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1章

42話 与作

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『To The World Roadへようこそ』




 リアルタイム10時、あれからがっつり6時間睡眠したあとに朝飯にシャワー浴びてさらに1時間掛かったので今の時間に再ログイン。ゲーム時間は1/10の0時、丁度日が変わって深夜だ。
 最後にログインしたのが鍛冶ギルドのベンチなのでそこに光の輪を放ちながら座っているままで出てくる。これ良く他の人とぶつからないな。判定がないのか同じ位置で多少ずれたりするんだろう。
 
「さて、計画的には木工1で鍛冶2だけど、どっちにしろ材料がないからそっちを探しに行くのが先か」

 メニューを開いて読み込んだリストを確認、うん、しっかり読み込み出来てる。

「とりあえず伐採しに行く前に木工ギルドに行って登録を済ませておくか、伐採採掘はギルド統合っぽいし」

 とは言え場所は分からないので一旦冒険者ギルドに行って、いつもの様に木工ギルドの場所をマップにマークしてもらう。そういえば冒険者ギルドでもクエスト受けられるのにそういうの完全に放置してるな、やる事はまだまだ山積みだし、後でいいや。

「SP足りなくなったらその辺も考えてみるかな」

 で、まあいつも通りにあっという間に木工ギルド。外見やらその他諸々の構造は変わらないが、内装に関してはログハウス風のいかにも木造建築、と言ったものだ。んで、受付のNPCは髭面の図体のでかいおっさん。イギリスの魔法学校に出てくる森の方に住んでる大男みたいな奴だ。うーん、イメージと言うか木こりってこんな感じだよね。

「おう、ギルドに用か?」
「加入用の書類頂戴」
「おお、ストレートな奴だな!」

 結構イメージ通りな感じが強い喋り方と性格だ。気を使わなくていい相手って嫌いじゃないわ。そしてこちらもいつものように契約書の画面が表示される。もうこの手順に関しては変わらないしさっさと済ませる。


『木工ギルドに所属する事を此処に誓いますか?』


 はいはい、いつものやつね。指でサインを書くのもいつも通り。正直もう流れ作業と変わらないわ。


『認証されました。木工ギルドへようこそ』


「おう、それじゃあ説明いるか?」

 この流れも変わらず。はいはい受ける受ける、確か鋸って300Z(ゼニー)で売れるし、HPポーション代も稼がないと行けないし、受けないメリットが無いし、何よりもチュートリアルクエストとか残ってるのは気に入らない。未受理とか未達成とかの項目あると埋めたくなる。
 そういうわけでさくっと説明を受けた後はすぐに説明クエストを受けて報酬だけ貰って終わり。

「ちなみになんだけど、伐採関係もギルド所属で大丈夫なの?」
「ああ、問題ないぞ、納品クエストにはその手の物があるしな」

 そりゃそうか、木工なら伐採は切っても切れない関係だし、納品クエストとして存在しているというのはちょっと考えれば分かる事じゃないか。って事は伐採や採掘は納品クエストを進めるのがレベリングの基本になるのか?

「まさかとは思うけど、ひたすら切り倒すよりもクエスト受けてた方がいいとかある?」
「うん?そりゃそうだろう、納品クエストは経験値も入るからな」

 くそ、もっと先にギルド関係を調べておけばよかった。だったらもうちょっと時短で火薬までたどり着けていたんじゃないだろうか。とは言え結果論だから今更言った所でどうにもならない。反省した上で今後に生かせればいいじゃない、ポジティブ志向って大事。

「……まさかとは思うけど、採れる木材とか聞けたりする?」
「そうだな、エリア1のなら教えられるな」

 あれ、だったら別に硫黄の情報買いに行かなくても……いや、あそこはエリア2だったし、そこまで聞けるまでにどこまでランクをあげなきゃいけないのかは分からないし、そこは時短になるのか。やっぱりちゃんと情報取集しながらゲームを楽しむのがT2Wにおける最大の攻略法なのだろう。

「エリア1で採れる木材は雑木、マツ、シラカシ、マホガニーだな。どこで何が採れるかはわからんが」
「で、それの納品があるわけか」
「うむ、受注するならそこだぞ!」

 威勢よくクエストボードを指さしている。しかしまあ、色が強いキャラが多いな、こんなのが各ギルドに常駐していると思うと恐ろしいよ。
 とにかくクエストを受注してみるが、鍛冶ギルドでは無かった素材の納品クエストが張ってある。これ多分だが、質問をすると言う事がキーになっているんじゃないかな。……クソ、鍛冶ギルドの爺さんのほうが好感度高いと思ったのに教えてくれなかったよ!
 まあ、うだうだ言っててもしょうがないのでクエストを受注する。受注上限はないのでとりあえず片っ端から受けてまとめて達成させよう。



