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2章

61話 ジジデレ

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 村長宅から出てきて、とりあえずいつもの様にやる事を考えて計画を組んで行こう。
 闇雲に手を出してもいけないし、ゲーム内時間5日って結構長い。リアルタイムじゃ5時間だが、時間の感覚は違うからだ。今まで別に何かしら昼夜の事を気にしていなかったが、そもそも気にする必要が無かったのもある。
 
 が、ここで問題になってくるのは夜になると住民が完全に寝ているので情報収集が出来ないという点だ。
 一応イベントマップに転送された時には昼前くらいだったのでまだ暗くはならないし、行動出来る事はある。ここからはしらみつぶしに一軒一軒話を聞いて回る。


「収穫は無し、と……」

 あれからゲーム内数時間かけて話を聞きまわる。特に何かが起きたわけではなく、平和そのものとずっと言われた。やはり、自発的に周辺を探索しながら探しに行かないといけないのだろうか?
 と言うか情報収集は早々に切り上げて他のプレイヤーは村周辺の探索に殆どが移っている。村に残っているのは私みたいな捻くれ者か、生産職の戦闘が苦手なタイプの人が話を聞き、道具屋鍛冶屋の近くで店を広げている。

「やっぱり村の中では何かが起きている訳じゃないのか……子供に聞いたりしたが、ぽろっと何かを漏らすって事も無かったし」

 鼻水垂らしてなんもねえよ!って言われたらそれ以上何にも聞けない。情報収集メインにしらみつぶしにするのって悪くはないんだろうけど、どうしてもどん詰まりになるのはしょうがない。
 こうなってくるとアプローチの仕方を変えてみよう、村の周辺での探索は攻略前線組に任せて、私は村での信用度を上げていこうと思う。
 日常生活での小さい変化とかで見落としている可能性もあるし、情報は足で稼ぐしかないな。



 そう言う訳で、やってきたのは一番最初に話しかけた老人の所に。
 他の家でもいいのだが、どの家に行っても戸からは出てこないし、だったら一番最初に会った老人に話を聞くというのが縁と言う物だろう、ゲン担ぎとも言うかもしれん。
 最初と同じように戸を叩き、しばらくしてから老人が戸からのぞき込んでくる。

「なんじゃ……また来たのか……」
「話だけだと悪いと思ってね、何かやれることはない?」

 戸の奥から私の事を上から下までじろっと見つめてくる 

「……今夜のおかずを取ってきてくれるか?」
「分かったわ」

 そういって一礼しその場を離れる。
 まずはこの老人の信用を貰い、足掛かりにしよう。ゲーム内時間で16時、さっさと何か食えるものを取りに行こう。
 そうしてそのまま村の外に出て、手頃な相手を探す。食えそうな動物型のモンスターと採取で食べられるような山菜やキノコを狙う。ラビット辺りがいるとかなりいいのだが……。

「結構プレイヤーがいるから獲物が少ない気がしたけど、そうでもないな」

 いつものラビット、北エリアにいるような奴がぴょこぴょこと目の前をはねている。今さらこんな相手に苦戦するわけもなく、普通に銃剣で斬りつけ、受け防御からの斬り返しであっさりと撃破。勿論ドロップもあっさり手に入れて下級動物肉を1つ。
 ドロップ率もイベント用で調整されているのか?いつも運の悪い私にしてはさくっと入手できている。この調子で通常時も問題なくアイテムを手に入れれば硝石も回収しやすいというのに。
 とりあえずもう2つ程肉を回収し、道中の採取で山菜やらキノコを回収。毒キノコと食用はちゃんとわかる辺り、親切だよね。
 
