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グループE
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午後6時頃、食堂に集められた生徒達は羽田教諭から木戸の訃報を聞いた。
道草東高校の木田が205号室で胸を刺されて死亡していたこと。
併せて嵐のため警察の到着が遅れること。
渡船が出航出来ず島外に出れない事。
食堂の生徒達は一度静まり帰ったが、犯人が野放しの状況で合宿を続けざるを得ない状況に不安と不満を口にした。
「先生方提案があります」
柔道部部長の西田が急に手を挙げる。
「何だ?」
普段物静かな方である西田の発言に佐々木が問う。
「警察が到着するまで皆で固まっていた方が良いと思います」
「確かにな、道草東の羽田先生にも聞いてみよう」
佐々木が羽田のもとに行こうとした所で、
「俺もいいですか?」
榎田が手をあげる。
「どうした?」
「口下手なんでこれを」
榎田は佐々木に紙片を渡す、紙片には
新たな被害を発生させないために
1 205号室を封鎖しておくこと
2 205号室員はバラバラにしておくこと
3 行動する時は3人以上で行うこと
4 先生方は生徒と一緒に施設内を警戒するとこ
と書かれていた。
「なるほどな一理あるな」
佐々木が頷き羽田のもとに紙片を待って相談に行った。
結果、羽田も同意した。
羽田は顧問を務めているが合宿等したことがないためどうしたら良いかわからない様だ。
西田、榎田の提案に他の生徒達も賛成したことで、体育館でグループ分けを行った。
グループ分けといっても元々の部屋割りをもとに分けられている。
101号室と201号室で一つのグループを作る。
これをグループAとして他のグループも同じ様にグループ分けをした。
205号室の室員と教員は各グループに振り分けられた。
グループA 佐々木教諭
グループB 羽田教諭
グループC 京極遥香
グループD 水島美夏
グループE 大葉霞
これだとEグループの人数が少ないのでグループAから寺井桃、グループCから松浦佐織がグループEに振り分けられた。
グループ事に、寝具や荷物を部屋に取りに戻り一夜を越える準備に取り掛かった。
自室が封鎖中の205号室員には予備の寝具を用意した。
最低限のプライバシーを守るために、医務室のパーテーション、体育館の卓球台等で体育館を区画していく。
グループEのメンバーは体育館の隅で円を作っていた。
なにせ一番寄せ集めのグループだ。
特に道草東高校側は仲の良かった同室から追い出された形になる。
事件の犯人が捕まらない状態では誰も信用できない。
グループ分けは榎田の思惑通りではある。
「幸か不幸かここ数日このメンバーで行動する事になった。ショックだろうが少しでも安心するために昼食から今までの行動を話さないか」
豊田が口火を切る。
「205号室の私が一番疑われる立場だから先に話すね。昼食後はまず、部屋でプールの準備をして、その時までは体調悪そうだったけど木田ちゃんは生きていたよ。部屋のみんなと屋外プールに行って、そこであなた達と会って」
大葉が榎田達を示す。
「医務室に行った。その後は私だけ部屋のみんなより遅くなったので急いで更衣室で着替えたり髪を乾かしたりしたあとプールのロビーで合流したよ。で三人で205号室に……」
大葉の目に涙が浮かぶ。
「205号室で京極先輩が鍵で扉を開けたらベッドで木田ちゃんが死んでいるのに気がついて、私は先生を呼びに行った。犯人は私じゃないよ」
豊田は大葉が落ち着くのを待ってから、
「答えられたらでいい二つ質問する。一つ目は部屋に行った時、血の臭いはしたか?二つ目は木田の死亡確認は誰がした?」
と質問する。
松浦と寺井からはそんな事まで聞かなくてもと非難の声があがる。
「私は部屋の中に入ってないから血の匂いには気が付かなかった。京極先輩が木田ちゃんが息をしていないと言っていたけど脈まで見ていたかは分からない」
ここで榎田は訥々と話し出す。
「辛かったよな、有難う。これで大葉は犯人では無い。でいいな」
周囲の頷きを確認してか声のボリュームをあげて、
「大葉は205号室には入らずに羽田先生を呼びに行ったんだな」
