魔法使いの薬瓶

貴船きよの

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ビンドの収穫祭編

3,夜明け-4

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 ルウが肩から斜めがけした鞄は、ディアが持たせてくれた薬草と昼食用のパンで、来たときよりも膨らんでいた。

 ディアとモルとメルは、見送りのために家の石垣の前まで石段を下りた。

 ルウとガルバナムは、三人を振り返る。

「それじゃ、ここで。皆、元気でね。モルもメルも、なにかあったら手紙をくれていいからね」

「お兄ちゃん……」

 モルとメルは、ルウに抱きついて別れを惜しむ。

「あの人達には困ったものね。会えるのを楽しみにしていたでしょう」

 ディアは、ため息混じりに言う。

「いいんです。お父さまとお母さまにも、僕は元気でいると伝えてください。僕のほうこそ、短い時間しかいられなくてごめんなさい」

「なにを言っているの。帰ってきてくれて嬉しかったわ。あなたは、あなたがすべきことを頑張りなさい」

 ディアは、ルウの頬を皺の刻まれた両手で包んで言った。

「……はい」

 ルウは、うっすらと涙を浮かべて答えた。

「そろそろ行こうか、ルウ」

「はい」

 ガルバナムに促され、ルウは深く息を吸い込んで気持ちを切り替えた。

 そのときだった。

 ディアが立つ背後から、女性の声が聞こえた。

「――ルウ!」

「……え?」

 皆が声のするほうへと視線を移すと、ルウの進行方向とは反対側から、短い金髪の女性と眼鏡をかけた男性が大荷物を担いで歩いてくるのが見えた。

「お母さま! お父さま!」

 ルウが驚いて言うと、小さなきょうだいも気がついて、

「本当だ! お父さま! お母さま!」

 と、両親のもとに駆けていった。

 ルウの母はその場に荷物を置き、再会した子ども達を抱きしめる。

 ルウがガルバナムを見ると、ガルバナムは一つ頷く。そして、ルウも両親のもとへと駆け寄っていった。

「間に合いましたね」

 ガルバナムが言うと、

「お騒がせなことで」

 と、ディアは安心して一つ息を吐いた。

 ガルバナムが親子の再会を見守っていると、ディアの隣に立つ見知らぬ男に、ルウの父親が気がついた。それから父親は深く頭を下げ、ガルバナムもそれに応えた。

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