上 下
4 / 622
1章

4話 強制縛りプレイ

しおりを挟む
 『To The World Roadへようこそ』



 先程の装着できないショックで一旦ログアウトして風呂と飯を済ませてからログイン。
 まあくよくよした所でどうにもならないので、気持ちを切り替える。これどのゲームでも結構大事。

「に、してもどうにかならないかな……職業ガンナーの特性ってなんだっけか」

 ウィンドウを開き、データベースというタグを開く。
 これ、運営が公式で実装しているもので、判明している物に対しては共通でプレイヤーが見られる。わかりやすく言うと公式でやってる攻略wiki。とりあえずガンナーのページを開いて確認しつつ、減ってきた満腹度を回復するためにレーションを貪る。

 まずいわー、もそもそしてて味が微妙、レーションってもっとおいしいの増えてるじゃん、なんだよ『MRE』じゃねえんだぞ……レーション3つで60%分の満腹度を回復する。死に戻りするより苦痛。
 
 目つきも悪いのにさらに苦痛に歪んだ顔をするわけで、私の近くにいたプレイヤーが数歩距離を取った。そんなに怖いか、私。そんな事を思っていたらガンナーのページたどり着く



名称:ガンナー
特性:特殊武器種『銃』を使用可能。他の武器種を使用時に大幅な弱体補正。銃弾の自作、銃の自作も可能。『銃』においてのカスタマイズはガンナー以外では基本不可。



 これだけだ。はっきり言ってシンプル過ぎて逆に恐ろしい。つまり今の私はナイフ一本ですら正常に振るえない貧弱ちゃん。だって手に取ってナイフの具合確かめるだけですげえ疲れるし、この特性結構きつくない?そう思いつつ画面をスクロールしていくと続きがあった。


その他:銃の扱いに長けてる、それ以外はからっきし。超ハイリスクハイリターン、いえーい!ばんばーん!


 最初の2時間だけだったよ、そのテンションを維持できたの!てか銃ってカテゴリーは特殊扱いだった。でも銃を使ってるのに銃で殴るのには大幅に弱体化したのは何故?と言う話になるわけで。
 考えられるのは正しい使い方をしてないから、と言うのと。銃で打撃できるスキルが他にあるかもしれないという事。ガンカタとかあるんかな、これ。
 スキルも今の所新しいものを取得できないし、スキルツリーの解放条件は行動とかで解禁されるというのはβで見たが、そのあたりも特に増えていない。


『M2ラビットにナイフを装備しますか』

『M2ラビットのアタッチメントが不足しています』


 考え事をしながら付属品をどうにか装備できないか連打してる。私このゲームしてから連打ばっかりしてない?アタッチメントが不足してるという事だから、どうにか銃につける事ができれば良いはず。縄とかで括ってみるか。


 数分後、道具屋で購入した縄を持ち、またギルド近くのベンチに座りながら愛銃になりかけてるM2ラビット、ナイフ、縄を持ちあれこれと試行錯誤、縛るだけでもずれたり滑ったりでうまい事できない。いくら知識があったとしてもスキル前提のカスタムと言う事だろうか。モンスターも倒さず、序盤でアイテム弄りまくってるの本当に私だけじゃないのか、これ。傍から見たら完全に怪しい奴だし。
 しばらく銃身と縄を括りつけようとぐるぐると弄りまわしていると、ピコンとアナウンスが流れる。


『カスタマイズのスキルがアンロックされました』
「もう戦闘外のスキル出てきたよ」


 まあ、速攻で取得だよね、3ポイント使ったけど。



名前:アカメ 種族:ドラゴニアン

職業:ガンナー
基本Lv:5 職業Lv:3
HP:26/26 MP:13/13 
STR:5 AGI:12 VIT:2 
DEX:11 INT:2  RES:2
SP残:7

【スキル】
二度撃ちLv1 装填Lv2 調合Lv1 カスタマイズLv1 

【装備】
武器:M2ラビット(残弾0)×1 
その他:銃弾×0 ナイフ×1 縄×1

【持ち物】
レーション×17 
HP下級ポーション×10 MP下級ポーション×10
動物の皮×13

所持金:800Z
状態:無し 満腹度99%



 銃弾切れただけでここまで苦戦するとは思わなかった、やっぱり銃自体が強力だからその分弱くしてバランスを取ってるらしいが…でもよくよく考えれば『特殊』武器なんだから、それに伴うデメリットも理解はできる、ゲームとしてね。
 そこら中に銃弾が転がっているっていうのも言われてみればおかしい話だし、日本だってアメリカだってしっかりとした規制の上で銃弾が買えるんだから、正しいと言えば正しいのだろうか。


『M2ラビットをカスタマイズしますか?』


 とりあえず新しいスキルはアクティブとパッシブの二つ効果があるみたい。具体的に言えば自分が思った通りに形になる程度にカスタムが可能かどうか確認でき、それを実行するかどうか。具体的に言えば「こうやって縄を巻けば緩まない」と言うのを理解できるようになると言った感じ
 システム音声が流れるのは、このカスタマイズでいいですか?と言う最終確認なのでカスタムミスしたら自己責任。
 そうして自らカスタマイズし、ゲーム時間10分程度たった後にようやくカスタムが完成



