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2章
外伝2 アカメ以外
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【ガウェインの場合】
かなり早くグループ内を統率し、人海戦術に近い事をして村の周辺を一気に探索して屋敷を探り、綿密な計画を立てた上でしっかりとイベントのフラグを踏んだはずだ。
1日目に屋敷の発見、2日目に周囲探索、3日目に屋敷内の攻略、4日目に中ボス、そして5日目に大型ボスの撃破。自分でも自惚れてしまう程に完璧だと思った。
しかし結果的にグループ順位は2位、グループ個人と全体個人は1位なわけだったのだが、それでも逃したと言う事は私たちよりも早くイベントのフラグを突破して、撃破したのが他にもいたと言う事だ。
自分のクラメンもグループには一人しかいなかったが、それでもかなりの電撃戦が展開でできたはず、だった。
結果発表の際にはもちろん1位と言う事でスポットを浴びるのだが、どうも腑に落ちないと言うか、悔しさがこみ上げる。
しかしここで感情をあらわにしてまくし立てるのはいけない。自分よりもゲームの上手い人物はそりゃ4万9999人の中にいるだろうし、それでも私はその中のトップではあるわけだ。
「と、思っていたのですけどねぇ……!」
グループ1位の発表がされた時、沸いていたプレイヤーの中に一人だけ明らかにやる気のない、沸いていない人物を見つけるまではトップだと思っていた。
勝てないなら全部負けと言わんばかりに不貞腐れている黒髪で赤い目のドラゴニアンを見るまではだ。
確かに私よりも柔軟かつ強行突破する機転の良さに爆発力も高い、あの時使われた爆弾よりも強力な物もあるだろうし、出し惜しみして失敗するような人物ではないのは理解できる。
だとしても速過ぎる気もするが……地味に納得が出来る。
やはりあの時無理にでもスカウトしておけば良かったと今更ながら後悔するとは。
そうしてクランハウスに戻ってきてから自分のポイントを確認しながら他のメンバーが戻ってくるのを出迎える。それぞれポイントがいくつだとか、足りないから代理交換したうえでの金銭取引等、わいわいと賑わっている。
「兄さん、浮かない顔だね」
「グループ1位を取られたのが恋焦がれた相手でしてね」
向かいに座る弟を見つめながらインベントリからティーセット2つ取り出して紅茶を入れる。料理スキル……ではなく、出来合いのアイテムなのですぐに用意できる。慣れた手つきで犬の口で紅茶を啜る。
「……そんな相手いた?」
「きっと私が唯一勝てない相手でしょう」
「それはレベルなのか、性格なのか」
「ふふ、性格、ですかね……レベルで言えば倍以上差がありますし」
メニューのフレンドリストをみながらそんな事をぽつりと零す。
【チェルシーの場合】
「よーし、終わりね、じゃ戻るわ」
「ええ、ちょっとぉ!?」
あっさり転移して帰っていくアカメさんを見ながら大きくため息を吐き出す。最初にPTを組んだ時から思っていたけど、あの人、本当に人間なのかな。
まず人としての対応が冷たすぎる。
あまり僕も人の事を言えないけど、それにしても余計な会話も無いし、何を考えているのか分からない上に効率厨すぎる。
それに加えて、人の事無茶苦茶に振り回すわ、振り回しておいて面倒なところは全部丸投げしてくるし、苦手だって言ってる所をガンガン押してくる上に、重い装備とかでも遠慮しないし……とか、とか、とか……。
「最後まで自分勝手なんですから……」
イベント参加時の場所へ転移され一息。
増えたフレンドリストを見て思い出した、アカメさんとフレンド登録していない。
28人もフレンドが増えたから、の前に。リーダーだって言われてその後はのらりくらり逃げられていたし、あの時組んでいた人達と行動していたせいでタイミングが無かったよ。
「おーい」
「チェルー」
「ん、あ、お疲れー」
T2Wでいつも一緒にいる友達も戻ってくる。で、すぐにわいわいとイベントの成績を話したりし合う。やっぱり僕の順位は普通に考えても高い方だよなあ……まあこれもアカメさんのおかげと言うか、せいなんだけれど。
「ってかチェル、ちょっと強くなった?」
「いっつもビビってるからタンクで言ってたのに」
「イベント最中に色んな無茶ぶりされたからね……」
「えー、どんなー?」
「えっと、それはね」
何だろう、この普通の友達との会話が新鮮に思える。
戦闘ばっかりでゾンビの群れに突っ込んで来いとか、強力な攻撃は全部受けろとか無茶ぶりしてこないし、あーだこーだ楽しい会話とかもしてない。
そうしてイベントの時の愚痴をこれでもかと吐き出しまくる。聞いてる二人は良いリアクションしてくれるけど、なんだろう。普通すぎてちょっと物足りない。
「あ、ちょっとまって」
「なしたんー?」
「いや、フレンドからクラン作ろうって」
「イベントでフレンド増えたの?」
「うん、ざっと30人」
「多くない?」
「でもまあ、一番お世話になった人はさっさと行っちゃったから」
そういえばアカメさんはエルスタンのエリア2から先まで行ったことないって言ってたなあ……クラン作りに行くときにちょっと探してみるかな。
「会えるといいねー?」
「チェル、コミュ障だしなあ」
「二人もあの人に会えば多分こうなるよ?」
自分の事を指さして苦笑いする。リアル友達に悪影響と言うか僕自体の見られ方が変わる危険性の高いアカメさんを紹介する気にはならないけど。
【マイカの場合】
なんか気が付いたら結果発表終わってた。
あたしとしては戦えればいいから、あんまし順位は気にしてなかったしなぁ。
なんならあそこでアカメちゃんとボス連戦出来た方が楽しかったなぁ。
って言うかあたしの事、散々バトルジャンキーとかおこちゃまとか言ってきたけど、失礼すぎじゃない?あたしだって戦闘以外の事も出来……出来……いや、出来ないけどさぁ?