クエスト名:雑木納品
詳細:雑木を30本納品する
報酬:ギルド貢献度1

クエスト名:マツ納品
詳細:マツを10本納品する
報酬:ギルド貢献度3

クエスト名:シラカシ納品
詳細:シラカシを10本納品する
報酬:ギルド貢献度3

クエスト名:マホガニー納品
詳細:マホガニーを10本納品する
報酬:ギルド貢献度3



「なるほどねぇ、雑木以外の奴はそこそこ貴重って事か、貢献度が雑木に比べて3倍もあるよ」

 とりあえず北エリアから回って確認してみよう。とにかく伐採して回ってマップの探索もしよう。アクティブが出てくる北エリア以外は銃格闘の具合も確かめておかないと。

 
 そんなわけでさっくりと北エリア1に。とりあえず雑木2スタック分確保するかな。その間に他の三種類が出ればいいし、伐採のレベルが上がればなおの事いいよね。

「そういやカスタムサウンド使ってみよう」

 アニメ原作のゲームだったりすると利権関係でBGMが一切使えなくてオリジナルしか無いとかあるけどね。こういう場合のは自分しか聞けないし、自分の持っている曲を再生できるのがいいよね。面白くないゲームってBGMも微妙だったりするし、ものすごい神ゲーなのにBGMがダメすぎてサウンドだけオフにして自分で流す方がマシとか言われたものもある。まあべただけど木こりの演歌曲も入れておいたし流しておく。渋いわ、この選曲。

「基本BGMがないからこういう事出来る様にしたのかな、単純作業で何にもないとやっぱり厳しい所はあるし」

 
 しばらくBGMを聞きながら斧を振るい雑木を集める。北エリア1じゃ雑木以外は期待できない。何て言ったって雑木しか出てこないからあっという間に1スタック(99個)と半分程度を集めてしまった。

「やっぱり東、南、西で各材木が採れるっぽいんだよなあ……ちょっと教えなさいよ」

 後ろの方に声を掛ける様にして斧を担いだままそちらの方へと視線を送る。この間一回会った事のある砂丘の舎弟が「まいったまいった」という様に此方に近づいてくる。どうせ大方私の事を尾行してたんだろう。うっかり八兵衛みたいなやつだな。

「姉御すげーっす!よくわかったっすね!」
「足音立ててちらちら見えてりゃ分かるわよ」
「気配察知とかそういうのかと思ったっす!」
「大方、クラマス辺りに指示されたんでしょ?」
「すげーっす!やっぱり姉御ってただもんじゃねえっす!」

 こいつと話してると自分の知能指数がどんどん下がっていく気がするよ。あまり人付き合いが得意と言う訳じゃないのに。

「まあ、いいわ……この辺の木材の情報ないの?」
「あるっす!えっと……この辺の伐採系だと東にマツ、南にシラカシ、西にマホガニーが出るって言われてるっすね」
「っていうか情報クランが尾行ってどうなのよ」
「姉御が特殊なだけっすよ、例のブツを発見した5万分の1のレアプレイヤーに興味の沸かない情報屋っていないっす」

 言われてみれば確かにそうなんだよなあ……尾行されるだけの理由はあると思うし、情報クランとしても興味はあるってのは分かる。石油王ならぬ硝石王、ってか女王だし。
 
 はぁっと思い切りため息を吐き出してしばし考える。

 正直なところ本当にこれ以上の貴重情報を入手できる程のプレイヤーじゃないとは自覚してる。だってこれからやる事ってこの周辺で伐採と採掘して火縄銃を作るだけだし。
 そもそも私が迷惑行為と思って運営に報告すればあのクラン一発で解体させれる事ができるんじゃない?プライバシーの侵害とかどうとか言えばいいんだし。 

「迷惑行為で通報されたくなきゃ手引きなって言っときな」
「確かに通報は嫌っすね、ゲームしたいから言っておくっす」
「……通報しない代わりにあんたが専属で私について情報横流しとかしない?」
「それはそれであくどいっすよ!」

 と、言ってもT2Wじゃあんまし人間関係でギスギスしたくないので特に通報とかはしない。

「そう言う訳だからさっさと帰んなさい、何かあったら売ってやるから」

 しっしと追い払う様に手を動かして、作業中やぞって顔をする。

「うっす、言いにいきます!」

 こいつだけやけに私の事を持ち上げている気がする。舎弟気質なのかRPなのかは分からないが弟感覚なので楽だ。

「あ、一個だけ聞きたいんすけど、どうやって自分の事わかったんすか?」
「足音と気配と視界の違和感よ、これくらいFPSの基本じゃない」
「やっぱ姉御すげーっす!」

 太鼓持ちってこういう事なんだろうな。

「はいはい、分かったから」
「じゃあ、尾行やめるようにいってくるっす!」

 悪い奴じゃないんだけど、四六時中は勘弁してほしい。でも木材の進展はあったわけだし、良しとしよう。ぶんぶん手を振りながら別れるわけだが、わかってんのかしらね、あれ。

「ま、何かあれば通報すりゃいいだけだし、実害でなきゃいいわ」

 そんな事言い、またBGMを流しながら伐採を続ける
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