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1章

11話 犬耳

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 木炭生成に成功し、ToDoリストの木炭の項目にチェックを入れておく。
 生産系はどうやって装備品のリスト作ってるんだろうかと思っていたら、ちゃんとレシピの項目が出てきて、基本材料の表示がされるようになっていた。メニュー画面、なんだかんだでアンロック方式なのね。

「後は硫黄と硝石かあ……問題は硫黄なんだよなあ……」

 火山に行って採掘してこいって言われたらそれまでなのだが、問題はそこになる、火山ってどこよって話。βのマップ情報では東エリアから先に進んで3番目の街の近くに1つ。これが一番近い所になる。次に近いのは西エリアの2つ目の街なのだが、適正レベル的に東の街にいくよりも遠い。つまるところ遠いというのは距離ではなくて突破できるまでの段階が遠いかどうかと言う話になる。

「硝石はこのゲームの作りこみから考えたら建物の下とか掘り返したら出てきそうな気配はあるし、畜産系のNPCを見つけたら、まだ可能性はあるほうだし」

 流石に硝石を作り始めてゲーム内時間5年とかかけるわけはないと踏んでいる。いや、ちょっとやりそうだから怖い所もある。あとはもう採掘でのワンチャン。と、思っているわけだけど。

「そもそも存在してるかどうかが問題なのよねぇ、こればっかりは銃キチスタッフを信じるしかないけど、うーん、やっぱり情報系クラン探してみるのも手かな」

 そんなことを考えつつ、硫黄と硝石が出回っているという多少の望みをかけて露店やNPCショップの立ち並ぶエリアにきて手当たり次第、冷やかしをしまくる。そりゃあもう、関係なさそうな所から生産職御用達みたいなところでもとにかく探し回る。まあ、こんな序盤の街で見つかるわけもなく、減った満腹度を回復するためにMREを貪りながら歩き回る。

「見つからないし、まずいし、テンション落ちるわー」

 やはり純粋に採掘狙いにシフトしようと考えてた所に声を掛けられる。

「あの、すいません……」
「あー、やっぱ見つかんないじゃんかぁー」

 声をかけられたので返しつつも、声の方には顔を向けず、はぁーっとため息を吐き出しながら近くにあったベンチに座り、だらあっと足を放り投げて背もたれに大きく座り込む。もう直前に食ったMREでさらにテンションがた落ちだよ。

「で、何?」

 そりゃあもう不機嫌な顔よ、レーションはまずいし、目的のものは見つからないし、そろそろ採掘に行こうかなって言うタイミングで声を掛けられてる所よ?普通この状況になった人間の顔が笑顔なわけがないよ。

「ひっ、えっと、いや、何でもないです……!」

 ちらりと見た姿は私の半分ほどの身長、大体130~140㎝くらいの犬耳少年。そういやケモ化できるんだったね、これ。それにしてもこれがコミュ力マイナスの実力と言う。まあ、人との距離感とか態度とか普通に初対面にぶつける物じゃないのが周りからも見て取れるよね。

 ただでさえでかい上に目つきが悪くて角付き尻尾付きのドラゴニアンよ、取って食われるとでも思ったのか半泣きで走り去っていったよ。

「……うわ、泣かせてるよ」
「凶暴すぎでしょ……」
「犬耳ショタの泣き顔とかいいもん見れたわ」

 別に私はそんな事思ってはいないのだが、色々見られているせいでばつが悪くなった。もう一度ため息を吐き出してその場からさっさと逃げ離れるようにエリアを抜ける。

「ソロプレイばっかりの弊害よね、もう」

 ただでさえ最近、他のプレイヤーからの視線が突き刺さるのにこんな事したらまた肩身が狭くなるよ。とりあえず反省。……よし、反省終わり、採掘できるポイントをギルドで確認しよう。


 



 そうして逃げるように露店エリア離れ続け、さっさと冒険者ギルドまでやってくる
 いつも通りにギルドの地域情報を聞けるNPCの案内を聞きながら、必要な情報を探す。勿論だけど具体的なドロップ品は明記されていないので「この辺で採掘できる」って情報しかない。
 
「東エリア2に採掘できるポイントがあるけど、適正レベルは10かぁ……とりあえず様子見しにいって、モンスター情報確認して太刀打ちできるかどうかとアクティブの有無、どうせ失う物は経験値しかないし、行ってみるのが一番か」
 
 採掘できるポイントさえわかれば後はそこに一直線。鉱石が取れれば良し、硫黄と硝石もうっかり取れたらなおさらよし。まあ、運が悪いからそんなにぽんぽん出てこないだろうから長期戦は覚悟しなきゃならん、基本死に戻りだろうなあ。