名前:カスタムM2ラビット 武器種:長銃
必要ステータス:STR5 DEX5
攻撃力:+15 命中:+20
効果:セミオート 命中時固定ダメージ50 装弾数5発
付属品:ナイフ(効果:攻撃力+3 命中+5 固定ダメージ無効 装弾数∞発 一定確率で破損)
詳細:M2ラビットをカスタマイズした物



「んー、なる程ね、アタッチメントがあればカスタマイズのスキルがいらないとか、効果の違いが出るのかな……システム的にがっちりついてるし、戦闘中の付け外しができないとかそういう弊害かしら」

 つまり「装備品に装備出来るのがアタッチメント」「装備品に直接干渉するのがカスタム」なんだろう。だから最初の『M2ラビットにナイフを「装備」しますか』と言われたわけ。そりゃあ装備できる箇所がないんだから装備できるわけがないよね。やはり運営はこの縛りを見越していた。

 そんなわけで出来上がった、ナイフを括りつけたM2ラビットを確認しつつ、具合を確かめる。スキル効果なのかがっちりと付いてるし、ちょっとやそっとで取れない様になっている。

「とりあえず試し斬りするかな」




 もう一度北エリアに戻る。あのクソ鼠を倒すためにだ。
 っていうかLv5にもなってLv1のモンスターに倒されるって貧弱にもほどがあるよ、私。
 
 そういうわけで北エリアのラットと対峙している。もう3回も死んでるし、そろそろデスペナルティを食らうと思う。銃剣になったM2ラビットを槍の様に構えてじりじりと近寄る。ボスでもないのに緊張感ありすぎるよね。

「でぇい!」

 一歩踏み込むのと同時に銃剣で突き、これでもDEX極だから命中率は高いはずだし、銃としてもちゃんと使えてるからいけるはず!
 ザクっと土に突き刺す音をさせ、あっさり回避されると体当たりの反撃を貰う。はい4ダメージ。ティッシュ装甲は健在。すぐさま引き抜き、またラットを正面に据えて次は横に薙ぐように振るう。これなら突きよりも攻撃範囲が出るし、当たるだろう!
 ぶんと音を立ててミスる。んで、また体当たりを貰う。はい合計8ダメージ。もう4分の1もダメージ貰った。

「くっそ、あたんねえ!命中率100%じゃないんかい!」

 これでクソゲーだと喚くほど私は子供じゃない。そう、80%の命中を4回外し、20%の命中率で連続4回被弾する程、私の運は悪いし、確率は100%か0%しか信用できないんだ。だから2連続ミスなんて私にとっては日常ちゃめしごと!って言ってる間に3回目もミスして12ダメージ。
 何でか知らないけどここでHPポーションがぶ飲みするのは負けなきがする。っていうかレベルあるんだから倒せよ私。
 
 フルダイブ系なんだから落ち着いて相手の攻撃を待ったらどうだろうか?相手の攻撃にカウンターを仕掛けよう。さっきから私が手を出してるから負けるんだし?
 相手の攻撃をしっかりとみて、ラットの体当たりと身を捻って回避。こっちへ振り向きする瞬間がねず公の最後じゃあ!
 
 宣言通り此方にねず公が振り向く所へ長銃のリーチと遠心力を生かして横薙ぎに攻撃。ザシュっと斬撃音をさせるとようやく1ヒットする。記念日だよね、レベル上がるときより嬉しいわ、これ。ねず公の悲鳴のような鳴き声は流石にリアルすぎると思ったけど、斬り返してさらに横に振るって2ヒット。
 
 しっかり撃ってた時もそうだけど、このゲーム、ヒットストップシステムがある。連続攻撃とか何かの動作中に攻撃を当てると一瞬怯ませられるというもの。勿論耐性持ちだったり、無効化してくる相手はいるわけだけど、非アクティブ、低レベルモンスターはこれに該当しない。

「ふっふー……Lv10のウルフを狩りまくってた私にとって、ラットなんて雑魚よ、雑魚」

 明らかに動きが鈍くなったラットを見てにんまりと笑う。もう1、2発当てたら倒せるはずだ。追撃するためにじりじりと近寄り、威力よりも命中重視、もう一回横に振りぬく。
 
 まあさっきの反省を生かしてないよね、ただでさえ近接戦闘できないのに先に攻撃振ってるんだから避けられるよね。鈍い動きになったとはいえ振りぬいたところにもう一度体当たりを貰うとそのままバランスを崩して転倒する。

「あだっ、ちょっと、これ敵にも適用されるの!」

 しかしまだ2発は耐えられる。M2ラビットを杖代わりに慌てて立ち上がると間髪入れずにラットの攻撃。なんか攻撃方法違うんだけど?そんなに前歯むき出しにして攻撃してくるパターンは初めてみたなー、ダメージ高いんだろうなー。っていうか、何かダメージ表記が赤い?これがクリティカルなのかな?
 
 そうして私は最速で破産した。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。 とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。 そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。 魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。 もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。 召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。 しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。 一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

処理中です...