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聞き込みにはお肉
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榎田は肉を満載した紙皿をトレイに載せる。
『お茶とコーラ、後は塩コショウにタレと米』
第二の事件の第1発見者である早田の所に行く為の仕込みだ。
豊田が司会進行で来られなくなったため榎田が独力でコミュニケーションを取る必要が生じた。
同じ柔道部に所属していても軽薄なタイプの早田は口下手な榎田からすると苦手なタイプなのだ。
「男が打ち解けるには酒と肉だ。酒はないけどな」
榎田は独り言をつぶやくと。
『あとは美女だけどな』
余計な一言は心に留めるられる様に進歩している。
また絞め落とされてはたまらない。
「早田、一緒に食おう」
早田が一人になったタイミングを見計らい話しかけた。
肉のうまそうな場所ばかりをチョイスしてある。
「どうした、珍しい。しかも女連れ?」
早田は心に留められないタイプだ、ただ口に出しても許されるタイプでもある。
ちなみに豊田とは別のタイプでモテる。
豊田は相手に合わせて対応するタイプで全体的に女性にモテる、早田は自分のペースを押し付けるタイプで一部の女性に熱烈にモテるのだ。
このスタイルの違いは柔道にも表れていて豊田は相手のリーチ、体型、得意技等を分析して対応する。
一本勝ちは少ないが格上の相手にも引き分けに持ち込んだりとしぶとさがある。
一方の早田は得意な組際からの袖釣込腰で早々に一本勝ちするときもあればあっさり負けたりもする。
「こんなときでもないと、階級も違うし話す機会が無かったからな、あと京極先輩の最期を知りたいってさ」
榎田は大葉と水島を紹介する。
「そっちが本題か、分かった流石にこの状況で知らん帰れとはよう言わん」
榎田はスマンなとアイコンタクトをする。
「私は大葉で彼女は水島二人共205号室で」
大葉が自己紹介を始めたところで、
「分かった分かった、好きに質問してくれ、ただ俺はデリカシーとか気配りとは縁が無いからな」
早田は体育館の床にあぐらをかき、まずは肉を頬張った。
「上手いな良い肉だ」
「じゃあ早速質問するよ、食事中にする話題でもないけど」
大葉もあぐらをかこうとしたが、多少は異性の目を気にして床に横座りした。
「えっと、京極先輩を発見した時、遺書とかはなかった?」
「無かったよ。あるならグループCの荷物の中にあるんじゃないか?て言うか榎田一緒に現場にいただろ」
「俺はすぐに佐々木を呼びに行っただろ。正直覚えてない」
「そういやそうだった。正直、俺も動転してたしな」
「次は鍵の状況だけど」
水島も会話に加わる。
長い足を持て余して投げ出した状態で座っている。
「食堂の入口の鍵は最初から開いていて、鍵自体は京極を運ぶときに転がって出てきたな」
早田も思い出しながら話す。
「佐々木はほぼ密室状態だと言っていたが、早田が見た感じどうだ?厨房の中から出てこられなさそうか?」
榎田が疑問を口にする。
「そうだよな、隙間はあるから通り抜けられそうなんだが……。意外と難しい。」
早田は榎田に向き直る。
「俺も、京極の件を自殺で片付けてこんな懇親会をするのはどうかと思って考えていた。異論があったら言ってくれ。まず床が血まみれの状態でカウンターとショーケースを飛び越えるのは無理だ。高さが俺の胸くらいはあるからまあ1.2メートルとしよう。どこかに手をつく所があれば跳び箱の要領で何とかなるかもしれんが、問題は袖壁とガラストップのショーケースだ」
「袖壁?そんなのあったっけ?」
榎田が発見時を思い出しながら聞く。
「あった火災対策なんだろな、天井から袖壁が降りていて、袖壁とショーケースの間は50から60センチ位しか無い。身体を丸めても難しい。」
