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第25話 二番弟子、友達を守る
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事件が起きたのは、チアリーダー部の新歓から更に1週間が経った日の、2度目の迷宮実習の時だった。
始めは、いつものようにとりとめも無い話で盛り上がりながら迷宮を攻略していた。
「ったく、テーラスがいるだけで10階層まで進む許可が出るってどんなルールだよ」
「ほんまやで。テーラスを除いた実力テスト上位4人でパーティーを組んでも6階層までしか行けへんっちゅうのに……」
サムとマホートが、昨日の魔法実習訓練を思い出したのか、そう話した。
昨日の魔法実習訓練では、実力を測る小テストが行われた。
そしてそのテストの結果に基づき、クラスの俺以外の全生徒が、ランク1からランク3のいずれかに振り分けられた。
そしてこのランクは、「本日の迷宮実習で、何階層まで進んでいいか」を決定するのに利用されるのだ。
具体的には、3人ないし4人でパーティーを組み、パーティーメンバー全員のランクの合計値を2で割った階層まで進む許可が出る。
だから、たとえパーティーメンバー4人全員がランク3だったとしても、3×4÷2=6階層までしか進めないはずなのだが……俺は小テストで、ランク20などというものを言い渡されてしまったのだ。
おかげで、俺がいるパーティーは俺のランク値だけで10階層まで進んでいいことになってしまうのだ。
1層の魔物がワイルドブルより弱かったことを思えば、レッサークトゥルフは10階層以降の魔物と考えるのが妥当なのでまあ危険は無いと思うが……教師の判断基準が全く掴めない。
まあ、楽しければ全て良しとしよう。
最初は、そんな風に考えていた。
「おっ、魔物とエンカウント!」
楽しげにゼルトがそう言った。
「先週の約束、覚えてるよね?」
「分かったよ。倒せば良いんだろ?」
「そうそう、楽しみなんだからさ。じゃあみんな、いっくよ~」
ゼルトが他2人に声出しを促した。
……ああ、その掛け声やるのね。
「「「テーラスの! ちょっと良いとこ見てみたい! はーい斬って斬って斬って! 斬って斬って斬って! 斬って斬って斬って! 斬って!」」」
リズムに合わせて、本気で気炎撃を振るった。
魔物は断面が焼け爛れ、真っ二つになった。
「「「……」」」
……おい。何を顎が外れそうな表情してんだ。
そこまでコールやっといて黙るなよな。
「ねえ、ウェーイは?」
俺は3人に聞いた。
「「「……」」」
「ウェーイはどこ消えたのってば」
「……すまん。剣術試験で見ていたとは言え……改めて見ると、威力高すぎて言葉が出なくなるわ」
「……今みたいなことなる? 昨日の魔法実習のアレ、まさかの手加減ありだったって感じ?」
「えげつないわあ……」
口々にそう言う3人。
これは、俺も張り切り過ぎたみたいだな。
「ま、続き楽しんで行こう!」
「「「オー!」」」
この時は、まだ前回同様楽しい迷宮攻略が続くものと思っていた。
☆ ☆ ☆
奴らがいたのは、6階層に降りる階段付近だった。
突如として、上級生と思われる女子が、目の前に立ちふさがったのだ。
「痛い目に遭わされたく無ければ、大人しく帰んな」
上級生はそう言った。
「こっちはちゃんと授業で来てんだよ。何でそんな事言われなくちゃなんねえんだ」
サムがそう反論する。
「ちゃんと、授業? 先公の犬が、こんなとこでシャシャッてんじゃねえよ!」
上級生はそう言って、サムの胸ぐらを掴んだ。
……これは確信がついた。
こいつ、6年D組の奴だな。
だがおそらく、目の前にいるのはリューナでは無い。
性格は粗暴だが、平然と人を殺す冷酷さを兼ね備えているようには見えないからだ。
それに、上級生の体内の魔力の流れを感じ取る分には、到底この学園の教師を一斉に相手して全員の深手を負わせられるようには思えない。
不良の下っ端ってところか。
そうは言っても、これが「近くにリューナがいる」という可能性を示す状況なのは間違い無いがな。
である以上、この上級生にこれ以上関わるのは得策とは言えないだろう。
覆面無しでリューナと決闘を行えば、それは「覆面更生員としての活動」ではなく「ただの喧嘩」扱いになってしまうからな。
だから、ここは早く撤退すべきだが……その前に、1つだけ落とし前をつけさせてもらうとするか。
俺はサムの胸ぐらを掴んでいる上級生に近づき──その脛に、めいっぱいの身体強化をかけた強烈な蹴りをお見舞いした。
グギっという嫌な音の直後、上級生の手はサムから離れる。
そしてそのまま上級生は数メートル吹っ飛んで、迷宮の壁に全身をぶつけた。
「俺のダチに手え出すなよ」
うずくまる上級生としっかり目を合わせ、俺は可能な限り冷淡な声でこう吐き捨てた。
身体的ダメージに加え、「イケメンに完全に嫌われてしまった」という精神的ダメージも与えてやろうという算段だ。
