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2章

62話 追跡者

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 老人の家から出て、夜も更けた村の中を探索する。
 昼間に何もなければ夜に何かあると踏んで、村をまた歩き回る。家の明かりがあるのでそこまで暗くはないし、月明かりもあるので松明を使うほどではない。
 村の中を歩き回るが、特に何かしらの異変がある訳ではない、たまにモンスターがまぎれ込んでぴょこぴょこと飛び跳ねているのは見かけるが、ノンアクティブのラビットやラットなので害獣って感じが強い。兎って可愛いからって理由でほったらかしにされているが、場所に寄っちゃ立派な害獣。

 とりあえず目について近づいてきたのは倒しておいて、肉になってもらったが、それ以外は目新しい事も無い。こうなってくると他のプレイヤーを見つけて情報を共有したい所だが、それはそれで難易度高いな。基本的にこっちから話しかけた事ないし。

「ふむ、夜も問題なし……か、やっぱり村周辺に足を運ばないと行けないかな」

 ぐるりと村を一周してから戻ってきたのもあり、多少疲れた。やはり進展がないとだれるな。
 これで確定……とまではいかないが、とりあえず半日集めた情報としては。
 

 村では何事もない。
 住民絡みの問題でもない。
 昼、夜共に変わらず。


 と言う所だ。こうなってくると次はそれ以外、例えば作物に異常が出ている、生態系の異常が出ている、後は知らず知らずに村人が操られているというのを想定した動き方、になるか。
 流石に運営のざっくりした感じはもうちょっとわかりやすくてもいいんじゃないかって思えてきた訳だが、何でもかんでも手探りでやるのがコンセプトなのか?
 
「うーん……深夜まで待ってみるか……何も無さそうなら戻ってもいいし」

 野営をしているプレイヤーもちらほらと見かけつつも、村の中心にある村長宅辺りで邪魔にならない様に辺りを警戒しまわる。何とも地味な行動だ。
 
 しばらくその場で家屋の明かりが消えていく様を眺める。
 流石にこの時間帯まで動いているプレイヤーはおらず、自前のテントだったり、アクティブがいないような所で寝ているのが大半になる。
 やはり収穫無し、と思っていたのだが、戸の開く音と足音が聞こえて目が覚める。近くの住民が外に出てきたんだろう。プレイヤーも他の住民も気が付いていない。
 
「ビンゴ」

 指をぱちりと鳴らしたいところだが、ばれると厄介そうなので身を潜めながら音のした方へと向かう。
 
 

 戸の開いた音、足音がした家屋の前にきて辺りをぐるりと確認。特に誰かが歩いているとか、いるというのはない。誰も見ていないというのを確認してからしゃがみこんで地面をじっくりと見つめる。
 ほぼ舐めまわすんじゃないかってくらいしゃがみ、地面をじっくり見ながら足跡と言うか痕跡を探す。痕跡を潰さない様に自分自身の動きに注意し辺りを調べていく。傍から見たら完全に怪しい奴だ、数十分もじっくり地面を舐めまわし見ながら移動してるんだから。
 うーん、やっぱり駄目か……と思っていたのだが。


『トラッカーのスキルをアンロックしました』


 この場で新しいスキルか、確か追跡者とかって意味だったかな?



スキル名:トラッカー レベル:0
詳細:【アクティブ】【MP消費5】獲物の痕跡を辿る事が出来る様になる
  :レベルが上がると発見出来る物が増え 効果時間が延びる
  :レベル1:足跡を強調
備考:スキル使用時、目から残光が出る



 どちらかと言うと狩り向けのスキルだな。狙ったモンスターの痕跡を辿って、狩りをしやすくするとかそういうものだろう。広いエリアで狙った相手を探すって結構大変だしな。先込銃を持って追跡とか、もうガンナーっていうかマタギじゃん。
 今しか使わない気もするが、イベントを進めるために楽になるなら取得しておこう。



名前:アカメ 種族:ドラゴニアン

職業:ガンナー
基本Lv:12 職業Lv:12
HP:33/33 MP:15/15 
STR:6 AGI:15 VIT:2 
DEX:14 INT:2  RES:2
SP:残6

【スキル1】
二度撃ちLv1 装填Lv2 調合Lv1 カスタマイズLv2 銃剣Lv3 
銃格闘Lv1 ガンスミスLv3 トラッカーLv1


 
 早速トラッカースキルを使う。地味にMP消費きついな、これ。とりあえず使用してみると、画面が一気に白黒になり、足跡の部分だけがオレンジ色に強調表示されるようになった。
 さっきまで地面を舐めまわしてみていた甲斐はなく、狙っていたのは隣の家屋からだった。
 どうやら全部の痕跡と言うよりも一定時間経ったものは反応しなくなるようだ。じゃないと足跡まみれでわけわからんし。
 
「意外と便利かもね、これ」

 しばらく住民は外から出て来ていないはずなので、一つだけ外に出ている足跡を見つけてそれを辿り始める。深夜に村の外へと続いている足跡を辿りながら、それに付いていく。本当ならもう一人くらい連絡用として連れていきたいのだが、ソロなのでそういう事は無理な話だ。
 大体効果時間的には5分くらいかな。村の外にでてしばらく歩いてから一度効果が切れたので再度使用する。って言うかやっぱりINT上げないとMPきつい気がしてきた。銃撃戦になったら現状だとMPを使う訳だから、3回トラッカーを使ったら銃撃抜きで戦わないと行けない問題が出てきた。MP下級ポーションも購入しておけばよかったよ、こんなにMP使うと思っていなかったし。

「うーん……あまり遠くまで追跡できないな……」

 二度目のトラッカー効果が切れた所で足を止める。振り返れば村から離れて、山の方へと足跡が向かっているという所で追跡をやめる。此処から先に何かあるのは確定だろうけど、これ以上はMP回復を待っていたら足跡を追跡できるかどうか分からない。
 メニューを開き、マップにピンマーカーを打っておく。明日の夜にもう一度張り込みして、ここから追跡を入れよう。戻ってきた足跡を辿るという方法もある事はあるが、途中で途切れるというのを考えれば付いていったほうが確実性は高い。

「どっちにしろこれ以上は限界か……雑貨屋にMP下級ポーションがあればいいんだけど」

 HPはまだ作れるがMPのポーションは作れない、こうなったらちゃんとレシピ確認しておけばよかったよ。後は苦手なコミュニケーションでどうにか一緒に行ける相手を探すというのも手だが。
 とにかく今日は此処までだ、功を焦ってはなんとやら。
 来た道を引き返し、深夜過ぎに老人の家に戻ると、敷いてあった私の分の布団に倒れ込み、睡眠を取る。そこまで寝る必要はないのだが、すぱっと数時間スキップできるので活用するだけさ。
 
 「あっ」と言う間に2日目の朝7時、老人は朝が早いよ、もう起きてる。

「……昨日は、遅かったのう」
「ちょっと気がかりな事があってね」

 昨日の残り物をよそった椀を受け取り、それを食べながらぽつりぽつりと会話する。
 そういえば名前すら聞いてないな……まあ、必要になった時で良いだろう。


 二日目、やる事は多分このイベント最大級の難易度だろう。

 「PT組みませんか?」と。
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