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2章
63話 臨時PT
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イベント2日目8時、プレイヤーメールに一通運営からのメールが来ている。
内容は現時点での順位が書いてあるものだが、大した狩りもしてないし、進展もないので個人順位はほぼ最下位。全体順位はまだまだ序盤なので似たり寄ったりだ。
さてこれで問題がさらに出てきた訳だが、個人順位が公開されたと言う事は、それで揉める気がする。主にパーティ絡みでだが。
「問題は最下位の私がPT組んでくれって頼んで了承を得られるかってのもあるし、そもそもパーティを組めるのかって話になるんだよなあ」
可能な限り戦闘職で前衛がいいんだが、そういう人は大体他のPTをもう既に組んでいるか常に前線やらエリア開拓で殆どが出払っている。
しらみつぶしに話を掛けるのは難しいだろうし、こういう時はちょっとした小技と言うか、連絡を出来る様にする為のアイテムが一つだけある。
「こういう使い方するもんじゃないんだろうけど」
邪魔にならないかつ目に付く所に露店を設営、無人販売所にメッセージを添える事が可能なので。
「PT募集 此方ガンナー 前衛希望 詳細コール求む」
と、書いておいてさっさとその場を離れる。やっぱり課金露店買っておいて良かった、露店っていうか伝言板代わりに使っているわけだけど。
設営も終わり、次にやる事は、あの深夜に外に出ていた村人の家に行って話を聞いてみると言う事だ。勿論何かあれば良し、何も無くても行動を起こしてくれればそれに対してどうこうする事が出来る。AI付きのNPCとは言え、感情的な物や表情まで読み取れるのは今までの経験上あるというのも確認している。
やれることはさっさとやらないと行けないし、例の家の前までにさっさ向かう。
そうして件の家の戸を叩いて住民が出てくるのを待つ。……聞こえなかったのか?もう一度戸を叩いてみるが、反応がない。ちょっと強めにがんがんと叩いてみるが、やっぱり反応はない。
流石に映画張りに戸を蹴破って中に入る訳にもいかないので近くに住んでいるおばちゃんを見つけて話掛ける。どこからか知らんがおばちゃん情報網ってリアルでも中々恐ろしいから頼りにしているぞ。
「あそこの人?そうねぇ、普通よ普通、もうね、ザ・一般人みたいな感じの普通の人、家族はいないけど近所付き合いもいいし、おばちゃんよく挨拶してるのよ、でもね最近あんまし挨拶返してこないからおばちゃんもう怒り心頭よそうそうお怒りと言えば食べ物が高騰してるってのに収穫量は減ってくるわ小皺は増えるわ家計は火の車になるわでもう大変なのようちには食べ盛りの子供がいるってのに天気も悪けりゃ景気も悪いわ洗濯物は乾かないわで……」
「ああ、うん、わかりましたわかりました」
まだマシンガン撃たれてるよ、どうやったらそんなにリロードもしないで撃ちまくれるのか不思議でたまらないんだけど、とにかくやめてもらって落ち着かせる。
もう喋りすぎてたとかそんな事も言わずに、喋りたいだけ喋ったらさっさと行ってしまった。私も年取ったらああなるんだろうか?コミュ力の塊みたいなことにはならないはずだよ、うん。
しかし喋りたい事喋ってくれたおかげで情報は手に入れた。
「独り身ってのも大きいし、最近挨拶を返してこないって所から、何かがあった可能性はかなり高いかな……あとは収穫量の減りと天気の悪さも関係してくるか?」
意外と得られる情報ってのは身近に転がっているもんだ。この辺の事を考えればやはり何かしらの異変はあるが、それに気が付いているのが少ないと言う事なのだろう。だからこそ村長や老人は「何もない」としか言えないんだ。
このままほったらかしにしたら住民の集団失踪とかでイベント失敗なんじゃね。まあこれも私の予想だからそうとは限らないし、ある程度は分かりやすい事件にはしていると思う。
「一応、足跡見てみるか」
深夜に出歩いていた村人の家屋の近くでトラッカーを使用する。昨日使った時と変わらず、画面が白黒になり足跡が強調表示されるのだが。
「うっわ……これわかんねえ……」
