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第5話 通りすがりの人助け──②
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「ところで、馬車……横転しちゃってますけど」
私はそう切り出し、三人で馬車の状態を見に行くことにした。
「うわあ……車輪がイっちゃってますね……」
すると護衛の人が、片側の後輪が割れてしまっているのに気づき……顔を顰めつつそう言った。
「困りましたね……。何とか命の危険は脱したものの、これからどう移動すればいいのか……」
そしてテレサさんは、そう言ったっきり、頭を抱えてしまった。
流石に回復魔法じゃ、馬車は修復できないしな……。
とはいえここで放置すればまず餓死するか別の脅威に晒されるだろうし、そうなるとせっかく助けた意味がなくなってしまうので、その選択肢は無い。
私はしばらく考えた末、とりあえずテレサさんの行き先がどこだったのか、聞いてみることにした。
もしこの人の行き先が王都、あるいは王都に向かうまでに大きく迂回せずに経由できる街だったら、最悪担いで一緒に飛ぶことだってできる。
そう思い、聞いてみたところ……。
「あの……あなたはどこに行こうとしていたのですか?」
「王都です。私は王都に帰る途中でした」
なんと偶然にも、行き先は私と同じだった。
「奇遇ですね、私もなんです。良かったら……私があなたを背負って、一緒に飛んでいくのはどうですか?」
あとは本人が了承すれば、それで万事解決だろう。
流石に馬車までは担げないが、聖女には「精霊収納」という霊界に物体を預ける能力があるので、馬車ごと収納して運べばどうとでもなる。
「飛ぶ……ですか?」
「はい。こんな感じで」
テレサさんは「飛ぶ」という部分に戸惑ったみたいだったので……私はさっきの電磁飛行魔法を用い、上空で二~三回、八の字を描くように飛んでみせた。
「結構速いですし、予定より早く着けますよ?」
そして地上に降りると、そうメリットを説明してみる。
「結構というか、明らかに人間技の範疇を超えてますよね……」
「何というか……人間って、驚き方を忘れるような衝撃を受けると案外冷静になれるんですね……」
すると二人は、互いを見合わせながらそんなことを言いだした。
今のは時速100㎞くらいだったし、人間技の範疇を超えてるってほどのことはしていないと思うが……。
などと思いつつ、私は二人の結論を待った。
二人がしばらく話し合う中、ぼんやりと待っていると。
二人はどうするかを決めたらしく、護衛の人がこう提案してきた。
「あの……まず私なんですけど、私は馬で単独で走ろうと思います。なので……テレサさんだけ、運んでいってもらってもいいですか? 二人同時に運ぶのは大変でしょうし……でも私たちだけではどうにもならないので、お言葉に甘えて一人だけ運んでもらうということで」
……なるほど。
確かに、そうしてくれるとありがたいな。
護衛の人の言う通り、二人担ぐよりは一人だけのほうが何かと楽だし……それによく考えたら、生きた生物には精霊収納が使えないので、馬をどうするか問題が残っていた。
「あ、それで良いならそうしてもらえると」
私はその提案に賛成しつつ……エリアヒールの対象範囲に馬も含むようにし、負傷していた足を治癒した。
「今回は救ってくださり、本当にありがとうございました! では、私はこれにて」
そして護衛の人は、そう言い残すと……馬に乗って勢いよく走り去っていった。
さて、残るは……。
「あの……あなたの馬車、収納していいですか?」
「収納……何ですかそれは? まあもうこの際ですし、お任せしますが……」
私はテレサさんに許可を取ると……精霊収納を発動し、馬車を霊界に送った。
「……馬車が消えた!? 今のがその、『収納』とかいうものなのですか?」
「はい! 聖女の基本的な技の一つですよ」
「基本的な……ええ……」
精霊収納について聞かれたので軽く説明すると、なぜか納得しかねるような様子だったが……まあ許可は得てるし、いいだろう。
「じゃあ、これ以上ここにいるのもアレですし、早速飛びますか」
私はそういって、担ぐためにテレサさんに近づいた。
「……あ、ちょっと待ってください!」
