軽くずらせたりもする。
 ボスでタイマンで遠距離攻撃をしてこない相手何てこんなものだ。何でこんな弱い相手に苦戦するPTが多いのかが理解できん。もうちょっと歯ごたえのある相手じゃないと勿体ないってのに。

「1発/3万の高級品なんだからな?」

 ズタボロになった相手に止めの一撃を撃ちこむ。まったく……せっかく作れた銃弾だってのに、もう大量投入だよ。

 





 
 ……時は遡り。

『To The World Roadへようこそ』




 いつものように朝……と言うか昼に近い時間に起床。ご飯と着替えと家事にシャワーといつものルーティーンの様にやる事やってからログイン。リアル11時、ゲーム内時間で1/18の0時ぴったりだ。
 一応計画的には料理スキルを覚えて、MP周りを整え、火薬を補充するって所かな?あと、スーツの修復も頼んでいたから出来ているのか確認しに行くのも必要だな。
 

【最重要】料理スキルを覚える
MP補正アクセを作る(細工のレベリング)
MPポーションの量産(錬金のレベリング)
硝石の回収及び火薬の量産


 とりあえず必要なのはこの4つだな。銃の改良回りはテンションのままに手に入れた新規銃3丁でどうにかなるから、パイプライフルはこのまま現役にしよう。ああ、そうだ忘れていたけど固定パーツも開発も進めないといけないな。
 どっちにしろまずは料理スキルを覚えてくるかな?
 エルスタンから出ていかないから当たり前になっているのだが、冒険者ギルドに行って、料理ギルドの位置を聞いて速攻で取りに行く。ちなみに料理ギルドの受付にいたのは和洋中の中だった。やっぱりここの運営ちょっと捻くれてるんじゃないのかね。
 そんなわけでさくっとチュートリアルも受けてフライパンと料理スキルの取得完了。ついでに料理レシピも手に入れた。


レシピ名:料理入門
詳細:まずは簡単な物から、手の込んだものはあまりない


 フライパンだけしかないので基本的に焼きしかできないわけだが、モンスター狩りながら料理素材やら集めながら試作しよう。農業系のプレイヤーの所に行って材料を確保するっていうのも手だが……やっぱり問題としては、他プレイヤーとの交流になるんだよな。

「うーん……先にMPポーションのレシピ確認してから、ゴリマッチョにMP補正の上がるようなアクセの作り方を聞いて装備を回収したらとりあえず火薬を増やして……」

 この辺りまでは正直なところ既定路線と言うか計画を立てていた状態なのでなんら問題はない。何かあるとしたらこれを作っている途中に別のやりたいことが増えてそっちをやってしまうと言う所だろうか。
 いや、ダメだ、今回は流石にやる事を1つずつ潰していかないと。

 と、言う訳でまずは錬金ギルドにやってきてMP下級ポーションのレシピを購入する。地味に3,000Z(ゼニー)もしてくれやがったよ。
 とは言え、このT2Wって結構MPの消費が多いから、錬金のGLvが低くても購入できるって部分は良かった。


レシピ名:MP下級ポーション
詳細:薬草×5 ミント×5 水×1
  :煮詰めて混ぜるとすぐできる


 MP部分にミント混ぜるのに美味しくないのかって思うわ、それにしてもHP下級ポーションに比べてやっぱり若干材料を多く使うってのはしょうがないね。
 これでMPに関してはとりあえず道中ちまちま採取しながら適宜作っていけば問題ない気がする。装填さえしなければそこまでMP切れ起こす事も無いし大丈夫だろう。


 もう今日はさくさくやる事やって火薬を増やしてエリア2の先まで行きたい。
 そうだよ、今回のログインでは第二の街まで行きたい、そういえば次の街の名前ってなんだっけか……とは言えあまり固有名詞が多いとめんどくさくなる。通じりゃいいんだよ、通じりゃ。
 
「で、修復終わってる?」
「あなたねぇ、フレンド登録しないとコールできないじゃないのぉ?」
「その機能あんまし使ってないんだけど」

 そんな事を言いながら「ピコン」とシステム音声が頭に響く。メニューを開いて確認すればフレンド申請の案内が飛んできているので申請する。

「随分と和風な名前じゃない」
「気軽に薫ちゃんってよんでねぇ」

 ゴリマッチョの名前が判明したわけだが、まあ変わらず私はゴリマッチョとしか言わないけど。

「ちなみになんだけど細工出来る?」
「うーん、そこまで高くないわねぇ、裁縫メインだし」
「ステータス補正の入るアクセサリーとガンベルト欲しかったんだけどなぁ……やっぱり自作か」
「うちの子達で呼んであげようか?」
「いや、いいわ、そこまでしたら逆に悪い」

 って言うかいい加減に、クラン作って専門職集めた方がいいんじゃないの?って思ったけど、あの情熱をみたらそりゃ作ってるよね。

「そういやクランどうしてんの?」
「作ったわよぉ?『ルージュ』って名前のブランドよぉ」
「口紅ねぇ……それにクランじゃなくてブランドってかい……クランハウスは?」
「資金募集中ねぇ、あなたもカンパしてくれたらちょーっとおまけしたげるわよ?」

 ふむ、と考えてメニューを開き、硬貨データを取り出して指ではじいて薫に投げ渡す。

「少ないけど、取っときなさい」
「おっと、っとぉ……いいわけぇ?」
「デスペナで吹っ飛ばすくらいなら有意義に作ってくれた方がいいじゃない」

 近くの椅子に座って足を組みながら、硬貨データを確認する所を眺める。そこそこの金額……でもないけど、驚いた顔をしたのは初めてか。

「あなた7万って……!」
「先行投資って大事じゃない」
「もぉ、だいすきっ!」

 ハグしてくるのを避けて、いつも通りため息を吐き出してからスーツを受け取って着替える。修復だけだから性能は変わらずだが、ちょっと不満顔で此方を見てくる。

「あによ?」
「いやぁ、こんなに貰って据え置きってのはちょーっとプライドがねぇ?」

 はいはい、と軽く流してその場で装備をし直してからコートを着る。ああ、慣れていくって怖いけど、性能が良いからしょうがないな。
 
「じゃあ、また今度防具作っておいてよ」
「それじゃあ遠慮なく?」

 ついでに裁縫ギルドにもある細工用に使う動物皮を35枚購入。やっぱりなんでもかんでも作って貰ったりするのはあまり良くないな、頼り切るとその作れる人物がいないと手がでなくなるのはいただけない。まあアクセサリーに関してはそこまで優先度が高いわけじゃないし、MP下級ポーションさえ飲んでいればどうにかなる。これも道中ちまちま作っていこう。

 さて、エルスタンで出来る事はこれくらいだな。後はロックラック狩りをして最低でも硝石を5個はキープしたいけど……その前に硫黄取りに行くか。東エリア2とか久々に行くけど、今回は北エリア側から第二の街に進んで行く予定なので、軽い寄り道になるな。
 流石にもうあそこの連中に負けるほどじゃないし、余裕持って10個分入手できればいいだろう。ついでにくず鉄玉も鉄玉とかに出来ればもうちょっと通常攻撃力もあがりそうじゃない?

「さーて……採掘して、洞窟行って、そのまま北エリア進行開始ね」

 珍しく計画通り進んでるんじゃないの?
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