上 下
23 / 622
1章

23話 黄色の宝石

しおりを挟む
 レベル一つ上がった程度で楽勝と言うわけにはいかないが、気持ち的に避けやすくなったと言うか、体が付いてくるようになった気がする。確実に気分的な物なのだろうけど、モチベーションが上がっていると言えば上がっている。

「それでも3回に1回は死に戻りしてるんだけど」

 もう何とも思っていない死に戻りエフェクトを出しながら安全地帯へとリスポン。そういえばナイフ代なくなったけど、まあいいだろう。その時に何だかんだ言っておけば大丈夫だろ、あの感じだし。
 
 無い物は無いのでしょうがないが、その代わり増えているくず鉄と銅鉱石。やっぱりレベルを上げないと良い物は中々出てこない。しかし一応出るという情報でどのくらいのレベルで取得できるかも聞いておけばよかった。多分情報料とか取られたっぽいけど、取得可能レベルくらいなら情報料も安かったんじゃなかろうか。

 情報一つで結構な稼ぎが出る話もあるから、なんとも言えないと言えば何とも言えない。聞いたり調べたりしたところ、情報クランってゲーム内でかなりの資産を保有しているとかどうとか。そりゃあ数百Z(ゼニー)で買った知られてない情報を1.5倍あたりで売り払えばすぐに元は取れる。とは言えある程度元を取ったらすぐ情報をばら撒いているが。

 そういうわけでT2Wでは情報一つが金になる。だから攻略組はレアドロップ品やモンスターの攻略方法は秘匿し、後続組が攻略を開始した辺りでその情報を高値で売り、それでまた新しい攻略を進める。そういう流れが既に出てきている。

 とはいえ、私の様に雑魚モンスター一体一体の攻略を確立しつつ、ドロップ品が出てくるレベルや場所を一個ずつ調べてメモするような奴はそうそういないと思う。

「レベリングも遅いし、しょうがないんだろうけどなあ」

 安定のMREをむしゃつきながらインベントリを確認するが、相変わらず狙いの物はドロップできていない。なんだかんだで結構な数を採掘しているが、そもそも3回に1回しか銅がでないのにさらにドロップ率が低そうな硫黄がぽろっと出てくるとは思えない。ついでに言えば採掘のレベルが足りないかもしれないのだが。いまだにLv2のままなので、上がるまで往復しなきゃならない。

「遠いわねぇ、道のりが……」

 まさか販売一つなくすだけでここまでの難易度になるとは思っていなかったよ。銃キチスタッフがリアル追求にしたのか、バランス調整での結果なのかはわからないが……。

「こんな苦労するもんだとは思ってなかったよね」

 慣れた手つきで髑髏リスの骨を受けて攻撃を返す。死に戻り往復しつつ、そのたびに四回程度戦っていれば何をどうやっても慣れる。最初に受け、あとはかみつき攻撃を受けるか避けるかして攻撃。これ剣士系とか魔法系の連中はどうやって突破するんだろうか。そもそもソロプレイじゃなくて誰かと一緒に突破していくんだろうか。
 マルチとか縁のない話だから言っていて空しい。あの犬耳ショタが私と組もうと言っていたけど、真実を知らないというのは決して悪い事ではない。悪い事はしたと思ったが。

「やっぱりPT組んで役割分担がいいんだろうけど」

 出てきた一匹目のリスを仕留め、銃剣を肩にかけなおす。そういえばボアにやられた後、ウサ銃にまた銃剣を付けおいたので、縄とナイフは一つずつ消化している。次の一本がダメになったら素直にエルスタンに戻って物資の補給をしないといけない。よくあるが、全部壊れて使った後に戻るパターンだ。
 予備と言うのは帰還含めて考えておく物で、全部使い切ったから帰りましょうとか、全部使ったから出して使うという物ではない。何より銃剣が使えないとLv1のラットにすら未だにやられるかもしれないのに、銃剣の付いていない銃で戦えるわけがない。

