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1章

22話 採掘

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 通算4匹目のリスを仕留めて、また一息。
 ワンパン食らうとほぼ死ぬようなゲームもしていたが、フルダイブ系はそれよりも疲労感が強い。そもそも高レベル相手で、一撃まともに入るとそのままボコボコにされてやり直しなので、一回ずつの戦闘は今までの比ではないくらいに神経を使っている。
 
「もうちょいでレベル上がってほしいんだけどなあ……上がってしまえばデスペナ食らってもいいし」

 警戒しつつも座り込んでHPを回復しておく。今の所まだ銃剣の破損も起きていないし、9割くらいHP減らされたりするが、何だかんだで今までやってきた中では一番近づけているのも事実。やはり焦って突き進むよりもじっくりと進んで行くのも大事だ。
 毎回毎回言っているが序盤の雑魚モンスターに対してここまで慎重かつ、詳しく調べてるのなんて情報クランでしかやってないんじゃないか?しょうがないね、強行軍は前回に来た時に思い切り失敗したし。

「この間ちらっと発見できた所はもうちょいなんだけど、大丈夫かな」

 HPも回復したし、基本戦法の銃剣構えたままの受け防御体勢でじりじりと進んで行く。なんだかんだで骨の一撃、まともに食らうと8ダメージ前後貰うので食らえばまあ死ぬ。不意打ちの骨を食らった時は本当にダメだと思ったが、追撃で骨投げしてこないおかげで助かった。
 
 そして何だかんだで初めて自分で目視できる範囲に採掘ポイントがある地点までやってこれた。後は近づいて死ぬまで採掘して死に戻り……したくはないのだが、まあ目的は採掘だからしょうがない。何て言ったって死んで戻った方が早いし。
 ここで嬉しくなって一気に突っ込んで行って油断してやられるなんて間抜けにはなりたくない、左右と前後を確認し、安全確認とクリアリングをしながらポイントに近づく。
 場所的にも森と言うよりも林と言うレベルに減り、丘陵地帯になりかけている地点で初めて採掘ポイントを目にする。もう、これ見よがしに『ここ採掘できます!』って感じに露出してる岩とマーカーが出ている。流石にこんな所にボスがいるわけもなく、出会いたくも無かったのはLv10のワイルドボアだった。 
 今までボアには何度か遭遇していたが、まあガン逃げ安定だったのでとりあえずほったらかしにしておいていた。明らかにリスの方が遭遇数が多かったわけだしそこそこ良い所まで来ておいてボアとガチする勇気はなかった。

「あれは、やらないとダメだよなあ……突進誘発して障害物に当てるのが基本か……?」

 ぶふーっと鼻息荒く辺りを歩いているボアの様子を観察しながら今まで遭遇したのとやられたパターンを思い出す、とにかく突進攻撃と角の振り回し。とにかく避けて攻撃だ。それ以外は分からないので初見の攻撃なりが飛んで来たら多分死ぬと思う。
 ついでに受け防御も考えてみたが、あの突撃攻撃をまともに受けたらそれこそ一撃な気がする。何もしてない状態で吹っ飛ばされて木に叩きつけられたのは経験済みだし。ハリウッド映画で吹っ飛ばされる人ってああいう感じなんだろうなあ。今じゃ危険だからCGが多いんだっけか。

「どっちにしろやらんとだめかあ……あー、やだやだ……」

 足元に転がっている手頃な石を拾ってから距離を取った後、木を背中にした所から開戦。
 まず相手をこちらに向かせるため、石を投げて気が付かせる。あの猪野郎は視覚と嗅覚が強く他は普通らしい。ちなみに投げた石だが、やっぱりステータスの弱体化補正で人並程度にしか投げられないし、そもそも当てられてない。近くに落ちたから辺りを探って私を見つけた、そういう流れだ。
 鼻息荒くして此方を見るや否やいきなり走り始め、此方に突撃をしてくる。

「ちゃんと避ければ大丈夫のはず、よね」

 土煙を上げながら突っ込んでくるのを眼前に捉えながら、自然と声が漏れる。猪って時速50㎞位出るし、しかもかなりの体重だろうから、やっぱり受け防御なんてしたら吹っ飛ばされるよね。そんなのを子の貧弱な私が止めようとは思わない、むしろ止められるわけがないと逆に分かってるからこそ無茶はしない。
 突撃してくる猪をいち、に、のさんで横っ飛び。土煙と鳴き声を上げたまま後ろになった木に激突するのを横目で見つつ。素早く銃剣を構える。ついでに猪の弱点も調べておいたが、刺す場合は喉元から心臓に一突きするといいらしい。できるわけがねえ。
 ここは確実にダメージを与えて倒す方針で、軽くスタン状態の様になったボアに銃剣で一突き、二突き。と、あまり追い打ちはしないですぐに距離を取ってまた障害物の前に、よかった、低レベル帯だからそこまでモンスターのAIが賢いわけじゃない。パターンさえ組めればカモだったんじゃなかろうか?