「それじゃあ東エリア行ってみるか」

 メモ帳とリストの更新を終えてからメニューを閉じて開拓者ギルドを出ると、さっきの犬耳少年と正面からぶつかる。

 このゲーム、プレイヤーやモンスターがぶつかった場合、体格差やSTR差、衝突時の加速等が加味されて判定される。まあ、つまりどういうことかと言うと、貧弱体質の私はいくらでかくてもこの犬耳ショタに弾き飛ばされるわけよ。

 そりゃもう、あっけなくぶつかって尻もちをつくわけよ。しかもフルダイブだからダメージや何か衝撃が発生するとしっかりその感覚が伝わってくる。

「いったぁ……ちょっと、何よ」
 
 尻もちをついたまま悪態を付きつつ立ち上がろうとする目の前で青ざめて恐怖にひきつった顔をしている犬耳ショタが頭取れるぞってくらいにぺこぺこと謝ってくる。

「あ、えっと、ごめんなさいごめんなさい!」

 何度もごめんなさいと言いながら私から逃げている現場をまた別のプレイヤーが見ている。もうやめて欲しい、これで運営やGMに報告されアカウント停止とか食らったらたまったもんじゃない。

 こういう勘違いとか根も葉もないうわさ話で白い目で見られるのはFPSとか対人ゲーをやっていた時から慣れてはいるが、あれは有象無象の雑魚共が喚き散らしていたし、ゲームの戦闘ログが証拠として残っていたから雑魚乙とか言われていたからまだよかったが、こっちじゃログを見れるのは運営だけだし、説明しても伝言ゲームで尾びれがついてくるもんだから身を隠すか噂のほとぼりが冷めるまで待つしかない。
 
「はぁ……東エリア行こう」

 


 こういう時はさっさと切り替えよう。とりあえず久々に戦闘準備をしておいて、不意打ちに備える。まあラット以外が来た時点で負け確定に近いけど



エルスタン東エリア1 
Lv01:ラット
Lv02:ラビット
LV04:白リス
Lv04:ワイルドドッグ



 して、β情報の限り、アクティブなのはワイルドドッグ。ただアクティブ化の条件が他モンスターとの戦闘乱入と、ワイルドドッグの探知範囲が2匹以上重なっているという条件を満たし此方を探知するのがトリガーとなっている。他3匹はノンアクティブ、確実にこっちが先行を取れる系の相手。

「強行軍でエリア2まで行ってモンスター情報の更新狙いにするか」

 東エリア1の一番東側にいくと、小さい安全地帯があり、そこを超える事でエリア2の領域へと侵入できる。とは言えマップ自体の境目は全て繋がっているので気が付いたらエリア2の領域に入っていたというパターンもあるらしい。まあオープンワールド、オープンフィールド系の罠だよね。どのゲームでもちょっと油断したら二倍くらい強い相手と遭遇するとかあるし、そこはまあ注意するしかない。




 そういうわけで私の強行軍が始まった。

  アクティブモンスターの条件が決まっているので「戦闘はしない」これは必須。あと2匹以上いる場所に近づかない、探知範囲に引っかかりそうになったら息を潜めて隠れて、そして移動する。かくれんぼしながら進んでいくのだが……かなりあっさりと安全地帯についたりする。
 
 理由としては雑魚狙いで戦闘している他のプレイヤーの方に勝手に喧嘩を売りに行くので、アクティブ条件の2つ目が成立するほどの数がいなかっただけだった。

「あっさり突破すると拍子抜けするけど、本番はこっちなのよね」

 次のエリア2の領域を眺めながらMREをむしゃつく。やっぱまずいわ、これ。料理系さっさと進めたい。

「あ、あの!」

 こうなんでタイミングの悪い時に声掛けられるんだろうな、私は。

「何?」

 この数時間で何度も出会う犬耳ショタ、もうこいつストーカーなんじゃねえの。
 勿論だけどまずい飯食ってるところ何で顔つきは悪い。

「えっと……あの……」

 もじもじしてる犬耳ショタ、そこら辺の女の子より可愛いのは認める。っていうか私が女なのに可愛くないからなおの事よね。

「なんもないなら行くけど?」
「あ、えっとですね!こ、この先の、エリアに行きたいんですけど、ひ、一人じゃ厳しいので……ほ、ほら、固定ダメージ持ってる、ガンナーさんなら、いける、かな、って……」

 どんどん声が小さくなっていって、後半はもう何言ってるか聞こえないけど、ものすごい人選ミスだよ、ちみ。今の私はちみに吹き飛ばされるレベルのSTRしかない貧弱野郎なんだ。

「うん、無理」
「はい!……うええ!?」

 良いリアクションするなあこの子。
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