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第14話 敵を以って敵を制した

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「あれは……」
探知魔法で確認してみた感触としては、ちょっと先輩方聖騎士には荷が重そうだな。

カワサキに跨りつつ、転生した街から王都に移る際障害物の有無の確認に使った弓矢を取り出し、一発撃ってみた。

その矢は魔王の手下マントルグ数体を難なく貫通し……その先にあった王都の壁まで一部破損させてしまった。
過ぎたるは及ばざるが如しってか。あんなものを射続けてたら、先に王都の防壁の方が崩壊してしまう。

魔王の手下マントルグの回復は思った以上に遅く、今矢を貫通させた奴らに関しては俺が着くまでに復活することはなさそうだ。
だが、矢の射線上にいなかった魔王の手下マントルグに関しては、俺が着く前に先輩方聖騎士を攻撃し出すかもしれない。

もっとまずいのは、魔王の手下マントルグ共の上空に黒い扉が開いていることだ。アタミの瞬間移動だろう。
あそこで青酸を撒かれては、先輩方聖騎士に深刻な被害が出かねない。

「仕方ないな。バイクより走るのが速いってのはなんか納得がいかないが……ハイボルテージマリオネット」

カワサキを自動走行状態にしたのち魔法を発動、魔法電流の神経支配で得た超加速で一気に戦場に迫った。
そして俺が魔王の手下マントルグを1体踏みつけると──そいつを通して、全ての魔王の手下マントルグに電流が行き渡った。

……こいつら、まさかの電流を流せるタイプだったか。
全員電流で機能が一時停止しているようだし、アタミの瞬間移動が完了する前に可能な限り氷結させてしまおう。

絶対零度を付与した方天画戟で敵を貫き、凍らせては殴って粉々にする。
そうして、魔王の手下マントルグも残すところ10体くらいになった時。ようやくアタミが瞬間移動してきた。

「ふうん、まあ及第点ね。ここからが本番よ」
アタミとて、伊達に魔王妃として君臨し続けたわけじゃなさそうだ。一度死に、今も戦況はかなりこちらが有利だというのに平然としているように見える。

「まずは余計な聖騎士共を一掃するわ。青酸シアニ──ガフッ!」

アタミの詠唱は、遅れてやってきた自動走行中のカワサキによって見事に阻まれた。
うまく平静を装ったつもりのようだが、内心焦っているようだな。分かりやすくノーフェイクで追突させたのに避けられないとは。

魔王の手下マントルグには電流を流せるようだし、残りの10体はこちらの攻撃手段とさせてもらうぞ。

「あれは……まさか、魔神の最上級攻撃魔法と言われている『ハイボルテージペネトレイト』なのでしょうか?なんというかもう、溶岩でできた敵を雷で蒸発させるとかアリなんでしょうかね?ここで注目すべきなのは、攻撃した魔王の手下マントルグを飛ばす方向ですね。なんとそれらが全て、魔王妃アタミに向かって飛んでいます!」

10発、俺の「ハイボルテージペネトレイト」でプラズマと化した魔王の手下マントルグがアタミを襲った。
何発かは避けられたようだが、10発のプラズマ弾はアタミの四肢を完全に吹き飛ばしてしまった。

勝ちを確信した俺はサフシヨ様の方を振り返り、投げキッスをする。
これ、あくまで王都で念を視聴してる庶民向けだからな。まあとある合図の役割もあるが。

「おおっと、合図でました!これはもちろん『次の一撃で倒す』ということでしょう。はい、ミュージック・スタート!」

サフシヨ様の掛け声と共に、王都にいるサフシヨ様の知り合いの吟遊詩人が音楽を奏で始める。
尚、その演奏は事前の打ち合わせにより、俺の念話で庶民全員に聞こえるようにしてある。

演奏がBGMとして流れる中俺はアタミの下まで飛び上がり、未だかつてない魔力を込めて詠唱した。
「ハイボルテージペネトレイト」

先程まで魔王の手下マントルグをプラズマ化させていた攻撃とはまるで格が違う、次元さえも切り裂くのではと思えるような一撃を命中させる。
先程のサーフィンボードの爆発に続き、今回も悲鳴を上げさせる間すら無く、最凶の魔王妃は息絶えた。

最悪、何度も蘇るようなら魔神(本家)を呼び出して問い詰めでもしようかと考えていたが、杞憂だったようだ。

いよいよ最期の敵だな。
俺は魔王・プレート=テクト=ニクスに方天画戟の刃を向けた。
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