するとテレサさんは……慌てたように、早口でそう言った。
「私、高いところが苦手ですし、それも高速でとなるとちょっと気が持たなそうで……もし可能でしたら、王都に着くまで私を気絶させるとかって、可能ですか?」
どうやらテレサさんは高所恐怖症で、そのことを懸念していたようだった。
「分かりました。――全身麻酔」
私は治癒魔法の発展技の一つ・全身麻酔で、テレサさんを催眠状態にした。
確かに……恐怖のあまり失禁でもされたら非常に面倒だったところだしな。
高所恐怖症を事前に申告してくれただけでなく、催眠状態になることまで自主的に提案してくれたのはありがたい。
じゃ、今度こそ準備が整ったところで、出発するか。
私はテレサさんを担いで飛行魔法を発動し……一直線に王都を目指した。
◇
そこから王都までは、特に何事も無く移動でき……昼前には、王都に到着することができた。
王都に着くと、まず私はテレサさんの麻酔を解除し、精霊収納していた馬車を返却した。
それが済むと、私はテレサさんと別れようとしたのだが……別れ際にテレサさんは「お礼に」と、貨幣の詰まった袋を渡してくれた。
「今はこの程度しかお礼できませんが……次会うときには本格的なものを用意しますね」などとも言われたが……次会うことなんて、あるのだろうか。
まあ正直そこまで大したことやったわけではないし、この程度のお礼でも十分なくらいなので、別に次会えようが会えまいがどっちでもいいのだが。
そんなことを思いつつも、私はテレサさんとサヨナラして……それからは、宿の手配やら日用品の調達やらを済ませていった。
入学試験まではまだあと一週間たっぷり時間があるので、特に急ぎはしなかったが。
ちなみにそんなに日数があるのは、ラピアクタ家から王都までは三時間で着くと説明したにもかかわらず、両親に「念のため一週間前には出発しなさい」と説得されたからである。
とまあ、そんなこんなで王都を見物しながら一週間が過ぎ……ついに、入学試験の時がやってきた。
教会の門の前には、聖女志望の受験生と思われる同い年の女の子が多数集まっている。
王都の本屋で、試験の過去問が置いてあったので軽く流し読みしてみたが……前世の知識で解けないような難問は、特に見当たらなかった。
まあ落ち着いて問題を解いて、堅実に合格を勝ち取るとしよう。
私はそう切り出し、三人で馬車の状態を見に行くことにした。
「うわあ……車輪がイっちゃってますね……」
すると護衛の人が、片側の後輪が割れてしまっているのに気づき……顔を顰めつつそう言った。
「困りましたね……。何とか命の危険は脱したものの、これからどう移動すればいいのか……」
そしてテレサさんは、そう言ったっきり、頭を抱えてしまった。
流石に回復魔法じゃ、馬車は修復できないしな……。
とはいえここで放置すればまず餓死するか別の脅威に晒されるだろうし、そうなるとせっかく助けた意味がなくなってしまうので、その選択肢は無い。
私はしばらく考えた末、とりあえずテレサさんの行き先がどこだったのか、聞いてみることにした。
もしこの人の行き先が王都、あるいは王都に向かうまでに大きく迂回せずに経由できる街だったら、最悪担いで一緒に飛ぶことだってできる。
そう思い、聞いてみたところ……。
「あの……あなたはどこに行こうとしていたのですか?」
「王都です。私は王都に帰る途中でした」
なんと偶然にも、行き先は私と同じだった。
「奇遇ですね、私もなんです。良かったら……私があなたを背負って、一緒に飛んでいくのはどうですか?」
あとは本人が了承すれば、それで万事解決だろう。
流石に馬車までは担げないが、聖女には「精霊収納」という霊界に物体を預ける能力があるので、馬車ごと収納して運べばどうとでもなる。
「飛ぶ……ですか?」
「はい。こんな感じで」
テレサさんは「飛ぶ」という部分に戸惑ったみたいだったので……私はさっきの電磁飛行魔法を用い、上空で二~三回、八の字を描くように飛んでみせた。
「結構速いですし、予定より早く着けますよ?」
そして地上に降りると、そうメリットを説明してみる。
「結構というか、明らかに人間技の範疇を超えてますよね……」
「何というか……人間って、驚き方を忘れるような衝撃を受けると案外冷静になれるんですね……」
すると二人は、互いを見合わせながらそんなことを言いだした。