早田以外の3人は跳び箱のポーズで自身の身体の長さを確認した。
「確かに無理ね」
一番小柄な大葉でも難しかった。
「それによりにもよってショーケースがガラストップのスタイリッシュ仕様なんだよな。ショーケースの耐荷重は知らんが、まあ家のガラスのテーブルと同じくらいだとしてまあ耐荷重20キロってとこだろ、うかつに乗れないし手もつけない。まあたまたまハイジャンプの選手がベリーロールで飛び越えたんじゃなけりゃ無理だな」
「なるほどな。逆に絞殺した死体をドアに結び血液が付着する前のシンクに足を掛けてショーケースを飛び越える。その後で血液を撒いて偽装すればどうだ」
榎田が早田に問いかける。
「その場合は血液の飛沫の方向がネックになる。シンクの血液は明らかに内側から外側に飛んでいた。あの血痕は外側からは着けられない。それにシンクに足を掛けて隙間を飛び越えると、まあ前回り受け身の要領で着地することになるがコンクリの上にリノリウムを張っただけの床じゃ怪我するぞ」
「うーん」
4人は唸る。
「えらくこだわるが逆に自殺じゃない根拠はあるのか?榎田」
「俺が気になったのが、自殺の手段に悩んでビニール紐を持っていたのはまだ良いとして、手首を切って痛みがあるのにわざわざスウィングドアで自殺しているだろ。首吊りするなら倉庫のドアノブですればいい。そのほうが簡単だ」
「倉庫?」
「食材が入っていた倉庫が奥にあっただろ、あっちの方がシンクから近いしドアノブの方が低くてロープを掛けやすい。わざわざ血まみれになってスウィングドアにロープを括り付ける必要はないだろ」
榎田と早田のやり取りが続く。
「倉庫か、それは知らんかった。スウィングドアにわざわざ鍵をかけてロープを結んで首吊りか確かに手間だな、手首を切って痛いだろうし確かに不自然だ」
早田も京極の自殺の不自然さを理解する。
「ありがとな、まあ今の所は不自然ってだけしか分からんな」
榎田は早田のコップにコーラを注いだ。
肉は人間関係の潤滑油いや潤滑脂だった。
『お茶とコーラ、後は塩コショウにタレと米』
第二の事件の第1発見者である早田の所に行く為の仕込みだ。
豊田が司会進行で来られなくなったため榎田が独力でコミュニケーションを取る必要が生じた。
同じ柔道部に所属していても軽薄なタイプの早田は口下手な榎田からすると苦手なタイプなのだ。
「男が打ち解けるには酒と肉だ。酒はないけどな」
榎田は独り言をつぶやくと。
『あとは美女だけどな』
余計な一言は心に留めるられる様に進歩している。
また絞め落とされてはたまらない。
「早田、一緒に食おう」
早田が一人になったタイミングを見計らい話しかけた。
肉のうまそうな場所ばかりをチョイスしてある。
「どうした、珍しい。しかも女連れ?」
早田は心に留められないタイプだ、ただ口に出しても許されるタイプでもある。
ちなみに豊田とは別のタイプでモテる。
豊田は相手に合わせて対応するタイプで全体的に女性にモテる、早田は自分のペースを押し付けるタイプで一部の女性に熱烈にモテるのだ。
このスタイルの違いは柔道にも表れていて豊田は相手のリーチ、体型、得意技等を分析して対応する。
一本勝ちは少ないが格上の相手にも引き分けに持ち込んだりとしぶとさがある。
一方の早田は得意な組際からの袖釣込腰で早々に一本勝ちするときもあればあっさり負けたりもする。
「こんなときでもないと、階級も違うし話す機会が無かったからな、あと京極先輩の最期を知りたいってさ」
榎田は大葉と水島を紹介する。
「そっちが本題か、分かった流石にこの状況で知らん帰れとはよう言わん」
榎田はスマンなとアイコンタクトをする。
「私は大葉で彼女は水島二人共205号室で」
大葉が自己紹介を始めたところで、
「分かった分かった、好きに質問してくれ、ただ俺はデリカシーとか気配りとは縁が無いからな」
