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1章

3話 宝の持ち腐れ

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「ない、ない、ない、ない!」

 冒険者ギルドにいき、街のマップを確認したうえでマップの隅々を探し回る。
 
 まさかの仕様変更を見逃していた?っていうか正式版で仕様が変わりますって規約には書いてあったけど、こんな所でのバランス調整でがっつりと変わったと言う事?
 ぐるりと街中を探し回って、精神的に疲れた。フルダイブだから別に肉体的な疲れと言うのは出ないのだが、心が折れるよね。
 冒険者ギルド近くにある広場のベンチに座って周辺マップを開き、拡大率を最大にして上から順繰りとショップの名前を確認していく。ほら、マップを開いていても名前が被ってて分からないとか、実は曲がれる通路があったとかそういうのを探し回る。
 まあ全部無駄なんですけど。

「やっべぇ……先に確認しておけばよかった……うーん、でもなあ……」

 ここまで来てキャラを作り直すというのもシステム的に負けた気もする。と言うか、サブキャラとか作り直しと言うのは好きじゃない。ゲームに慣れた後に複垢を作って低レートから成績を上げるというのもいるが、私に言わせれば邪道であり、今までメインで使ってた成績云々は自分のやってきた証でもある。まあ大体が見栄え重視のデータを作るためなんだろうが、敢えて負けを踏まえたうえで成績を上げたい。

「……とりあえずLv5にしよ」

 私は10分後にLv5になり、鉄棒と化した銃を構えながら噛み殺された。



職業:ガンナー
基本Lv:5 職業Lv:2
HP:0/26 MP:11/13 
STR:5 AGI:12 VIT:2 
DEX:11 INT:2  RES:2
SP残:10

【スキル1】
二度撃ちLv1 装填Lv2 調合Lv1 

【装備】
武器:M2ラビット(残弾0)×1 
その他:銃弾×0 

【持ち物】
レーション×20 
HP下級ポーション×10 MP下級ポーション×10 
動物の皮×13

所持金:1000Z
状態:死亡 満腹度66%



 死に戻りのエフェクトを出しながらどうしようかなーと考える。とりあえず銃弾が買えないとなると作成するしかない、調合と言うスキルから考えられるのは火薬だ、多分比率を変えたりとかして特殊な火薬を作れたりすると思う。
 
 ……あれ、そもそも火薬だけ作ってもダメじゃね?先込め銃だって火薬と合わせて弾の部分があるわけだし。まあ可能性があるとしたら鉄パイプみたいな管に火薬と石でも詰めて衝撃を…いや、それただの爆弾みたいなものじゃん、そもそも鉄パイプ持ちながら火薬に火つけたら手が振動とかでもろもろで吹っ飛ぶんじゃね?

 それに銃弾って構造的には弾の部分と火薬と薬莢と雷管が必要だから、自作するためにはこの4つを手に入れた上で作らないといけないじゃん?

 っていうか、先が長いから今すぐ作り始めるってそりゃあ無理な話だよね、β参加者はデータ引継ぎできるからその辺の情報とか持ってそうだけど、コミュ力皆無の私がそんな知り合いいるわけもない。ゲーム内チャットですら操作の手間が増えるとかでやらないのにここにきていきなり助けてください!って言えるわけがない、言いたくもないし。

 とりあえずどうにか戦えるかどうか試してみよう。



エルスタン北エリア1
Lv1 ラット
Lv2 ラビット
LV3 黒リス



 さっきまで西エリアで明らかに高レベルのモンスターを狩っていたというにうって変わって同じスタート組と混じって戦い始める。
 それにしても視線が流石に痛い。銃初めて見たとか、レベル高いのになんで北にいるんだとか、さっき死んでた奴だとか、言われている。
 ただでさえ長身で目つきのわるいドラゴニアンだからなおさら目立つのもあるのだろう。
 だとしてもいちいち気にするだけ無駄と言うもので、こちとら今後のT2Wの生活がかかっとんじゃい。


「南無三!」


 M2ラビットの銃身を持ち、ストック部分で思い切りラットを殴りつける。が、あっさりとミスし、反撃を貰う。しかし当たれば固定ダメージのはず、もし効果がなくても命中と攻撃に補正が入ってるわけだから倒せるはず。そう、当たれば倒せるはず!
 
