上 下
16 / 33

第十六話 特殊攻略家の称号とVIP探索者

しおりを挟む
 1F差コア破壊に……「特殊攻略家」の称号?
 コア“破壊”って言うくらいだし、今のはどうやら特殊攻略とやらに分類されるみたいだし……もしかして、フロアボスを出さずに攻略でもできたのだろうか。

 などと考えていると……続けて、その確信を強めるような脳内音声が流れた。

<フロアボスの魂を特別アイテムに成形しています……>
<特別アイテム:「時止めの神速靴」をコアフロアに転送します>

 そして、そんな音声と同時に、俺の目の前に一足の靴が現れた。


 これがフロアボスのドロップアイテムだとしたら……やはり俺は、ボスと戦わずにフロアボス戦をクリアしたってことだよな。
 とりあえず、称号を確認するか。

 俺はステータスウィンドウを開き、「特殊攻略家」をタップした。

 ─────────────────────────────────
 ●特殊攻略家
 1F差コア破壊(コアのHPを1にしてから、フロアボスが出現しコアが無敵状態になるまでの0.03秒のタイムラグの間にコアにもう一撃加え、残り1のコアのHPを削りきる戦法)に成功した者に贈られる称号。
 補正値:MP+250
 ─────────────────────────────────

 すると、こんな説明が出てきた。

 ……なるほど、そんな戦法があったのか。
 それなら確かに、既にコアが壊れているのも納得だな。

 ていうかこの称号……補正はMPのみなのか。
 まあMP補正値は今まで手に入れたどの称号よりも高いので、別にそれはいいのだけれど。

 などと考えつつ、俺は目の前に現れた靴を拾った。
 そして……おもむろに、俺は履いてる靴を脱いで、現れた靴の方を履いてみた。

 今までは、手に入れたアイテムは工藤さんに確認してから使ってたけど……今回のはただ魔物からドロップしたんじゃなくて、「1F差コア破壊」の報酬みたいな形で手に入れたアイテムだからな。
 間違っても、害になるようなアイテムじゃないだろうと確信できるのだ。
 名前的に、効果は移動速度アップ系だと推測もできるしな。

 履いてからステータスウィンドウを確認すると、確かに装備の欄に「時止めの神速靴」が追加された。


 ……そうだ。ステータスウィンドウに現れるってことは……もしかしたらこれも、タップしたら詳細確認できるんじゃ?
 今まで試したことなかったけど。

 そう思い、「時止めの神速靴」をタップしてみると……このような説明が現れた。

 ─────────────────────────────────
 ●時止めの神速靴
 まるで周囲の時が止まっているかのように見えるほど速く動ける靴。
 特殊な方法でしか入手できない貴重なアイテム
 ─────────────────────────────────