もうそこら中、足跡だらけ。対象の指定ができないのでプレイヤーが通ったりなんだりしているのもありぐっちゃぐちゃ。トラッカー自体は職業関係無しに手に入るスキルではあるんだろうけど、ターゲット指定とか選別出来る様にならないと、街中じゃまったくもって使えないスキルだな。
持続系のバフ扱いなので、自分で効果をキャンセルしてさっさと視覚を元に戻す。MPはきっちり5消費してるわけだけど、あらかじめ使っておいて良かった。
「雑貨屋でポーションだけ見とくか」
目頭を押さえて、目が疲れたという様にするが、別に疲れているわけではない。いつも言ってるが習慣と言うか、日常的にやってしまう癖みたいなものだ。
とにかくそんな事をしながら村の雑貨屋のラインナップを見ていく訳だが。
「ちょっと、MP下級ポーション一つで400Z(ゼニー)もするなんて思っていなかったって」
たしか通常のショップだと300くらいだったはずなので、若干の割高。とりあえず2本だけ買っておくわけだが、またすっからかんだよ、私の財布の中身は。ちなみに回復量は一本で10MP分だ。
名称:MP下級ポーション
詳細:【MP回復量10】見た目以上に美味しくない クールタイム20秒
トラッカー4回分で奥まで行ければいいんだが……そんな事を思っていたらコールが入る。
『もしもし?』
『……何?』
『あ、えっと……PT募集の件で……』
『と、そうだったわね……こっちはガンナーだけど、あんたは前衛で間違いないのよね』
『はい、それで何でPTを?』
『イベント進行の手がかりで山の中に入るんだけど、其れの付き合いだけどいい?』
『はい、大丈夫です』
『分かった、それじゃあ組むのにとりあえず村長の所集合で』
『分かりました』
ぷつっとそのままコールが切れる。フレンド外の場合はコール相手の名前を入れる事で遠距離会話が出来る便利機能っていうか会話ツールの一つ。普通のMMORPGじゃ内緒とかささやきとか言われるような感じのもの。
とにかくPT募集のコールが来たわけだし、一旦露店の方を回収しに行く。遠距離で店閉めたいのだが、そこはしょうがないね。村長の所に行く前に露店を閉じてからその足で向かう。
村の中心に村長の家があるのって便利ね、待ち合わせとして分かりやすいし。
どんな相手か聞き忘れたけど、村長の家の前に行くと一人、またタワーシールドを持っている相手が一人。おいおい、まさかの犬野郎再臨か?と、思っていたら違うみたいだ。
待っていたのはドワーフの男の子、身長130㎝くらいの青色の髪が特徴的な奴だ。
「あんたが、コールした奴?」
「あ、はい、そうです」
「もう一人くらい欲しかったけど、とりあえずはいいか……ちなみにあんたはどこまでイベント進めてるの?」
「周辺マップに異変がないかってのは調べましたけどそれ以上は」
やはり情報収集しないとこの辺りが限界のようだ。いつもの思案するポーズをしながら納得させるように自分に言い聞かせつつ、こっちの情報も共有しなければ。
「こっちは夜に不審に出歩く村人までは見つけたわ」
「それは攻略か前線組も見たらしいですけど」
「途中で追跡できたんだけど、深追いできなかったのよ」
「そのために?」
返事をするように頷いて、PT申請を飛ばす。これで会話もPT専用のが使えるのでいちいちコール指定しなきゃならないとか、そういうのもなくなるので会話はかなりしやすくなるだろう。少しだけ待つと「PTを組みました」と言うシステムメッセージが流れて、完了する。
「……できたか、私はアカメ」
「あ、僕はチェルシーです」
「とりあえず夜に行動するから、それまでは自由行動で」
「分かりました、現地集合で?」
「PT会話で連絡するわ、夜までに準備しなきゃならないから」
MPポーションもう数本買っておきたいし、ラビット狩りして肉を集めないといけない。予定の時間までは特に一緒にいる必要はないので、PT組んで早速別行動だ。相手も納得しているし、問題はないだろう。
PT自体は解散するまではどこまで遠くに行ったりなんだりしても解消されることはない。ついでにその人物がログインしているかログアウトしているかも分かる。
何にせよ、一番の難易度だった前衛の相手を相方に出来たのは大きい。盾から見たら耐久型だとは思うし相性的にもいいのを引いたんじゃないかな?
