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1章

44話 発想の転換

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 しばらく木工を進める。やれ納品してくれとかやれ作ってこい来いとか色々。まあこの作業も結局の所鍛冶でもう一回同じことをするんで流れ作業と言うか死んだ顔でやるしかない。とりあえず銃身、銃床が作れるまではとにかく繰り返してスキルレベリングしないと。
 
「しかしまあ、買う予定は無かったんだけどなぁ」

 インベントリにある露店許可証の確認しながら買っちまったなーと一言。別に課金してまで手に入れる物ではないのだが、かといっても「Z」を使う余裕はない、だったら課金して買う。


名称:露店特別許可証
詳細:街中で露店を開設する事が出来る 無人販売、遠隔操作機能付き


 500円の課金で後者二つの機能付きの許可証が買える。勿論Z(ゼニー)でも購入できるのだが、グレードがそれぞれ分かれており、一番安い許可証でも10,000Z必要になる。機能が増える程さらに追加で「Z」が必要になっていく。で、課金だとゲーム内マネーを使わずに一番良い奴を問答無用で買える。
 特殊な所で商人系はこの許可証が必要ないが、スキルで覚えていくというのがある。そっちはそっちでまたゲームルールが違うらしいので、あくまでも全員が使えるものとしてはこういう物があると言う事。

「何がいいって、インベントリから無人販売に飛ばせれるって所よね」

 露店を開く場所はあらかじめ自分で決めておかなければいけないが、後はインベントリから登録を掛ければいいだけ。わざわざ場所に行って売りにいかなくてもいい。ただ一つだけ不満点があるというか、難点があり、売上金だけは自分で開設した露店に行って回収しなければならない。とは言えアイテムつっこんでおけばいいのは圧倒的に便利だ。

 で、何でこれを買ったかというと原因は木工にある。
 インベントリの枠は無限なのでいくらでも突っ込んでおいても問題はないわけだが、だとしても大量に作り始めた木工品の処分に困るようになった。
 かと言って店売りするとあまりにも安い、だったらワンチャンあり得る無人販売に突っ込んでおいて売れれば儲けものと言う事だ。ちょっと興味本位で黒色火薬を入れようかと思ったが、そんな事したら色々とやばそうだったのでそれはやめておいた。



「で、まあ、大量に作ったこれが問題なのよね…」

 木工のレベリング用に作った木製品の家具に木彫りの熊、ちょっとだけ品質のいい杖と弓もあるが、どれも需要はないだろうな。まあ売れなかったら店売りで処分してやろう。

 そんなわけで雑木100本分のアイテムがこれになる。


 スタッフ×5 短弓×5 スタッフ(良品)×5 短弓(良品)×5
 木彫りの熊×30 木製椅子×5 木製机×5 木桶×5 


 おかげで木工はLv5にもなったし、そろそろ銃床にも手を掛けたい。
 ちなみに100本分に足りないのは納品クエストをこなした分になる。雑木で品質2の木製品を作るのが一番厳しいとは思わなかったが、Lv4になった途端にぽこぽこ出来るようになった。

「何にせよ、本番はこれから……雑木で試作して、出来そうになったらシラカシで作ってみるか」

 鋸をびょんびょんと弛ませながらメニューを開いていつも通り自由製作の欄を選択する。ぽちぽちと材料と道具を選択し、どういう加工をするかを決めてから鋸を動かす。以前と違うのはちゃんと製材した上での作業なのでこの間みたいな事には。

「なるんだな、これが」

 微妙に腹が立つのが質が2に上がっている所だろうか。とりあえず20個分生産してみたが進展は無し。20個目の「何とも言えない木製品」を地面に叩きつける。がしゃんと大きい音を立てているせいで他のプレイヤーが此方を見ている。

「ああ、できねえ!何だよ、何が足りないんだよ!」

 がんがんと作業机を叩きながら項垂れる。おかしい、こんなに心折れるとは思ってなかった。やっぱりスキルが足りないのか、それとも作業内容が違うのか、とにかく何が違うのかがノーヒントなせいでよくわからなくなってきた。調べたところで構造とかそれぞれのパーツ名だし、それの製造までは見つからないし、いよいよもってどん詰まりになっていた。