さて、報復はきっちりと決めたことだし、本格的な対決は覆面更生員としてやる事にしてここは上の階層に戻るか。
始めは、いつものようにとりとめも無い話で盛り上がりながら迷宮を攻略していた。
「ったく、テーラスがいるだけで10階層まで進む許可が出るってどんなルールだよ」
「ほんまやで。テーラスを除いた実力テスト上位4人でパーティーを組んでも6階層までしか行けへんっちゅうのに……」
サムとマホートが、昨日の魔法実習訓練を思い出したのか、そう話した。
昨日の魔法実習訓練では、実力を測る小テストが行われた。
そしてそのテストの結果に基づき、クラスの俺以外の全生徒が、ランク1からランク3のいずれかに振り分けられた。
そしてこのランクは、「本日の迷宮実習で、何階層まで進んでいいか」を決定するのに利用されるのだ。
具体的には、3人ないし4人でパーティーを組み、パーティーメンバー全員のランクの合計値を2で割った階層まで進む許可が出る。
だから、たとえパーティーメンバー4人全員がランク3だったとしても、3×4÷2=6階層までしか進めないはずなのだが……俺は小テストで、ランク20などというものを言い渡されてしまったのだ。
おかげで、俺がいるパーティーは俺のランク値だけで10階層まで進んでいいことになってしまうのだ。
1層の魔物がワイルドブルより弱かったことを思えば、レッサークトゥルフは10階層以降の魔物と考えるのが妥当なのでまあ危険は無いと思うが……教師の判断基準が全く掴めない。
まあ、楽しければ全て良しとしよう。
最初は、そんな風に考えていた。
「おっ、魔物とエンカウント!」
楽しげにゼルトがそう言った。
「先週の約束、覚えてるよね?」
「分かったよ。倒せば良いんだろ?」
「そうそう、楽しみなんだからさ。じゃあみんな、いっくよ~」
ゼルトが他2人に声出しを促した。
……ああ、その掛け声やるのね。
「「「テーラスの! ちょっと良いとこ見てみたい! はーい斬って斬って斬って! 斬って斬って斬って! 斬って斬って斬って! 斬って!」」」
リズムに合わせて、本気で気炎撃を振るった。
魔物は断面が焼け爛れ、真っ二つになった。
「「「……」」」
……おい。何を顎が外れそうな表情してんだ。
そこまでコールやっといて黙るなよな。
「ねえ、ウェーイは?」
俺は3人に聞いた。
「「「……」」」
「ウェーイはどこ消えたのってば」
「……すまん。剣術試験で見ていたとは言え……改めて見ると、威力高すぎて言葉が出なくなるわ」
「……今みたいなことなる? 昨日の魔法実習のアレ、まさかの手加減ありだったって感じ?」
「えげつないわあ……」
口々にそう言う3人。
これは、俺も張り切り過ぎたみたいだな。
「ま、続き楽しんで行こう!」
「「「オー!」」」
この時は、まだ前回同様楽しい迷宮攻略が続くものと思っていた。
☆ ☆ ☆
奴らがいたのは、6階層に降りる階段付近だった。
突如として、上級生と思われる女子が、目の前に立ちふさがったのだ。
「痛い目に遭わされたく無ければ、大人しく帰んな」
上級生はそう言った。
「こっちはちゃんと授業で来てんだよ。何でそんな事言われなくちゃなんねえんだ」
サムがそう反論する。
「ちゃんと、授業? 先公の犬が、こんなとこでシャシャッてんじゃねえよ!」
上級生はそう言って、サムの胸ぐらを掴んだ。
……これは確信がついた。
こいつ、6年D組の奴だな。
だがおそらく、目の前にいるのはリューナでは無い。
性格は粗暴だが、平然と人を殺す冷酷さを兼ね備えているようには見えないからだ。
それに、上級生の体内の魔力の流れを感じ取る分には、到底この学園の教師を一斉に相手して全員の深手を負わせられるようには思えない。
不良の下っ端ってところか。
そうは言っても、これが「近くにリューナがいる」という可能性を示す状況なのは間違い無いがな。
である以上、この上級生にこれ以上関わるのは得策とは言えないだろう。
覆面無しでリューナと決闘を行えば、それは「覆面更生員としての活動」ではなく「ただの喧嘩」扱いになってしまうからな。
だから、ここは早く撤退すべきだが……その前に、1つだけ落とし前をつけさせてもらうとするか。
俺はサムの胸ぐらを掴んでいる上級生に近づき──その脛に、めいっぱいの身体強化をかけた強烈な蹴りをお見舞いした。
グギっという嫌な音の直後、上級生の手はサムから離れる。
そしてそのまま上級生は数メートル吹っ飛んで、迷宮の壁に全身をぶつけた。
「俺のダチに手え出すなよ」
うずくまる上級生としっかり目を合わせ、俺は可能な限り冷淡な声でこう吐き捨てた。
身体的ダメージに加え、「イケメンに完全に嫌われてしまった」という精神的ダメージも与えてやろうという算段だ。
さて、報復はきっちりと決めたことだし、本格的な対決は覆面更生員としてやる事にしてここは上の階層に戻るか。
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