「に、しても、硬い……!」

 この突進を避けて、回り込んでの突きを繰り返してはいるが倒れる様子がない。腐ってもLv10だし、相手の方が4もLVが高いんだからそりゃそうだよ、単純に私の火力が足りてない。リスとか小型の敵は全体的にHPが低いからこんなに攻撃しなくてよかったんじゃないかって改めて思う。

「大きく避けないと、あたる、し!」

 すれ違いざまにびゅっと音が響くと牙の先が体を掠めている。これだけで4ダメージ、まともに食らったら倍は食らうだろうし、やっぱり直撃なんてしたら即死だよ即死。流石に全年齢だからそこまでグロイ事にはならないだけマシだけど、突き刺さって死ぬところとか見たくない。
 とにかく必死で避ける、攻撃当てる、必死で避ける、攻撃当てる。

「もお、いい加減倒れろ!」

 ザクっと突き刺さる音をさせつつ、同じように二度突いて引く、と同時に

『カスタムM2ラビットが破損しました』

 このタイミングで壊れるとは思っていなかったよ、ああ、くそ、死に戻りだよ死に戻り。と、思っていたのだが、目の前でいつもの様に消滅していく様を見てほっと一息。破損の判定は戦闘終了か敵撃破のタイミングで壊れるみたいで確定か。戦闘中破損したら戦闘力マイナスになるんだから、そりゃそうだろって話になる。

「お、ついでにレベルも上がった」



名前:アカメ 種族:ドラゴニアン

職業:ガンナー
基本Lv:7 職業Lv:7
HP:22/28 MP:13/14 
STR:5 AGI:13 VIT:2 
DEX:12 INT:2  RES:2
SP:残4

【スキル1】
二度撃ちLv1 装填Lv2 調合Lv1 カスタマイズLv2 銃剣Lv3 

【スキル2】
木工Lv1 鍛冶Lv1 錬金Lv2 伐採Lv2 採掘Lv1

【装備】
武器:M2ラビット(残弾0)×1 
その他:銃弾×0 

【持ち物】
レーション×20 鋸 鍛冶ハンマー 錬金窯 伐採斧 採掘つるはし
ゴミ×188 木炭(質1)×5 縄×2 ナイフ×2 動物の皮×4 下級動物肉×1

所持金:500Z(内500Z使用予定)
状態:異常無し 満腹度68%



 今回はAGIに1振って終わり。リスと猪を相手していた時に感じていたが、火力よりも回避しきれずに被弾する事が多かった。なのでなるべく回避できるようにして、火力はナイフ部分の取り換えでどうにかしよう。ガサツエルフにワンチャンかけておく。500Z ゼニー500Zでもいい仕事してくれるよ、きっと。


 さて、ステータスとレベルアップはここまで、ここに来た最大の理由を忘れてはいけない。
 目の前にある採掘ポイントに向かい、装備しなおした採掘つるはしを振るう。
 カキーンと硬い音を辺りに響かせるのだが、辺りにいるモンスターこっちに来ないかそっちのほうが怖い。とにかくばれてこっちが殺される前に掘りつくす。そりゃあもうがんがんと振りまくりよ。
 
名称:くず鉄
詳細:品質の悪い鉄鉱石

「ここも採掘のレベルを上げないと良い物は掘れないのか」

 がんがんと掘り、大量に沸いてくるくず鉄を量産しながらも、採掘ポイントが枯れるまで掘り、次のポイントでまた同じようにつるはしを振るっていく。
 そうして運よくアクティブモンスターにも発見されず、採掘のレベルが一つ上がった所で違う物が採掘できた。

名称:銅鉱石
詳細:鍛冶入門御用達

「ちょっとだけって言ってたし、レア枠か……ここまでくるのに神経使うから一つでも取れれば希望が湧くんだけど」


 だからこそ私は運がない。何て言ったって今、採掘ポイントから大きく外れて宙を舞っているからね。やっぱり思った通りだったよ、時速50㎞の巨体に撥ね飛ばされたら私は即死するって。
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