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エピローグ1

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 羽田が諦め目を閉じた時、佐々木が駆けつけた。
「本当なのか生徒を殺したのは」
 泣きそうな顔で佐々木が羽田にたずねる。
「本当だよ。ゴメンね許せなかった。浮気した彼と彼に手を出した木田が。知ってる?1人、人を殺すとすごく不安になって2人目、3人目は簡単に殺せるんだよ。でも佐々木、楽しかったよ最後にはっちゃけられて」
 羽田のその笑顔は憑き物が落ちたような素敵な笑顔だった。
「馬鹿野郎」
 佐々木の背中が震えていた。
 
  
         ◇
 
 
 翌朝、警察と救急艇が到着した。
 皆が警察から事情聴取を受けるなかで、豊田は尾道市内の病院に救急搬送された。
 幸い検査では頭蓋骨、脳に異常は見つからなかったとの一報は皆を安心させた。
『現役の教師が生徒3人を殺害した』
 このニュースは報道番組、ワイドショーともにセンセーショナルに取り上げられた。
 その影響で道草東高校はいろいろと大変だったようだ。
 通常であれば授業も出来なかったが、夏休みだったのが幸いだった。
 それでも生徒達の心の傷が癒える時間を与えないマスコミは自宅付近に張り付きぶしつけなインタビューを繰り返していた。
 神北高校側の報道機関の扱いはおまけ程度でいつもの日常が戻って来た。




 ベージュ基調の内装にグリーンのアクセント一見すると落ち着きのある部屋のベッドに豊田は寝かされていた。
 よく見ると化粧合板とプラスティックの多用された内装はよく見る前に退院しろとの病院の圧力なのだろうか。
 病室テレビの台には誰のセンスかハイビスカスが飾ってあった。
 報道対策もあったのだろう高校生らしからぬ特別個室だ。
 病室のソファには生徒達が手土産として持って来たお菓子が山盛りになっていた。
 そんな中、
「あれっ、ここどこだ?」
 眠り続けた豊田の目が開いた。
 身体が重く更に痛たむ。
 看病していた豊田の母の目に涙がにじんでいる。
「お寝坊さんだな、目覚ましを仕掛けるのを忘れたのか?」
 電車で1時間掛けて見舞いに来た榎田は目覚めた豊田に安心して軽口を叩く。
「頭は大丈夫か悪口じゃ無くて傷のことだぞ」
「クソ、羽田、いきなり殴りやがって」
 榎田は豊田が目覚めたと主治医に連絡した後、事の次第を豊田に話す。
「俺の意識が無い間にそんな事が……」 
 豊田は悔しがる。
「しかし豊田。入院中モテモテだったぞ」
「はあ?」
「高校の先生が殺人事件を起こしたんだ。親も中々外出を許可しないだろ」
「そうだろうな、でなんでモテモテなんだ?」
「他校の生徒を守ろうとして負傷した英雄が入院中なんだ、見舞いを外出の名目にした道草東女バス部員が代わる代わる見舞いに来てたぞ。お母さんが女癖が悪くて殴られたんじゃないかと疑うぐらいにはな。うらやましい事で」
「うらやましくないし、記憶にも無い」
「今丁度面会時間だから今日も来るかもよ」
「それは顔位洗わせてくれよ」
 豊田の言葉に豊田の母は湿らせたタオルを手渡す。
「まあ母親の前で女を口説く度胸は無いだろ、まず母親に心配させてごめんと挨拶したらどうだ」
 榎田に促され豊田は母親に「遅くなったけどただいま」と挨拶した。
 母親の方はと言うと「この子は子供の頃から心配ばかりさせて」と定型フレーズを返していた。
「今日は榎田もいるね」
「おー珍しい」
「お母様もいらっしゃいます」
 かしましい3人が病室に入って来る。 
「俺は家が遠いの、それより先に言う事あるだろ」
 榎田が3人に言うと、
「お母様が髪型変えた?」と大葉
「違う」
「病院の経営者が変わった?」と水島
「知るか」
「え、後は榎田さんのパンツが今日はブリーフとか?」
「宮本さん俺のこと変態認定してる?むしろセクハラ発言だろそれ」
「そもそも誰の見舞いに来たのかな?」
「!!!」
 ベッドの上の豊田の声に三者三様の驚きを見せる。
 水島と宮本にあっては目が潤んでいる。
 榎田はさっきまで完全に豊田の事を忘れていた3人の態度の変わりように女って怖いなと思い知らされた。
「早く言いなさいよ」
 大葉は榎田に迫るが別に榎田も隠していたわけじゃない。
「傷は大丈夫?」
 との水島の問いかけには
「まだ痛いけど美夏ちゃんのフォールよりは100倍ましかな」
 水島は豊田の一番近くにいたため責任を感じていた。
 目覚めすぐに笑いでフォローの出来る豊田はやはりモテ男だ。
「良かった。中々目覚めないから心配で心配で」
 宮本も短い時間だったが豊田とは司会と裏方でペアを組んでいた仲だ本当に心配していたのだろう。
 最もさっきブリーフの話をしていたが。
「これから検査するので面会時間終わりになります」
 ノックして病室に入って来た看護師が豊田に体温計を渡しながら伝える。
「じゃあ帰ろっか」
「俺も」
 見上げた尾道の空は澄み渡っていた。
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