今のは時速100㎞くらいだったし、人間技の範疇を超えてるってほどのことはしていないと思うが……。
などと思いつつ、私は二人の結論を待った。
二人がしばらく話し合う中、ぼんやりと待っていると。
二人はどうするかを決めたらしく、護衛の人がこう提案してきた。
「あの……まず私なんですけど、私は馬で単独で走ろうと思います。なので……テレサさんだけ、運んでいってもらってもいいですか? 二人同時に運ぶのは大変でしょうし……でも私たちだけではどうにもならないので、お言葉に甘えて一人だけ運んでもらうということで」
……なるほど。
確かに、そうしてくれるとありがたいな。
護衛の人の言う通り、二人担ぐよりは一人だけのほうが何かと楽だし……それによく考えたら、生きた生物には精霊収納が使えないので、馬をどうするか問題が残っていた。
「あ、それで良いならそうしてもらえると」
私はその提案に賛成しつつ……エリアヒールの対象範囲に馬も含むようにし、負傷していた足を治癒した。
「今回は救ってくださり、本当にありがとうございました! では、私はこれにて」
そして護衛の人は、そう言い残すと……馬に乗って勢いよく走り去っていった。
さて、残るは……。
「あの……あなたの馬車、収納していいですか?」
「収納……何ですかそれは? まあもうこの際ですし、お任せしますが……」
私はテレサさんに許可を取ると……精霊収納を発動し、馬車を霊界に送った。
「……馬車が消えた!? 今のがその、『収納』とかいうものなのですか?」
「はい! 聖女の基本的な技の一つですよ」
「基本的な……ええ……」
精霊収納について聞かれたので軽く説明すると、なぜか納得しかねるような様子だったが……まあ許可は得てるし、いいだろう。
「じゃあ、これ以上ここにいるのもアレですし、早速飛びますか」
私はそういって、担ぐためにテレサさんに近づいた。
「……あ、ちょっと待ってください!」
するとテレサさんは……慌てたように、早口でそう言った。
「私、高いところが苦手ですし、それも高速でとなるとちょっと気が持たなそうで……もし可能でしたら、王都に着くまで私を気絶させるとかって、可能ですか?」
どうやらテレサさんは高所恐怖症で、そのことを懸念していたようだった。
「分かりました。――全身麻酔」
私は治癒魔法の発展技の一つ・全身麻酔で、テレサさんを催眠状態にした。
確かに……恐怖のあまり失禁でもされたら非常に面倒だったところだしな。
高所恐怖症を事前に申告してくれただけでなく、催眠状態になることまで自主的に提案してくれたのはありがたい。
じゃ、今度こそ準備が整ったところで、出発するか。
私はテレサさんを担いで飛行魔法を発動し……一直線に王都を目指した。
◇
そこから王都までは、特に何事も無く移動でき……昼前には、王都に到着することができた。
王都に着くと、まず私はテレサさんの麻酔を解除し、精霊収納していた馬車を返却した。
それが済むと、私はテレサさんと別れようとしたのだが……別れ際にテレサさんは「お礼に」と、貨幣の詰まった袋を渡してくれた。
「今はこの程度しかお礼できませんが……次会うときには本格的なものを用意しますね」などとも言われたが……次会うことなんて、あるのだろうか。
まあ正直そこまで大したことやったわけではないし、この程度のお礼でも十分なくらいなので、別に次会えようが会えまいがどっちでもいいのだが。
そんなことを思いつつも、私はテレサさんとサヨナラして……それからは、宿の手配やら日用品の調達やらを済ませていった。
入学試験まではまだあと一週間たっぷり時間があるので、特に急ぎはしなかったが。
ちなみにそんなに日数があるのは、ラピアクタ家から王都までは三時間で着くと説明したにもかかわらず、両親に「念のため一週間前には出発しなさい」と説得されたからである。
とまあ、そんなこんなで王都を見物しながら一週間が過ぎ……ついに、入学試験の時がやってきた。
教会の門の前には、聖女志望の受験生と思われる同い年の女の子が多数集まっている。
王都の本屋で、試験の過去問が置いてあったので軽く流し読みしてみたが……前世の知識で解けないような難問は、特に見当たらなかった。
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