上 下
58 / 622
2章

55話 遺子を継ぐもの

しおりを挟む
 あれから数分だが、決定を押し切るというのが中々に苦悩した。
 何だかんだで愛着はあったわけだし、銃を作るまでの間、私を守り続けてきたと言っても過言ではないからだ。しかしここでいつまでも足踏みをしていく訳にもいかない。
 銃剣という部分だけのメリットしかない状態で持ち替えの手間を考えていけばしょうがない、効率を考えれば一つにするべきなんだ。いつの日か金属薬莢の銃弾を作れればその時戻せばいいだけさ。


『M2ラビットを分解しますか?』


 勿論「Yes」だ。



名称:銃身(質5)
詳細:金属薬莢式銃 ライフリング 照準 ガス圧自動装填付き
  :ベースパーツに使用するとM2ラビットが製造される

名称:銃床(質5)
詳細:木製の長銃用銃床 トリガー ストック付き
  :ベースパーツに使用すると武器種「長銃」が製造される



『固定に使用していた金属パーツが消失しました』


 レベルが上がればこの辺りのパーツとかも回収可能なのだろうか?どっちにしろ、ウサ銃を復元する時には針金を使わない方法を模索しないと行けない。が、今はそんな事よりも鉄パイプ銃身を新しく製造しなければならない。
 ガンスミスのメニューを開いて使うパーツや材料を選択していく。今回使うのは鉄パイプ銃身にさっきばらしたウサ銃の銃床、固定部分は相変わらず針金を使うわけだが。これも命中率が低下する原因の一つだとは思う。ばらしたウサ銃の金属パーツがどんなものだったかもうちょっと調べておけばよかったか?

 とにかく選択は終わり、製造処理が開始され、しばらくすると完了する。
 流石にレンジの様に「チーン」とベル音が鳴ったりはしないが。


名称:パイプライフル 武器種:長銃
必要ステータス:STR5 DEX10
攻撃力:+15 命中:+0
効果:単発 命中時固定ダメージ25 装弾数1発 先込め式 火刻印
付属品:無し
詳細:自作の銃 使用パーツにより安定度が上昇 トリガー連動で刻印を発動可能
  :使用している固定パーツの関係で一定確率で故障する
製作者:アカメ


 銃床の部分で武器種が変わるというのはパーツにばらしたときに分かっていたが、これは良い情報だ。と言うか改めてウサ銃をばらしたのは良い選択だったかもしれない。新しい発見とパーツ流用という新しい技術もできるわけだし、消耗部分である固定に使う物は今後の課題だろうけど実りは多かった。

 出来上がったパイプライフルを構える、左脇は開き過ぎない、右腋を締めてぶれない様に。ストックの底は肩にしっかりと当て、頭は斜めにならないようにしながら照準を真っすぐ確認する。と、まあ構え方はもっとしっかりあるわけだが、とりあえず形にはなっている。ついでに言えば撃って当たるなら何でもいいと思っている。
 ついでにトリガーを何度か引いてみると一回引くたびにMPが3消費される。これ結構やばいかもしれない。流石に着火不良の不発って事はないだろうけど、うっかりトリガー何度も引いてMP枯渇なんてしたら銃撃なんて言ってられないぞ。

「……MP消費のライターみたいなもんだなあ……」

 引きっぱなしでも連続発動はしないのだが、火薬の着火不良まで考えると2度は引いておきたい。一発MP6も使うのか……5回しか引けないっていうのに。かといってMPを増やすのはないな、INT1でMP2、LV3毎にMP1増えるが、最低でも2回ステ振らなきゃいけないわけだし、この辺はMPポーション用意しておくか。

 後はこのパイプライフルをカスタマイズだ。ウサ銃と一緒でカスタマイズの画面を出し、アイテムを選択、今回はガサツエルフのナイフを使ってみる。銃身の下部に付くわけだが、ベースとしてウサ銃の銃床なのでいつもとあまり変わらない。



