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個人と団体。男と女。
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料理慣れしていない高校生がバタバタしながら作った焼きそばは、中々に好評だった。
生徒達は流石は広島県民で鉄板を前にすると料理の腕が上昇するようだ。
ウスターソースが足りず、お好みソースや焼き肉のタレを足したのが逆に良かったのか居酒屋料理の様なジャンクな味わいだった。
佐々木と羽田は焼きそばをビールが欲しい味と評価していた。
生徒達も午後の練習がなければ炭酸飲料をがぶ飲みしたいのにと悔しがっている。
榎田も紙皿に載せた焼きそばの香ばしい香りを堪能していた。
誰が言い出したか、
『木田を殺した京極が自殺した。事件は解決だ』
の言葉が生徒達を安心させ、暖かい食事は生徒達が平静を取り戻す手助けとなった。
日本人にとって美味しい食事は幸せの20パーセントは占めるているのではないだろうか。
「強化合宿が林間学校みたいになってきたな」
「懐かしい。飯盒炊爨にオリエンテーリング、あれって今やっても楽しいのかな」
「飯盒って失敗して焦げてる方が美味かったりするから難しいよな」
「オリエンテーリングあれはいい思い出として残しておこう。山を駆け回るハードな競技だぞ」
豊田が現実を突きつける。
「しかしよく食べるわね」
大葉が柔道部員達をみてあきれる。
「まあ柔道部の強化合宿って身体作り、筋肉作りだからな食べてなんぼよ」
「午後から筋トレだしな、乱取りないなら食えるだけ食っとかないとな」
「乱取りあると何か違うの?」
「食いすぎると吐く」
「あ~そゆこと、そんなお昼ごはんで追い込まなくてもいいのに」
大葉は腹一杯食べてフルタイム試合に出場している自分を想像して気持ち悪くなった。
『絶対に吐く自信がある』
「ああ、そうだ大葉、午後の練習の後時間あるか?」
榎田が真剣な顔をして話しかける。
「ちょっと待て、俺の前で口説き始めるなよ。気まずいだろ」
榎田が一瞬考え込み、ハッと豊田の言葉の意味にたどり着いた。
「違う違う。どう話したら良いかな。皆が言ってる木田さんと京極先輩の件がどうしても納得出来なくてな」
榎田は言葉を選びながら話す。
「でも京極先輩が怪しいっていい出したのお前だろ。大葉ちゃんにもそう説明したぞ」
「そうなんだが、犯人が自殺した。で片付けるにはどうも違和感があるんだ」
「例えば?」
榎田は大葉を見る。
大葉の頷きを確認してから榎田が語りだす。
「例えばそうだな、俺の推理では京極先輩は205号室で手持ちの凶器で大葉達の目の前で木田さんの胸を刺しただったよな」
「ああ、そう言ってたな」
「どうやって凶器を持ち込んだんだろう、あの時は皆んなプールの後だっよな、大葉、京極先輩はどんな服を着てた?」
榎田の質問に大葉は『ええっと』と当時を苦渋の表情で思い出しながら、
「プールの後だから学校指定の体操服だった。下はハーフパンツ」
と答えた。
「そうだよな、それを失念してた。返り血を浴びないように布団か毛布越しに木田の胸を突く。これな大型の刃物じゃないと難しい、だとするとハーフパンツのポケットには入らない。凶器を見てないから想像だけどな」
「あっ、入らないね。入ったとしてもずり落ちるよ」
大葉が自分のハーフパンツのポケットを裏返して確認する。
「だとすると着替えの入ったプールバック?の中に隠すか205号室内にあらかじめ隠しておくかになるがこれだと取り出す時に、水島さんの目があるんだ」
「なるほど凶器を持ち込めないんじゃ京極先輩は犯人じゃなくなるか」
豊田が同意する。
「それで水島さんから話を聞きたいんだが、俺一人じゃただの不審者だし、聞きにくい話題なんで助けて欲しい」
榎田は大葉の目を見て協力を求める。
「確かに聞きにくい話題よね。私も話している時に泣いちゃったし。まあ私に任せなさい」
大葉はどんと来いのジェスチャーだ。
「それじゃ練習の後連絡する」
「そうね、私と違って水島はいつも髪のケアとか時間かかるから良さそうなタイミングで連絡返すね」
榎田と大葉の打ち合わせ完了。
「で俺の役目は?」
豊田が聞くと。
「豊田は今朝の件で早田から話を聞きたいんだよな、俺はすぐ佐々木を呼びに行って現場を良くみてないんだ。ただ俺あいつ苦手なんだよ」
どちらかといえば生真面目な榎田とオラオラ系の早田は同じ柔道部にいながら話す機会があまりないのだ。
「同じ1年の柔道部でしょ。苦手とかあるの」
大葉が聞くと。
「すまん口下手なんだよ俺」
と榎田。
「何ていうかな、男女の差なのか個人競技と団体競技の差なのかはわからんが、俺達の人間関係は話が合わないなと思ったら無理に誘わないし絡まない。でも皆んなで盛り上がる時は盛り上がる。まあ、お互いの価値観を尊重してんのよ」
と豊田。
「へぇ、どっちかって言うとバスケ部はチームプレーで頑張りましょう。てノリでそれに馴染めないと辛いかも。職人肌の先輩とかもいるけど少数派になるよ」
と大葉。
「それで豊田はどんな価値観の奴とも話せて音頭をとれる貴重なタイプと」
「俺の評価高いな」
「水島さんの話を聞き終わったら早田から話を聞くからその時は頼りにしてるぞ。将来の部長」
榎田は豊田の肩を叩く。
「おい勝手に部長役押し付けんなよ」