「うん……」
大葉が頷く。
「相変わらず下手な演技だ、あと少しは説明しろ性格が悪い」
秘密のジェスチャーをして小声で豊田が囁く、
「こうやって周囲に霞ちゃんの行動を知らせておかないと皆から『お前が犯人だろ』と疑われる。この猿芝居で霞ちゃんが嘘を言っていたら、先生達や京極先輩が嘘に気がついて嘘がバレる。これで内外共に霞ちゃんの無実の証明がされた訳だな」
豊田が説明する。
「ついで俺と榎田の行動だが、医務室までは霞ちゃんと同じなので省略して、雨が降って来たから着替えを持って宿舎にダッシュ。宿舎の1階のシャワールームでシャワーを浴びて105号室に戻った。部屋で木下先輩と合流して駄弁っていたら、部屋の前の廊下を霞ちゃんが走っているのを見たね」
「この流れだと俺だな。プールまでは榎田、豊田と一緒だ。医務室が狭かったんで廊下で待機してた。それで出て来た佐々木に騒ぎを起こした罰として体育館でスクワットをさせられていた。それから105号で二人と合流だな。体育館のスクワットは目立っていたから聞けば目撃者はいくらでもいると思うぞ」
話す木下に豊田は『すいません』と、頭を下げる。
「ちなみに何回したんですか罰スクワット」
「300だ」
いいジャイアンの異名を持つ漢、木下は罰を受けても後輩に愚痴らないのだ。
寺井、松浦の昼食からの行動は両方ともプール中に雨が降り自室に戻るという流れは同じだった。
新たに入手した情報は木田はかなり男子に人気がある生徒で過去に恋愛関係でトラブルになった事があるということ。
木田が本日朝から頭痛、めまいの体調不良を訴えていた事。
当初は発熱も無く船酔い、車酔いだろうとのことで静養していた事。
くらいだった。
佐々木が大股で体育館内を横断して行った。
「これは明日も嵐だな」
持って来たラジオを体育館のコンセントに繋いだ。
ラジオのスピーカーは台風の接近と暴風警報を速報で流している。
暴風警報が出ている間は船が出せない。
「このままだと明日、調理の職員が来れないらしい、悪いが各グループ1名朝食要員を決めてくれ道具はプロ用、材料はふんだんにあるぞ明日6時半ここに集合してくれ」
佐々木が各グループに指示を出した。
「相変わらず弱いな」
グループEではじゃんけんの結果、榎田が朝食係となった。
道草東高校の木田が205号室で胸を刺されて死亡していたこと。
併せて嵐のため警察の到着が遅れること。
渡船が出航出来ず島外に出れない事。
食堂の生徒達は一度静まり帰ったが、犯人が野放しの状況で合宿を続けざるを得ない状況に不安と不満を口にした。
「先生方提案があります」
柔道部部長の西田が急に手を挙げる。
「何だ?」
普段物静かな方である西田の発言に佐々木が問う。
「警察が到着するまで皆で固まっていた方が良いと思います」
「確かにな、道草東の羽田先生にも聞いてみよう」
佐々木が羽田のもとに行こうとした所で、
「俺もいいですか?」
榎田が手をあげる。
「どうした?」
「口下手なんでこれを」
榎田は佐々木に紙片を渡す、紙片には
新たな被害を発生させないために
1 205号室を封鎖しておくこと
2 205号室員はバラバラにしておくこと
3 行動する時は3人以上で行うこと
4 先生方は生徒と一緒に施設内を警戒するとこ
と書かれていた。
「なるほどな一理あるな」
佐々木が頷き羽田のもとに紙片を待って相談に行った。
結果、羽田も同意した。
羽田は顧問を務めているが合宿等したことがないためどうしたら良いかわからない様だ。
西田、榎田の提案に他の生徒達も賛成したことで、体育館でグループ分けを行った。
グループ分けといっても元々の部屋割りをもとに分けられている。
101号室と201号室で一つのグループを作る。
これをグループAとして他のグループも同じ様にグループ分けをした。
205号室の室員と教員は各グループに振り分けられた。
グループA 佐々木教諭
グループB 羽田教諭
グループC 京極遥香
グループD 水島美夏
グループE 大葉霞
これだとEグループの人数が少ないのでグループAから寺井桃、グループCから松浦佐織がグループEに振り分けられた。
グループ事に、寝具や荷物を部屋に取りに戻り一夜を越える準備に取り掛かった。
