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第16話 二番弟子、バーベキューを楽しむ

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河原の石を集め、焚き火用のコンロを自作する。
「オーブンレンジ」で焼いてしまえば確かに手軽なのだが……マリカはわざわざここで待ってくれていたのだ。

雰囲気は大事にしよう。

そして、そのマリカなのだが……よく見ると、かなりかわいい。
特に、パッチリとした平行型二重の目元がタイプど真ん中だ。

顔面偏差値は、今の俺なら何とか勝てる程度ってところだろうな。



おそらくだが、マリカは本気で口説きに行ったほうがいい。

というのも、さっきの魔剣発言から察するに、マリカには気の適性がある。
そしてそれは、マリカがアウラ気流女学院(ゾファレン学宮都市にある、ペリアレイじゃない方の学園だ)の生徒である可能性が高いということを意味する。

俺がチアリーダー部に入るにあたって、懸念すべきは女子部員たちによる俺の取り合いだ。
一歩間違えれば、嫉妬からイジメが多発なんてことになり兼ねない。

それを防ぐには、「他校に彼女がいる」という状況を作ってしまうのが1番手っ取り早い。
せっかくタイプの子に出会ったので、ここは積極的に行くべきだろう。

……ま、まだあくまでも「候補」だがな。

今のところ俺の中でのマリカの評価は「顔よし性格よし才能よし」の完璧女子だが、この先地雷が見つからないとは断言できない。

例えば、ちょっとでもメンヘラ気質なところがあればその時点で即刻アウトだ。いくら顔がストライクゾーンど真ん中とは言ってもな。

まあ、俺の処世術を以ってすれば対処できないこともないのかもしれないが……それをする価値もないからこそ、メンヘラはメンヘラなのだ。

まあマリカに関して言えば、9割型それは無さそうだが。
とりあえず、今日のところは友達ゾーンと恋人ゾーンの境界ギリギリまで仲良くなれればよしとしよう。

おっと、考え事をしていたら石組みコンロが完成したな。

中に魔石をくべて、熱魔法の術式を起動する。

魔石で熱する利点は、肉から滴り落ちる脂で火力が暴走し、肉が焦げるリスクが無いことだな。



「ねえ、テーラス」

作業を進めていると、マリカが話しかけてきた。

「なーに?」

「テーラスってさ、冒険者にはなってるの?」

「うん」

「ランクは?」

「B」

「B。上から3番目、か……。あの馬鹿げた威力の甲羅弾を撃てる割には低いのね」

「あの俺11歳」

「あ、いや、11歳でBランクって十分化け物なんだけどね、甲羅弾のインパクトと比べると何か釣り合ってない感があるというか。……もうちょっと、目立つことやってみたらいいんじゃない? すぐAランク行けると思うよ」

「うーん」

……目立つ、か。どうすればいいんだろう。

冒険者ギルド内で、もっと美少年アピールするべき、なのか?

「超絶イケメンがグレーウルフを狩った!」とか大々的に宣伝したら、ランクアップの箔がついたりするんだろうか。

原理がさっぱり掴めないが、天才のマリカさんがそう言うならやってみるか。

☆ ☆ ☆

「すっげえ霜降り」

思わずそう呟いてしまうほど、ワイルドブルの肉は綺麗だった。

そんな中。

「キ、ノ、コ♪これは私のマッシュルーム♪」

マリカがノリノリで俺が作ったコンロにキノコを並べていた。

振り返ってみると……

「おい、それレッドマッシュルーム」

「うん! 食べると元気になるの!」

「それ毒の作用な」

「中毒の方が来たら、解毒すればいいじゃない」

……うーん。
確かに、解毒魔法を使えば慢性的な体へのダメージは無い、ごく軽めの毒キノコではあるのだが……

好んで食べるほどのものか?

まあ、このくらいのマイナスポイントならかわいいもんだがな。
レッドマッシュルームの解毒なら、俺だってできる。
料理を作ってくれたとしても、安心して食べていい。

十分、恋愛対象内だ。

「肉もいくぞ」

肉を網に乗せると。

ジュワッという音ともに、俺は唾を飲むこととなった。
音だけでこの破壊力。これこそが、バーベキューの真髄だ。

待つこと約1分。

「よし、焼けた!」

ちょっとまだ赤いところが残ってる気もするが、それこそ食中毒くらい解毒すればいいのだ。
いい焦げ目はついているんだ、待ちきれない!

パクリ。

口の中に広がる、適度な噛みごたえととろけるような甘い脂。
一緒に頭もとろけてしまいそうだ。

「んー、キノコが合う~!」

……今の感想は聞かなかったことにしよう。



バーベキューは2時間ほど続き、(時々マリカさんに解毒魔法をかけつつ)会話を続けて、性格も何となく掴めた。

地雷級のマイナスポイントは一切無かったので、今後機を見て本格的に口説いていくか。
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