最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
上 下
9 / 623
1章

9話 炭焼き

しおりを挟む
『To The World Roadへようこそ』




 いつもの案内を聞きながら光の輪からログインを完了する。メニューの日付部分はゲーム内時間で1/2の20時。ちなみにサービス開始時点では1/1の12時なので32時間後と言う事になる。
 
 昼夜のシステムもしっかりと作りこまれており、デメリットはモンスターの一部がアクティブ化、メリットとして夜でしか取得できないアイテムがあったり、アクティブ化したモンスターの経験やドロップ率が増加。とのことだ。

  なんで「らしい」とか「とのこと」と言っている理由は自分で探したわけじゃなくてマニュアルを読んだというのとβの情報を確認しているからで、自分で確認したわけじゃないから。

「よーし、木炭作るか、えーっと、作り方はっと……」

 メニューで読み込ませていたメモ帳を開き、木炭の製造方法を確かめる。方法や手順は色々とあるわけだがものすごいざっくりと言えば木材を燃やせばすぐ完成する。しかしこのゲームは細かい部分での補正があり、今まで持っていたアイテムの中にはなかったから言及しなかったが、品質と言うものが存在している。
 
 まあ良い物なのか悪い物なのかという話で良い物作るには良い品質のものを使いましょうっていう話になる。あとは上手に作れたりすると良い物ができる。これから確認するというか試していく訳だが、多分しっかりとした手順や製法を踏まえて作る事でも品質が上がると思う。β情報の受け売り。

「まあこれから燃やすわけだけど……とりあえず錬金窯に入れて燃やしてみる?」

 まあ木材自体に余裕はあるので駄目になってもまた取りに行けばいいだけだし、これで何かしらのスキルが発生すれば儲けものだし、失うものもないわけで。とりあえず錬金ギルドに行き、そこの施設を使おう。ちょっとでもいい火薬を作っておけばいい品質の銃弾が作れるかもしれないし?試行錯誤って大事。

 マップで錬金ギルドの位置を確認しながら歩いていると、他のプレイヤーが話しているのが聞こえる。このゲームは基本的にチャットがないのでVCのみで、ついでに言えばボイチェンもデフォ装備。身バレ対策済み。まあ、そういうシステムなので、リアルで喋っているのが聞こえる範囲にいけば普通に何を話しているのか聞こえる。

「おい、あれ……銃殴りのドラゴニアンだろ?」
「そうそう、ラットも倒せない貧弱職な」
「Lv1モンスも倒せないって……」

 などなど……聞こえてくる。もうちょっと本人のいない所でそういうのは言ってもらいたい。あと一つ訂正しておくと、ラットは倒せる。

  聞こえない振りをしつつマイペースに錬金ギルドに来ると、備え付きの窯へと一目散に。流石に窯一つで一人しか使えないが、数は揃っている上にまだ錬金系を進めているのがいないで順番待ちもせずに使える。っていうかここに来たら錬金できるんだから窯買っておかなくても良かったとか言われるとぐうの音も出ない。まあだれでも使える窯は最低限のものなので、結局自力でいい窯を使って作る方がいい形にもなる。
 
 まあまあとにかく今は木炭を作れるかどうか、っていうのが課題なんだよね。


『材料を選択してください』


 お決まりのシステムアナウンスを聞きながら木材を選択、NPCであればまだ会話があるんだろうけどコミュ力以下略。


『処理方法を選択してください』


 燃やすってどうやるんだ?とりあえず他に何も突っ込まない状態で処理しちゃうか。そうしてそのまま少しの間待ち、あっという間に結果が出てくる。



名称:ゴミ
詳細:木材の燃えカス



『お疲れさまでした。これで錬金のチュートリアルを終了致します』


 出てきたのはゴミだよ。

「んー……ゴミって……燃えカスか、黒い塊だからってこれが木炭なわけないし」

 でも燃えカスって言う事だから一応燃やしているというのは合っている感じはある。見た目的には石炭とか炭にも見えなくもない。もうちょっと試してダメだったら別のアプローチを考えよう。もしかしたら自分の錬金レベルが低いからこういう結果なのかもしれないし。
 そういうわけで木材10個分まとめて窯に突っ込んで同じように空焚きして様子をみる。試行錯誤にも程がある気がする。