 すると……やはり思ったとおり、このアイテムは移動速度アップ系のアイテムだった。
 それも、かなり強力そうな。

<10階層に帰還します>

 確認し終わって、ステータスウィンドウを閉じてしばらく待っていると……そんな脳内音声が流れると共に、周囲の風景が10階層のものに戻っていった。

 これで、11階層に進めるってわけか。
 そう思ったが……俺はここで、重大なことを忘れていたのを思い出した。

 ……あ、俺が攻略許可されてるの、10階層までだった。


 ◇


「工藤さん、攻略許可階層の引き上げをお願いします」

 というわけで……俺は仕方なく地上に戻り、受付で工藤さんを呼んでそう頼むことにした。
 ちなみに靴の効果のおかげで、地上への帰還には10分もかからなかった。

「何……!? まさか、もう10階層のフロアボスを倒したというのか?」

 すると工藤さんは目を丸くしつつ、そう聞いてきた。

「はい。イジワルミミックを倒して強くなったので挑んでみたら、攻略できました」

「ちょっと待て。今、聞こえちゃいけない言葉が聞こえた気がしたぞ」

 経緯を説明すると、工藤さんは額に手を当てつつそう口にした。

「ちなみにフロアボスは、どんな感じで撃破したんだ?」

「それが……フロアボスとは、戦いになりませんでして。1F差攻撃とかいう特殊攻略をしてしまったみたいで、ボスが出てきませんでした」

「は……!? 聞いたこともないぞそんなの……」

「その関係で「特殊攻略家」って称号も得て、結構ステータスも上がりまして。それもあって、11階層に挑んでみたいと思っているんです」

 俺は許可階層の拡大の妥当性を感じてもらうため、称号のことも交えつつ、そう説得にあたった。

 すると……工藤さんは、タブレットを用いて何やら調べ始める。

「『特殊攻略家』……見当たらないな」

 そんなことを呟きながら、ひとしきり画面をスクロールしたかと思うと……工藤さんはこう説明しだした。

「もちろん可能だ。1F差コア破壊など聞いたことないし……データベースを調べてみたところ、『特殊攻略家』というのは未発見の称号だったからな。未発見の称号を見つけた者は、ダンジョン学会によってVIP探索者として認定される。そしてVIP探索者は必ず、攻略許可階層が無制限になるのだ」

「……マジですか?」

 これには、今度は俺が驚く番だった。
 こんなにもあっさりと、攻略許可階層が無制限になってしまうとはな。

「ちなみにVIPは凄いぞ。アイテムの買い取り価格が2割増しになるし……ランクにもよるが、買えば一億円はする『経験値豊穣の指輪』が無償支給されたりするケースもあるからな」

 更に工藤さんは、聞き間違えかと思うような衝撃的な事実まで口にし始める。

「VIP探索者って、ランクとかあるんですか? その『経験値豊穣の指輪』とやらは、ランク何になると貰えるんでしょう……」

 興味が湧いたので、俺はそう質問してみた。

「VIP探索者は、功績の積み重ね次第でランクが上がっていくんだ。そして『ランク5』のVIP探索者になれば、『経験値豊穣の指輪』が支給されるのさ」

「ランク5ですか……遠そうですね」

「そりゃま、全世界に十数人しかいないレベルだからな」

 聞いてみると……まあ流石に、一億の価値がある指輪とやらは、そう簡単には支給されないと分かった。
 そりゃそうだよな。


「……そうだ。新発見の称号は、その補正値次第で何ランクのVIP探索者になれるか決まるから、ステータスの称号欄を読み取らせてくれ」

 これで話は終わりかと思っていると……工藤さんはそう言いつつ、引き出しから魔石がいくつも付いた指紋認証の機械みたいなものを取り出した。

「ステータスの称号欄を……読み取る、ですか?」

「ああ。そのデータをダンジョン学会に送って、VIP探索者の認定を貰うんだ」

 そう言われたので、俺は指を置くところっぽいところに、右手の人差し指を翳した。

「……お、来た」

 すると、工藤のタブレットからピョコンと通知音が聞こえたかと思うと……工藤さんは、(その画面に現れたであろう)俺の称号を確認しだした。

「……って、MP+250!? おいおいこれ……単一の称号新発見としては最大の、ランク4認定クラスだぞ……」

 そしてしばらくすると、工藤さんは驚愕の表情でそう口走った。

 ……え、これだけでランク4まで上がるのかよ。
 なんというか……ランク5、意外と近そうだな。

 などと思っていると……どういうわけか、工藤さんは更に手が震えだす。
 心配な気持ちになっていると、工藤さんはこう呟いた。

「……待てよ。お前……『無属性を極めし者』も、未発見の称号だぞ。これを合わせると……つまり……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

精霊に好かれた私は世界最強らしいのだが

天色茜
ファンタジー
普通の女子高校生、朝野明莉沙(あさのありさ)は、ある日突然異世界召喚され、勇者として戦ってくれといわれる。 だが、同じく異世界召喚された他の二人との差別的な扱いに怒りを覚える。その上冤罪にされ、魔物に襲われた際にも誰も手を差し伸べてくれず、崖から転落してしまう。 その後、自分の異常な体質に気づき...!?

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...