まさかあそこまでとは思っていなかったが。
内容は現時点での順位が書いてあるものだが、大した狩りもしてないし、進展もないので個人順位はほぼ最下位。全体順位はまだまだ序盤なので似たり寄ったりだ。
さてこれで問題がさらに出てきた訳だが、個人順位が公開されたと言う事は、それで揉める気がする。主にパーティ絡みでだが。
「問題は最下位の私がPT組んでくれって頼んで了承を得られるかってのもあるし、そもそもパーティを組めるのかって話になるんだよなあ」
可能な限り戦闘職で前衛がいいんだが、そういう人は大体他のPTをもう既に組んでいるか常に前線やらエリア開拓で殆どが出払っている。
しらみつぶしに話を掛けるのは難しいだろうし、こういう時はちょっとした小技と言うか、連絡を出来る様にする為のアイテムが一つだけある。
「こういう使い方するもんじゃないんだろうけど」
邪魔にならないかつ目に付く所に露店を設営、無人販売所にメッセージを添える事が可能なので。
「PT募集 此方ガンナー 前衛希望 詳細コール求む」
と、書いておいてさっさとその場を離れる。やっぱり課金露店買っておいて良かった、露店っていうか伝言板代わりに使っているわけだけど。
設営も終わり、次にやる事は、あの深夜に外に出ていた村人の家に行って話を聞いてみると言う事だ。勿論何かあれば良し、何も無くても行動を起こしてくれればそれに対してどうこうする事が出来る。AI付きのNPCとは言え、感情的な物や表情まで読み取れるのは今までの経験上あるというのも確認している。
やれることはさっさとやらないと行けないし、例の家の前までにさっさ向かう。
そうして件の家の戸を叩いて住民が出てくるのを待つ。……聞こえなかったのか?もう一度戸を叩いてみるが、反応がない。ちょっと強めにがんがんと叩いてみるが、やっぱり反応はない。
流石に映画張りに戸を蹴破って中に入る訳にもいかないので近くに住んでいるおばちゃんを見つけて話掛ける。どこからか知らんがおばちゃん情報網ってリアルでも中々恐ろしいから頼りにしているぞ。
「あそこの人?そうねぇ、普通よ普通、もうね、ザ・一般人みたいな感じの普通の人、家族はいないけど近所付き合いもいいし、おばちゃんよく挨拶してるのよ、でもね最近あんまし挨拶返してこないからおばちゃんもう怒り心頭よそうそうお怒りと言えば食べ物が高騰してるってのに収穫量は減ってくるわ小皺は増えるわ家計は火の車になるわでもう大変なのようちには食べ盛りの子供がいるってのに天気も悪けりゃ景気も悪いわ洗濯物は乾かないわで……」
「ああ、うん、わかりましたわかりました」
まだマシンガン撃たれてるよ、どうやったらそんなにリロードもしないで撃ちまくれるのか不思議でたまらないんだけど、とにかくやめてもらって落ち着かせる。
もう喋りすぎてたとかそんな事も言わずに、喋りたいだけ喋ったらさっさと行ってしまった。私も年取ったらああなるんだろうか?コミュ力の塊みたいなことにはならないはずだよ、うん。
しかし喋りたい事喋ってくれたおかげで情報は手に入れた。
「独り身ってのも大きいし、最近挨拶を返してこないって所から、何かがあった可能性はかなり高いかな……あとは収穫量の減りと天気の悪さも関係してくるか?」
意外と得られる情報ってのは身近に転がっているもんだ。この辺の事を考えればやはり何かしらの異変はあるが、それに気が付いているのが少ないと言う事なのだろう。だからこそ村長や老人は「何もない」としか言えないんだ。
このままほったらかしにしたら住民の集団失踪とかでイベント失敗なんじゃね。まあこれも私の予想だからそうとは限らないし、ある程度は分かりやすい事件にはしていると思う。
「一応、足跡見てみるか」
深夜に出歩いていた村人の家屋の近くでトラッカーを使用する。昨日使った時と変わらず、画面が白黒になり足跡が強調表示されるのだが。
「うっわ……これわかんねえ……」
もうそこら中、足跡だらけ。対象の指定ができないのでプレイヤーが通ったりなんだりしているのもありぐっちゃぐちゃ。トラッカー自体は職業関係無しに手に入るスキルではあるんだろうけど、ターゲット指定とか選別出来る様にならないと、街中じゃまったくもって使えないスキルだな。