名称:カスタムパイプライフル 武器種:長銃
必要ステータス:STR5 DEX10
攻撃力:+15 命中:+0
効果:単発 命中時固定ダメージ25 装弾数1発 先込め式 火刻印
付属品:ナイフ改(効果:攻撃力+5 命中+5 固定ダメージ無効 一定確率で破損)
詳細:自作の銃 使用パーツにより安定度が上昇 トリガー連動で刻印を発動可能
  :使用している固定パーツの関係で一定確率で故障する
製作者:アカメ



 この情報量よ、このままいったらすげえ量になりそうだが、とりあえずイベント用としてはこの辺りが限界だろう、時間的にも材料的にも。

「とりあえず北エリア1で試射してから戻って、防具作り、硝石狩りでいいかな」

 インベントリにパイプライフルを仕舞い、減っていた満腹度をMREで処理、ああ……まずい……。とにかく武器面での準備はこれでいいだろう、火薬部分だけは常に取りに行く必要があるわけだが、ついでにこのまま今持っている硝石も黒色火薬にしておく。合計で黒色火薬100gこれで33発分。

「これでリアルタイム1時間掛からないくらいか……大分時短にはなったな」

 余裕のできた時間で裁縫タイムだ。先にアクセサリー類を揃えてガンベルトや火薬を一発毎に使い分けできるようなものを作るのもありかもしれない。とにかく一旦、このパイプライフルを確かめてみよう。


 お馴染みの北エリア1。
 そこそこ早く動き回るノンアクティブがいるおかげで、攻撃が当たらなければ普通に逃げれるという点も優れている。
 手頃な相手を見つける前に火薬の小袋を取り出しパイプライフルに黒色火薬を3g、くず鉄玉を入れて詰める。これもいつも通り……なのだが短銃から長銃カテゴリになったせいか若干取り回しが大変になっている。この部分は単純に銃床の大きさと重量が増えたからだろう。
 先込めのデメリットは湿気るというのもあるが、連射できないのがやはり一番大きい。戦闘中にこのもたつき装填はやってられないな、せめて犬野郎みたいな盾役がいないと無理だ。

「軽めの展開タワーシールドとかほしくなるわね……三脚《トライポッド》とか二脚《バイポッド》でもいいけど、輝き撃ち出来るのもいいかも」

 実際は乗せてないあれだが、折角のライフルなら長距離射撃の装備も揃えておきたい。そんな事を考えつつ、装填を終えると手頃なラビットを見つけたので、大体15m程の距離を取った所で片膝をついて、さっきやった構え方をし狙いを付ける。
 照準が付いたおかげかかなり狙いはつけやすくなった、案外できてるじゃん私。細かい手のブレや振動を感じながらもラビットを捉えた上で深く静かに息を吐き出し止める。時間にして数秒だが、それなりに長く感じるほどだ。
 ゆっくりと引き金を絞り、絞り切ると1秒程度のタイムラグの後、爆発音と共に白煙と閃光が銃口から噴き出る。流石ゲーム、考えていた着火不良とかはなさそうだ。しっかりMPは3消費したが。
 「びしっ」と音が鳴ると同時にラビットの悲痛な叫び声が北エリア1の一角で響く。うむ、しっかり命中したようだ、そして流石の攻撃力と固定ダメージ、一撃でポリゴン状になって消失していく。
 懸念していた振動や衝撃に関しては何も無いときに比べて圧倒的に抑え込めるようになった。

「と、思ったけど、結構来るわ」

 びりびりとした感覚が手に伝わってくるが、初代パイプ銃よりはぜんぜん大丈夫だ。やっぱり完成品のパーツを使っているだけあって安定度は高い。とは言え、一発の試射しか確認しなかったが、これなら申し分ないし、大丈夫だろう。

「銃剣も大丈夫そうだし、武器は十分だろう」

 これで完成、イベントがどういう物かはいまだに不明だが、パイプ銃よりはマシさ。
 さて、次は防具を作らないといけないな……1時間程度採取しまくってから裁縫ギルドに行ってやろう。
 
 残り11時間。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

処理中です...