 
 ミス!
 ミス!
 ミス!
 
 
 ああ心が折れる。しかもラットの攻撃が地味に痛い。一撃で4ポイント程のダメージを貰うのだが、ティッシュペーパー装甲の私にまあ突き刺さる。
 どうやら武器の正しい使い方をしていないので命中率に大幅な下方修正を貰っているらしい。そりゃあライフルもってバットと同じ使い方してる奴なんて、この5万ユーザーのうちで私だけだろう

「んんっ、んぅうう!」

 歯を食いしばりながらぶんぶんと大振りの銃を振り回すが一向に当たらない。さっきも言った通り正しい使い方をしないと命中率に大幅な下方と言ったが違うみたい、全部下方修正されるみたい。
 だって攻撃の当たったラットが普通に起き上がってカウンターしてくるんだからね!
 固定ダメージもなければ+15の攻撃数値すら反映されていない。
 なんだったら動きの制限もさらに食らって私へのダメージは加速する。



 リアルタイム2時間、ゲーム内時間8時間経ったわけだが、私はすでに3回死んでいる。
 自分より5レベル以上も高い相手に2回も殺されたのはいいとして、最弱と言われてる奴に一方的に殺されるという。私の天下は初日の2時間で終了を告げた。

「んー……ハンドガン縛りとかしてたときもこんな感じだったなあ……拾える弾なくて結局ナイフみたいな……ナイフ……?」

 またベンチで頭を抱えながら昔の事を思い出す。FPSでよくあるナチスが敵のゲームでハンドガン縛りとか意気揚々とやってみたのに、肝心の弾がドロップせず、結局投げナイフと燃費の悪いレーザー銃だけでクリアした事を思い出す。

「あれ、まてよ……えっと、装備詳細は」

 インベントリから装備の詳細を立ち上げてもう一度じっくりと確認する。



名前:M2ラビット 武器種:長銃
必要ステータス:STR5 DEX5
攻撃力:+15 命中:+20
効果:セミオート 命中時固定ダメージ50 装弾数5発
付属品:無し
詳細:クリップの排莢動作が兎の様に見える為、命名



 付属品?付属品ってサプレッサーとかスコープとかそういうのが存在してるってわけ?一応βで高レベル帯には架空銃の存在も確認されているというのを考えればありえる。そう『銃の正しい使い方で戦う方法』がまだ残っているじゃないか。だからこその付属品なんだ。




 数分後、ショップから出てくると一つの装備品を買って外に出てくる。この弾薬がない世界で銃を武器として使う事ができる神アイテムが一つだけ存在していた。



名前:ナイフ 武器種:短剣
必要ステータス:STR1 DEX1
攻撃力:+3 命中:+15
効果:無し
詳細:短剣入門用安いなりの性能


 
 そう、これを付属品として付ければ立派な銃剣として機能するはず。やばい、私天才じゃね?いや、運営はこの縛りを想定していたはずだ。だって作りこみが半端ないんだから、これくらい思いつくに決まってるじゃん。
 銃キチのスタッフもいるんだもん、そりゃあこれくらい思いつくよ、魔法系の強力な武器とのハイブリットとかファンタジーじゃないとできないよ。なんなら地底人を切り殺せるチェーンソーとかどっかにあるだろ。


『M2ラビットにナイフを装備しますか?』


 イエスイエスイエス!
 私のゲーム勘はやはり素晴らしい、これで後は銃剣として銃弾を手に入れるまでどうにか接近戦で凌ぐか、自作するまで乗り切ればまた固定ダメージ無双が出来るという……。


『M2ラビットのアタッチメントが不足しています』


 そりゃあマウントできる所がなきゃ装備できねえよ!
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