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第四章:転生者ウェルガ 初等部編

どうやらこの世界にこの計算の仕方はないらしい

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「…というわけで、多分アホ共が数人、各クラスから消えることになるかもしれない」

「…お、俺ん家は違うよな?!な!?」

「ぼ、ボクの家も無事だよね…?」

俺は翌日、学校に来ていた貴族のザイア達にも話せる範囲まで昨日のことを話した。

「いや、当たり前だろ。2人の家は全然マトモじゃんか」

「ひ~…貴族って馬鹿やったら潰されちまうのか…親父その事知ってんのかなぁ?」

「ボクの両親は多分、この事を知っているだろうね。だから真面目に領地経営してるのかもしれない」

「いや、多分両方とも知っててやってるんだろ。しかもこの国、領民が一揆みたいな事を起こしても、治めてる貴族によっては認められるからなぁ~」

「「そうなの!?」」

そうなんです。
この国独自の傾向というか、領民が領主一家を血祭りにしても、領主側に問題があれば王家は知らん振りをする。馬鹿貴族の自業自得に付き合ってる暇なんて無いからな。
ちなみに、その後に代表者が王に事態を報告すれば、その領地は国の支援が受けられるので、それを知ってる人達はそうやって積極的に悪徳貴族を潰しているらしい。怖いね~。

「ま、2人も気をつけたまえよ。俺も2人を宿無しにはしたくないし」

よっぽど恐ろしかったのか、2人とも首がちぎれんばかりにぶんぶん縦に振りまくっていた。

「…んで、アイツは今日はいないかぁ」

ルシアは本日、父親にこってり絞られたショックで休んでるとかいないとか。おかげで今日は平和そのものだ。


今日は算術の授業。
このクラスには成績上位者が多いので、難易度が他のクラスより少し上がっている。まあ、日本の小3がやる授業とさほど変わらないんだけどな。

「これ、分かるヤツいるか?」

ブダゴリラン先生が黒板っぽい板に書いていたのは、2桁のかけ算だ。

「足し算なら分かるのに…」

「いや、分かるだろ」

どうやら隣のザイア君にはちょっと難しかったらしい。

「あたしもちょっと厳しいかも…」

「むむむぅ…」

「ボクは分かったけど、ここは誰かに譲るよ」

女子2人も厳しいらしいけど、ゼクトはさすがに分かったようだ。

「頭の中で計算できるからね」

うわ、出来んのかよ。俺でも暗算じゃちょっと厳しいんだぞ。流石優等生。

「答えは…ん~…これだ」

先生が一応正解を書いたのだが、そっちも微妙なのかよ。俺?前世の計算技術検定経験者舐めんなよ。

「ムズい…」

「ひっ算だったら解けるんだけどな。俺でも暗算はさすがに無理だな。」

「「ひっさん?」」

あれ、みんな知らないの?じゃあ足し算の時どう計算してたんだよ…

意外にも、この世界の学力は日本の一般常識よりも低いらしい。別のクラスの問題見てそう思った。

「こうやるんだけど、知らないの?」

俺は紙に2桁の数字を上下に1つずつ書き、隣にバツっぽい記号を書いた。「掛け算」だからね。
ちなみにこれ、後で調べたら日本の小3で習うヤツだった。だよね~。

言葉では伝わりづらいなと思って実際にやってみたら…

「…めっちゃ簡単に解けてしまった…」

「慣れると机に指で書いて解けるんだよねぇ。懐かしいわぁ…」

「ウェル君凄い…」

「ですぅ…」

「確かに簡単だね。これ、桁が増えても一緒なのかな?」

「あ、それはちょっと場合によるな。小数点とかのやつだと…」

「「小数点もいけるの!?」」

え、そんなに?簡単だよ?

先生も何故か「ウェルガはすげぇな!俺も使ってみる!」って言ってるし、他の子も同じやり方したらいけたっぽいし、この世界の基準がよう分からん…感謝されたのは嬉しいんだけどさ。
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