そもそもアカメちゃんがなんでも出来るから比較してくるんじゃん、あたしが必要ないから取ってないだけだしー、あんなことまで言わなくてもいいじゃんって思うじゃん。
あ、でも団子とお茶食べたときはそこそこマジに怒ってたけど。
「ちぇー、スキル2枠とろっかなぁ」
なんかまた会ってもバトルジャンキーって言われるの悔しいわけだし、っていうかバトルジャンキーっていうなら2枠かなぐり捨ててもっとジャンキーになった方が強くない?
「いや、そうだよねぇ、そもそも前衛として誘われたわけじゃん?」
うんうん、やっぱり2枠なんて必要ないと納得。
そういえばイベント参加時の場所ってどこだったかなーと思ったら、ダンジョンの最奥でボス戦した後だったわ。時間経ったからまた沸いてるけど、これあんまし強くなくてがっかりしたんだった。
「もー、弱いのはいいんだよなぁ」
飛んでくる攻撃を足で捌いてカウンター。うっわ、あたし強すぎ……!
いや、一回でかいのとか強力な相手の攻撃貰うとそれ以下の攻撃ってどーも燃えないのよねぇ。
足で捌いたり、ガントレットを使って攻撃を受け流して反撃。
「あたしさいきょぉー!」
一旦距離を取ってから、一気に走りだし距離を詰めた所で、ジャンプと同時に蹴り技。
背景暗転してでかでかと必殺技の文字とか出てほしいなー。
「いっちばーん!」
一方的に蹴り倒したボスを横目にびしーっと腕を突き上げる。
かなり早くグループ内を統率し、人海戦術に近い事をして村の周辺を一気に探索して屋敷を探り、綿密な計画を立てた上でしっかりとイベントのフラグを踏んだはずだ。
1日目に屋敷の発見、2日目に周囲探索、3日目に屋敷内の攻略、4日目に中ボス、そして5日目に大型ボスの撃破。自分でも自惚れてしまう程に完璧だと思った。
しかし結果的にグループ順位は2位、グループ個人と全体個人は1位なわけだったのだが、それでも逃したと言う事は私たちよりも早くイベントのフラグを突破して、撃破したのが他にもいたと言う事だ。
自分のクラメンもグループには一人しかいなかったが、それでもかなりの電撃戦が展開でできたはず、だった。
結果発表の際にはもちろん1位と言う事でスポットを浴びるのだが、どうも腑に落ちないと言うか、悔しさがこみ上げる。
しかしここで感情をあらわにしてまくし立てるのはいけない。自分よりもゲームの上手い人物はそりゃ4万9999人の中にいるだろうし、それでも私はその中のトップではあるわけだ。
「と、思っていたのですけどねぇ……!」
グループ1位の発表がされた時、沸いていたプレイヤーの中に一人だけ明らかにやる気のない、沸いていない人物を見つけるまではトップだと思っていた。
勝てないなら全部負けと言わんばかりに不貞腐れている黒髪で赤い目のドラゴニアンを見るまではだ。
確かに私よりも柔軟かつ強行突破する機転の良さに爆発力も高い、あの時使われた爆弾よりも強力な物もあるだろうし、出し惜しみして失敗するような人物ではないのは理解できる。
だとしても速過ぎる気もするが……地味に納得が出来る。
やはりあの時無理にでもスカウトしておけば良かったと今更ながら後悔するとは。
そうしてクランハウスに戻ってきてから自分のポイントを確認しながら他のメンバーが戻ってくるのを出迎える。それぞれポイントがいくつだとか、足りないから代理交換したうえでの金銭取引等、わいわいと賑わっている。
「兄さん、浮かない顔だね」
「グループ1位を取られたのが恋焦がれた相手でしてね」
向かいに座る弟を見つめながらインベントリからティーセット2つ取り出して紅茶を入れる。料理スキル……ではなく、出来合いのアイテムなのですぐに用意できる。慣れた手つきで犬の口で紅茶を啜る。
「……そんな相手いた?」
「きっと私が唯一勝てない相手でしょう」
「それはレベルなのか、性格なのか」
「ふふ、性格、ですかね……レベルで言えば倍以上差がありますし」
メニューのフレンドリストをみながらそんな事をぽつりと零す。
【チェルシーの場合】
「よーし、終わりね、じゃ戻るわ」
「ええ、ちょっとぉ!?」
あっさり転移して帰っていくアカメさんを見ながら大きくため息を吐き出す。最初にPTを組んだ時から思っていたけど、あの人、本当に人間なのかな。
まず人としての対応が冷たすぎる。