「駄目だ、木工ばっかりやるのも厳しくなってきた、鍛冶やろう」

 叩きつけた木製品を拾ってインベントリに仕舞っておく、こいつだけはショップでうっぱらってやる。品質1個上がっただけで2Z高くなったのも若干いらっとしたが。



「って、言う訳でさあ、銃身とか銃床って作れない?」
「ワシ、それ専門外じゃからのう」

 場所は変わって鍛冶ギルド、木工ギルドと同じように受付に話しかけての情報収集。ついで鉱石の情報も聞いておき、分布図を獲得。とりあえず鉄、銅、鉛、錫がエリア1では採れるらしい。鉛があるという事は弾作れそうだ。

「鍛冶の基本みたいなのが取れるわけね……北が鉄、東が銅くさいけど」
「うむ、あとは自力でじゃの」

 結局のところ銃身の情報は無し、もう銃とか付けない原始的な方法でアプローチしていった方がいいかもしれん。銃床作ろうとしてあの結果なら、もっと原始的に、構造もシンプル化して、とにかく余計な事を考えないレベルにまで落とそう、もう技術開発とかそんな事言ってられないわけだし。

「んー……ちなみになんだけど、鉄パイプって作れない?」
「うん?作れるぞ、レシピがあるじゃろ」
「どこに……?」
「ショップにあるじゃろ?なかったらまだギルドレベルが低いって事じゃがな」

 そうきたかあ……やっぱギルドレベルって大事なんだな、って事は考えていることは可能って事だ。そうなるととりあえず集める物はギルドレベルだ。どこまで必要になるのかは分からないがGLv(ギルドレベル)が2になった時は貢献度10、木工は現時点でGLv2で貢献度25なので多分30になればLV3になるんじゃないだろうか。
 
 どっちにしろ検証と言うか確認してみないと分からないし、ギルド周りの情報はまだ厚くない。生産系のレシピ含めて、その関係周りはかなり情報が秘匿されている。β時代に生産関係の産業スパイみたいなことをやっていたのもいたが、指示していたり、それを受けやっていた奴は他の生産職全員に総スカンを食らい装備がまともに揃えられないという状態になったとか。

「やっぱレべリングかあ……経験値だけで済まないのがネックだけど、とりあえずGLv3まで上げてみるか」

 とりあえずクエスト受注だ。貢献度26の分を効率よく……とはいかないので上から順番に……ええい、面倒だ、現状受けられる物を全て受けておこう。



クエスト名:くず鉄の納品
詳細:くず鉄を30個納品
報酬:ギルド貢献度1

クエスト名:鉄鉱石の納品
詳細:鉄鉱石を30個納品
報酬:ギルド貢献度2

クエスト名:銅鉱石の納品
詳細:銅鉱石を10個納品
報酬:ギルド貢献度3

クエスト名:鉛鉱石の納品
詳細:鉛鉱石を10個納品
報酬:ギルド貢献度3

クエスト名:錫鉱石の納品
詳細:錫鉱石を10個納品
報酬:ギルド貢献度3

クエスト名:金属武器の納品1
詳細:材料種類問わず金属武器を5本納品
報酬:ギルド貢献度5

クエスト名:金属武器の納品2
詳細:材料種類問わず良品の金属武器を1本納品
報酬:ギルド貢献度3

クエスト名:金属防具の納品1
詳細:材料種類問わず金属防具を5個納品
報酬:ギルド貢献度5

クエスト名:金属防具の納品2
詳細:材料種類問わず良品の金属防具を1個納品
報酬:ギルド貢献度3


 
「……やってやらぁ!」

 クエストメニューを閉じて鍛冶ギルドから走り出す。まずは北エリアから時計回りに回ってマップの探索と採掘ポイントの発見と、十分な材料の確保だ。



「って、思ったけど流石に効率悪いわ」

 いつものウェスタンドアをばしっと開けて中に入りカウンターへ。

「いらっしゃい」
「とりあえず一杯、あとエリア1の採掘ポイントと採掘物」

 黙って頷いて、ウィスキーの注がれたグラスと一緒にデータカードを添えて出してくる。ちゃんと口添えしてるじゃない。グラスを傾けながら貰ったデータカードで情報を確認する。正直此処までしなくてもそこまで高額な情報ではないのは確かだが、雰囲気やこういうロールプレイはそそるものさ。
 データ確認する事で、マップに採掘ポイントが表記され、アイテムのデータも確認できる。そういえば公式Wikiとかしばらく見てないな。あれ全体データとアイテムデータだから攻略とはまた違う方向性なのよね。

「さてと、採掘しにいくか」

 残っていたグラスの中身を飲み干してから席を立ち堂々と出ていく。
 採掘デスマーチの開始だ。
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