「もうちょっとHP残れば進軍速度上げられるんだけどなあ」

 いくら手馴れているとは言えHPの減りは変わらないので、相変わらず休憩しつつ、先に進んでいる。それでも採掘ポイントまでのルートは確立できているから進歩はある。
 
 そうして日課の様に採掘ポイントでがんがんとつるはしを振るって採掘し続ける。出てくるのはやっぱりくず鉄とたまに出てくる銅鉱石だが、これも価値的にはどれくらいの物かまだ分からないし、鍛冶のスキルを使ってもレシピが出てこないので、鉄と銅に製錬できるかもわからない。
 多分できると思ってやるのは精神衛生上よろしくない。かといって期待している状態で、できない場合の精神的ダメージも結構大きいというのもあるが。どちらにせよそんなに期待しないでおくというのが一番いい。
 大体数十分採掘しているとボアかリスがやってきてこっちに喧嘩を売ってくるわけだが、今回は丁度よく敵がやってこない。今までやられたパターンも音を聞いたボアが突撃してきて、もろとも吹っ飛ばされていたのだが、珍しく運が向いているのか敵が来ない。
 
 そうなればもう掘りまくる。もうがんがんと、今までのうっ憤とか此処まで来るまでの大変さとか、銃弾が買えないから手に入らない低火力銃剣プレイを強要されている状況とかその他もろもろをぶつける。ついでに私の運の無さも。

「採掘ポイントは少ないし、レベルが上がりやすいんかな!」

 ガチンガチンと甲高い音を辺りに響かせる。こんなにやってて他のプレイヤーが来ないというのも不思議だが、生産職で現地調達まで出来るプレイヤーはまだ少ない、かといって戦闘職は採掘するくらいなら珍しい素材で装備を作ってもらえればいい、結局こうなってくるとギャザラーの人口が少ないのも頷けるわけだが。
 そもそも結構攻略も進んでいるし、こんな所で採掘するならもうちょっと奥とか別の場所があると思う。此処に来ているのも自分が硫黄を取れる可能性があるから採掘しているわけで、もっと簡単な採掘ポイントは存在している。例えば今まで行ったことのない南エリア、北エリアの北東側とか、場所は無いと言う事ではない。

「先に上げておくってのも手だった気がする」

 今更の話だが、結局軽い遠回りをしている事を改めて認識する。目の前のポイントにまっしぐらで突っ込んでいく前に採掘とか本職のレベリングしておくのが多分正解。でも、しょうがないよね、だって硫黄取れたら火薬の6割完成よ?あと1個素材を手に入れればきっと出来るんだから、そりゃあ無理してでも此処に来るよね。それに結果としてレベルは上がっているから、結果オーライ。

 そしてしばらく採掘していると、一撃貰う。遠距離攻撃の骨だ。憎いあのリス公だが、まだ20ほどHPは残っているので無視して採掘続行。近づいてくるまでにも採掘は続けられるし、近づかれても噛まれている間にも採掘はできる。うん、やっぱり頭おかしいわ、私。
 普通だったら迎撃するか、一旦やめて逃げたり隠れたりも考えられるが、どうせ失う物は経験値なのでがん無視。って言うか、倒せるなら死に戻りする必要ないんじゃ、と思われているが、つるはしを持ち替えて、銃剣を構えて迎撃……その状態で倒せるわけないよね。

「何回死んだっけか」

 見慣れた死に戻りエフェクトを軽く見てから、夢中になって掘り進めていたログとインベントリを確認する。ひたすら掘りまくっているのもあったが先に採掘がLv3にあがり。

「まあ、一歩前進よね」

 インベントリとログに残っている硫黄2個。
 偶然なのか運が良かったのかは分からないが、多分しばらく不運が続くと思う。

名称:硫黄
詳細:原子番号16番記号S 用途は色々 実は無臭
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき
ファンタジー
 ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。  なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。 とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。 そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。 魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。 もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。 召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。 しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。 一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

処理中です...