あまり僕も人の事を言えないけど、それにしても余計な会話も無いし、何を考えているのか分からない上に効率厨すぎる。
それに加えて、人の事無茶苦茶に振り回すわ、振り回しておいて面倒なところは全部丸投げしてくるし、苦手だって言ってる所をガンガン押してくる上に、重い装備とかでも遠慮しないし……とか、とか、とか……。
「最後まで自分勝手なんですから……」
イベント参加時の場所へ転移され一息。
増えたフレンドリストを見て思い出した、アカメさんとフレンド登録していない。
28人もフレンドが増えたから、の前に。リーダーだって言われてその後はのらりくらり逃げられていたし、あの時組んでいた人達と行動していたせいでタイミングが無かったよ。
「おーい」
「チェルー」
「ん、あ、お疲れー」
T2Wでいつも一緒にいる友達も戻ってくる。で、すぐにわいわいとイベントの成績を話したりし合う。やっぱり僕の順位は普通に考えても高い方だよなあ……まあこれもアカメさんのおかげと言うか、せいなんだけれど。
「ってかチェル、ちょっと強くなった?」
「いっつもビビってるからタンクで言ってたのに」
「イベント最中に色んな無茶ぶりされたからね……」
「えー、どんなー?」
「えっと、それはね」
何だろう、この普通の友達との会話が新鮮に思える。
戦闘ばっかりでゾンビの群れに突っ込んで来いとか、強力な攻撃は全部受けろとか無茶ぶりしてこないし、あーだこーだ楽しい会話とかもしてない。
そうしてイベントの時の愚痴をこれでもかと吐き出しまくる。聞いてる二人は良いリアクションしてくれるけど、なんだろう。普通すぎてちょっと物足りない。
「あ、ちょっとまって」
「なしたんー?」
「いや、フレンドからクラン作ろうって」
「イベントでフレンド増えたの?」
「うん、ざっと30人」
「多くない?」
「でもまあ、一番お世話になった人はさっさと行っちゃったから」
そういえばアカメさんはエルスタンのエリア2から先まで行ったことないって言ってたなあ……クラン作りに行くときにちょっと探してみるかな。
「会えるといいねー?」
「チェル、コミュ障だしなあ」
「二人もあの人に会えば多分こうなるよ?」
自分の事を指さして苦笑いする。リアル友達に悪影響と言うか僕自体の見られ方が変わる危険性の高いアカメさんを紹介する気にはならないけど。
【マイカの場合】
なんか気が付いたら結果発表終わってた。
あたしとしては戦えればいいから、あんまし順位は気にしてなかったしなぁ。
なんならあそこでアカメちゃんとボス連戦出来た方が楽しかったなぁ。
って言うかあたしの事、散々バトルジャンキーとかおこちゃまとか言ってきたけど、失礼すぎじゃない?あたしだって戦闘以外の事も出来……出来……いや、出来ないけどさぁ?
そもそもアカメちゃんがなんでも出来るから比較してくるんじゃん、あたしが必要ないから取ってないだけだしー、あんなことまで言わなくてもいいじゃんって思うじゃん。
あ、でも団子とお茶食べたときはそこそこマジに怒ってたけど。
「ちぇー、スキル2枠とろっかなぁ」
なんかまた会ってもバトルジャンキーって言われるの悔しいわけだし、っていうかバトルジャンキーっていうなら2枠かなぐり捨ててもっとジャンキーになった方が強くない?
「いや、そうだよねぇ、そもそも前衛として誘われたわけじゃん?」
うんうん、やっぱり2枠なんて必要ないと納得。
そういえばイベント参加時の場所ってどこだったかなーと思ったら、ダンジョンの最奥でボス戦した後だったわ。時間経ったからまた沸いてるけど、これあんまし強くなくてがっかりしたんだった。
「もー、弱いのはいいんだよなぁ」
飛んでくる攻撃を足で捌いてカウンター。うっわ、あたし強すぎ……!
いや、一回でかいのとか強力な相手の攻撃貰うとそれ以下の攻撃ってどーも燃えないのよねぇ。
足で捌いたり、ガントレットを使って攻撃を受け流して反撃。
「あたしさいきょぉー!」
一旦距離を取ってから、一気に走りだし距離を詰めた所で、ジャンプと同時に蹴り技。
背景暗転してでかでかと必殺技の文字とか出てほしいなー。
「いっちばーん!」
一方的に蹴り倒したボスを横目にびしーっと腕を突き上げる。
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