「ま、こんなもんね……どうせ私が使う訳じゃないし」

 そうして食物を持ち、また老人の所へ。
 戸を叩いて呼ぶわけだが、前よりも少し出てくるのが早くなってる感じがする。

「はやいのう……買ってきたのか」
「まあちょっと外に出ただけよ、ほら」

 インベントリから肉と山菜、キノコを取り出して戸越しに見せる。
 しばらくそれを見てからか、老人が引っ込んでしまった。「やらかした」と思っていたら、中から「入れ」と一言貰うので、遠慮なく中に入る。
 中は日本家屋風で、囲炉裏が家の真ん中にあるのが特徴的だろうか。後は箪笥や布団があったりと、一人にしては若干広いかな?と感じる位の家だ。
 そうして中に入り、飯の支度をし始めている老人の所へ持ってきたものを置いて素直に距離を取って座る。

「……して、何を考えておるんじゃ」

 トントン、と包丁がまな板を叩く音と囲炉裏のパチパチとした音が響く中、ゆっくりと老人が口を開く。年の功とはよく言うもんだ、隙がねえぞ、この老人。

「何もないなら良し、何かあったら動く、そういうのでしばらく調査と滞在しようと思ってるのよ。住民に嫌われるよりは好かれておいた方が動きやすいでしょ」
「ふむ……道理は通っておるか」

 鍋に具材を入れて、調味料を加えているのを後ろから眺めながら当たり障りも無い、とりあえず他意は無いと言う事と敵意の無い事を伝えつつ、少ない会話を進める。

「……ワシの所には何もないのは、確かじゃがな」

 囲炉裏に鍋をぶら下げ、近くに座ったのを眺めながら、MREを取り出して齧る。相変わらずまずいわ、これ。どっちにしろこの老人の警戒心は最初よりは薄れたのは確かだ。そういえばレーションの補充をするの忘れてたな。
 そんな事を考えつつもしゃもしゃと食べていると、手招きされて、対面に座れと促される。こういう時は余計な事をせずに言う通りにしよう。そうして囲炉裏を挟んで座り、向かい合っていると、お椀に鍋の中身をよそって此方に渡してくる。
 
「……いただきます」

 椀と箸を受け取り、一旦置いてから一言、その後に手を付ける。これも礼儀であり、相手への敬意を払うと言う事、そしてさらに好感度狙いでもあるのだが。
 みそ味の山菜鍋と言う所だろうか、多少ぴりっとした辛味がアクセントになっている、美味しい鍋だ。

「MREって本当にまずいんだな……うまくて思わず感動したわ」

 椀の中をかき込みながら改めてこのゲームの味覚再現までされているのを実感する。やばいうまいわ、普通に。

「爺の料理で満足するなんてろくなもの食えないのか、冒険者は」
「私自体は否定できないわね、それは」

 実際ずっとまずい物しか食べてないわけだし、まさかとりあえずまともな食事と言うの振舞わられるとは思ってもいなかったわけだが。しかし警戒がかなり薄れたのも事実だろう。
 そうして黙って黙々と鍋を二人で食べきってから、洗い物くらいはやっておく。

「久々にうまいもの食ったわ」
「夜も更けてるし、泊っていけ。夜は危ないぞ」

 そんなに簡単に好感度あがるものなのかな?私としては願ったりかなったりだが。まあ流石にちょっと離して布団を敷いている。

「急に親切ねえ……」
「なに、老人の気まぐれよ」

 ふふっと笑う老人相手に戸惑いを隠せはしなかったが、一応好感度的なトリガーを満たしたと言う事だろう、これでこのイベント上での拠点を確保できたことになる。
 イベント時間的にもやっぱりある程度楽な設定にはなっているんだろう。じゃなきゃこんな風にならないだろうな。

「とにかく二日目もおつかい中心に動くことになりそうだけど……その前に」

 立ち上がり家の外に出ようとすると、軽く引き留められる。

「もうちょっと調べてから戻ってくるわ、寝るにはまだ早いしね」
「ふむ……あまり遅くなるんじゃないぞ」

 はいはい、と言いながら外に出る。
 もう時間帯的には19時過ぎだが、夜の村の様子も確認しておかないと。
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