持続系のバフ扱いなので、自分で効果をキャンセルしてさっさと視覚を元に戻す。MPはきっちり5消費してるわけだけど、あらかじめ使っておいて良かった。
「雑貨屋でポーションだけ見とくか」
目頭を押さえて、目が疲れたという様にするが、別に疲れているわけではない。いつも言ってるが習慣と言うか、日常的にやってしまう癖みたいなものだ。
とにかくそんな事をしながら村の雑貨屋のラインナップを見ていく訳だが。
「ちょっと、MP下級ポーション一つで400Z(ゼニー)もするなんて思っていなかったって」
たしか通常のショップだと300くらいだったはずなので、若干の割高。とりあえず2本だけ買っておくわけだが、またすっからかんだよ、私の財布の中身は。ちなみに回復量は一本で10MP分だ。
名称:MP下級ポーション
詳細:【MP回復量10】見た目以上に美味しくない クールタイム20秒
トラッカー4回分で奥まで行ければいいんだが……そんな事を思っていたらコールが入る。
『もしもし?』
『……何?』
『あ、えっと……PT募集の件で……』
『と、そうだったわね……こっちはガンナーだけど、あんたは前衛で間違いないのよね』
『はい、それで何でPTを?』
『イベント進行の手がかりで山の中に入るんだけど、其れの付き合いだけどいい?』
『はい、大丈夫です』
『分かった、それじゃあ組むのにとりあえず村長の所集合で』
『分かりました』
ぷつっとそのままコールが切れる。フレンド外の場合はコール相手の名前を入れる事で遠距離会話が出来る便利機能っていうか会話ツールの一つ。普通のMMORPGじゃ内緒とかささやきとか言われるような感じのもの。
とにかくPT募集のコールが来たわけだし、一旦露店の方を回収しに行く。遠距離で店閉めたいのだが、そこはしょうがないね。村長の所に行く前に露店を閉じてからその足で向かう。
村の中心に村長の家があるのって便利ね、待ち合わせとして分かりやすいし。
どんな相手か聞き忘れたけど、村長の家の前に行くと一人、またタワーシールドを持っている相手が一人。おいおい、まさかの犬野郎再臨か?と、思っていたら違うみたいだ。
待っていたのはドワーフの男の子、身長130㎝くらいの青色の髪が特徴的な奴だ。
「あんたが、コールした奴?」
「あ、はい、そうです」
「もう一人くらい欲しかったけど、とりあえずはいいか……ちなみにあんたはどこまでイベント進めてるの?」
「周辺マップに異変がないかってのは調べましたけどそれ以上は」
やはり情報収集しないとこの辺りが限界のようだ。いつもの思案するポーズをしながら納得させるように自分に言い聞かせつつ、こっちの情報も共有しなければ。
「こっちは夜に不審に出歩く村人までは見つけたわ」
「それは攻略か前線組も見たらしいですけど」
「途中で追跡できたんだけど、深追いできなかったのよ」
「そのために?」
返事をするように頷いて、PT申請を飛ばす。これで会話もPT専用のが使えるのでいちいちコール指定しなきゃならないとか、そういうのもなくなるので会話はかなりしやすくなるだろう。少しだけ待つと「PTを組みました」と言うシステムメッセージが流れて、完了する。
「……できたか、私はアカメ」
「あ、僕はチェルシーです」
「とりあえず夜に行動するから、それまでは自由行動で」
「分かりました、現地集合で?」
「PT会話で連絡するわ、夜までに準備しなきゃならないから」
MPポーションもう数本買っておきたいし、ラビット狩りして肉を集めないといけない。予定の時間までは特に一緒にいる必要はないので、PT組んで早速別行動だ。相手も納得しているし、問題はないだろう。
PT自体は解散するまではどこまで遠くに行ったりなんだりしても解消されることはない。ついでにその人物がログインしているかログアウトしているかも分かる。
何にせよ、一番の難易度だった前衛の相手を相方に出来たのは大きい。盾から見たら耐久型だとは思うし相性的にもいいのを引いたんじゃないかな?
まさかあそこまでとは思っていなかったが。
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