早田は体育館の床にあぐらをかき、まずは肉を頬張った。
「上手いな良い肉だ」
「じゃあ早速質問するよ、食事中にする話題でもないけど」
大葉もあぐらをかこうとしたが、多少は異性の目を気にして床に横座りした。
「えっと、京極先輩を発見した時、遺書とかはなかった?」
「無かったよ。あるならグループCの荷物の中にあるんじゃないか?て言うか榎田一緒に現場にいただろ」
「俺はすぐに佐々木を呼びに行っただろ。正直覚えてない」
「そういやそうだった。正直、俺も動転してたしな」
「次は鍵の状況だけど」
水島も会話に加わる。
長い足を持て余して投げ出した状態で座っている。
「食堂の入口の鍵は最初から開いていて、鍵自体は京極を運ぶときに転がって出てきたな」
早田も思い出しながら話す。
「佐々木はほぼ密室状態だと言っていたが、早田が見た感じどうだ?厨房の中から出てこられなさそうか?」
榎田が疑問を口にする。
「そうだよな、隙間はあるから通り抜けられそうなんだが……。意外と難しい。」
早田は榎田に向き直る。
「俺も、京極の件を自殺で片付けてこんな懇親会をするのはどうかと思って考えていた。異論があったら言ってくれ。まず床が血まみれの状態でカウンターとショーケースを飛び越えるのは無理だ。高さが俺の胸くらいはあるからまあ1.2メートルとしよう。どこかに手をつく所があれば跳び箱の要領で何とかなるかもしれんが、問題は袖壁とガラストップのショーケースだ」
「袖壁?そんなのあったっけ?」
榎田が発見時を思い出しながら聞く。
「あった火災対策なんだろな、天井から袖壁が降りていて、袖壁とショーケースの間は50から60センチ位しか無い。身体を丸めても難しい。」
早田以外の3人は跳び箱のポーズで自身の身体の長さを確認した。
「確かに無理ね」
一番小柄な大葉でも難しかった。
「それによりにもよってショーケースがガラストップのスタイリッシュ仕様なんだよな。ショーケースの耐荷重は知らんが、まあ家のガラスのテーブルと同じくらいだとしてまあ耐荷重20キロってとこだろ、うかつに乗れないし手もつけない。まあたまたまハイジャンプの選手がベリーロールで飛び越えたんじゃなけりゃ無理だな」
「なるほどな。逆に絞殺した死体をドアに結び血液が付着する前のシンクに足を掛けてショーケースを飛び越える。その後で血液を撒いて偽装すればどうだ」
榎田が早田に問いかける。
「その場合は血液の飛沫の方向がネックになる。シンクの血液は明らかに内側から外側に飛んでいた。あの血痕は外側からは着けられない。それにシンクに足を掛けて隙間を飛び越えると、まあ前回り受け身の要領で着地することになるがコンクリの上にリノリウムを張っただけの床じゃ怪我するぞ」
「うーん」
4人は唸る。
「えらくこだわるが逆に自殺じゃない根拠はあるのか?榎田」
「俺が気になったのが、自殺の手段に悩んでビニール紐を持っていたのはまだ良いとして、手首を切って痛みがあるのにわざわざスウィングドアで自殺しているだろ。首吊りするなら倉庫のドアノブですればいい。そのほうが簡単だ」
「倉庫?」
「食材が入っていた倉庫が奥にあっただろ、あっちの方がシンクから近いしドアノブの方が低くてロープを掛けやすい。わざわざ血まみれになってスウィングドアにロープを括り付ける必要はないだろ」
榎田と早田のやり取りが続く。
「倉庫か、それは知らんかった。スウィングドアにわざわざ鍵をかけてロープを結んで首吊りか確かに手間だな、手首を切って痛いだろうし確かに不自然だ」
早田も京極の自殺の不自然さを理解する。
「ありがとな、まあ今の所は不自然ってだけしか分からんな」
榎田は早田のコップにコーラを注いだ。
肉は人間関係の潤滑油いや潤滑脂だった。
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