自室が封鎖中の205号室員には予備の寝具を用意した。
最低限のプライバシーを守るために、医務室のパーテーション、体育館の卓球台等で体育館を区画していく。
グループEのメンバーは体育館の隅で円を作っていた。
なにせ一番寄せ集めのグループだ。
特に道草東高校側は仲の良かった同室から追い出された形になる。
事件の犯人が捕まらない状態では誰も信用できない。
グループ分けは榎田の思惑通りではある。
「幸か不幸かここ数日このメンバーで行動する事になった。ショックだろうが少しでも安心するために昼食から今までの行動を話さないか」
豊田が口火を切る。
「205号室の私が一番疑われる立場だから先に話すね。昼食後はまず、部屋でプールの準備をして、その時までは体調悪そうだったけど木田ちゃんは生きていたよ。部屋のみんなと屋外プールに行って、そこであなた達と会って」
大葉が榎田達を示す。
「医務室に行った。その後は私だけ部屋のみんなより遅くなったので急いで更衣室で着替えたり髪を乾かしたりしたあとプールのロビーで合流したよ。で三人で205号室に……」
大葉の目に涙が浮かぶ。
「205号室で京極先輩が鍵で扉を開けたらベッドで木田ちゃんが死んでいるのに気がついて、私は先生を呼びに行った。犯人は私じゃないよ」
豊田は大葉が落ち着くのを待ってから、
「答えられたらでいい二つ質問する。一つ目は部屋に行った時、血の臭いはしたか?二つ目は木田の死亡確認は誰がした?」
と質問する。
松浦と寺井からはそんな事まで聞かなくてもと非難の声があがる。
「私は部屋の中に入ってないから血の匂いには気が付かなかった。京極先輩が木田ちゃんが息をしていないと言っていたけど脈まで見ていたかは分からない」
ここで榎田は訥々と話し出す。
「辛かったよな、有難う。これで大葉は犯人では無い。でいいな」
周囲の頷きを確認してか声のボリュームをあげて、
「大葉は205号室には入らずに羽田先生を呼びに行ったんだな」
「うん……」
大葉が頷く。
「相変わらず下手な演技だ、あと少しは説明しろ性格が悪い」
秘密のジェスチャーをして小声で豊田が囁く、
「こうやって周囲に霞ちゃんの行動を知らせておかないと皆から『お前が犯人だろ』と疑われる。この猿芝居で霞ちゃんが嘘を言っていたら、先生達や京極先輩が嘘に気がついて嘘がバレる。これで内外共に霞ちゃんの無実の証明がされた訳だな」
豊田が説明する。
「ついで俺と榎田の行動だが、医務室までは霞ちゃんと同じなので省略して、雨が降って来たから着替えを持って宿舎にダッシュ。宿舎の1階のシャワールームでシャワーを浴びて105号室に戻った。部屋で木下先輩と合流して駄弁っていたら、部屋の前の廊下を霞ちゃんが走っているのを見たね」
「この流れだと俺だな。プールまでは榎田、豊田と一緒だ。医務室が狭かったんで廊下で待機してた。それで出て来た佐々木に騒ぎを起こした罰として体育館でスクワットをさせられていた。それから105号で二人と合流だな。体育館のスクワットは目立っていたから聞けば目撃者はいくらでもいると思うぞ」
話す木下に豊田は『すいません』と、頭を下げる。
「ちなみに何回したんですか罰スクワット」
「300だ」
いいジャイアンの異名を持つ漢、木下は罰を受けても後輩に愚痴らないのだ。
寺井、松浦の昼食からの行動は両方ともプール中に雨が降り自室に戻るという流れは同じだった。
新たに入手した情報は木田はかなり男子に人気がある生徒で過去に恋愛関係でトラブルになった事があるということ。
木田が本日朝から頭痛、めまいの体調不良を訴えていた事。
当初は発熱も無く船酔い、車酔いだろうとのことで静養していた事。
くらいだった。
佐々木が大股で体育館内を横断して行った。
「これは明日も嵐だな」
持って来たラジオを体育館のコンセントに繋いだ。
ラジオのスピーカーは台風の接近と暴風警報を速報で流している。
暴風警報が出ている間は船が出せない。
「このままだと明日、調理の職員が来れないらしい、悪いが各グループ1名朝食要員を決めてくれ道具はプロ用、材料はふんだんにあるぞ明日6時半ここに集合してくれ」
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