2人は笑いだした。
「そろそろ時間だ。2人とも歯磨きしとかないと青のりついてるぞ」
「大葉もな」
3人は口を隠して笑うのだった。
生徒達は流石は広島県民で鉄板を前にすると料理の腕が上昇するようだ。
ウスターソースが足りず、お好みソースや焼き肉のタレを足したのが逆に良かったのか居酒屋料理の様なジャンクな味わいだった。
佐々木と羽田は焼きそばをビールが欲しい味と評価していた。
生徒達も午後の練習がなければ炭酸飲料をがぶ飲みしたいのにと悔しがっている。
榎田も紙皿に載せた焼きそばの香ばしい香りを堪能していた。
誰が言い出したか、
『木田を殺した京極が自殺した。事件は解決だ』
の言葉が生徒達を安心させ、暖かい食事は生徒達が平静を取り戻す手助けとなった。
日本人にとって美味しい食事は幸せの20パーセントは占めるているのではないだろうか。
「強化合宿が林間学校みたいになってきたな」
「懐かしい。飯盒炊爨にオリエンテーリング、あれって今やっても楽しいのかな」
「飯盒って失敗して焦げてる方が美味かったりするから難しいよな」
「オリエンテーリングあれはいい思い出として残しておこう。山を駆け回るハードな競技だぞ」
豊田が現実を突きつける。
「しかしよく食べるわね」
大葉が柔道部員達をみてあきれる。
「まあ柔道部の強化合宿って身体作り、筋肉作りだからな食べてなんぼよ」
「午後から筋トレだしな、乱取りないなら食えるだけ食っとかないとな」
「乱取りあると何か違うの?」
「食いすぎると吐く」
「あ~そゆこと、そんなお昼ごはんで追い込まなくてもいいのに」
大葉は腹一杯食べてフルタイム試合に出場している自分を想像して気持ち悪くなった。
『絶対に吐く自信がある』
「ああ、そうだ大葉、午後の練習の後時間あるか?」
榎田が真剣な顔をして話しかける。
「ちょっと待て、俺の前で口説き始めるなよ。気まずいだろ」
榎田が一瞬考え込み、ハッと豊田の言葉の意味にたどり着いた。
「違う違う。どう話したら良いかな。皆が言ってる木田さんと京極先輩の件がどうしても納得出来なくてな」
榎田は言葉を選びながら話す。
「でも京極先輩が怪しいっていい出したのお前だろ。大葉ちゃんにもそう説明したぞ」
「そうなんだが、犯人が自殺した。で片付けるにはどうも違和感があるんだ」
「例えば?」
榎田は大葉を見る。
大葉の頷きを確認してから榎田が語りだす。
「例えばそうだな、俺の推理では京極先輩は205号室で手持ちの凶器で大葉達の目の前で木田さんの胸を刺しただったよな」
「ああ、そう言ってたな」
「どうやって凶器を持ち込んだんだろう、あの時は皆んなプールの後だっよな、大葉、京極先輩はどんな服を着てた?」
榎田の質問に大葉は『ええっと』と当時を苦渋の表情で思い出しながら、
「プールの後だから学校指定の体操服だった。下はハーフパンツ」
と答えた。
「そうだよな、それを失念してた。返り血を浴びないように布団か毛布越しに木田の胸を突く。これな大型の刃物じゃないと難しい、だとするとハーフパンツのポケットには入らない。凶器を見てないから想像だけどな」
「あっ、入らないね。入ったとしてもずり落ちるよ」
大葉が自分のハーフパンツのポケットを裏返して確認する。
「だとすると着替えの入ったプールバック?の中に隠すか205号室内にあらかじめ隠しておくかになるがこれだと取り出す時に、水島さんの目があるんだ」
「なるほど凶器を持ち込めないんじゃ京極先輩は犯人じゃなくなるか」
豊田が同意する。
「それで水島さんから話を聞きたいんだが、俺一人じゃただの不審者だし、聞きにくい話題なんで助けて欲しい」
榎田は大葉の目を見て協力を求める。
「確かに聞きにくい話題よね。私も話している時に泣いちゃったし。まあ私に任せなさい」
大葉はどんと来いのジェスチャーだ。
「それじゃ練習の後連絡する」
「そうね、私と違って水島はいつも髪のケアとか時間かかるから良さそうなタイミングで連絡返すね」
榎田と大葉の打ち合わせ完了。
「で俺の役目は?」
豊田が聞くと。
「豊田は今朝の件で早田から話を聞きたいんだよな、俺はすぐ佐々木を呼びに行って現場を良くみてないんだ。ただ俺あいつ苦手なんだよ」
どちらかといえば生真面目な榎田とオラオラ系の早田は同じ柔道部にいながら話す機会があまりないのだ。
「同じ1年の柔道部でしょ。苦手とかあるの」
大葉が聞くと。
「すまん口下手なんだよ俺」
と榎田。
「何ていうかな、男女の差なのか個人競技と団体競技の差なのかはわからんが、俺達の人間関係は話が合わないなと思ったら無理に誘わないし絡まない。でも皆んなで盛り上がる時は盛り上がる。まあ、お互いの価値観を尊重してんのよ」
と豊田。
「へぇ、どっちかって言うとバスケ部はチームプレーで頑張りましょう。てノリでそれに馴染めないと辛いかも。職人肌の先輩とかもいるけど少数派になるよ」
と大葉。
「それで豊田はどんな価値観の奴とも話せて音頭をとれる貴重なタイプと」
「俺の評価高いな」
「水島さんの話を聞き終わったら早田から話を聞くからその時は頼りにしてるぞ。将来の部長」
榎田は豊田の肩を叩く。
「おい勝手に部長役押し付けんなよ」
2人は笑いだした。
「そろそろ時間だ。2人とも歯磨きしとかないと青のりついてるぞ」
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