名称:ゴミ×10
詳細:木材の燃えカス



「まあ、そうなるよね」

 とりあえずきりがいいからあと8個ぶち込んでみるが、同じようにゴミが生成されるだけで進展はない。錬金のレベルも上がらないので、なんとも空しい。

「うーん、火にくべたとしてそれを回収できないなら意味がないんだよなあ、マーカーが出ないと消失か消費してるってわけだし……木炭自体は売ってるんだから無いわけじゃないし」

 リアルじゃ空き缶とか一斗缶でさくっと木炭が作れるから、個数が問題じゃない気がしてきた。っていうかもう一気に50個くらいぶち込んでみたらさくっと作れるんじゃないか?
 これで錬金のレベルが上がれば儲けものだし、木材くらいならすぐ取りに行ける。トライアンドエラー上等だよ、無駄な時間だとしてもその行程が楽しいならセーフでしょ。

「はい、どーん!」

 錬金窯に50個の木材をぶち込んでまたしばらく待つ。個数が多い分さっきよりもちょびっとだけ時間が掛かっているが、ゲーム内じゃどっちにしろあっという間に出来上がる。



名称:ゴミ×50
詳細:木材の燃えカス



「くそったれぇ!」

 まあ思わず叫ぶよね、今手元に69個のゴミが生成されたんだから。まあとりあえず落ち着こう、そう、FPSやってたときも頭に血が上った時はぼろぼろになってたじゃない。深呼吸、ビークール、落ち着こう。

「ふー……ちょっと素材が持ってかれただけじゃない、さくっと集めれるんだから冷静になろう」

 どっちにしろ何かが違う、使った素材が雑木だったからかもしれないし、錬金のレベルが低いから燃えカスになったというのもあるし。まだ試行錯誤出来る余地はある。イースターエッグを探すのにデバック作業の様に壁にごりごり体押し付けたり、物理エンジン特有のバグで攻略法を編み出したりしてた時に比べりゃ全然余裕。

「とりあえずやる事リストに試行した状況を更新して、っと」

 メニューを開いて読み込ませていた物をそのまま画面上で編集し更新。流石次世代VRMMOはやれることが段違いだぜ。

「いっそのこと残った木材も突っ込むか」

 もうなんか中途半端に残るより全部すっきりさせた方が後味いいじゃん?もうさっきと同じ手順を踏んだうえで錬金窯が燻されている状況を眺める。良い感じにできりゃいいのに。



名称:ゴミ×30
詳細:木材の燃えカス



 まあ、うん、わかってた事だから、別に不思議だとは思わないよね。


『錬金術のSLvが上昇しました』


 完成した音声と同時にアナウンスが発生。やっぱりこういう事があるから思い切りって大事だよね。でもまあ、試すための木材は回収しなきゃならないから……伐採してきたよ。
 
 走って北エリアにいって伐採かまして戻ってくるだけだし、夜のデメリットであるアクティブ化も流石にLv1向けの初心者エリアにまでは手が入ってなかった。まあそりゃそうだよね、出遅れ組とかが夜にログインしてデスペナ大量発生とかやる気なくすし?
 
 ついでに伐採のSLvも上がったのでさっきよりも時短で木材を収集できた。

 そしてさっきと同じようにスタック99個の木材を持ち、錬金窯にぶちこんで、結果待ち。もうゲーム時間は1/3の0時。4時間も伐採と錬金するとは思わなかったよ。
 そしていつもの機械音声が流れて錬金窯が開く。



名称:ゴミ×89
詳細:木材の燃えカス

名称:木炭×5 品質1
詳細:またの名を黒炭 用途は色々、燃料が主な使い方



「おー……できたわ、錬金のレベルが上がったから成功するようになったのかな?」

 これだけでショップ価格5,000Zゼニーのアイテムが作れるのってなかなかの金策になるんじゃないかな?問題は需要だけど。なんでもかんでも高額品を作ったからってそれが売れるかどうかは別だし、この程度のアイテムだと手間は掛かるが作れるという事実が大事なのだ。5,000Zゼニーの店売りは言ってみれば存在はしているよって認識させるための物なのだろう。

「雑木2個で1個の木炭かな、成功率が大体1割くらい?まあ作れるって事実だけで十分収穫ありか」

 まあその出来が悪いから今後の課題になるわけだけど、これで材料の3分の1を作れるようになったわけで、進歩としては33%も進んだって事だ。あとたった2個さえ用意できればStep1が進むなんて、幸先明るいわ。 
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...